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メイド喫茶 前編

 刑務所の受刑者の男性を対象に採血を行い、テストステロンレベルを調べたら、凶悪犯罪者ほどテストステロンレベルが高かったそうだ。女性受刑者も同様の結果が出たらしい。凶悪犯罪者でなくても犯罪者は平均よりテストステロンレベルが高いそうである。
 はて、テストステロンレベルが高いのはみんな犯罪者なのか。
 もちろんそんなことはない。
 悪に強きは善にも強いと言う。
 社会的な地位の高い男性の血中テストステロンレベルが高いというのはよく知られている。
 社会的地位が高くなることでそれにともないさらに自信がつき、テストステロンレベルが上がるという説もあるが、それなら犯罪者だって組織内での地位が上がることでテストステロンレベルも上がるはずだからこうした説は余談とする。
 男性脳、女性脳という考えかたが世間に広まってずいぶん経つ。
 脳のつくりが男性的であるか女性的であるかは胎児期のテストステロン暴露量によって決まるとされる。清楚な女性も加齢にともない男性化することはよく知られており、後天的なテストステロンにさらされることでも脳の男性化は胎児期ほどではないが進むと考えられるが、脳の構造を大きく変えてしまうほどではないだろうからこれも余談とする。
 とりあえず間を飛ばして結論を出してしまおう。
 高い濃度のテストステロンが先天的女性脳もしくは先天的中性脳、つまり男性と女性の中間の脳、に影響し、暴力傾向につながるのではないかとわたしは考える。身体と心のアンバランスが犯罪を引き起こすのだ。男性脳にテストステロンが作用すればプラスになるが、女性脳、中性脳にテストステロンが作用するとマイナスになる。
 ギャルなどの社会現象も心身のアンバランス由来のものではないか。
 テストステロンレベルが高くなるのはなぜか。高カロリーの食生活のせいだ。食生活の欧米化によって栄養過多となり、テストステロンの合成が過剰になっているからである。女性の男性化が顕著になったのは食卓の様子が変化した第二次ベビーブーマーあたりからだ。食が人を作る。
 さて、わたしはいま、目の前のギャルを採用しようかどうか迷っている。
「秋葉原はよく来ます?」
「来ません」

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蜘蛛の糸

カンダタが糸登りに疲れて、少し休憩と下を見ますと、何と他の亡者達もどんどん登ってきているのでした。あれだけの量の亡者、一人でも切れてしまいそうな細い糸に、どうして耐えることができましょうか。
「こら罪人ども!この蜘蛛の糸は……」
しかしここでカンダタ、言葉を止め考えました。もしも自分が今やろうとしていたように下手に騒いだりすれば、その振動で糸が切れてしまうかもしれない。幸いにもまだ糸は切れていない。では今必要なのは糸への錘を減らす事ではなく。
「おいお前ら!急げ!急いで登って来るんだ!しかし決して下手に糸を揺らすんじゃあないぞ!一人ずつ!一人ずつだ!隙間を作らず慎重に俺のところまで登って来い!」
亡者達がその通りカンダタのところまで隙間を作らずにカンダタの足のすぐ下のところまで登ってきますと、亡者の身体が梯子のような役割を果たし、カンダタの思惑通り糸への負担が軽減したのでした。
(へっへっへ、俺の思った通りだ。今必要なのは『負担の軽減』ではなく『糸の補強』!これで下の奴を踏みながら登っていけば、糸はきっと切れないだろう。極楽浄土へ行くのもいよいよ夢じゃねえな!)
そしてとうとうカンダタの手が、極楽浄土に届きました。そして全身を引き上げると。
「よくやった亡者ども!お前らのお陰で『俺だけは』極楽浄土に辿り着けたぜ!じゃ、お前らはこれからも永遠に地獄で苦しみな!」
そう言って糸を引きちぎってしまいました。
「ハッハッハッハ!こりゃあ良い!こいつぁあ傑作だな!あの阿呆共め、見事に騙されやがって。さあて、極楽巡りでもするか……ん?」
ふと気付くと、彼の身体に何かが覆い被さってその影で周りが暗くなっていたようです。
「ん?一体何だぁ?これは……え」
振り返るとそこには。
「う、うわあ!何だ、何なんだお前!嫌だ、や、止めろ、来るな、来るなぁ、うわあああああ!」
結局彼も地獄へ逆戻り。そこからは皆さんご存知の通り。
極楽ももうお午近くなったのでございましょう。

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