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不審者騒動 その①

結局、昨日はわざわざうちと反対方向にある友人の家まで、奴を送ってやることになってしまった。これはそれなりの返礼を期待しても罰は当たらないだろう。
そんなことより、今日は週に2度しか無い部活の日だ。気持ちを切り替えていこう。
そう思っていたのに、今日の部活は無くなってしまった。どうやら学校の近くに不審者が出るようになったから、遅くまで学校にいないでさっさと帰れって話らしい。
「まったく、ひでえ話だよなァ? 毎日部活がある運動部の連中なんかは喜んでたけどよー」
俺と同じ部活の友人も文句を言っている。
「お前なら、別に学校にいられるんじゃねーの?」
「いたところで部活そのものが無いんじゃ無意味だろ」
「それもそうだ」
校門前で友人と別れ、一人家路についた。学校で不審者の話なんぞ聞いたものだから、どうしてもビビる気持ちが心の隅にある。
近道をしよう。そう思い、大通りを出て時間の無い時によく使っている細い道に入った。
そして、離れた場所に立つ人影を見つけてしまった。
黒いパーカー、青いキャップ帽、使い捨てマスクで顔はよく見えないが、俺より少し背が高いくらいの、多分男。その風貌が既に不審者だと物語っている。学校を早上がりにさせられるほどの不審者が俺の前に現れた。その事実が、俺を一気に恐怖のどん底に突き落とした。

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異端児たちの集う夜

ある夜のこと、巧妙に隠された恋心を、想い合う想い人が暴いた。
ある夜のこと、響いた歌声は、世界を物理的に震わせた。
ある夜のこと、その眼は良いも悪いも記録した。
ある夜のこと、彼女は辛いにも幸いにも寄り添った。
ある夜のこと、異能を切欠に思想と自由が論じられた。
ある夜のこと、己の才を知らぬ絵描きは、ただ只管に描き続けた。
詩にも文にも満たない想像力の欠片の中で尚、彼らはきっと、今夜も異能を振るい続けるのだろう。何のためでも無しに、それが彼らの一部なのだから。
『常人』を外れた異端の異能者たちは今夜も、人外の領域、黄昏の更に先でただ集う、と、良いな。

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そういうわけで、先月いっぱいまで開いていたちょっとした企画『異端児たち』には、それなりの方々に参加いただけました。よく知る名前の人も居て、大変嬉しゅうございました。
ちなみに先月のうちにこれが書けなかったのは、単に気付いたら日付が変わっていたってだけの話なのです。
素敵な文章を書いてくださった皆さんも、広義にいうところの「異能者」と呼んで良いんじゃないですかね。どうぞ誇りに思ってもろて。

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雨の日の躱し方

ある日、学校から帰ろうとして窓の外を見ると、いつの間にか結構な勢いで雨が降り始めていた。
「うわマジか。いや天気予報をまるで見ない俺が悪いんだけどさ。今日傘なんか持ってきてねえよ」
背後から声がした。明らかに自分に向けられたこの声は、つまりそういうことなんだろう。
「言っとくが、俺も傘持ってきてないよ? 持ってきてたとして誰が野郎二人で相合傘したがるってんだよ」
振り返りながら答える。背後に立っていたのは、やはり俺の友人だった。
「そう言うなよォ、お前なんか傘持ってようと持っていまいと実質持ってるのと同じだろうがよー」
馴れ馴れしく肩を組もうとしてくる友人を躱し、とりあえず昇降口に向かう。
「ヘイどうした、まさか他の奴の傘を盗もうってんじゃ無いだろうな?」
やや鬱陶しく絡んでくる友人をスルーして、外履きに履き替える。友人も靴を履き替え、完全に傘をたかる気だ。
「いや、流石に人のもの盗もうとは思わねーよ」
「ならどうすんだ?」
「分かってんだろ?」
顔を合わせてニタっと笑う。
昇降口の周りには、奇跡的に誰もいない。
「さあさ頼んますぜ大せんせー」
おどけてそう言う友人を無視して、一度深呼吸して集中する。
「来い、穢傘・儚月」
「来たぁーッ、最高に厨二な召喚シーン!」
「うっせ」
揶揄う友人をいなしていると、空から汚れたビニール傘が降ってきた。65㎝という少し大きめの直径、プラスチック製の柔らかい骨、先端の部分についた土埃の汚れ。間違いなく俺が普段使っているものだ。
聖剣よろしく地面に突き立ったそれを引き抜き、普通に差して雨の中に出ていく。友人もいつの間にか隣に入って来てたけど、入ってきたものはもう仕方が無いか。