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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 24.ヴァンパイア ⑫

「なんかあった?」
ネロの急な質問に、わたしはえっ、と飛び跳ねた。
「な、何って…」
「いやー、いつもの場所にいなかったからどうしたのかなーって」
ちょっと気になっただけ、とネロは呟く。
わたしは今の悩みが見透かされた訳ではないと分かって内心安堵したが、いつものようにショッピングモールの屋上に行かなかったことを若干不審がられているようで不安になった。
今日、ヴァンピレスがわたしに会いに来るということで、ネロ達に迷惑はかけられないと彼らに会わないよういつもの待ち合わせ場所に行かなかったのだが…やっぱり会ってしまう時は会ってしまうらしい。
地方の街だから仕方がない…そう思いつつ、わたしは何でもないよと作り笑いで返した。
そう?とネロは不思議がったが、すぐに耀平が、そうだネロ、ゲーセン行こうぜ!と声をかける。
「この前ネロが取り損ねたぬいぐるみ、また取りに行こう」
「そうだね!」
耀平の提案に、ネロは明るく答える。
それを聞いて師郎は、じゃー行きますかねと後頭部に両手を回し、その隣で黎はうんうんとうなずいた。
それを見てネロは不意に、あ、アンタも行く?とわたしに尋ねる。
わたしは急な提案に驚きつつも、とっさにそうだねと答えてしまった。
「…じゃ、行くか」
ネロがそう言って歩き出すと、耀平、黎、師郎が彼女に続く。
わたしもそんな彼らに続いた。

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星の子

私は星の子プリン

みんなの優しさで出来てる星だょ

大きな、大きなユリカゴなんだ

みんなを包んで温めてるんだ

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転生するのも案外良くないものだ p.6

 その上、記憶力の低下は著しい。
 必死で覚えた英単語や趣味だったギリシア語、難解な漢字熟語などは相当忘れてしまった。義務教育レベルの世界史も曖昧だ。

 中でも固有名詞に関しては深刻である。

 例えば、毎日の通勤に使った駅の名。愛読した書物の題名。よく飲みに行った同僚や高校時代からの旧友の名。気付いた頃には思い出せなくなっていた。今の、コマ=リャケット語を操る私にとっては馴染みなく規則性も意味もない文字列であるからだろうか。思い出せた名は全てリストアップした。あまり多くはなかった。家族、親しい親戚、何人かの友人。

 しかし日を追うごと名前と顔が一致しなくなった。

 出来事の記憶はあるが、それが誰との記憶だったのか、思い出せない。読者諸氏には、大事なことは何度も思い返すことを強くお勧めしておく。

 最近、私を産んだ異形の顔を見て、私は泣き崩れた。
 私の頭の中に、前世の母の顔がないことに気付いてしまったのだ。
 私の思い描く母親像は、全長二メートルの、硬い鱗に覆われた、鋭い爪の、大蜥蜴だった。私は名前のリストの一番上の『家族』の欄を確認した。不器用な文字の羅列は、私の全く知らないものだった。

 その瞬間、私は、私が人間である資格を完全に失ったように感じた。

 否、今まで醜く足掻いていただけで、実際はこの世界にコマ=リャケットとして生まれ落ちた時点で私は人間である資格を喪失していたのだ。今まで認めようとしなかっただけなのだ……。

 これからもっといろいろなことを忘れていくだろう。いつか日本人としての精神を失いコマ=リャケットの倫理に迎合せざるを得なくなる日が来るかもしれない。日本語もいつまで覚えていられるか分からない。今残っている記憶のどこまで忘れてしまうかも不明だ。

 だから私は、今のうちに、私が覚えているもの全てを書き残す。

 いずれここに記したことの一切を誰も解読できなくなったとしても、所詮私が、人間の振りをした化物であったとしても、私がかつて人間として、日本人として、生きていた証左となるなら。


×年×日 橋田勇作

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趣味

お料理、お菓子作り

スノボー

お友達と電話

香水収集

神社巡り

です。

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兵隊人形

何かに操られている
僕たちは
冷たい床に座り込んでいる

首を傾げた子どもが
潤った目で
見つめてくる

意図なんてしてないのに
勝手に身体が動く
誰かの声がして
僕はそこらへんに

届きやしない
この聲は
一人でずっと抱えてる
空の世界は思ってるよりも
広いから
もう縛られたくないや

誰かに遊ばれてる
僕たちは
狭い部屋でギュウギュウになってる
いつも僕を掴んでる子どもが
輝く目で
睨んでいる

思ってもいなかったよ
まさか此処で会えるとは
そう思う間もなく
君は連れ去られていった

伝わりやしない
この望みは
いつしか僕の肩の荷に
此処だけが全てだと思ってた
でも知ってしまった

抜け出したい
せめて魂だけでも
自分の足で立ちたい
飛び回りたい
こんな世界はもう嫌だ
こんな世界を抜け出したい

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夜道。

風に揺られて歩く夜道。
ポッケに手を突っ込んでひとり歩く。
街灯の光しかないこの夜の町でひとり自由に進む。
夜は、自由に歩いていてもなにも言われない。
逆に日が出ている時は目立っちゃうから変な人って思われるけど
夜は暗いから見えないんだ。
人の目を気にせず自由に歩ける。
周りながら、大きく手を広げながら。
音楽をかけながら夜道を歩く。
落ち着くんだよな。これが
周りに惑わされて、周りを気にしなきゃいけない
矛盾と混沌な世界で生きてる僕。
繊細な糸の塊のような僕は、すぐちぎれそうになる僕は
今、夜道を歩いてる。
これは独りじゃないただ1人の休息時間なんだ。
あれ?いつの間にか海近くに来ていた。
座れそうな崖に腰掛けて暗い静寂な海を眺める。
波の音を聴きながら。
真っ暗な世界のこの景色が
張り裂けそうな今の僕の心を浄化してくれる。
ずっとここにいたい。ただここにいたい。
しかし人気のない人の気配もない僕しかいないこ夜道をまた歩く。
また、現実を生きないといけないのか。
いやだな。このままずっとこの時間が続けば良いのに…
だけど僕はまた歩いていた夜道を歩く。
また来ようと思いながら。