表示件数
0

Tell us terrible Terrors:あけて その⑮

「……へい後輩くん、本当に良いの? 昔馴染みなんでしょ? 割り切れないものとか無いの?」
「えぇ、まぁ……結局小さい頃から俺を狙ってたってのが分かったんで。それなら『敵』なわけで、別に気に掛けること無いなぁ……と」
「ドライだなぁ……まあ、そんなら私ら先輩組が全力で支えたるから、頑張って“八尺様”倒そうぜぃ」
「はい、よろしくお願いします」

方針決定後に吉継と交わした会話を思い返しながら、潮は深夜の山中を歩いていた。彼女の足元では小さな松明を掲げた30㎝程度の“コロポックル”が先導しており、その周囲にも大小様々なサイズの個体が護衛のように控えている。
「お仕事の一環とはいえ、器物損壊は罪悪感あるよなぁ……しかも道祖神。罰当たりだよねぇ?」
コロポックルたちに問いかけるが、彼らは首を傾げて歩き続けるだけだ。
三人の作戦は、次のようなものだった。
まず、王蕗を中心としたコロポックル部隊と潮を中心とした別働コロポックル部隊が、道祖神のうち『2か所』を破壊することで、結界に穴を開ける。その穴から侵入した“八尺様”は幼少からの『標的』である吉継が囮となって引き付け、二人と合流の後、討伐に取り掛かる。
「ねぇ“コロポックル”くんたち、移動の仕込みは済ませてあるんだっけ?」
隣を歩いていた160㎝程度の“コロポックル”が頷く。王蕗の略霊能力が産み出すフキの傘の下から現れた個体だ。
「へぇ、器用だねぇ……」
先導する“コロポックル”が立ち止まると、苔むした崩れかけの古い道祖神が松明に照らされた。
「おぅ……それじゃ、時間が来たら叩き割れば良いんだよね」
対怪異汎用近接武装“霊凛”を竹刀袋から取り出し、スマートフォンで時間を確認する。破壊タイミングは、0時ジャスト。
「残り1分…………30……」
残りが20秒を切ったところで、竹刀を振り上げた態勢で停止する。
「…………ぜろっ!」
【ダイダラボッチ】異聞能力による怪力と“霊凛”の機能である刀身強化が重なり、石塊を粉砕した。
「よしっ、こっちは破壊完了! 移動だよ!」
“コロポックル”達は力強く頷くと、木々の間に隠していたトレビュシェットのような装置の下に潮を導いた。
「ははっ、なるほど人間投石器! 良いよ、思いっきりお願い!」
潮が飛び乗ると、根元に待機していた個体が留め縄を叩き切った。

0

Tell us terrible Terrors:死にゆくお前に中指を! その⑥

「おい後輩……コンクリからは絶対出るなよ。さっきは油断したが、もう破らせねえから」
加奈は血の滴る左腕を押さえながら、絞り出すように静かに言う。
“ハグレイ”は既にコンクリートに覆われた橋の下から出て、土壌が露出した地点に立って二人を睨んでいる。
「おい、その傷処置した方が良いだろ」
「お前『腐敗傷』なんてものの手当の仕方知ってんの?」
「知らねえけど、出血止まらない抉れ方してんだろ」
「圧迫止血はしてるわバーカ。どうせ離脱のしようも無いんだし、さっさとあいつ倒して帰んぞ。取り敢えず『殺し方』は思い付いた」
話している間にも、全方位から生えだした草木が二人を襲うが、加奈は【ポルターガイスト】で川の水や周囲の土、コンクリートの破片などで迎撃し続ける。
(どうやら、あの“大顎”は直接足元に出さなきゃならないっぽいな……でなきゃこのラッシュに混ざってるはずだ。けど……流石にこの怪我抱えた状態で、コンクリ割られないようにするのと攻撃全部迎撃し続けんのはキツいな……)
加奈はその場に膝をつき、思考と精神のリソースを可能な限り能力行使に回す。
「おい、『殺し方』って何だよ」
「ま、面子が足りないから今は使えないんだけど」
「はぁ!? じゃあどの道無理じゃねえか!」
「るっさいわねェ……『全方向から削がれ続けても問題ない前衛』なんてものがいなけりゃどうしようも無ェってのよ。あたしの【ポルターガイスト】は『全手動』なんだから」
「……!」
(あんたの能力は聞いてる、“二重身”……あんたの【ドッペルゲンガー】なら、このクソみたいな作戦が成立する!)
陸斗が加奈の背中に手を置いた。
「勝手に触んな変態」
「能力のために必要なんだよボケ。分かってんだろ」
「……ったくしょーがねェなァ~~~! やんぞコラ」
「おう」
【ドッペルゲンガー】異聞能力が発動した。陸斗の背後に現れたのは、加奈と同じ姿の実体が1つ。無言・無表情のソレは加奈の目の前にしゃがみ込み目を合わせた。
「よォ、“あたし”……一緒にあの先輩、弔ってやろうぜ?」
牙を剥くように笑う加奈に、“ドッペルゲンガー”は無表情のまま小さく頷いた。

0

Tell us terrible Terrors:あけて その⑭

「ただい……君たち何してるの?」
16時半頃。冷房の効いた吉継の部屋で毛布を被っている二人を見下ろして、王蕗が尋ねる。
「あっ菅原先輩」
あっさりと毛布を捨てて立ち上がった吉継に対して、潮は包まった姿のまま王蕗の足元にすり寄る。
「先輩ぃ~、やっと帰ってきたぁ~」
「菅原先輩、“八尺様”に遭遇しました。あと、昨夜窓辺にやって来たのも“八尺様”です」
「……なるほど。詳しく聞こうか」
3人はテーブルに各々が道祖神の位置を記録したマップを広げ、情報共有をすることにした。
「にしても王蕗先輩のマップ、マークの数多くありません? というかこの村道祖神多すぎません?」
「“コロポックル”達に探させたんだ。君たちの見つけた分も合わせると……こうなるね」
王蕗が描き足したマップには、赤いポイントが100以上、村内はもちろんのこと周囲の山中にまで刻まれていた。
「……多すぎない?」
「多いね。そして、永江くんの証言や遭遇した際の状況、それから僕の推測も合わせると……」
王蕗は定規を手に取ると、赤ペンを走らせてマップ上のポイントを一つ一つ結び始めた。
「……多分、『結界』はこういう形をしている」
「……かなり滅茶苦茶な形してますね? この辺とか異常に細いし……」
吉継の疑問に、王蕗が頷く。
「おそらく、村内に“八尺様”を留めつつも人間が行動圏を避けて生活できるように、建物や道、農地を上手く躱すようにしたんだろうね」
「じゃぁ……『あけて』ってのは……」
「……結界に“穴”を、開けてほしかったんだろうね。『獲物』である君を追うために」
「ぴゃぁ恐ろしい~」
「……秋津さんいつまで毛布被ってるの?」
「……いやほら、めっちゃ強いらしいオバケ相手だし、一人くらいはビビり役がいた方が良いかなって」
潮もあっさりと毛布を解き、畳んで膝の上に乗せる。
「あ、秋津先輩それ演技だったんですね……」
「そりゃそうだよ。いくら準擬神格級っても、私は【ダイダラボッチ】だよ?」
「自信家ぁ……」
「ははは、頼もしいことだ。ところで結構分かってきたところで二人に訊きたいことがあるんだけど」
王蕗に視線が集中する。
「この“八尺様”を、倒すか封じるか。どっちにする?」

0

Tell us terrible Terrors:あけて その⑬

畑脇に無造作に立てられた道祖神の位置を地図にマークすること10体目。吉継は頭上に影が差していることに気付いた。
『て……けて、あけ、あ、て……あけて……あけ、て』
「あ、“お姉さん”」
長身の王蕗より更に頭一つ分程度背の高い、白いワンピースと帽子に身を包んだ女性が、吉継に覆い被さるように覗き込んでいた。
「『開けて』ってもなぁ……昔っから気になってたけど、何を開ければ良いんだよ……具体的に言ってよ」
『……あけて』
女性が緩慢な動きで手を伸ばしてくる。その時、奇妙な音が吉継の背後から飛んできた。打楽器と管楽器の中間のような『ぼ、ぼ、ぼ』という低い音が、どこか忙しない雰囲気を伴って鳴り、吉継は誘われるように数歩後ずさる。結果として女性の手は空を切り、女性はその場から動かず吉継と足元を交互に見やった。
『あけて、あけて』
「だから何を……」
女性の目の動きに釣られて、吉継も視線を下げる。女性の足元には、先ほどマークしたばかりの風化した道祖神が佇んでいた。
「……いや、でもなぁ……」
奇妙な悪寒を覚えながら、女性を見上げる。彼女の顔は長い髪に覆われている上に陰になっており、容貌や表情は伺えない。
(……そういやイマジナリー・フレンドって影できるのか? いや想像上の産物なら想像で補完はされるのか……?)
女性が再び手を伸ばそうとしたその時だった。
「どぉぉぉぉおおおおりゃああああああっ!」
更に後方から『飛んで』きた潮が、女性の後頭部に跳び蹴りを命中させた。女性の長身が吹き飛び、農道を転げ落ち畑の泥に叩き付けられる。
「えっなっ秋津先輩っ!?」
「入口の方の道祖神メモり終わったから様子見に来たら!」
「いや待っ、なんであれ蹴れたんですか⁉」
「そりゃ蹴るよ後輩が襲われそうになってたんだし!」
「ちが、あれイマジナリー・フレンドじゃなかったんですか⁉」
「私にも見えてたから違うね、あいつが“八尺様”だよ!」
潮は身体を起こそうとする女性――“八尺様”に目もくれず、吉継を抱え上げる。
「とりあえず退散! 逃げるよ後輩くん!」
自身の異聞能力で強化された筋力で踏み切り、トラクターが踏み固めた農道に深い足跡を残しながら、潮はその場を離脱した。

0

Tell us terrible Terrors:あけて その⑫

「僕は山の方を調べよう。君たちは村や入り口のエリアを見てくれ」
祖母宅を出たところで王蕗が提案する。
「別に構いませんけど……一人で大丈夫なんですか?」
吉継の問いに、王蕗はサムズアップを返した。
「大丈夫。自然環境なら頭数は簡単に確保できるから」
そう言いながら、王蕗は道端に生えていた雑草を指先でつついた。その下から、アイヌ風の衣装を纏った小人が数人顔を出す。
「おぉ、小人」
「わぁ~可愛い~」
「これが僕の【コロポックル】の異聞能力。『葉の下から人型を現す能力』とでも言おうか。まあ見ての通り、頭数は大量に確保できるから心配は無用だよ」
「これ全部王蕗先輩一人で良いんじゃない?」
「そう言わないの秋津さん……戦闘力なら君らの方が高いだろ? いや永江くんの能力は詳しく知らないけど……」
「そういやそうっすね。改めて俺の能力は【八尺様】なんですけど……」
潮は思わず吉継の顔を凝視した。
「あの……」
「あ、ごめん。で? どういう能力なの?」
「殴る蹴るの当たり判定を遠くに飛ばせます」
「はぇー便利。射程は?」
「2mくらいっす」
「何ともいえねえ……まぁ、荒事は私に任せなよ後輩くん」
「了解です……」
王蕗が手を叩く音に、2人は顔を上げた。
「それじゃ、二手に分かれようか。二人の動きは任せるよ。17時までには帰ってくる感じで」
「「了解」」
王蕗は大量の小人たちを引き連れて、山道を登っていった。
「さぁ後輩くんや、私たちも行くよ。私はまた村の入り口まで引き返してから、1つずつ道祖神マークしていくから」
「じゃ、自分は畑の方見ます」
「よっしゃ、健闘を祈るぜぃ」
スキップ歩調で村の道を下りていく潮を見送り、吉継が農地方面へ向かおうとしたその時だった。
『……て、て……け、あ……けて……』
聞き覚えのある声に立ち止まる。
(また“お姉さん”かー……ゆうべも思ったけど、健在だなぁ……)
しかし所詮は幻影と思い直すと、吉継は少しずつ近づいてくる声を背に、農道に足を踏み入れた。

0

Tell us terrible Terrors:死にゆくお前に中指を! その⑤

“ハグレイ”の異能【Who put Bella in the Wych Elm?】の異聞態は植物操作である。操作対象は既存繁茂しているものに限られるが、略霊態で土中に植物の種子を生成できるため、能力使用が可能な状態ならば実質的に無制限の操作能力なのである。能力発動のためには『土壌への接地』が必要となるため、コンクリートの上から出すわけにはいかないのだ。
「……おい後輩ィ、お前何か攻撃手段無ェのかよ」
「あの再生力相手にどうこうできるような力じゃねえよ、俺の【ドッペルゲンガー】は」
「はッ、期待のルーキーが聞いて呆れらァ」
「俺の売りは攻撃力じゃねんだよ元から」
苛立たし気に爪を噛みながら、加奈は思考を巡らせる。
(つってもどうする……あたしの“異聞”でも攻撃単体当たりは有効打にならねえ。ってか相手の土俵に持ってかれるとワンチャン質量負けも……いやそれは無いか。土もコンクリも泥水もあたしの味方だもんな。つっても……圧し潰しで死ぬか?)
そしてその思考が故に、敵の動きに気付くのが遅れた。“ハグレイ”は拘束された両脚を自切し、即時再生した両足で立ち上がると、転がるように逃走を開始した。
「ッ! 逃げンなタコ!」
再び足をかけて倒すが、“ハグレイ”が伸ばした手はコンクリートの継ぎ目から伸びる雑草の根元に届いていた。
「“騒霊”逃げろ!」
陸斗の忠告に反応するより早く、コンクリートを突き破って樹皮質の『大顎』が出現した。それは一瞬にして加奈を飲み込むと、両顎部を固く閉ざしてしまった。
「なっ……“騒霊”!」
「…………舐めんなコラァッ!」
数秒と経たずに大顎が内側から吹き飛び、加奈が姿を現す。能力によって衣服や装飾を操作し、破壊用の『工具』に変えたのだ。
「クッソ……おい後輩、朗報だ。この『未確認能力』について分かったことが一つある」
「何だ?」
加奈は自身の左腕を掲げてみせた。彼女の服は裾が擦り切れ、皮膚が溶けるように損傷し出血している。
「!? 何があった!?」
「……多分、あれに食われると、普通の数万倍の速度で『生きながら腐れ落ちる』」

0

Tell us terrible Terrors:あけて その⑪

翌朝、部屋に入ってきた王蕗の気配で、吉継は目を覚ました。
「おやおはよう永江くん。ごめんね、起こしちゃって」
「おはようございます……いえ大丈夫っすけど、何の御用ですか……?」
「大した事じゃないんだけどね……」
王蕗は部屋の隅に跪き、しばらく何かをしてから立ち上がる、という作業を四か所全てで繰り返した。
「何してるんすか?」
「…………盛り塩をね、交換したんだよ」
「何かあったんすか?」
「んー…………まぁ、常に新しくしておくに越したこと無いからね。……ゆうべ、何かあった?」
「まぁ……イマジナリー・フレンドに再会しました」
「よく消えてなかったね。……そういえば永江くん、能力何だっけ。ちなみに僕が【コロポックル】で秋津さんが【ダイダラボッチ】なんだよ」
「逆じゃないんすね」
「君も言うんだね」
「はは……俺の能力は【八尺様】ですよ」
「…………」
「…………」
「……君のお祖母さんが、朝食を用意してくれてるって。着替えてから居間においで」
「あっはい」
吉継が着替えている隙に王蕗が居間に戻ると、潮が起き出していた。
「はよぉ~っす……んぉ、王蕗先輩」
「……永江くんの部屋の盛り塩、窓側の二か所に劣化が見られた。何であれ、『何か悪いもの』が近付いていたのは確定だよ」
「……“八尺様”?」
「それは分からない。でも、窓側しか劣化してなかったってことは、『入ろうとはしていない』んだよ。いやはや謎だ……兎にも角にも、調査を進めないとだね」
王蕗はそれだけ言って、朝食の配膳の手伝いに向かった。祖母が作った朝食がテーブルに並んだ頃、吉継が居間に入ってくる。
「おはようございます」
「おはよう後輩ぃ」
「改めておはよう。しっかり食べて探索頑張ろうね」
「はい」
朝食を摂りながら、潮が切り出した。
「吉継くんよぅ、ゆうべ何か部屋に寄り付いたって?」
「え? そうなんすか?」
「王蕗先輩が言ってたよー」
「え、じゃあ寝た後のことかな……怖……」
「まぁ、盛り塩もあるし大丈夫だよ。でも何かあったら僕に言ってね。多少のことは何とかするからさ」
「私もー。悪いやつはぶん殴ってやるから安心しな後輩くん」
「ありがとうございます」

0

Tell us terrible Terrors:あけて その⑩

村で越す最初の夜。日付が変わるかどうかという頃、吉継は自室で1人今日一日を振り返っていた。
(……今日は俺、何もしなかったなー……一応、祖母ちゃんから聞いた話を二人にも共有したから、成果ゼロってわけじゃなかったか。取り敢えず、明日からは俺もフィールドワークに出るぞー……)
その時、窓ガラスを叩く音が聞こえて吉継は顔を上げた。カーテンを開けて夜闇に目を凝らすが、窓を叩いたものの存在は見当たらない。
(……カナブンかな? まぁ良いや、早く寝ないと……)
布団に目を向けた時、再び音が鳴った。ノックするように連続2回、コンコンと聞こえる。あまりに有意味に聞こえるそれに、吉継は再び顔を上げる。窓の外には、白いワンピースを纏い鍔の広い帽子を目深に被った女性が貼り付いていた。その異常な光景に、しかし吉継が覚えた感情は、『恐怖』ではなく『懐古』であった。
「……お姉さん?」
女は呼びかけに答えること無く、扉を握り拳でノックしながら、ぶつぶつと呟いている。
『あけて、あけ、て、けてあ、けて、あて、あけて、あけてあけて』
(うわぁ、昔と同じだ……何を開ければ良いのか何も分かんないけど……)
ふと思いつき、静かに窓を開ける。女は僅かに目を見開いたものの、窓ガラスがあった位置の虚空をパントマイムのように拳で打ちながら、『あけて、あけて』を再開した。
(……窓じゃねえのか。分かんねえひとだよなぁ、このお姉さんも……)
何とはなしに、女の手を掴もうと手を伸ばしたその時だった。
木管楽器とも打楽器とも付かない、低く短い音が背後から聞こえてきた。反射的に手を止め、音のした方に振り返る。しかし当然何もなく、興を削がれた吉継は窓を閉め、カーテンを引いた。外からは引き続きガラスを叩く音と『あけて』という声が聞こえてくるが、吉継はそれを無視して消灯すると、布団に入り何事も無かったかのように眠りに就いた。
(……まぁ、所詮頭の中だけの友人だし……つか、まだ消えてなかったんだな……俺のイマジナリー・フレンド……)

0

Tell us terrible Terrors:死にゆくお前に中指を! その④

二人は20分ほど歩き、川辺に下りると橋の下に標的の男を転がした。ただ落としたのではない。橋梁面とほぼ同高度、約15mからの自由落下である。一般的な人間であればまず死亡するはずだ。しかし、コンクリート面に直撃した男は衝撃と硬度によってひしゃげながらも、活動を続けており身体を起こそうと藻掻いていた。
「動いてんじゃねえよカスがァッ!」
動きの緩慢なその身体を石礫が貫き、右膝がちぎれ飛び残りの肉体が地面を転がる。
「やっぱ人間やめてんなァ……死ぬ気配無ぇぞ」
「“コードネーム・ハグレイ”、生前の呼称だけど……モチーフがよく分からねえんだよな……注意しろよ、“騒霊”」
「誰に言ってんだ後輩」
「お前に言ってんだよ」
「……問い直そうか。『お前風情が』『このあたしに』なんで舐めた口聞けてんだ、あ?」
「心配くらい素直に受け取れや」
「…………っつーか何アレ」
千切れ飛んだはずの男の右脚が、既に生え変わっている。しかし、その質感は一般的な人間の体組織のそれではない。表面は樹皮のような濃褐色で、硬くひび割れている。
「……再生能力……か? 報告には無かったぞ。剰霊能力の一部なのかあるいは、怪異としての特性か……」
「どっちでも良いけどさァ~、お前のせいで治癒の瞬間見られなかったじゃんかよ。どうしてくれんの?」
「もう一度やりゃ良いだろ」
男、“コードネーム・ハグレイ”はようやく起き上がると、2人に向き直った。その顔面もまた、樹皮状組織に覆われている。
「やんのはあたしだってのに、言いやがる……」
不満を垂れながらも、加奈は一握り分の土埃を刃の形状に再形成し、射出した。“ハグレイ”はそれを腕を盾にして受け止める。左腕は刎ね飛ばされたものの、即座に樹皮質の腕が再生する。
「……何秒?」
「4フレ」
「fpsを言えやfpsをォ!」
「60に決まってんだろが!」
「あたしはスマホ中毒者だからfpsといえば30派なんだよ! っつかよく分かったなオイ!」
「とにかく! 0.1秒弱で再生する怪物をどう倒すんだよ?」
「……どうすっかなァ……」
加奈は親指の爪を噛み、橋の下から出ようと背中を向けた“ハグレイ”の両脚をリボンで絡め取って引き倒した。