五行怪異世巡『こっくりさん』 その⑥
それからも数度、短刀による刺突を放ったが、影はその尽くを回避する。
ゆらゆらと蠢く影を、跪いた姿勢のまま睨み続けていた平坂の背中を、不意に犬神が軽く叩いた。
平坂が振り向くと、犬神は既に巾着袋の口を開け、中の砂を掌に空けている。それを見て、平坂は数秒逡巡してから、結界の中の4人に声を掛けた。
「……そのまま目を閉じて、決して見ないように」
そして、犬神に手でゴーサインを出す。犬神は小さく頷き、手の中の砂を宙に向けてばら撒いた。砂は落下することなく空中に留まり、犬神の手の動きに合わせて波打つように動き、刃の形状に固まった。
犬神が影を指差すと、砂の刃は高速で射出され、影の胴体を切断する直前で回避され、床に衝突した。それによって粉砕された刃は、6本の棘に再形成され、うち4本が影に向けて再び発射され、そのうちの2本が命中し、影の身体を空中に持ち上げた。
(ふー、ちょろちょろとよく動いたけど、やっぱり『数』は『強さ』だよ)
口の中で呟き、外した2発、撃たずにいた2発の棘を構成していた砂を、1つの弾丸の形状に変形させ、空中で回転させながら照準を定める。
(吹っ飛べ)
砂の弾丸が発射され、影の胴体に命中し、その全身を衝撃によって破裂させた。