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鏡界輝譚スパークラー Crystal Brother and Sister ⅩⅢ

「石英さん」
石英が振り向くと、石英の部隊のメンバーの少女がいた。
「この後どうしましょう」
「あーそうだね」
石英は宙を見る。
「幕文の方へ戻って荷物をまとめた後、ぼく達のSTIへ帰ろうと思う」
折角なら先に幕文の方へ戻っててもいいよ、と石英は付け足す。
「了解しました」
ではお先に、と少女は言うと、残りのメンバーと共に去っていった。
「…」
加賀屋隊の面々はその様子を黙って見ていると、石英がこう言った。
「そう言えば」
不意に石英が口を開いたので、水晶は兄の方に目を向ける。
「昔の約束、果たせたね」
「?」
兄が急にそう言ってきたから、水晶は首を傾げる。
「昔約束したじゃないか」
いつか一緒に戦おうって、と石英は笑いかける。
「…あー」
水晶はやっと思い出したのか、恥ずかしそうな顔をした。
「水晶が違うSTIに行っちゃったから、もう一緒に戦えないと思ってたけど…」
よかったよ、約束が果たせてと石英は呟いた。
「…別に、あれは“同じSTIで戦おう”という意味でこういうのじゃ」
「もー照れちゃってー」
水晶がそっぽを向きながら言うのに対し、石英はにこにこ笑う。
「…また一緒に戦えるといいね」
石英がそう言うと、水晶はそうですか、と淡々と答えた。
「じゃあそろそろ幕文へ戻ろうかー」
早くしないと日が暮れちゃうよーと石英は伸びをしながら歩き出す。
「…加賀屋さん」
巴に名前を呼ばれて、水晶は振り向く。
「私達も帰りましょう」
私達のSTIへ、と巴が言うと、水晶はこう答えた。
「うん」
そして加賀屋隊は帰るべき場所へと歩みを進めた。

〈おわり〉

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鏡界輝譚スパークラー Crystal Brother and Sister Ⅻ

それから30分もしない内に、水晶達は歩道橋の方に攻め込むカゲを倒し切った。
その後すぐに、出現したカゲは全て討伐されたと言う情報が入り、全てのスパークラーに撤収命令が出た。
「いやぁ今回の戦いも大変だったね」
「だね」
紀奈と弾はそう言いながら通りを歩く。
辺りはもうすっかり夕暮れだ。
「一時はどうなることかと思ったけど…まさか加賀屋さんのお陰で窮地を切り抜けることができるとは思わなかったわ」
巴もそう呟く。
「それにしても加賀屋は随分無茶したよな」
普通死ぬぞアレと、寵也は後ろを歩く水晶に目を向ける。
「…考える前に身体が動いただけだよ」
だから、たまたまと水晶は笑った。
「ふーん」
寵也がそう頷いた時、交差点の向こうから聞き馴染みのある声が聞こえた。
「おーい!」
見ると、水晶の兄…石英とそのチームメイト達が立っていた。
「探したよ水晶」
そう言いながら石英は水晶達の方に駆け寄る。
「いやぁ急にカゲの大群が攻め込んできて狙撃ができなくなった時はどうなるかと思ったけど、水晶がアレを倒してくれて助かったよ」
ありがとうね、と石英は水晶に笑いかける。
「…別に、身体が勝手に動いただけだから」
感謝される程のことじゃない、と水晶は呟く。
「えーそんなに謙遜しなくてもいいのに」
「兄さん達には敵いません」
「えー」
加賀屋兄妹が仲睦まじくしていると、不意に石英の後ろから声が聞こえた。

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野良輝士市街奪還戦 登場人物

・下野真理奈(しもつけ・まりな)
部隊内での役割は中~遠距離からの援護射撃と全体を俯瞰しながらの指揮。アプリで通話する時、一人だけハンズフリーイヤホンを使っている。P.A.故の補助効果を抜きにしても謎の狙撃能力の高さを持つ。
使用P.A.:猟銃。スコープは取り外し可能で、攻撃メインの時は外し、指揮メインの時は設置して望遠鏡代わりに使う。
・和泉宗司(いずみ・そうじ)
部隊内での役割は前衛としての敵の翻弄と破壊力が必要な敵への攻撃。特技は投擲で、特にある程度の質量があるものを狙った場所に投げるのが得意。
使用P.A.:戦槌。片側が錐状に尖っている。片手でもギリギリ使える程度のサイズ。投げたりもする。
・門見初音(かどみ・はつね)
元々の仲間たち全員から渾名で呼ばれている。部隊内での役割は前衛での補助役とヘイト分散。知り合いにSTI所属の人間がいて、その縁でP.A.製作業者とも繋がりがあり、彼女が居なければ野良輝士たちは武器を用意できなかったので感謝されて然るべき。
使用P.A.:片手半剣。全長約1.5m。地面や壁に突き立てて足場代わりにすることが多い。
・月舘灯(つきだて・あかり)
本来の部隊内での役割は中距離での支援と移動支援。P.A.の性質上機動力が最も高いので、前線に出ることも多い。
使用P.A.:鉄線銃。射程距離は約50m。巻き取り機構はあるものの、人間の重さを引き寄せられるほどでは無いため、移動時にはワイヤー部分を掴んで自力で引っ張る必要がある。銛みたいな先端が当たると普通に痛い。
・田代小春(たしろ・こはる)
STIである県立鉱府光明学園に通う少女。カゲに沈んだ町でどうにもできずに身を守っていた。後に部隊に加入する。
使用P.A.:折り畳み防楯。原色の迷彩模様で彩られた4枚の金属板で構成されている。

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鏡界輝譚スパークラー Crystal Brother and Sister Ⅺ

仲間ができた、戦う理由ができた。
あの居場所…幕針文化学院を守りたい、その一心でわたしは戦っている。
もうあの頃の臆病な自分ではないのだ。
もちろん周りには誰も文句を言う人はいない。
兄と比較する者もいない。
わたしはわたし、それ以外の何者でもない。
「今だ」
塔のようなカゲが歩道橋まで数メートルの所まで来た時、水晶は拳銃型P.A.の引き金を引いた。
P.A.から発せられた光り輝くエネルギー弾は真っ直ぐに飛び、カゲの頂点…コアを貫通した。
「>;”;*;“;>;”;“」
カゲは不意に動きを止め、何か喚き声を上げた。
その直後、カゲは頂点から崩れるように霧散していった。
「…やった?」
歩道橋の壁から紀奈が顔を覗かせる。
「やった…みたい」
弾も壁からカゲがいた方を覗き見る。
2人は水晶の方を見た。
水晶は静かに、構えた拳銃型P.A.を下ろす。
「やったぁ‼︎」
紀奈と弾は水晶に飛びつく。
「すごいよ!」
やったよみあきち!と紀奈は水晶の頭を撫でる。
「すごーいみあきちー」
弾はぴょんぴょん跳ねて喜んだ。
「お前らガキか」
寵也が呆れたように言うと、弾はボク達子どもだしーと頬を膨らませる。
「とりあえず3人共、まだ小型のカゲがこっちに攻めてきてるんだけど」
「あ、そう言えば」
「そうだったね」
巴がそう言うと、弾と紀奈は水晶から離れて手元の拳銃型P.A.を準備した。
「ほら加賀屋さんも」
「あ、うん」
巴に促され、水晶は歩道橋の通路にしゃがみ拳銃型P.A.を構えた。

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鏡界輝譚スパークラー Crystal Brother and Sister Ⅹ

「わたしがアレを倒す」
「バカ言え‼︎」
お前死ぬぞ!と水晶に対し寵也は怒鳴る。
「…あの種のカゲは光線を放つまでに数分のタイムラグがあるって授業で習った」
だからその隙にコアを撃ち抜く!と水晶は拳銃型P.A.を構える。
「でもそのP.A.じゃ威力が!」
「分かってる」
紀奈にそう言われたが、だから至近距離で撃つ!と水晶は続けた。
「…わたしは簡単には死なない」
加賀屋隊のリーダーだもの!と水晶は声を上げた。
「…」
その言葉に加賀屋隊の面々は黙りこくったが、暫くして紀奈が口を開いた。
「…分かった」
あたし、みあきちのこと信じるよ、と紀奈は笑った。
「ボクも信じる!」
弾もそう明るく言う。
「フン、死ぬんじゃねぇぞ」
身内に死なれるのは御免だからな、と寵也はこちらを一瞥もせず言う。
「…失敗しても知らないんだから」
頑張りなさいよ、と巴は呟いた。
「…みんな、ありがとう」
そう言って、水晶は迫り来るカゲに目を向けた。
塔のようなカゲはゆらゆらと歩道橋に近づいていく。
それと共に、頂上部分の光が少しずつ強くなっていった。
あと少し、あと少しで、と水晶は拳銃型P.A.のトリガーに指をかける。
…過去の、澁谷學苑に通っていた頃の自分なら、こんなことはしなかっただろう。
でも幕針文化学院に入学して、わたしは変わった。

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鏡界輝譚スパークラー Crystal Brother and Sister Ⅸ

「避けて!」
真っ先に気付いた水晶の声と共に、加賀屋隊の面々は散開する。
「%>“\*+‘$\‼︎」
咄嗟に手持ちの銃器型P.A.のトリガーを引き、5人は歩道橋に飛び込んできたカゲを仕留める。
「まだ来る!」
巴が手元の端末を見ながら叫ぶと、水晶は思わず立ち上がる。
「兄さん達は⁈」
石英と狙撃手が待機している建物の方を見ると、もうそこには多くのカゲが群がっていた。
「このままじゃ」
水晶はポツリと呟く。
「‘|+#$<$<$$‼︎」
「伏せろ加賀屋!」
寵也の声にはっと我に帰ると、水晶の目に数十メートル先にいる塔のようなカゲが光線を放とうとしている。
瞬時に水晶が伏せると、歩道橋の壁を光線が掠めていった。
「あいつ、もう来てる!」
「狙撃手はどうなったの⁈」
「そんなん知るか!」
「まだ来るわよ!」
弾、紀奈、寵也、巴はそれぞれ言いながら歩道橋に攻め込む小型のカゲ達を屠っていく。
水晶も拳銃型P.A.を連射していったが、ふと手を止める。
「加賀屋さん?」
巴が聞く頃には水晶は立ち上がっていた。
「え、みあきち何考えてるの⁈」
「そうだよそんなことしたら…」
紀奈と弾が心配そうに言ったが、水晶は気にせずこちらへ迫り来る大型のカゲに向かって拳銃型P.A.を向ける。

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白と黒と青き星〜第3話 帰還〜

【目標沈黙、侵食、群発共に確認されません。これより避難民の帰宅整理に移る】
『了解。輝士班2名帰還します』
【了解。出口4.5番を開放します。そこから出撃ルート4.5番で帰還してください】
『了解』
2人は揃えてそう言い、通信を切った。
「帰ったら…どうせ説教だな」
「だよね〜…」
指定された出口に向かいながらのんびりと話す。
「まぁ怒られるの大半お前だけどな」
「なんでよ!手こずったのも最後連携やめて勝手したのもあんたじゃん!」
「よく言うよ、放っから俺を風穴としか扱わなかったくせに」
「それは…」
自覚はあったようで少しホッとしている。
「でも!最後のセリフはいらなかったかなー」
「うるせぇ!」
自分でも突発的に出た癖のようなものでそれなりに後悔してたのでいらなかったと言われると耳が痛い。
「あ、でも私このままライブだ!」
美空は用事を思い出して笑顔になった。
「じゃあ説教は1人ずつ、つまり時間で怒られる量はわかるな」
パッと出た笑顔が一瞬で曇る様は滑稽だ。
「説教を中断してライブに行けば…」
「やめとけよ、ライブも大事な仕事だろ、みーたん?」
高田美空は光の力をアイドルにも使う。
愛称は[みーたん]
元来のスタイルと戦績も相まってかなりの人気だ。
「出口だ、ちゃんとライブ行けよ?」
ジョーはそう言い残して止まることなく出口に入った。
「わかってるよ、私だって行きたくないわけじゃないし…」
美空ももう言い返す相手がいないとわかりながらも言ってから出口に入った。
「おかえり、お疲れ様」
「お疲れ様、ナイスコンビネーション!」
出撃ルートを抜けた先で迎えてくれたのは2人の同期だ。
・津上利樹(つがみとしき)
・大幡有日菜(おおはたゆいな)

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鏡界輝譚スパークラー Crystal Brother and Sister Ⅷ

ちょうど歩道橋の壁に隠れた所で、耳の通信機から石英の声が聞こえてきた。
『作戦はぼくがさっき言った通り、狙撃手以外のメンバーが陽動で一斉に銃器型P.A.を撃つ』
それでカゲを混乱させている隙に狙撃手がコアを撃ち抜く、と石英は続ける。
『みんないいね?』
石英がそう尋ねると、通信機の向こうから了解!と威勢のいいクルセイダースのメンバーの声が聞こえた。
加賀屋隊もそれぞれ返事をする。
『じゃあ目標が近付いてきたら合図を出すから』
それまで待っててね、と石英からの通信は終わった。
「…それにしても」
石英の通信が終わった直後、寵也はポツリと呟く。
「この辺りは妙にカゲが少ないな」
「そう?」
弾は首を傾げる。
「他のみんながこの辺りのカゲを倒しちゃったからじゃない?」
別におかしいことでもないよ、と弾は続ける。
「確かに、この辺りはほとんどカゲはいないけれど…」
STIから支給された周囲のカゲを探索する端末を見ながら巴は言う。
「この通り、周りに隠れている訳でもないみたいだし…」
そう言いかけて、巴は言葉を失った。
「?」
巴、どうかした?と紀奈が巴の方を見る。
巴の目は手元の端末に釘付けになっている。
「巴?」
「マズい」
紀奈の言葉を無視するように、巴は呟く。
「え、マズいって…」
「こっちにカゲの群れが近付いてる‼︎」
巴はものすごい剣幕で叫んだ。
それと同時に頭上から黒い何かがいくつも飛び込んできた。

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鏡界輝譚スパークラー Crystal Brother and Sister Ⅶ

数分後、石英の部隊…クルセイダースのメンバー4人はリーダーの元に集まった。
水晶の部隊も、巴、弾、寵也の3人が水晶の元へ来た。
最初3人は石英を見て、加賀屋 石英だ!とかクルセイダースのリーダーじゃないとかなんとか言っていたが、共同作戦を展開すると聞いてすぐに落ち着いた。
数分の話し合いの末、作戦は決まった。
あの種のカゲは頂点部分にコアがある。
だから高い所から狙撃してコアを破壊すればいいのだが、あのカゲは近くの動く物に反応して光線を放つ。
だからカゲの足元や建物の上で囮がカゲの気を引いている内に狙撃手がコアを撃ち抜くという算段だ。
とりあえず、本命の狙撃はクルセイダースの射撃に長けたメンバーが、囮は残りのメンバーと加賀屋隊が担当することになった。
「やっぱり名門の部隊長はすごいなー」
紀奈は歩道橋を登りながら呟く。
「あんなにサクサクと作戦決められるなんて」
「そりゃあ私達とは次元の違う教育を受けているからよ」
仕方ないわ、と巴は言う。
「あ、巴嫉妬してる?」
「してない」
弾にそう言われて、巴はぷいとそっぽを向く。
「とにかくお前ら、P.A.の準備はできてるか」
マシンガン型P.A.を準備しながら寵也が言う。
「あー大丈夫大丈夫」
「OKだよー」
「もちろん」
紀奈、弾、巴はサブウェポンの拳銃型P.A.を見せながら笑う。
「加賀屋は?」
「大丈夫」
寵也に聞かれて、水晶も拳銃型P.A.を見せた。