表示件数
1

世にも不思議な人々㊴ 歩く人・見せぬ人その2

「おい、どうしたヨースケ。お前があいつから逃げたそうな顔してたから隙を作ってやったが、何故あいつから逃げるんだ?」
影の薄い少年が二段少年に問いました。
「いや、自分でもよく分からん。けどあいつは何かヤバイ気がする。人間として必要な何かが決定的に欠けてる気がするんだ。あと普通にでかくて怖い!」
「だから何故逃げる?仮にも同級生だろ」
「いやー、よく分からん異能を持ってる俺らとしてはあんまりバレちゃいけない気がすんのよ。あいつは絶対俺らの異能について訊こうとしていたぜ」
「ふむ。じゃあ逃げた方が良いかもな。って、あいつ追い付いてきたぞ」
後ろを見ると、すぐ後ろにまであの大男は迫って来ていました。
「やべえぞあれ!やっぱ体格差的に逃げ切るのは無理だって。一歩当りの距離が違うもん!仕方ねえ、ヨータロー、俺に負ぶされ!」
「おお、やるのか、あれ」
ヨータロー、と呼ばれた方が何とかヨースケ、と呼ばれた二段少年の背中に取り付くと、次の瞬間には二人の姿は大男の真上にありました。
「ぬ、やはりお前ら……!」
大男が驚いている間に、二人は着地し、逆方向に向けて全力ダッシュを始めました(ヨータローもヨースケの背中からもちろん降りています)。
「くそう、逃がすか!」
大男が追おうとしましたが、その時またあの「カツン」という音が。そちらを大男が見て、やはり何も無いと確かめてから向き直ると、やはり二人は遠くに。
「ええい面倒くさい、こうなったら奥の手だ」
そう言って大男は右手を地に付き、力を溜めるような動作を始めました。

2

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ①

「ちょ、ちょっと待ってちょっと待って!」
昼休み、暑いながらもそれなりに人がいる廊下を、わたしは同じクラスの亜理那に引きずられて走っていた。
「とりあえずちょっと待って!」
わたしの必死の叫びをやっと聞き入れたのか、亜理那は立ち止まってわたしの方を振り向いた。
「なぁにサヤカ?」
「何って…」
イマイチ状況を理解していない亜理那に、わたしはちょっとあきれてしまった。
…ついさっきまで、わたしは教室でいつものように本を読んでいたはずなのだ。
だけど亜理那に、ちょっと会ってほしい人がいるんだけどさぁ…いい?と聞かれ、暇だからいいよ、って答えたら…こうなった。
誰かに会うと聞いて、教室出てすぐかな、と思っていたが、教室出てすぐどころか、廊下の突き当りのほうまで移動してきてしまったのだ。
…しかも走って。
走らなければいけないって事は、何か重要なことなのだろうか。
なんとなく、察しがつきそうな気がするけど。
「ねぇ亜理那…一体誰に会うの?」
誰に会うのかまだ分からないから、わたしは尋ねてみた。
「え、それはね~…まだ秘密!」
そう言って亜理那はまだ誰に会うかも伝えず、ただ人差し指を立てるだけだった。

0

世にも不思議な人々㊳ 歩く人・見せぬ人その1

「よお、二段ジャンプ野郎」
例の大男が彼の二段ジャンプ使いの少年に話しかけました。
「……、え、何、俺?」
「お前以外に誰がいる」
「こいつかな」
彼の横には、例の影の薄い少年がおりました。
「して、何用だい?」
二段少年(長いのでこう略します)が問います。
「おう、話は他でもない、先日のケイドロについてだ」
「あー、楽しかったねー。それが何?」
「あの時の二段ジャンプについて色々訊きたい。ありゃあ人間にできる動きじゃなかったぜ」
突然二段少年が狼狽え出しました。こいつは黒だな。
「あ、ああ、あれかい?あれは、ほら、体重移動の仕方と蹴り方の工夫でどうにかなるんだよ」
「馬鹿言え。そんな小説みたいなことがあるか」
「君今結構なこと言ってるぜ……」
「さあ、話してもらおうか…」
そう言って大男が二段少年に向かって一歩踏み出したその瞬間、どこからか、「カツン」と足音のような高く硬い音が聞こえてきました。思わずその音の方に振り向くと、何も無い。しかし大男が向き直ったとき、彼の二人の少年はどこかに消えていました。
と思ったら、少し離れた場所にいました。大男との距離を全力で引き離しにかかっています。大男は、彼らは黒だと確信し、追跡を開始しました。

2

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 5.クラーケン ㉒

「…まぁ、僕から言えるとしたら、この人たちは敵に回したらものすごくヤバい人たちだって事です、はい」
美蔵は微妙な顔でそう言い切った。
「…そうなの」
わたしはポツリと呟いた。
確かに、この人たちは敵に回さない方が良いのかもしれない。
前に「常人は”異能力”に関わっちゃいけない」と言われた時に恐ろしいと思ったし、美蔵は彼らを見た時に動揺していた。
よくよく考えたら自分はかなりすごい人たちとつながりを持っているんだな…そう思った。
「…ねぇ、そろそろ駄菓子屋行っていい? いつまでもここでグダグダしてるワケにはいかないし」
話に一区切りがついたところで、ネロが切り出した。
「そうだな」
「じゃー行こーぜー」
「…まだ、買い物してなかったの」
みんなが駄菓子屋の方に移動しだす中、わたしは思わず言った。
「…いや、まだなんだけど」
ネロがぽかんとした様子でこちらを見た。
「あ、そう…」
「とりあえず行こうぜ不見崎(みずさき)。僕も用事済んでないし」
ボンヤリしているわたしを美蔵は追い抜かしながら言う。
「え、ちょっと待ってよ!」
わたしはまた置いてかれないように、彼らの後を歩き出した。

〈5.クラーケン おわり〉

1

世にも不思議な人々㊲ 死なない人・死なせない人その3

「まあそいつら普通に捕まったんだけどな」
「へー、どうやって?」
「二段ジャンプ野郎はより高いジャンプで取り押さえたし、影の薄い奴は普通に突っ込んで捕まえてた」
「二段ジャンプより高いジャンプができるその子何者?アスリートか何か?」
「さあ、知らん。けど知らないってことは違うんだろ。で、神か少年も物陰に隠れてたのがバレてあっさりお縄」
「神か少年って何その略し方」
「で、残りが主催者のジョジョなんだが、探しに行く気配が無いからどうしたのかと訊いたらそいつは絶対に捕まえられないからどうせ無駄だっつって、じゃあ試しにと一回ケイドロ止めて範囲決めてそいつを全員で捕まえようってことになったんだよ」
「範囲って?」
「4m四方」
「無理でしょ。1対6でしょ?」
「ああ、無理だった」
「やっぱり」
「捕まえるのが」
「ファッ!?」
「あれは人間の身体能力じゃなかったわ。あいつも俺らの同類だったのかね?」
「ハッハッハ、そんな馬鹿な。そんなコロコロいるわけ無いよ」
「……そうだな。それもそうだ。……あれ、そうだよな?あんまり人外ばっかで感覚変になってたかな」
「それもやむなし。だって君だろ、二段ジャンプだろ、逃げ足特化だろ……、マジに全員能力者あるかも……」
「だろ。折角だから今度そいつらにカマかけてみよっかな」
「何か分かったら教えてよ」
「おう。……さて、ところで一つ良いか?」
「何?」
「お前が不登校な分には別に構わないんだが、何故俺ん家に来た」
「細かいことは気にするなよ、少年」

2
0

世にも不思議な人々㊱ 死なない人・死なせない人その2

「さて、少年?どうしてこうなったのか話を聞こうか?」
少女が大男に問うた。
「あー、そうだな、簡単に説明するとだな、まあこれを見てくれ」
そう言って大男は自分のスマホの画面を見せた。チャットアプリの画面が表示されている。少女がその文章を音読した。
「『逃げ足に自信のある奴集合!あの公園でケイドロしようぜ!日時は……』。……何これ。いやね、まあ、それに参加したってことなのは分かった。けどそれでどうしてあんなになるの?君はもっと自分を…まあ死なないし良いのか?」
「まあそういうわけだ」
「まあ良いでしょう。じゃあその時の話聞かせてよ。どういうメンツでやったのさ?」
「えー、メンバーは殆どクラスの男子で、主催者はジョジョだろ、他には」
「待って、ジョジョって誰よ?」
「所沢初だが」
「無茶が過ぎない?」
「そうか?で、他がクラス一の俊足だろ、『お前神か』が口癖の奴だろ、影の薄い奴だろ、二段ジャンプできるやつだろ、」
「ちょっと待って。二段ジャンプってできるもんなの?」
「そいつはできたからなー。んであとは、ジョジョが連れてきたお前くらいちっさい少女」
「ほう。それで?」
「その少女が鬼だったんだが、真っ先にクラス一の俊足がやられた」
「へえ、その子速いんだねえ」
「で、その次に俺がやられた。逃げるときに枝に引っ掛けるか何かしたんだろ」
「引っ掛けるのは服くらいにしてほしいよ……」
「んで、そこからが長かったな。鬼は二段ジャンプ使いを追ってたんだが、相手は空中を上手いこと逃げるからなかなか捕まらない。その間に影の薄い奴が解放に来たんだが、あの鬼、20mくらい離れた距離からそれに対応しやがったんだ。けど何故かそいつも捕まえるには至らない」
「はー。そんなことあるのか」