Flowering Dolly:魂震わす作り物の音 その⑩
「ところでさ」
「ん、どうしたフィスタ」
「アリー」
「何でも良いだろ」
「名前なんですがぁ? 一番何でも良くない場所でしょー?」
「……いやまあ、うん。たしかに。これ俺が悪かったな」
「分かればよろしい。で」
「うん」
「けーちゃんって私のこと好きじゃん?」
「何か語弊があるな?」
「あーうん。けーちゃんって私の音楽が大好きじゃん?」
「うん」
瞬間移動によって彼の手の中から抜け出し、彼の目の前に現れる。
「右手、出して?」
「え、何いきなり。っつーか足治ってないんだから勝手に抜け出すなよ」
ケーパは宙に浮いていた私を捕まえ直してしまった。
「ノリ悪いなぁ! せっかくあんたを私のマスターにしてあげようと思ったのに」
「何馬鹿なこと言って…………はいぃ⁉」
あいつが急ブレーキをかけた。ビーストはすぐそこまで迫ってるんですが。