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5

或秘密結社入口会話仲間不仲間見極合言葉(馬鹿長)

「こちらは創業何年になるんですか」
「今年でちょうど、三百年になります」
「ご主人は何代目ですか」
「初代です」
「iPhoneのパスワードは」
「3150、さいこお です」
「好きな音楽は」
「椎名林檎一択」
「本当に?」
「坂本慎太郎とチバユウスケ」
「きゅうり好きですか」
「アレルギーです」
「トマトは?」
「今ポケットの中に」
「今何時?」
「マクロファージ」
「ここはどこ?」
「南ブータン村」
「色即是空」
「不規則に食う」
「空即是色」
「食う得レシピ」
「一切合切全ては空」
「実際問題食えれば食う」
「…せーのっ」
「「お父さんいつもありがとう」」
「からの?」
「「アミノ酸+オリゴ糖」」
「海!」
「川!」
「齋藤!」
「飛鳥!」
「かわ!」
「いい!」
「写真集買った?」
「買いました!」
「どこで?」
「もちろん!」
「「Amazonで!」」
「…」
「…」
「スパイナンバーを言え」
「3928です」
「本当は?」
「7です」
「いいだろう。入れ」
「あの…ホントにこれって必要ですかね?」
「しょうがないよ。上の命令だもん。」
「ですよね。お疲れ様です」
「今度飲み行くか」
「良いですね。」
「…!」
ーーーーーーーーーバキュンーーーーーーーーー
「結構情報漏れてるな…。あと少しで入られるところだった。」
情報管理が大切な時代ですね。と、マダムは笑った。

3

Heterochromia of Iris [3]

 魂の抜けたような顔で、少女は遊園地の前に差し掛かった。依然としてうだるような暑さは変わらない。むしろアスファルトからの照り返しが余計に強くなった気がする。それでもエントランス前のピエロは涼しい顔で(まあ着ぐるみだからそれはそうなのだが)風船を配っている。
 近づくにつれて、ピエロの様子がわかってきた。悲しげな表情に派手な服装。だいぶんとくたびれ、みすぼらしい有り様ではあるが、少なくとも汚いだとかそういう風ではなかった。赤や緑、黄色などの風船をもって、入園するしないに関わらず、手当たり次第子供たちに配っている。
 風船を受け取った子供たちは、それはそれは嬉しそうに「ピエロさんありがとう!」なんて言っているから、少女の頬は知らぬ間に緩んでしまっていた。
 ────私も貰おうかな。
 普段は無論風船なんて興味ない少女であったが、なぜかこのときはそんなことを思ったりした。
 やはり足取りだけは魂の抜けたようで、フラフラとそのピエロに近づく。そんな少女にピエロも気づいたようで、こちらを向き、にっこりと微笑んだ────ように見えた。何しろ着ぐるみだから表情なんてわからない。ずっとその悲しげな表情は変わらないままだ。
 少女がピエロの目の前に立つと、ピエロは残り三つ持っていた風船のうちの一つ───赤色だった───を、今までと同じように少女に向かって差し出した。少女はそれを受けとると、やはり他の子供たちと同じように「ありがとう」と言おうとしたが、なんだか突然気恥ずかしくなってうつむき、なにも言わなかった。
 と、その時である。パアンと大きな音が頭上で鳴った。あまり大きかったので、周囲にいた人は驚いて皆少女の方を凄まじい勢いで振り返った。無論驚いたのは少女も同じである。
 目を大きく見開いた少女は、身じろぎひとつしなかった。そんな少女を訝しく思い、ピエロがそっとその顔を覗きこんだ。
 半ば放心状態の少女の目がピエロの目と合った瞬間、ついさっき割れた風船の音と同じ音が、右目の奥で鳴った気がした。



 そこからのことを、少女はあまり覚えていない。気がついたときには目の前でピエロがグッタリと横たわり、少女は左手に封筒型の紙袋をもってカプセルをコリコリと咀嚼していた。
 少女───霧崎あかねの右目の瞳は、真っ赤に染まっていた。

[完]

2

Heterochromia of Iris [2]

 病院を出る。暑い。さっきまで冷房のよく効いた室内にいたもんだから余計に暑い。むしろ病院を『出てきた』というより、でっかい電子レンジの中に『入ってきた』と言った方が正しいかもしれない。暑い。熱い。セミよ鳴くな。余計に気温が上がる。松岡修造はセミの血を引いているのかもしれない。さすがテラジュールの男だ。こんな暑い日にはアイスが食べたくなる。それもとろけるアイスクリームみたいなベトベトするようなヤツじゃなくて、後ろにでっかく「氷菓」って書いてあるヤツ。そう、例えばガリ○リ君とか。赤城乳業はすごいと思う。チャレンジ精神とか。いやもう社名言ったら伏せ字した意味なくなるよな。
 暑さを紛らわそうと、少女の頭は無理にフル回転して、その結果余計に暑くなる。早く家に帰りたいのに、家路を行く足取りは一歩ごとに重くゆっくりになっていく。
 駅までの道のりには、小さな遊園地があった。少女は往路の途中ひどく興味を惹かれ、寄り道していきたい欲に駆られながらも予約があるので素通りしたのだが、この暑さの中遊園地なんて見ても、何の好奇心も湧かない。むしろ嫌悪感さえ覚える。その要因の一つは、入り口でこれまた暑そうなピエロの着ぐるみを着て風船を配る、一人のスタッフだったりもした。

1

マリオネットガール

目を開けると薄暗い部屋の中にいた。窓の向こうには1つのマリオネット人形。ぼんやりと考える。
私、なんでこんなとこに…?
______________________
興味をそそられて入った場所はまるで異国の地、まさに異国。
アラビアンナイトに出てきそうな怪しくも美しい街だった。
活気にあふれる市場や、紫がかった色の空。
すっかり心を奪われてしまった。
子供達のはしゃぐ声。
おばさんが話す声。
どれも自分の知っているものとは違っていた。
深呼吸をする。乾いた空気が喉を撫でる。
この状況を不思議に思いながら、それでも受け入れる私がいる。
見上げた空が不意に陰った。
ぴかりと一筋の光が目の前を走る。
ざわざわと人が騒ぐ音。
燃えた1つの屋台。
肩で息をしながら走る。走る。
突然、視界が反転する。
痛い、いたい、いた…い。…痛くない…。
目を閉じる。
「雷にうたれたんだな、可哀想に」
なぜか一言だけ聞こえる。
体が動かない。
まるで人形みたいな私の体…。
______________________
目の前にあるのは窓ではなかった。
鏡、だった。
映された自分の姿。
青と黄色の瞳、オッドアイ。
誰かに持ち上げてもらわないと決して動かない体。
「出番だよ」
ぎしりと体が音を立てた。



少女はそこで目を覚ました。

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