「でも、私にそんな大切な仕事できますかね?」
そう問う私に風花さんは答えた。
「じゃあさ、魔法教えてあげれば?変態キョンシー」
「何‼︎変態キョンシーって‼︎‼︎魔法教えてあげないよ!」
どうやら雨月さんは拗ねてしまったらしい。
「こいつ拗ねやがったよ。めんどくせえなあ」
ごちゃごちゃ言いながら、風花さんが雨月さんの機嫌を戻してくれたらしい。
「どんな魔法使いたい?」
「どんなのがあるんですか?」
「創造とか、破壊とか、殺戮とか、蘇生とか、
回復とか、色々」
「…簡単なのから教えてください。」
「あいあいさー」
そんな感じで私の魔法の特訓は始まった。
【続く】
A:やあ、久し振りだね。君も大きくなったねぇ。最後に会ったときなんて、まだこんなにちっちゃかったのに。
B:え、うわ、何だよお前。来んな!
A:えー、ひどいなー。僕のこと忘れちゃったのかい?昔はよく遊んだろ?
B:知るかよこっち来んな失せろ!
A:何怖がってるのさ?別に取って食ったりしないからさ。そんな風に見えないでしょう?
B:あんたが何なのかは知らんが、見た目完全に鬼じゃん!
A:どこがさ?
B:額から生えた長い角!噛み砕けないものなんて無さそうな顎!木の皮みたいに頑丈で墨みたいに真っ黒な皮膚!やけに長い腕とそれに比べて短過ぎる脚!何よりその4mくらいある背丈!どこをどう取っても完全に化物だよ!
A:ふむ……。それもそうだな。けど安心して。古くからの友人を食おうなんて馬鹿なこと微塵も考えやしないからさ。また昔みたいに遊ぼうよ。
「仲良くするのはいいが、あんまり執着するのはアウトな。こっちが嫌になったら問答無用で離れるぞ?」
フッと耀平の顔から笑みが消えた。その目はあの時の”コマイヌ”の目とはまた違った恐ろしさをたたえていた。
「よかったじゃ~ん、何とか仲良くなれてさ~」
「まぁ…でもちょっと上っ面感出ちゃってますよ?」
セレンさんはわたしの肩を笑顔でポンッと叩いたが、わたし自身はこれでいいのかとちょっと困惑していた。
「もしも手を離す時のことを考えて、そこまで情を持つつもりはないからね」
ネロが冷ややかに言った。
「ホントのコト言うとボクはさ、アンタと一緒にいるのがかなり嫌なんだよ…」
そう呟きながら、ネロはわたしから目をそらした。
「そりゃな~、お前のせいで異能力のことコイツにバレたもんな~」
「そ、それ言うな! 言われたくない…」
耀平に嫌味を言われて、ネロは恥ずかしそうにうつむいた。
「え~でもいいんじゃない? これはこれでさ、面白いことになりそうだし…んじゃ! アタシはこの辺で!!」
そうセレンさんはニコッと笑うと、駅の入り口に向かって歩き出した。
瑛瑠は、冷ややかにチャールズを見る。
チャールズも慣れたもので、
「どうでしょうね。」
なんて言う。肯定も同然だ。
最近はわりと共有できていたような気がしたのだが、やはりチャールズはチャールズで、いい性格をした付き人であった。
不満を隠そうともせずに瑛瑠は、そうですかと言い立ち上がる。
そんな瑛瑠に、チャールズが声をかける。
「あ、お嬢さま。レディグレイ飲みますか?」
こういう扱いにおいては星5である。
「……飲みます。」
「フィナンシェもありますよ。」
「……食べます。」
再び座りなおした不機嫌そうな瑛瑠に、チャールズは微笑んだ。
いいんだ。誰かから好かれることに一生懸命にならなくても。他人の中に自分を映しすぎると辛くなるのは自分なんだ。だからいいんだ。
苦手な人に頑張って寄る必要もないんだ。
君は君の好きな人とだけと、一緒にいればいいんだよ。
「あの。気付いてますよね。」
「…ごめん」
クラシック・ギターを立てかけて
僕は居直った。
「…やっぱ帰ってもらえn」
「嫌です」
「そうですか」
「ご覧の通り私は、妖精です」
「僕の知ってる妖精じゃないのですが」
「カワイイ系ですか?エロい系だと思ってました?」
「予想はカワイイ系、希望はエロい系です」
「正直に話しさえすれば潔いとでも思いましたか?」
「すみません」
「そもそも人の形で現れてあげただけ優しいと思っていただきたい。本来妖精に形はありません。」
「神様と同様にですか」
「ええ。神もまた、形なきお方です。」
「…で?僕に何の用ですか」
「なんだと思います?」
「は?めんどくさい女ですか」
「すみません。」
「何の用ですか」
「シックスセンス、知ってます?」
「ええ」
「それをあなたにあげちゃいまーす!いえーい、やったー。」
「…」
「…どうされました?」
「…いらないですね」
「え?シックスセンスですよ?第六感。あなたにはその素質があるのです。こうして私と話せていますし。」
「勉強不足だなー。妖精さん。僕にはもうシックスセンスがあるんですよ」
「え?」
「っていうか、だいたいテンセンスくらいあるかな」
「はい?」
「だからこうして…」
「…え?…あ、もしかしてぁ…」
ざらっとした風が吹いた。
「神様は人の形なんかしてないけど、悪魔はそーでもねーんだ。勉強不足を悔やみな。妖精さん」
はいカット
心の奥が
ぐわって
どわって
あなたに掴まれた心は
もうどうしようもない
みたいだ
ピピピッ、ピピ、
いつものように鳴った目覚ましを止め、おれはまだ眠い目をこすろうとした、が。「…おはよぅ…」
「…!」
声のする方―つまりおれの左隣に顔を向けると、そこにあったのは血よりも鮮やかな鮮紅色。
「…ふふ」
「…お前…」
おれは明らかに人間のものではない紅い眼の”それ”から、思わず目をそらした。
「お前、いい加減他人の布団で寝るのやめろ」
「やだ」
「どうして…」
「すき」
相変わらずのラブコール。まじで嫌なんですけど…
少し前の雨の日、行き場をなくして路頭に迷っていた”こいつ”をおれは拾ってしまった。
ただケガをしていたから、ちょっと手当てだけするつもりだった…のだが、
「これ結ぶのてつだってー」
どうしてこうなった。
「それぐらい自分でできるだろ、てかやってほしいだけだろ」
「うん」
最初は人間だと思っていた。
でも、家に連れ込んで顔を見たら、カタチこそは人間だったものの、その鮮やかな紅色の眼、そして黒々としたコウモリのものそのものと言える羽根を見たときにやっと気づいた。
コレは人間じゃない。
もちろん当の本人は、自らを「悪魔」と称している。でも「悪魔」は人間が勝手につけた呼称だから、もっと言うなら「悪魔と呼ばれるもの」が正しいか。
この時点でちゃっちゃか追い出せばよかったのだけど、こいつを見た双子のアネキが家にいていいよと言い出したから、そのままここにいる。
ちなみに仕事で遠くに住む親はこいつを知らない。いずれ紹介しなきゃいけない時が来るんだろうけど…その時はどうしよう。どう説明すりゃいい⁇
「…ほら、これでいいだろ」
「うん、ありがと」
「朝は時間ねーからあんまり頼むなって」
「でも…」
”こいつ”はついさっきおれに結んでもらった、シャツのリボンの端っこをいじりながら呟く。
ちなみにこのシャツは双子のアネキの。あと一応言っておくが、こいつは♂だ。
性別が分からなくなるぐらいの見た目をしているのは、多分人外だから。
「おぉ2人とも、今朝も仲いいねぇ」
リビングに入ると、双子のアネキがキッチンからこちらを見て笑う。
返す言葉がないおれは、後ろから抱きついてくる”こいつ”を見やった。
ふとおれと目が合った”こいつ”はくすっと笑って呟く。
「…すき」
そういやこいつのすきって…⁈