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ナーフフィア〜光を灯すものたち〜

『ーレンア国の王が消えたと聞いた。ただちに勇者たちに大切なものを持たせ、私のところへ向かわせてほしいー』

「わかったわ。ところであなたは今どこにいるの?」

『世界のどこかにある「私の隠れ家」だ』

もう夜が明ける。窓辺で朝日を浴びたレインド村の村長は、久しぶりに聞くある者の声を懐かしく感じていた。


「今日、旅立つんだね」

「ああ、もしかすると長旅になるかもな」

村長の家に行った帰りミウロは村の友達、レディバのレッグにつかまっていた。

「村長からのおつかいなんだっけ」

「うん。世界のどこかにある「私の隠れ家」に村の大切なものを届けにいくって言うおつかい」

「ずいぶんと無茶苦茶だよな。だけど君一人で?」

「らしいぞ。仲間がいたらなぁ」

「君が村長から勇者だって言われたのを聞いた時から不思議なんだけど、どうしてミウロが勇者だなんてわかるんだろう。
しかもじきにわかるだなんてさ。
まるで全てを知ってる人みたいだ」

「ううーん。そうなんだよな。村長って不思議な人だよ」

「あ、父ちゃんが呼んでる!またね、ミウロ!達者で!」

「レッグも達者で!」

そうしてレッグと別れたミウロは丘を登る道を進んだ。家に帰ったらさっそく旅の準備にとりかかる。それから大切なものを受け取りに村長の家に向かうのだ。

丘のてっぺんに着く。
丘を下る道の向こうの山の端には沈みかけの夕日が夜を迎えようとしていた。

その様子をじっと見ていると胸がざわついた。

「一体・・・」


何かがミウロの中で何かを訴えていた。

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太陽が照らし続ける日

積んでいる光の量が半端なく違うんだよ。
白い光の道を絶えず上へと行く遠い場所にいた君を見上げる。

追いつきたいけど、追いつけない。

一番近くにあるようで一番遠くにある場所に行くまでどんなカンテラを照らしていこう。

どこにも繋がらない道でカンテラを探す。いくつか見つけた。だけど、どれも火が長く続かなかった。
自分には何もないのか。


そのうち、なにかを託そうと手が伸ばされた。
はじめはその手を掴んだ。
なのになにかが違うという思いが進もうとする心にぶつかって、どうしてもどうしてもいつのまにかその手を離してしまう。
本当は進みたいはずなのに、離してしまう。

僕はその僕じゃないんだ。
見えるはずのない僕が僕に見えるのだとしても、
僕に感じるのだとしても。

君は僕を離れたところで僕を見つめていた。
僕は動けない。
これでいいのか思いがずっと心の奥に居座って動かない。

忘れないで。
あの頃、言われた言葉。


それでも、もう君の手を掴むことができないと
僕には僕の道が別にあるよと一つだけいつも見つける変わりないどこにも繋がらない道を走り、
カンテラを探して歩く。

だけど見つからない。
気づけばまた元のスタート地点に戻っていた。

手を伸ばしていた君はもういない気がした。
何も見えなくなりそうだった。


理想を見上げた。

ずっとかがげていた理想はいつのまにかかすみ始めていた。

理想が消えないようにじっと見つめこれならどうだと描いたのは、魔術の道。

この道を行くんだ。
決意を決めた。

カンテラが現れた。
進む道はこっちだ。僕はその持ち手を持った。

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啓示 1

『クリス。ねえ、僕の声がわかるよね?』

クリスだなんて何百年も前の君のことで今はあの頃とは違う君のはずなのに、本当は中身はクリスのままで僕を覚えたままじゃないかと思えてしまって仕方のない僕はつい昔の名前を呼んでしまう。
(うーん)

君は見えない僕にその顔を見せずに、僕の声のことで考え込みながら部屋を片付けていく。

(ごめん、思い出せない)

僕は悔しくなる。

(なんども誓ったんだよ)


僕はここにいるのに。

地上に生まれ変われば前世もあの世にいた時の記憶も消えるというのは、本当に本当のことだった。

(僕だよって何度言ったとしても君はもう二度と僕のことを思い出したりしないんだ)

悲しさがこみ上げた。
涙が溢れる。

(え、、)

僕が見えないはずの君が僕の方を見る。
あの頃とは違う君の黒色の瞳は不安げに揺れ、涙が溢れていた。

僕の感情を自分の中に感じたんだ。

(君は変わらないよね)

どうしようもない悔しさを嬉しさと懐かしさが胸を少しだけ温める。

生まれ変わって姿が変わっても君は君だ。
人にちょっと弱いけど、誰にでも優しい君はあの頃と何一つ何も変わらない。

だけどと、僕は地上にいる僕を気にする。

地上にいる僕は変わっちゃった。
僕は強くなりすぎたね。

僕も地上の僕のことは少し考えてしまうことはある。

強さは人を傷つける為にあるわけじゃないのに時々地上の僕はそれを履き違えてしまうんだ。

それでも僕は僕だから、僕は僕のことを信じるしかない。