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視える世界を超えて エピソード4:殺意 その②

種枚さんに連れられて市民センターへと向かい、ロビーに設置されていたベンチに腰掛ける。彼女は自分の目の前に立ち、摘んでいたハエを手放した。ハエはしばらく彼女の手の上を這い回ってから、飛び上がった。
十数㎝ほど上昇したのを見てから、種枚さんはハエを鋭く睨んだ。すると、突然ハエが、電源が切れたかのように動きを止め落下した。
「一体何を……⁉」
「ん? そうだな。殺意を向けられればストレス感じるし、ストレスを感じれば体調悪くなるだろ?」
「まあ、そりゃそうですけど……」
実際、彼女の殺意はそれだけで人を殺せそうな凶悪さをしているけれども……。
「それ」
「?」
「殺意を練り上げて、ぶつける。かわいそうだけど今のハエには死んでもらったよ」
「ええ……」
「慣れれば攻撃に乗せることもできる」
「どういうことなんですか……」
この問いには答えず、真横に向けて指を差した。そちらを見ると、センターの奥に小さな人影が見える。よく見てみれば、足下が透けている。
「あそこに小さな幽霊が見えるね?」
「見えますね」
「あれを、こう」
幽霊に向けて、種枚さんが無造作に手を振る。すると幽霊がこちらに気付いたのか、振り向いてこちらに向けて近付いてきた。

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CHILDish Monstrum:アウトロウ・レプタイルス その①

体高約25m。生物とも機械とも取れない奇妙な外見のインバーダの周囲を、様子見するように1台の戦闘用ヘリコプターが飛び回っていた。
「もっと寄せて! もうちょい! そっちのビルの方!」
少女の姿をしたモンストルム、ククルカンがパイロットの背後から組み付くようにしながら呼びかけた。
「3めーとる! 3めーとるくらいの位置まで近付いてくれれば良いから!」
「精一杯やっています! ただ、あまり近付くと奴の攻撃が……!」
パイロットが言ったその時、インバーダがヘリに顔を向け、その中央にはまった眼から光線を発射した。しかし、その光線はヘリの底部に触れた瞬間、反射して空中に飛び去って行く。
「ほら、どうせアイツが何してきてもサラちゃんが何とかしてくれるんだから! もっと近付いて! ちーかーづーいーてー!」
耳元で甲高い声で何度も言われ、パイロットは渋い顔をしながらもヘリを操作し、1棟の高層ビルに、僅かに機体を寄せた。
「よぉーしゴクロウ! あとは私らに任せてさっさと逃げちゃってよ」
「ああ……頼むぞ、〈アウトロウ・レプタイルス〉。君たちは我々にとって、最後の希望だ」
振り絞るように言うパイロットにサムズアップで応え、ククルカンは同乗していたもう2人の仲間と共にヘリから勢い良く飛び出した。

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CHILDish Monstrum 〈設定〉

この書き込みは企画「CHILDish Monstrum」の〈設定〉です。

・モンストルム Monstrum
人類の敵“インバーダ”に対抗するために開発された決戦兵器。
ヒトのコドモとほぼ変わらない容姿・人格・精神を持つが、伝説上の生物・妖怪にちなんだ名と特殊能力、“怪物態”を持つ。
基本不老だが致命傷を負えば死にかねない。
軍事転用を防ぐために量産型ではなくワンオフであり、全ての個体がバイオテクノロジー大手企業の“DEM(デウスエクスマキナ/デム)社”によって開発される。
各都市圏に数体ずつ、中心都市の役所の“インバーダ対策課”に配備される。
基本的に“インバーダ対策課”の指示によってのみ出撃し、普段の行動も制限されていることが多い。
戦闘時は刀剣類や銃器などの武器を携行する。
適度な食事と睡眠、それと定期的な“メンテナンス”がなければベストコンディションを保てない。
各個体の意思で巨大な“怪物態”に変身することが可能。
しかし“怪物態”の恐ろしさやコドモのような人格を持つが故の不安定な精神などから暴走する危険があり、そういった面から彼らを恐れる人々も少なくはない。

・インバーダ Invader
異界からやって来る人類の敵。
人間大から高層ビルに匹敵する大きさまで様々なサイズのものが存在するが、総じて恐ろしい姿をしている。
種類によって違う方法で攻撃する。
知能があるかどうかはハッキリしていない。
比較的小さめな個体は通常兵器で対応可能だが、大型個体はモンストルムでなければ対処できない。

・インバーダ対策課 Invader Measuring Section
各都市圏におけるインバーダ対策の要。
各都市圏の中心都市の役所に設置される。
主な仕事はモンストルムの管理や出撃時の援護。
司令室や輸送用ビークル、ヘリコプター、各種武装を持っている。

設定は以上になります。
質問などあればレスください。

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視える世界を超えて 番外編:愛娘

「よォ、馬鹿息子」
高校からの帰り、校門を出た鎌鼬の背に、種枚から声がかけられた。
「ぐ……だからその呼び方やめてって……うわっ」
鎌鼬がそちらに目をやると、種枚が足の甲を街灯に引っかけ、逆さにぶら下がっていた。
「なァ鎌鼬、携帯電話持ってないか? 貸してくれ」
街灯から飛び降りながら、種枚が話しかける。
「スマホッスか? 別に良いですけど……師匠、持ってないんスか?」
「残念ながらなー」
鎌鼬から放られたスマートフォンを危なげなく受け取り、種枚は電話番号をプッシュし始めた。
「で、誰に電話するんです?」
「お前の姉」
「いや俺一人っ子…………あぁー……『娘』ッスか」
「そういうこと」
ニタリと鎌鼬に笑いかけ、通話が繋がったために種枚はすぐそちらに集中し始めた。

それから約10分に及び、種枚は電話口の相手と楽しそうに会話を交わし、満足げな表情で通話を切った。
「助かったよ鎌鼬。あの子、元気そうだった」
そう言いながら種枚が放り投げたスマートフォンを、鎌鼬は一瞬取り落としそうになりながらも、どうにか受け止めた。
「もっと丁寧に扱ってほしかったなぁ……あ、そういえば」
「ん?」
「俺の……姉弟子? って人は、どういう人なんです?」
「たしか今中2くらいだったっけかな?」
「俺より年下」
「あの子はねぇ、『河童』を喰った子だよ」
「かっぱ」
「ああ。お前なんかよりずっと上手く折り合ってる良い子だぜェ」
「子供どうしを比べて評価するもんじゃねッスよ」

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視える世界を超えて エピソード3:人怖 その④

「ちょ、ちょっと待ってください種枚さん⁉」
流石に命の危険を覚え、無理やり割って入る。
「ア?」
何故彼女が急に怒り出したのか、タイミング的にはおそらく『人怖』に関係してるんだろうけど、兎に角何としても彼女を宥めなければ、自分が死ぬ。
「良いですか種枚さん、自分は昔っから身を以て人間なんかより恐ろしい存在の、その恐ろしさを体験してきた人間ですよ⁉」
「………………それもそうか」
説得は成功したようで、種枚さんが瞬きをすると両眼は人間のそれに戻り、手も下ろしてくれた。
「悪かったね、突然ブチ切れたりして。どうにも地雷なんだ、『一番怖いのは人間』ってのが」
「そうなんですか……」
「それよりこの塀、どうしたもんか……」
種枚さんは塀に開けてしまった穴を見つめて思案している。よく見てみると、塀の破片は残らず凍結に巻き込まれ、思ったより目立った跡は残っていない。
「……このままでもバレなかったりしないかね?」
「流石にそれは無理があるんじゃないですかね……?」
それよりも何故凍っているのかということが気になる。
「……ん、この氷、気になる?」
「え、まあはい」
「私が熱くなりやすいタチってのは言ったっけ?」
「言われましたね」
「ほら、気持ちが昂ると熱くなるって話だったろ? 逆もまた然り、って奴さ」
「それで氷が張るレベルの低温になれるんです?」
「致死レベルの高温になれるんだから、この程度の低温になれても自然じゃない?」
「自然かなぁ……」

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視える世界を超えて エピソード3:人怖 その③

一瞬遅れて聞こえてくる破壊音。そちらに目を向けると、種枚さんの貫手が、自分の顔のほんの数㎜真横を通過し、背後のブロック塀に突き刺さっていた。
「……く、種枚さん?」
「なァ君」
「は、はい」
種枚さんが、表情だけは笑顔のまま話しかけてくる。
「霊感、欲しくないか?」
「え……」
ゆっくりと開かれた彼女の眼は、あの巨大な人影に遭った時と同じ、金色の虹彩と縦に切れ長の瞳、そしてあの時とは違って白目の部分が真っ黒に染まった、明らかな人外のそれだった。
「霊感、欲しいだろ? 奴らに対抗する力。何、ほんの一口怪異存在を喰うだけで良いのさ。喰ったものは身体を作る。多少人間を外れはするが、別に良いだろ? 今の君は人間だから私は手を出せないけど、ただの化け物に成り変わっちまえば、君を殺すのは私の義務だから仕方ないよね?」
ぐい、と目の前に顔を寄せ、何かを言い返す隙も無いペースでまくし立ててくる彼女の語調に、怒気と殺意が混ざっているのを感じる。
そういえば、背後からは何か冷気のようなものを感じる。ただの悪寒かと思ってそちらに目をやると、ブロック塀に突き刺さった彼女の手を起点に、薄く氷が張って少しずつその範囲も広がってきている。