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ファースト・テンプレート 3

『おぉ済まんな中木』
「いいぇ、なにかあったんですか?」
迂回路はかなり正解だった、30分ほどで会社に戻れた。あとでこのSUVを洗車にでも連れてってやろうと思った。
会社に着くなり、私は会議室に来るよう言われ、数時間前のデジャヴのような感じがした。
本来私がいるべき場所ではない。私の地位は社内では上の方とは言え、次長。この社内で会社の重要なことを決める『本会議場』にいるはずがないのだ。
パンっ!
副社長の来栖が一つ手を叩く。
『今回、社長、専務、営業管理部長の三名をのぞいたみなさんに集まっていただきました。結論から言いますと、先の三名は来週書類送検される予定です。』
あまりに急すぎる、会議室がざわめき出した。
『緊急で先ほどここのメンバーでのグループLINEを作りました、そこに音声ファイルが共有されているはずです。』慌てて他の役員がスマホを取り出す。取り乱しているのだろう、普通は会議が終わった後に確認するはずだ。
ん?
なんだろうか、来栖が私に視線を送った。冷静だと思っていた自分が冷や汗をかいていたことには、そこで初めて気がついた。
走馬灯のようにめぐる思考。払い切れていないローンに、会社の規模からに起こる明らかなイメージ低下、それによる減給。転職か?それしかないだろ。どこに転職か?妻にはなんと言えば良い?
とりあえず、この会議、嫌な予感がする。私の転職を許さない何か、また、これからの現実を押し付けられら何か。

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ファースト・テンプレート

腕時計は時計は10:30を指していた。
『朝は涼しかったのに、急に暑いですね。』
私は、銀座の取引先の会社の最寄りの駐車場にSUVを停め、久々のダッシュで来た。
ブレザーを脱いで鞄に仕舞うと、取引相手の部下らしき人が、ペットボトルのお茶を置いた。
「もう、ほんと参っちゃいますよ。」
それっぽく私は、口角を上げた。
『失礼します。』1つ会釈をして部屋を出た。

「あ、どうも!すみませんお待たせして。」
私は取引相手が入室し慌てて立ち上がり会釈をした。
『あぁいいよそんな、まぁ疲れたでしょ。エアコン付けるよ。』
「あぁ…」反応に困る。
「すみませんほんと。」
この手、相手のご厚意に甘えたいところだが、私は素直に育てられたゆえ、これからの罪悪感に耐性がない。

『あぁ、いいじゃん、こっちでも考えておくよ。』
「あぁ、ホントですか?!ありがとうございます。」
契約は順調。と、いったところだろうか。私は午前の仕事を終え、近くのコンビニに向かった。
交差点、信号をを待っていると、突然電話がかかってきた。
『あ、もしもし中木君?』
「はい、何かありましたか?」
『あ、いや急ぎでこっち戻ってきてほしい、まじで緊急。』
何があったかはよくわからないが、とりあえず私はSUVを走らせ、迂回路を通り会社に向かった。

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ファースト・テンプレート

夏は早く長く、アブラゼミはしぶとく生きている。おそらく蝉の寿命が一週間だなんて嘘だと思う。猛暑、猛暑、猛暑…。三寒四温からの真冬日からの春後半、初夏の気温は当たり前だ。まるで今が夏みたいな言いぶりだが間違えない春だ。今言ったのは忘れてほしい、去年の話だ。

変な気温は、頭でわかっていても体は追いつかないみたいだ。
「あれ、沢本は?」
「風引いたって、なんかあれだよ、寒暖差アレルギーか。」
ふーん。
現代人は働き過ぎだ。
「あ、じゃぁ銀座の方まで行ってきます。」
おぅ、と一言言われ、資料だけ取ってすぐさま私は駐車場に戻った。初任給と貯めてきたバイト代で5年前に買ったSUV。ラジオは今日の渋滞情報を流す。
午前8:25分

ー海老名IC付近を先頭に上りに10kmの渋滞………ー
今日は三連休の月曜日。皆は帰宅ラッシュとやら私とは無縁の物にまんまとはまっている。

「まじか…」
一部が高速から時間短縮のために一般道に流れたらしい、少し混んでいる。
……………
完全に止まってしまった。私は今日の契約先と、会社に事態を知らせ1時間ほどの遅れを許してくれた。なんと心の広い。
周りをチラチラしていると車窓の向こうの車窓の向こうから手を振る人がいた
「あ、!さか…」気づいて窓を開ける
「酒井さんじゃないですか!」
『久しぶりだね』
学生時代のバイト先の店長である。
「混んでますねぇ。」一拍置いて酒井は懐から一本のタバコを取り出す『まぁ仕方ないよ。』足を組んで答えた。「酒井店長、タバコ変えたんですね。」ようやくこっちを見た。『あぁまぁ、あんまりうまくないけど、ニコチンとか少ないヤツにしてね、まぁいつかは、タバコを辞めたいな。こんな調子じゃ無理そうだけどな笑。』私は愛想笑いをする。
車が流れ出し、私は会釈をして窓を閉じようとした。
『あ!中木!』
「なんですか?。」すっと酒井は私を指さした。『今を生きろよ、じゃ元気にやれよ。』
「酒井さんこそお元気で。」
こんどこそ窓を閉め、アクセルを踏んだ。