吐く息が白くなりはじめた夜。
いつものように月明かりと散歩。
ポケットには100円玉と
切れたミサンガ。
世界の難しさが、
人の恐ろしさが、
心に蓋をして、
箱に隠す。
いつもの自販機と
いつもの公園。
同じいつもなのに、
同じいつもでないのはなぜ?
押し間違えたのか、気を間違えたのか、
あったかい微糖のコーヒーも
白い吐息を漏らす。
同じいつもなのに、
同じいつもでない。
微かな糖分が、
僕の心を
社会という立方体の檻から
ふわっと浮かせる。
“ばいばい…” と言い残して君は姿を消した。
連絡先は聞いていない。
“会いたい”と願っても会えるはずがなくて…。
わかってる。
でも、どうしようもなく、
僕は君が好きなんだ。
もし君が望むなら、
地球儀を回して、経度と緯度を君に合わせて
何処へでも会いに行くよ。
もし君がヒトラーのような独裁者になっていたら
僕は、君の順従な犬になろう。
伝わらないと思うけど、
僕にとってそれくらい、
君が愛おしくて仕方がないんだ…。
「しかしアーネスト。お前はえらく遅かったじゃないか。何かあったのか」
「ええ、まあ。大したことじゃないです。ガルタさんと話していただけで」
「ガルタのじいさんとか?お前、また何かしでかしたな?さてはあれか。今朝お前が寝坊したことか」ライネンはニヤニヤと聞いてくる。
「違いますよ。て言うか、僕がまだ寝てるのに気づいてたんだったら起こしてくれたって良かったじゃないですか」
「悪い悪い。夢の途中で起こしちゃいかんって言うしな」トルフレアの迷信だ。
「夢が現実に侵食してくるって言う話ですか。にわかには信じがたいですけどね」
「しかし否定もできんだろう」
「まあ、ね」
ライネンと話すときはいつもこんな風だ。頭がいいんだか悪いんだか。
「さ、俺は飯を作ろう。部屋で待ってな」
「へえ、ライネンさんも料理できるんですか」
「あったり前だ。自分が食う飯も作れんで男とは呼べん。期待しとけよ?」
またニヤリと笑うと、キッチンの方へスタスタと歩いていった。いつの間にかカルクはスヤスヤと毛布の上で寝ていた。いつの間に寝かしたんだ。
部屋に戻ると、すぐあの手紙を取り出した。封筒には、やはり「ケンティライムの封印」が捺されている。
アーネストは、ゆっくりとその封を開けた。中の手紙には、こんなことが書かれてあった。
貴女に12本のバラを贈ります。
貴方に15本のバラをお返しします。
12本のバラの花言葉
「付き合ってください。」
15本のバラの花言葉
「ごめんなさい。」
帰り道。大通りはすっかり人気(ひとけ)をなくし、昼間の喧騒が嘘だったかのように静かだ。二三人の働き人が肩をすぼめて歩いている。アーネストは、下宿への道を歩きながら考える。
商業の街、ソルコム。国内最大の港を持つトルフレアの玄関。しかし、ケンティライムの人間が来ることは滅多にない。なぜか。それは、ソルコムとケンティライムを隔てる、アイネ・マウア山脈のためだ。
何千メタとある山を越えることは難しく、山脈の北端まで行かねば、歩いていっても厳しい。それゆえにソルコムの物価はケンティライムよりも断然安い。つくづく滞在先にケンティライムを選ばなくて良かった.........。
そんなことはどうだっていい。ケンティライム兵の話だ。彼らでさえあの山を越えることは難しいだろう。わざわざ僕のためだけに来たわけではなかろう。きっとソルコム港に何か用があったのだ。そのついでなのだ。
「ただいまー」
「おお、坊主。帰ったか」
「帰ったかー!」
家に帰ると、二人の元気な声がした。下宿させてもらっている家のご主人と二歳のカルクが既に帰っていたようだ。
「今日は早かったんですね、ライネンさん」
「ああ、今日はボスの機嫌がよくてな。週末ぐらい家族とゆっくり過ごせーって。エナはいないんだけどな」そういうとライネンはわっはっはと笑った。
ライネンは鉄道会社で働いている。夜遅くに帰ることが多いのだが、今日は珍しい。
詩人の皆様、こんばんは。すっかり肌寒くなってきましたが、風邪などお召しになっていませんか?
今まで二度開催した三題噺、楽しんでいただけているようでなによりです。皆様のそれぞれに個性的な作品の数々、ぼくも楽しく読ませてもらっています。
さて次回のお題は「あったかい缶コーヒー」、「立方体」、「夜」になります。上記みっつのお題をすべて使っていただければどんな作品でも大丈夫です。もしよければタグ「三題噺」を使ってやってくださいな。
それではよろしくお願いしますね!
見たい映画がある。
でも明日は試験だ。
勉強しなきゃいけない。
明日も明後日も試験だ。
そのあとすぐに期末試験だ。
暇がない。
頑張ってる自分に。
いつあげられるのだろうか。
クワイエット・プレイスというご褒美を。
あれから何日経ったでしょう
思い返せば今日で半年でした
その日が来る前に貴方に
さよならをしてごめんなさい
嫌いじゃなくても
別れを告げることがあることを
貴方は教えてくれました
ワガママで
弱くて
ちっぽけな
こんな私に
好きを教えてくれて
ありがとう
それもそうである。情報が少ない以上、動くことのできる範囲には限界がある。
チャールズも、いずれわかりますなんて言っていたっけ。
しかし。
「何が言いたい?」
英人が3人分の声を代弁する。
「焦る必要はないんじゃないかってこと。」
「……つまり?」
歌名は、英人を見つめ、続いて瑛瑠と望をも見つめてくる。そして、再び信じられないものを見るような目をする。
きょとん顔の3人に話が通じないことを悟った歌名は咳払いをした。
「つまり、高校生活in人間界をエンジョイしようってこと!」
具体的に、どういうことだろうか。
口を開きかけた瑛瑠の口元で、人差し指をふる。
「具体的にどういうこととか聞かないの。」
読心術使いだろうか。
歌名はいつもの笑顔に戻り、にっこりして見せる。
何か、想いを孕んだ眼。
君とは距離が近過ぎて、僕は一歩ひいてしまう。
君のことを尊敬してるけど、照れて素直に言えないな。
だから君に花菖蒲を送ろう。
普段言えない気持ちを乗せて。
「優しい君を信じてる」
花菖蒲の花言葉は
『あなたを信じます』『優しい心』などらしいです!
先輩に携帯忘れそうになってるのを教えてたのに
自分がイヤホン忘れてきたことは是非とも内緒にしておきたい
苦しみたくない、悲しみたくない
あの子とずっといたい、未来まで見たくない
実は僕は刹那主義かもしれない
結月視点
僕には兄がいた。運動、勉強が得意な絵に描いたような健康優良児だ。幼い頃にそんな兄と比べられていれば誰だって嫌になる。それなのに親、親戚は一緒になって比べていた。そんな仕打ちに6年間耐えていたが、耐えられずにとあるビルから飛び降りようとしていたところを今の家族ー時雨ちゃんに拾われたのを思い出した。そしてまた一つ思い出した。この曲の最後の歌詞に共感したことを。そして僕はこうつぶやいた。
「時代の片隅で僕は殺されてるんだ」
#2 大人は信じてくれない【終わり】
#3 インビジブル に【続く】
電車が地下に入る
君の街が眠る
耳より心臓がいたい
春、春ぶりの君
何でもない日々に
貴方が居て 僕が居て
感じるこの思いに
名前を付けなくちゃね
「楽しさ」の反対は。
「悲しさ」の反対は。
自分ってのを何ひとつ
分かっていなかったんだ
私は写真があまり得意じゃない。
何かっていうと携帯のカメラモードを起動する近年蔓延っている行為に辟易しているのも要因の一つかもしれないが、元々苦手だった。
何故と問われても、むしろ何故そんなに撮りたいのかが理解できなかった。
彼はそれを知っていた。彼自身そういうのに無頓着だったせいか、一緒にいるときはそもそも携帯を取り出すことがなかった。だから、時として数年、“思い出”として残している写真は一枚もない。
彼と最後に会ったのは半年前。お互い地元を離れ、すぐ会いに行けるような距離じゃない。
髪を切ったの。その私の言葉に、初めてこんなことを言った。
たまには写真でも送ってみて。切った髪、見たい。
期待せず笑うから、期待通り送らなかった。
私が写真苦手なの、知ってるくせに。なんて笑う私は、あまのじゃくかしら。
写真がなくても、思い出も記憶も途絶えはしないし、心が変わることもない。
今でも写真は苦手だ。けれど、たまにびっくりさせるのは悪くないかもしれない。そう、思った。
スターチスの花言葉
『変わらぬ心』『途絶えぬ記憶』