惰性で授業受けて
きれいごと流して
一人電車に揺られて
ホームの雑踏に消える
無意識にあなたを探している
無論見当たらない
空は青いだけ
星は明るいだけ
恋しいのは体温だけ
悟られているのだろう、チャールズのことだから。しかし、そう振る舞ってはいけないような気がして、殻を被ってしまう。そう振る舞うことこそが子どもっぽいことに、まだ子どもである瑛瑠は気付けない。
「そのようなものですからね。」
読んだのかそうでないのか悟らせない紙は、封筒に元の形におさめられた。
また、よくわからないことを言う。
そんなチャールズは、瑛瑠の食事の進行具合をみてお茶の準備を始めた。
「ごちそうさまでした。」
「はい、お粗末様でした。」
片付け始めるチャールズを見て、瑛瑠も食器をさげ始める。あえてチャールズは何も言わなかった。
「さっきの手紙、何だったの?」
席をたったチャールズは、もらった手紙を持ちソファの方へと行く。
その様子を、瑛瑠は盗み見ていた。しかし、図ったのか背中を向けられていて、表情は読み取れない。再びため息が出そうになる。
のを、堪えた。思い出す先程のやりとり。
子どもっぽいなあと嫌になる。
手紙を見るチャールズの背中に声をかける。
「ねえ、チャールズ。」
たたむ音と共に振りかえる。
「どうしました?」
「私って子どもっぽい?」
「ええ。事実、子どもですし。」
予想通りすぎて返す言葉もない。
「私からすれば、お嬢さまはずっと子どもですよ。たとえ成人の儀を迎えても、結婚してお妃様になっても、死を迎えるときも。」
相変わらず綺麗に微笑む。
現実を突きつけられた気がした。パプリエールである自分の現実。自分はどっちだろう。体裁を気にせず、断然刺激的な瑛瑠の生活。そして自由。
こういうことがあると、本当に通過儀礼的であると思う。そう、言われてはいるけれど。
「親みたいなことを言うのね、チャールズ。」
どうしてかな。度々、目が合う2人。
少し笑いながら2人ではにかむメッセージ。「ダ・イ・ス・キ」
なんてそんなふざけたこと考えながらクリームソーダを飲み干した僕は、あの日見た君の顔を思い出し、ため息をついた。
君の目が開いて、僕の世界の時計が壊れた。それっきり僕は同じところをさまよっている。
「君のせいだ!」、と怒っても、
一つも解決してないよ?
僕が笑って、君の世界が壊れるなら、どうするかな。
でもやっぱり、いいたいことも、したいことも、一つも無いんだ。
でも、なにかを吐き出したくて
僕は此処に立っている。
人のために生きるって何だろう
困っていることをなくすこと?
助けること?
分からないなどうすれば人のために生きられんだろう
ため息をついてしまう瑛瑠。
「幸せが逃げますね。」
まだ言い負かし足りないのだろうか、この青年は。
「ため息くらいで逃げる幸せなら手放すわ。」
ぱく、とサラダのてっぺんのミニトマトを頬張る。
チャールズは唸る。
「うーん……どうせなら、黙って肯定して深呼吸する方が私は好きですね。」
瑛瑠が睨み付けた先の碧眼はとっても透き通っていて。
「私、やっぱりチャールズには勝てない。
可愛いげがなくてごめんなさいね。」
完全にそっぽを向いてしまった。
そして、完全に苦笑いするしかないチャールズ。ハーブティーの前までに、どうにかして難しいお嬢さまの期限を直さなきゃなあ と席を立つのだった。
夏が来た。
泣きたくなるような温度を。
また未完成な日々を。
列車が通り過ぎた。夏風が通り過ぎる。
周りの笑い声が嫌になっていた。
自分の気持ちに、素直になれたなら。
熱い心と暑い温度が、どこかで消えていく。
あの日見た入道雲に叫べたなら。
涙だけでも絞り出せたなら。
「やらずに後悔よりもやって後悔」
うん、立派な心がけだと思うよ。
でもさ、やった時の影響も加味しないといけないよね。
一つ聞きたいんだけどさ、
あなたは、人を殺したいからって殺人を犯すかな?
もし、そうするって人がいるなら、
それは、ただ欲望に忠実なだけだよ。
それで、あなたは大丈夫?
俺は…大丈夫。
やらずに後悔するだろうから…
チャールズが笑ったのを後ろに感じる。
「お嬢さまもまだまだですね。私に鎌をかけようなんて100年はやいんです。」
瑛瑠は少しむくれた顔をする。
「直球でも変化球でもだめならどうしたらいいの。」
「魔法でもかけてみては?」
「……チャールズの人でなし。」
「ええ、魔法使いさんですから。」
ぐうの音も出ない瑛瑠だった。
チャールズはそんな瑛瑠に微笑む。
「昼食を終えたら、少しお話ししましょうか。」
瑛瑠は頷く。
席について、いただきますと手を合わせた。
チャールズの前には今日もお皿はなく、コーヒーだけ。
おいしいと伝えると、チャールズはよかったですと微笑む。やはり何にも手をつけない。
「あなたはカフェイン以外のものを摂ってはいけない病にでもかかっているの?」
そう言われたチャールズは面白そうに笑った。
「お嬢さま、なかなか言いますね。
でも、昨日はレモンティーも出したでしょう?」
「あなたは液体でできているのかしら。」
「あながち間違いではありませんね、お嬢さましかり。
食後にはハーブティーをお出ししますよ。」
私が綴りたいその言葉は
誰かのためとかではないのだけれど
(強いていうなら自分のためなのかもしれなくて)
その言葉でその日が慰められたり
その言葉で次の日が楽しみになったり
そうして誰かのためになるのなら
それはとても嬉しいことで
一方で
誰かの言葉に左右されたり
誰かの評価を気にしたりすることは
私の言葉ではないような気もして
でも
そんな中で紡いだ言葉だからこそ
私の言葉なのかな,なんて
(私が言葉だと上手く表せないから、既にどんな性格か把握されてるキャラクターにしゃべらせるなんていう狡い手を使ってしまう私。)
皿を受け取りながら聞く。
「何をしていたと思います?」
どうやら、質問に質問で返すのが彼の十八番らしい。
瑛瑠は、テーブルに置くと答える。
「家政婦。」
チャールズは笑う。
「そうかもしれませんね。」
そして結局教えてはくれない。
わかってはいるが、つかめない人チャールズである。
だから今は深く聞かない。カードはまだある。
「これ、家の人に渡してって。」
端に置いていた渡された手紙。
渡す間、ずっとチャールズの顔を見ていたのだが、
「ありがとうございます。何でしょうね。」
とだけ。
だから、
「鏑木先生に渡されたの。」
と言う。不思議そうなチャールズにおかしな点は見受けられない。いっそ、自然すぎて不自然なくらいに。
「……私の顔に、何か?」
問われ、諦める瑛瑠。チャールズが手に持っている、最後の料理を受け取った。
「何でもない。」
くもり空(まっ白な午前四時)、ひとり
crocsを引っかけて自動販売機まで
サイダーを買いに徒歩2分30秒
(ポケットの¥150がちゃらり)
ひかってる田んぼの緑藻類、
愛しいほどか弱いね、田植えがすんだ苗のこと
内省と吸収とアウトプット
誰かの吐露を 自分の声に
自問自答と自己解決
誰かの言葉で 自分の声を聞く
似ている人は どうしたって 引き寄せられる