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1

おやすみ即興詩。

今朝は雨降りで
昼過ぎに止んで
蒸し暑かった
今日も昨日も
梅雨が明けない
とか、夏がきた
とか
おやすみを云う
ためにおはよう
を云わなきゃ
資格がないだ
なんて、
もう

おやすみ

2

a single night

きみがいない世界で生きてゆけないなんて嘘だ
永遠になり損ねていただれかの見たかったゆめ
わたしの身体は酸素と水といくつかの栄養素で
なにひとつ欠陥なく地上で呼吸ができてしまう
言語を失ったにんげんに価値なんかあるのかな
いつか風のふく夜に話したことをおぼえている
言葉でさえ伝えることをためらってばかりいた
ちっぽけないきものをきっときみはあいしてた
ばかみたいだと鼻でわらっても皮肉はうまれず
死んでいないことの証明のためにきょうも泣く

7

LOST MEMORIES ⅩⅤⅧ

そこで初めて自分が泣いていたことを自覚する。
「何でだろう……」
寝ていただけだ。
「夢でも見たのかもしれない。」
何も思い出せないが、そう口にするとそんな気がする。それに、チャールズの心配の色が深まるばかりだ。夢のせいにしてしまえば楽である。
「すみ、ません……」
そんな瑛瑠の気持ちとは裏腹に、チャールズは項垂れる。
今度驚くのは瑛瑠の番だ。
「……どうして謝るの。」
謝られるようなことをした覚えはない。泣いて起きたことが、チャールズのせいだとでもいうのだろうか。
伏せる碧い眼は雲って見える。
もちろん、背は断然瑛瑠の方が低いので、覗きこんでみた。
瑛瑠の顔に、チャールズの影がかかる。
視線がぶつかる。否、瑛瑠が視線をぶつけにかかる。
「私は、大丈夫だよ。」
雲って見えたその眼に、瑛瑠の顔が映り込む。
すると、ふっと表情を和らげたチャールズは、再びくしゃっと頭を撫でた。
「それなら、安心です。」
うん、戻った。

0

くしゃみ

季節外れのくしゃみを一つ
君への想いも吹き出して
酸素が想いとなって足りなくなり
酸欠で死にそうになる

4

LOST MEMORIES ⅩⅤⅦ

ノックの音で目が覚める。薄暗い。
「お嬢さま?いらっしゃいますか?」
体を起こす。眠っていたらしい。
「お嬢さま?」
怪訝そうな声の主はチャールズ。
瑛瑠は、まだ完全に働いていない頭で応える。
「……います。」
ほっとしたように扉越しにチャールズは言う。
「大丈夫ですか、もう夜になるというのに全く音がしないので心配しましたよ。」
瑛瑠は立ち上がって扉を開く。
「ごめんね、眠ってしまっていたみたい。」
乱れているであろう髪を手ぐしでとかしながら出ると、チャールズは明らかに驚いたようにした。
「チャールズ?」
顔に変なものでもついているのだろうか。そう、尋ねようとするよりも先に、チャールズが瑛瑠の頬に手を伸ばした。
「どうしたんですか。」
消え入りそうな、心配一色の声。
形のいい親指が、目元の雫を掬う。
「なぜ、泣いていたんですか。」

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宙海離遊/tell you nothing

心海深く、底見えぬ

溺れているか、浮かんでいるか

空を見るか、海面下を見るか

まして、何にも知らない奴らには

私の言葉はわかるまい

私の言葉はわかるまい

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夢幻泡影

君の声
聴こえてるのに何故
見えないんだろう
この思いも届かない

全て幻
全てが蜃気楼のように
君がいたあの日さえも
どうしてと嘆く事しか出来ないまま僕も
幻になって行く
何もかも儚く包まれ消えていく
深く深く

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LOST MEMORIES ⅩⅤⅥ

*

「はやくきて!はやくはやく!」
「待ってください、パプリ。そんなに焦らなくても、お花は逃げないよ。」
少女というには幼すぎる女の子が、後ろからついてくる少年に手招きをする。
咲き誇る花たちが眩しい。
ここは、先を行く女の子たっての願いで決まった行き先、お花畑。
花が 蝶々と二人を歓迎する。
「おそいっ!おいていっちゃうんだからね!」
ぷうっと桃色の頬を膨らませ、走り出す。肩についた蜂蜜色の髪が揺れる。
「ちょ、危ないから!」
女の子の足がもつれた。
少し焦って追いかける。
さすがに、5歳の少女には悠に追い付いた。
「ごめんなさい……」
肩に手を置かれ、止まる女の子は反省した様子で。
「怪我がなくてよかったです。」
にっこりと微笑まれることで、女の子もくすぐったそうに微笑う。
「行きましょう。」
腕を差し出すと、女の子はその腕に抱きついた。
「うん!大好き!」
少年は、その子の頭をくしゃっと撫でた。

*

0

おはよう即興詩。

朝、起きるのはとても億劫だ
けど、今朝は雨降りだから
なんて、誤魔化してみて
それでも、頭は重たい
なんだかな、 まだ
夜みたい だ、ね

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エウロパ

夜と朝の僅かな隙間
山肌にまとわりつく靄を観察するのが好きだった
雲が光を孕んでいく速度で 滅びていく静寂
たち登る生命の気配

産声をあげたなら満たされるべきだ
美しいものだけで弔鐘まで
悲しみや痛みは火にくべてしまえ
その灯を掲げて闇を進め

明日が来ないとしても
変わらずに過ごせる今日を持つことを
幸福と呼ぼう

幸いへ向かえ 幸いへ向かえ
いつか 歓びの野に咲き誇るすべての花をまき散らして遊ぼう
同じ瞬間は二度とは来ないぜ
幸いへ向かえ

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船路

小さな小さな船
方角は正しいのか
強い波に
何度も何度も
飲み込まれそうになった。

嵐の夜
きみは言った
僕達らしく
進んでいこうと。

考えもしなかっただろう
あんな
小さな小さな船
いま
大海原で戦っていること。



僕達は何を掴んだだろう
結果論なら
僕達は敗者だ
それでも僕らは『何か』を手にした
ひとつの熱い想いだ。

彼らと同じ船に乗り
襲いかかる波にも
迫りくる嵐にも
僕達みんなで戦った
僕達はまた『どこか』を目指して
進む。

僕は忘れないだろう
進め
いけ
前へと
叫んだ日々を。

1

からかわないで
わたしの言葉を
ちらばってる言葉を
あたまのなかでちらばっていく
言の葉のたちをつかまえる
たのしいようなくるしいような
そんなじかんがわたしはすきです

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日常という名の、劇場

物語なんだけど、すごくすぐそばで起きてそうな、物語。だから「日常という名の、劇場」。これは誰かの日常の、断片。
(こっからが本編です↓ これから、気が向いた時に書き込むつもり)

「天気雨」
ぽつ、ぽつと、雨が降り始めた。空には青空が見えているのに。
音光(ねみ)は、そう思いつつ、折りたたみ傘を差した。
家路についた中学生たちが、わーわー言いながら他人の傘に入ったり、傘を差したり、走って帰っていったりしている。
徐々に強くなる雨が降る空を、音光は見上げていた。
「…音光ちゃん」
名前を呼ばれて振り向くと、同じ部活の葎(りつ)が立っていた。
傘を持っていないらしく、頭にハンカチを乗せている。
「ごめん、傘にいれて」
突然のお願いに音光はちょっと驚いた。そして、ちょっと考えてから、
「…いいよ」
と答えた。

2人は同じ中学の、同じ部活だが、友達と言うには微妙な関係だった。
だから、音光は気まずくて、葎を傘に入れるのを迷ったのだ。
でも、いつの間にか気まずさは失せていた。
誰しも一緒に居れば、時間が立つうちに慣れるものなのかもしれない。
そう音光は思った。
「…あ、虹!」
葎が向こうを指さした。
音光は微笑みながら傘をたたんだ。
いつの間にか雨は止んでいた。