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第一部のあとがきみたいな追記みたいなもん

 みなさんこんにちは! もし今回の小説をここまで読んでくださった方がいたなら、こんなに長いのにどうもありがとうございました。とっても重くて湿っぽかったのに、本当にお疲れ様でした。

 今回は自分の今ハマっている要素を詰め込んだ結果になります。おおよそ書き終わったのが1カ月とか2カ月前なので、読み返してみると、甘々すぎて胃もたれ起こすような部分もあり、当時の自分の精神状態が心配になるところもあり、という感じでたくさんびっくりしました。
 特に、戦闘後のギスギス(どころの話じゃないデートDV)シーンは、このシーン書きたいがために戦闘シーン入れたというレベルで書きたい部分でしたが、読み返すとアッドが擁護できないくらい酷いし、ファナがあまりに可哀想だし、そもそも反映されるかどうかわからなかったので自主規制してあんな感じになりました。本当はアッドくんがファナちゃんの手にトバルカインを思いっきりぶっ刺して地面に固定されたファナちゃんがばたばたする、というシーンでした。

 他のシーンで追記すると、謎に始まった最後のカウンセリングは、2人がちょっとマトモに見えるように書いた部分なのでとっても不自然でしたね。あとは、私がオリジナルながらファナちゃん好きすぎてその可哀想な思考回路をお見せしたかったというのと、アッド君が今のところただのクズヤロウになってたのでちょっと擁護してあげたかったという意味もあります。私は2人とも大好きです。好きじゃないキャラなんか作りようがありません。

 第二部に関してですが、第一部だけでも話はひと段落しているし、第二部は予定では多少社会派になってしまって余計読んでもらう意識が薄いものになってしまうので、ここまででも十分かなとも思っています。ただ、いろいろと伏線を張ったり、そもそも「彼らが処分されるまでの物語」なのに処分されてないという問題も残ったりなのでぷんやりと書き続けようとは思います。

 書き溜めが尽きているのと、ナニガシさんの企画のも書きたいのでいったんここで区切りという感じになります。

 この度は早く更新したいがために多少雑な仕上がりになってしまったことは、申し訳なく思っています。でも、すてきな企画を用意してくださったテトモンさん、本当にありがとうございました!

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第一部【FANATICALとADDICTED】p.21

 閑話休題、職員に水を差された若い二人は、明らかに不満げな顔をした。ファナはそのあと、アッドの首にとりついて、片方の手で切断された腕の断面を撫でて、艶笑する。

「分かったわ、ファナがやってあげる。いいでしょ?」

 許可を求める目は愛する少年の目の奥をのぞき込む。本来職員の方に許可を取らないといけないのにも関わらず、だ。

「そうだなあ、一番俺のことよく分かってんのはファナだもんなあ」

 アッドも、彼女の制御を買って出ているなら、勝手なことを言い出すべきではないが……聡明でいい子のアッド君はいったいどこに行ってしまったのだろうか。

「ちょっとなんでそうなるのよ!」案の定職員も制止しようとするが、一度決めると2人とも止められない。

「ちょ、待ちなさいって!」
「手術寝台借りるわよ」
「すいません、すぐなんで入ってこないでくださいね」
 職員の命令も愛の前では無力であるようだ、2人はさっさと手術室に入っていった。
「……なーにが『すぐなんで』よ」

 職員は呆れて独りごちる。

 ……純粋に愛し合う2人は本当に微笑ましい。その幼く、同時に成熟した、否、熟れきって腐りかけた愛が、彼らを、ラボとこの世に繋ぎとめる数少ない手段であるのだと思うと、それが果たして純粋であるかは疑わざるを得ないが、最終的にはどうでもいいことだ。どんなに互いが傷つき、地獄の底でもがき苦しんでいたとしても、かわいそうに、とは思っても、大した問題ではない。

 それがリニアーワルツの背負わされた無常さと、世の中の冷酷さなのだった。


【第一部 終】

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第一部【FANATICALとADDICTED】p.20

「あなたたち、今回ちょっと大きい怪我しちゃったわけだし、他のペアたちもいる部隊で戦わない? 今回も本来分隊で相手する規模だったわけだし……」
「絶対やだ!」「絶対嫌です」

 2人の声がそろって、職員はつい失笑した。

「他のヤツは目障りです。邪魔」
「ファナが『間違えて』そいつらのこと殺してもいいなら勝手にして」

 アッドはつまらなそうな態度で肘をつき、ファナも何か追い払うように手を払いながら言う。反応が本当にそっくりだ。

「……なんか、もう、ほんと仲良しね……」

 職員が呆れて零すと、ファナが一気に喜色満面になり、饒舌になった。

「そうよ、世界一ね! ファナにはアディくんだけいればいいの。アディくんもファナだけいればそれでいい。ね、そうでしょアディく……あ」

 ファナは途中で言うのをやめて、また俯いてしまった。アッドはその様子に気まずそうに首の後ろを掻く。

「あー、えっと、そう。そうだよ。ファナ」

 優しい口調に、ファナの目に盲目的な輝きが戻った。

「アディくん……!」
「わっ!」

 途端、ファナはアッドの胸に飛び込んだ。背もたれもない椅子に座っていたわけだから、隻腕のアッドが彼女の身体を支えられるわけもなく、バランスを崩して床に倒れた。

「ちょっとファナ、気をつけなさいよ」
「やっぱりファナの大好きなアディくんね!」
「あっはは、俺の可愛いファナ、俺も愛してるよ。……さっきはひどいことしてごめんな?」
「いいのよ、怒ってるアディくんもかっこいいわ」
「俺も泣いてるファナも可愛くて好きだけど、こうやって幸せそうにしてるファナはもっと好きだよ」
「……お二人さん、それ、腕治してから『部屋で』やってくれる?」

 職員は見てられないとばかりに額に手をやって眼を逸らした。

 正直この2人は放置して次の仕事に移りたかったが……そんなことをしたら一晩医務室を貸し切りにしなくてはいけなくなるだろうから、ムードをぶち壊してやるしかなかった。
 床に押し倒される少年とそこに跨る少女が、キスでもするのかという距離で見つめあうという状況は罷り通っていいものではない。だから一話冒頭でも邪魔が入ったのだ。これは世の摂理である。

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第一部【FANATICALとADDICTED】p.19

「……ファナ、自分に価値ないとか言ってるけど、それこそ俺だって、ファナには必要ない存在ですよ。ファナにはチヤホヤしてくれる奴がたくさんいる。俺なんかよりいい相手がいくらでもいる」
「ファナはアッドから離れたくて出てってるわけじゃない。むしろ逆だって分かってるでしょ?」

 アッドは頭をこくっと前に倒すが、すぐに震えた声で続ける。

「今は冗談めかしてますけど、いつか本当に俺に愛想つかすんじゃねえかって、いつも不安で、余計頭ぐちゃぐちゃになって、冷静になれなくて、で、結局暴力振るって……」

 職員はその独白を聞き、軽く溜息を吐く。

「言うまでもないことだけど、暴力も暴言も絶対に駄目よ。あなた、ちょっと前にファナのことディソーダーのサンプル保管用の冷凍庫にファナを監禁して殺しかけたことあったでしょ」
「……」
「2人の間だけで完結するならいいけど、あなたたちには戦うって役目があるのよ。しかもカナンの主戦力なの。それが1週間2週間と使い物にならないのは本当に困るの。ファナはそういうのに思い至らないかもしれないけど、アッドは賢いんだから、分かるでしょ?」
「……はい」
「あなたの加害癖は治るようなものじゃない。ファナの依存もなくならない。でも離れることもできないの」
「……そう、すよね」
「あなたは賢くて優しい子だから、ファナにとって一番いい選択ができるはずよ」
「優しい奴は女殴りませんけどね」
「性格と性質は別だから。さ、全部終わったから、服を着て、あっちに戻りましょう。あんまりのんびりしてると、あの子が拗ねちゃうから」

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第一部【FANATICALとADDICTED】p.18

「聞こえてたでしょ」

 アッドは無言で力なく首を縦に振った。主な外傷を視診し、腕の具合を診る。

 傷口は内側だけ体液にコールタールのような粘性の高い液体が混ざって蠢いている。その粘液はディソーダーの体液に酷似している。大きな傷の出血を止め、組織の再生を速めているものこそがこの粘液である。
 一方ケロイド部は溶け固まってしまってなかなか再生が始まらないようだった。赤茶色の断面から黄色っぽい半透明の液体が滲み出ているだけであった。なお、四肢の欠損となると、完全な再生を待つより、すでに再生が始まってしまった部分やそれを阻害している部分を取り除いて、元の腕の接着を待つ方が早い。

 傷の様子をカルテに書き込んでいると、アッドが独り言のようにぼそぼそと話し出した。

「……なんでファナは、あんなに俺のこと好いてくれるんですかね」
「そんなのあなたが一番分かってるんじゃないの」
「分かんねっすよ。俺はすぐファナに怒鳴るし、手ェ上げるし」
「ファナがそれを狙っていろいろやってるんでしょ」
「でも俺は、ファナに怖い思いさせたくない。ファナ、俺が殴ると、すごい嬉しそうな顔するんすよね。でも、同じくらい怯えた顔する。その、嫌がってんのに無理やり俺のこと受け入れようとしてるんだって、なんか無性に腹立って、余計に止まらなくなる」

 アッドは拳を強く握りしめた。

 ――ファナに腹が立つのではない。ファナが受け入れてくれることにあぐらを掻いて、彼女が深層心理で最も恐れていることを繰り返し、洗脳してしまっているのを理解しているのにやめられない自分に腹が立って仕方ないのだ。自分に対する怒りを外部に向けてしまうことに腹が立って仕方ないのだ。

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第一部【FANATICALとADDICTED】p.17

 初めこそ驚いたものの、今は何でもないことだ。
 職員は他のリニアーワルツ同様診察する。
 その最中、いつも如何に自分とアッドの仲がいいかを語る役割しかない口から、不安そうな音色が漏れた。

「……ファナ、アディくんに嫌な思いさせたくないの。アディくん怒るとき、なんか泣きそうな顔する」
「ファナ、ちゃんと分かってるじゃないの」
「でもいっつもひどいこと言っちゃうし、アディくんがやめてって言うことばっかりしちゃう」
「どうして?」
「構ってほしい……ううん、ずっとファナのこと考えててほしいの。アディくんは優秀で、ちゃんとしてて、ラボの人たちもアディくんのことは気に入ってる。それにアディくんはファナがいなくたって平気なの」
「なんでそう思うのよ」
「あんた、アディくんがいつも何してるか知ってる? 本読んでんのよ。毎日何冊も。ファナは本読まないから話合わないし、アディくんは1人でも平気」
「アッドは1人じゃ戦えないわ」
「ほら。そういうことよ。ファナは、持ってるジェミニにしか価値ない、から、アディくんがそれに気づかないように、どんな気持ちもファナにだけ向けててくれるように、嫉妬させたり怒らせたり困らせたりするの」
「ファナはそういう負の感情を向けられたいの?」
「そんなわけないわ! ……でも、ファナのために感情が動くなら、もう何でもいい。ファナはバカで性格悪くて戦闘も弱いから、アディくんのこと喜ばせられないもん。ただ、ファナのことどうでもよくなって、アディくんがどっか行っちゃうのが怖い」
「本当に健気な子ね」
「どう見たらこんな汚れた女が健気に見えるのよ」
「まあ、自分でそう思えるようになるのは難しいわよね。……全部診終わったから服着ていいわよ」

 ファナはまた黙ってしまった。
 職員がアッドの検診のために立ち上がって、隣の診察室のカーテンに手をかけたとき、振り返らないままでファナに言った。

「そういうの、アッドには言ってるの?」
「……」
「折角いつも一緒にいるんだから、ちゃんと自分の気持ちは言いなさい。愛する人とは、本音で語り合うものよ」

 ファナは黙ったままだった。

 診察室に入ると、アッドがうなだれていた。

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第一部【FANATICALとADDICTED】p.16

 初めてその傷を目にした際、もちろん職員は戸惑って尋ねた。

「ちょ、ちょっと、この傷何なの? 治ってないし……新しいものではなさそうだけど」
「んえ? あーこれ? 分かんなぁい」
「分かんないってどういうことよ」
「どーもこーも、気づいたときにはあったのよ」
「そんないい加減な……」
「確かに見た目は悪いけど、でもこの傷ね、アディくんとお揃いなの!」

 ファナは嬉々として語った。確かにファナの後に検診したところ、アッドのチョーカーの下にも同じ傷があった。だからといってリニアーワルツ全員が持つものでもない。むしろ他にこのような例は見たことがない。職員はこの事実を知ったとき、酷い悪寒がした。何かしらの彼女らの意思が働いているのかもしれなかった。

 しかし彼女らは兵器としては善戦してくれているわけだから、どうでもいいところである。職員はとりあえずは当り障りのない、検診の一環としての質問に徹する。

「随分深いようだけど、痛くないの?」
「全然。でもここね、触るとくすぐったくてね、だからアディくん寝るとき」
「はいはい無駄話はおしまい。アッドの方行ってくるから大人しく待ってなさいね」
「えー、もっとアディくんとのノロケ話聞いてほしかったのにぃー」
「こらファナ! あんまり職員の人困らせちゃだめだろ」
「はぁーい」

 その際管理部に訊きに行ったことがあったが、管理部すら知らない情報だったので、恐らくは機密情報にあたるのだろう、性能に問題はなさそうなので、それ以上追及することはなかった。

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第一部【FANATICALとADDICTED】p.15

 職員ははっと息を吐いた。

「話す気になったら話しなさい。とりあえず順番に損傷の記録をしないといけないから、アッドはあっちの診察室で待ってなさい。腕は……」

 ファナは腕を離す気はなさそうである。「まあいいわ」職員は諦めて、アッドに移動するよう促した。アッドは軽く会釈をして、黙って立ち上がった。去り際、ファナの頭を、怯えるような手つきで撫でて、目線を合わせないようにすぐ踵を返した。ファナは抵抗しなかった。

 アッドが去った後、職員はカルテを用意しながら「仲良しね」と微笑んだ。

「……べつに。アディくんのこと怒らせちゃったもん」
「アッドは頭に血が上りやすいだけよ。少なくとも今は怒ってないでしょ」
「きっともう嫌いになっちゃったわ」
「バカ言わないで。嫌いな人の頭撫でないじゃない」
「でもファナは嫌いなヤツとでも遊び行くわよ」
「それはお金貰ってるからでしょ」
「でも……ファナのせいでアディくん痛い思いさせちゃった」
「お互い様なんじゃないの」
「アディくんは痛いの好きじゃないもん」
「ファナは好きなの?」
「嫌い。でもアディくんはファナへの想いが強すぎて手ぇ上げちゃうだけなの。だからアディくんのは好き」
「……そう」

 ファナの話を聞きながら、身体に傷がないか視診触診する。
 会話が途切れたところでアッドの腕を置いて服を脱ぐように促し、ファナはいつもの診察の流れに沿ってそれに従う。

「これは?」
「それも」

 職員の言うようにチョーカーを外すと、隠れていた傷が露になった。

 首筋――耳の下あたりに、抉れた部分がある。リニアーワルツには高い回復能力がある。戦闘時の通り擦過傷程度なら数分もしないで跡すらなくなる。抉れたくらいの傷なら基地に帰ってくる頃には殆ど完治する。その中で戦闘中にできたものではない傷がある。
 医師免許を持つ医務室の職員はその傷が何によるものなのかはすぐに分かったが、経緯は一向に分からない。

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第一部【FANATICALとADDICTED】p.14

三話 医務室にて

 ファナは腕を抱えていた。頭とかではなく、腕。比喩ではなく、まさに腕そのものを。筋肉質な男の腕で、二の腕の切り口部分が部分的に焼けただれてケロイド状に固まっているが、一部分は無造作に引きちぎられたようで、血が滲み出ている。よく見てみると細い血管が張り巡らされているのが見えた。

 そして、ファナは非常に居心地の悪そうな顔で下を向いて、椅子にちんまりと座っている。隣には腕の本来の持ち主、左腕が袖ごとなくなってしまっているアッド。こちらもまた居づらそうな表情。先ほどの癇癪と比べるとしおらしい態度だ。

 医務室の職員は、喧嘩の仲裁を受けている小学生のような彼らを交互に見て鼻で笑う。まさに小さな子供の相手をしているときのような目だ。

「……あんたたち、次はどうしたの。また痴話喧嘩?」
「……」「……」

 二人は黙りこくっている。ファナは腕を抱きしめる力を強めた。切り口から少し血が滲んだ。

「なんかやましいことでもあるの?」
「別にない、すけど」

 アッドが口の中で呟く。先ほどの出来事はアッドの中では『やましいこと』に入らないらしい。

 相変わらずファナの方も職員の方も見ないで、ファナが座っている方の逆側にあるキャスターの上の消毒液の蓋辺りに視線を固定していた。

「喧嘩?」
「喧嘩じゃないわ」

 ファナがすぐさま訂正した。ところであれを喧嘩と言わないなら、殺し合いでもしない限り喧嘩にカウントされないのではないだろうか。喧嘩ではないと言いつつも、こちらも誰とも目を合わせないで、隣の壁の掲示物の画鋲を惰性で見つめている。
 確かに、ファナがアッドの腕を大事そうに抱きしめて、顔や服が汚れるのも気にしないで頬にぴったりとくっつけている様子を見ると、二人の仲に亀裂が入ったわけではなさそうだった。実際これまでに、戦闘後にこのようにして医務室を訪れることは何度かあったが、彼らの歪んだ愛情が、一時のトラブルか何かで変質することはあり得ないのだ。