LOST MEMORIES ⅡCⅤⅩⅡ
目の前にミルクティーが置かれる。
「ありがとうございます……。」
テーブルを挟み、向かいの椅子に座った英人は、しかめっ面で深いため息を落とす。
「連れてきたのは僕だが、もう少し危機感を持つべきだな。
僕だって男だ。」
赤くなった目の瑛瑠は、萎れてはいるけれど、言葉のキャッチボールをする気はあるようで。
「さすがに中にまでお邪魔する気はありませんでした。
……でも、ジュリアさんに呼ばれたら断れません。」
瑛瑠の向かい、英人の隣に座るこのジュリアさんというのが、英人の付き人であり、今回のことの発端。
「改めて紹介するが、彼女が僕の付き人のジュリア。
そして、昨日僕を買い物に付き合わせた張本人。」
つまり、昨日英人と一緒にいた女の子。
そもそも、彼に1番近い女性を想像するべきであったのだが、勘違いの1番の要因は、女の子と形容したくなるような彼女の容姿。彼女は背が低く、学生と言われても通るほどのベビーフェイスだったのだ。
「これで、言っている意味がわかったか?
彼女と瑛瑠では大切の度合いははかれないし、送ることで勘違いするような相手でもない。」
つまり、瑛瑠は盛大な勘違いをしていたということ。