魔法譚 ~エンドレスライフ、エンドレスジャーニィ Ⅲ
「…そうかい? でもこの歳になっても魔法使いとして生きられるなんてすごいと思うよ? だって…」
「…ほとんどの魔法使いは、大人になる前に死んでしまうから」
大賢者が先に言う前に私が答えると、…そうね、と少し悲しげに答えた。
「みんな、幸せになるために魔法使いになったのに、みんな、悲劇の死を遂げてしまう…」
大賢者は悲しそうにうつむいた。
「そんな風に悲しむのなら、魔法使いなんて生み出さなきゃいいのに」
どうして生み出し続けるのよ、と私は言った。
それを聞いた大賢者は、私の目を見つめながら答えた。
「…だって、この世で魔法を使えるのが、わたし1人だけじゃ寂しいじゃないか…」
もちろん、魔法を持たないキミ達に魔法を与えて、どんなことをするのか眺めて楽しむってのもあるけど、と彼女は付け足す。
「…わがままね」
私は少しだけため息をついた。
「…でも、どんな願いもわがままと変わらないじゃないか」
「私のはちょっと違うと思いますけど」
大賢者のツッコミに、わたしはさらっと反論した。
「…オカルトなんて、基本信じてなかったから。だからあの時は、適当に『空を飛びたい』と願ったのよ」
私は彼女から目をそらしながら呟いた。
「…まぁ、いいわ」
そう言って、大賢者はふわりと飛翔した。
「わたしはこれからも、誰かのわがままを、自分のわがままを、叶えるために世界を巡るわ」
あなたも頑張るのよ、そう笑って、大賢者は夜空へと消えていった。