Modern ARTists:威霊遣彩能媛 その⑧
半人半蛇の怪異“清姫”の『速度』は、尾の末端を『起点』とする。そこから関節の一つ一つを通り抜ける毎に増強され、人身の脊椎を通過して更に威力は増大する。最終的に合計10m近くの全身が完全に伸長し、『速度』と『威力』を最大限に乗せた突進は、召喚時の『クリティカル』による出力強化が合わさることで、最高速度は音速の5倍超、威力にしておよそTNT換算600t分に届くほどの破壊力を発揮し得る。更に“清姫”の特異性によって、その絶大な破壊力と速度によって発生する余波は周囲に影響する事無く、対象ただ一点にのみ作用する。
「かっ…………けほっ、ぅ、ぁぇ……? あ、ぅうぁ……?」
直撃の瞬間、清姫の接近に直前で気付いたカミラは、魔力の放出を盾にすることでダメージの軽減を試みていた。しかし、清姫の与える破壊力を耐えきることはできず、蓄積した魔力の全てを放出してようやく、致命傷程度にまで威力を減衰させたのだった。
「いぁ……ぃ……ぇ? あ、ぅぅ……ぉえ……?」
呼吸もままならず、痛覚反応も追いつかないまま、カミラは唯一自由の利く目だけを動かして、ヒトエを探し求めていた。
「ぃ……おぇぇ……? や……やあぁ…………なん、ぁぅ……?」
ヒトエは双剣を握った〈髑髏〉を盾に、慎重にカミラに接近する。
「どうだ! 私の“清姫”は! 完璧に印を組めたから、完全に物質化して吸えないでしょ!」
清姫を連れて近付くエイリには目もくれず、カミラは地面を這いずってヒトエに向かって行った。