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復讐代行〜第20話 転調〜

俺にはなんだか不気味でならなかった。
あの日、青路が一日だけ休んで復帰した日
えも知れぬ違和感をまとった彼の姿、そして彼の胸ぐらを掴むクラスの女子、喪黒闇子。
全てが自分の理解を越えた世界であることだけが突きつけられた。心は…震えていた。
とにかく止めないと!
体が自然と動き出す。
「まぁまぁ、その辺にしておいてやれよ」
この一言で健太郎が止まるのは予想通りだ。
不安なのは青路と喪黒さんが止まるかどうかだけど…
「蓮もこういってるんだからさ…」
青路が健太郎を制した。その光景が信じられなかった。
別に制したことに驚いてる訳じゃない。その時の青路の表情が何かを企んでいるように見えたことが驚きなのだ。彼が何かを企んでいるのは初めてだったし、それまでその予兆ひとつ見たことがない。
何より、それは喪黒さんに向けられている。
その昼、嫌な予想の一端が当たった。
『青路が屋上で喪黒さんに何かをした』
その何かは分からないが彼女がボロボロで遅れて登場したことを目の当たりにした時は動揺した。
こういう時の健太郎は本当にさすがだ。
すぐに教室を出て、悪口もスラスラ出てくる…
止まらなさそうなので区切る、これが結局いつもの僕の役目だ。とはいえ気まずさを区切ることはできない。仕方なく青路に話を振る。あわよくば青路の違和感の正体に迫れればと思ったが。
青路が何かを隠すように言った(おそらく)悪口に、喪黒さんが泣き出すという展開になってしまった。
“んー…収集がつかん…”
そう思った頃には口が動いていた。
「今度何か奢ってやるよ」
これでひとまず場が落ち着いてホッとした。
教室に戻ってからずっとこの違和感の正体について考えていた。しかし現実的な答えは出なかった。
“できれば…もう少し調べられるといいんだけど…”
そう思っていた目の前で女子のヒステリーが彼女を襲っている。
“チャンスだ、仮説を試してみよう”
そこからは早かった。
ヒステリック女子を健太郎が追い返し、4人でカフェに行く流れになるも、闇子ちゃんの拒否で中止に、代わりに連絡先を交換することができた。
“もし…いやおそらくこの仮説しかない…”
交換した喪黒闇子の連絡先にメールをする。
『なぁ青路、お前は今何を企んでいる?』
これ以上このクラスを乱す真似はさせない

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復讐代行〜第19話 帰宅〜

断り方が分からず、連絡先をの交換を丸め込まれてしまった。これで先の件を早急に解決する理由を失った橘達は時間を置くことを提案してきた。
クラスでの不協和音を思えば正しい判断だ。
“俺”は抵抗しようとしたが、さすがに言い出せなかった様子だ。
2人に送られる形で帰路についた。
闇子の家に着くなり、俺は体を布団に投げ出した。
昨日見た母親はいなかった。
未だ慣れないサテン生地でフリルだらけのベット
落ち着かない…
赤黒く統一された禍々しい部屋は昨日見たよりも闇子の心の闇を感じさせた。
このベットで寝る気にもなれないが、スマホを見るのも余計なことを考えそうで避けた。
いつ彼からメールが来るか、正直怖いのだ。
メールの何がまずいって、客観的に自分が闇子であることを意識できないことだ。
もっと詳しく言えばメール上の「闇子らしさ」を俺は知らないからボロが出かねない…
いや、この部屋のイメージに沿えば「闇子らしさ」は出るのかもしれないが…
「しかし…」
世に言う地雷系というものなのか、ゴスロリなのか、細かい定義が分からないがこのインテリアを見ているだけで闇子の闇に心を喰われそうだ…
肌に擦れるサテンの違和感だけが自分が闇子じゃないと証明してくれた。

しかしなぜ…?“俺”は初日にしてこんな鬼門を選んだのだろうか、いや、理屈では理解できるが…
理解できる故に、信じたくなかった。
最も恐れていた、そして最も有り得ないと高を括っていたこと…

『闇子を餌に「崩壊」という結果を得る』
その切り札を切られたとしたら…それは同時に体を取り返す手段が無くなったことを意味する。
「ハナから闇子はこの体の精算も果たすつもりだったんだろうな」
そう思うとなぜかサテンのベットで寝るのも悪くは感じなかった。

寝てどれくらい時間が経っただろうか…
思えばこの体になってからきちんと休まることはなかったっけ…
そう思いながら癖でスマホを探した。
スマホの画面は19:28分を示していた。
思ったほど時間が経っていないことにはさほど驚かない。
何せ、通知画面のメールの方が驚きだからだ。
「なぁ青路、お前は今何を企んでる?」

to be continued…

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禁断の契約

私は悪魔、
と言っても今の姿は人間だ
契約で人間から奪った半分の寿命を使って擬態している
別に悪魔の姿でもいいのだが
それでまかり通るほど現代の人間界は優しくない
悪魔の姿じゃセキュリティを越えられないのだ

「ただいま」
「おかえり」

家主は人間、
言わば私の契約者だ
契約のせいでもあるが、家主の命はせいぜいあと数日といったところだろう。
なのに家主はやけに元気だ
「だって悪魔と一緒の家だよ?もうあの世と変わらないようなもんだよ」
縁起でもないことだって言う。
でもそれが痩せ我慢なのはとっくにわかっている
だから付き合うのだ。
家主が最後まで笑顔でいることが私の幸せだから。
でもその幸せも長くはないのが悪魔という宿命…

家主にその時が来たのだ

私は急いで駆け寄った。
もう起き上がることもできないのに家主は笑顔を見せた。
「よかった、ちゃんと契約守ってくれたね」
「こんな時に何言って…」
家主の表情が安心したような笑顔に変わり、そして家主の元から私は消えた。

「私が死ぬまで一緒にいてって契約はあり?」
なぜ君と出会った時のことを思い出したんだろう
どうして悪魔は寿命を奪うことしかできないのか…与えることができないのか…永遠なんていらないから…少しでも一緒に…生きて…

悪魔は初めて恋をした。
それは契約の終了を意味していた。