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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 2.コマイヌ ㉑

「…アンタ、ボクらにずっとくっ付いていたけど、そーとー暇なんだね」
先を歩いていたネロが振り向いて言う。
「いや、それでもいいじゃん。別に他のみん…」
「それな! ずっとおれも暇で暇で仕方ないんだと思ってた。ま、本人の前で邪魔とか言えねーし」
耀平の発言に、わたしは凍り付いた。
「まーそうだな~、でも今邪魔って言っちゃったじゃん」
師郎が耀平に向かって苦笑する。
「にしてもさー、耀平、何でアイツのこと助けたの? 例外中の例外の、本来なら異能力のことを知るハズはないのに、知ってしまった常人に、”異能力者”として情を持たせてもいいの? フツーアウトでしょ」
ネロの言葉に、耀平はぴたりと足を止めて応えた。
「え、単純に面白そうだったから、それだけだぞ? 異能力を知ってしまった常人という面白い存在の前で、能力使ったらどうなるか、そういうキョーミ」
え…? わたしは言葉が出なかった。わたし、面白いモノなの…?
「耀平はいつもそんな調子で生きてるよな。ま俺もそう思ったけど」
「だろ⁈ やっぱそう思ってただろ?」
彼らがわたしによくしてくれてたのは、ただの興味からだけ…? わたしは、自分が勘違いをしていることにようやく気付いた。
「…待って、みんな、わたしと仲良くしてくれたのは、ただの興味なの?」
彼らは少しの間沈黙する。

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力ガ欲シイカ?

不良三人組に取り囲まれてピンチに陥っていた僕の頭の中に、声が聞こえてきた。
『力ガ欲シイカ?』
(は?)
『ダーカーラー、力ダヨ、パワー。ヨクアニメヤ漫画デ見ルヨウナ不思議ナ能力』
(はあ…。まあ、貰えるんなら欲しいさ。この場を何とか切り抜けられるような力が!)
『ヨロシイ。ナラバ私ノ力ヲクレテヤル』
そして頭の中の声は止み、代わりに聞き覚えのあるメロディになった。それを認識したときには、既に身体が半自動的に動いていた。
 ・
 ・
 ・
「ハァ……ハァ……ハァ……。いやさ……確かに言ったよ……あの場を何とか切り抜けられるような……ってさ……。けどさ……。もっと良いのあったよね⁉何だよ逃げたり避けたりが上手くなるだけって⁉もっとこう、念力とかさ!身体強化とかさ!夢のあるやついくらでもあったと思うんだよ!」
『ソイツァア仕方ナイッテモンサ。オ前ノ根ッコガ臆病ダカラ、私ミタイナノヲ呼ビ寄セルンダ』
ここまで来てやっと思い出した。あの時聞こえてきたメロディ、あれはストレスに耐えかねて海へと逃げ込んだ主人公の生涯を描いた子供向けの歌謡曲、『およげ!たいやきくん』だ。
駄目じゃん。あれ最後捕まって食われるじゃん。
『ナニ、細カイコトハ気ニスルナ』

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物質至上主義者たちがまた何かやってます。

「そういえばおにーさん」
「何だ?」
「私、おにーさんの名前知らないのですよ」
「奇遇だな。僕もお前の名を知らない」
「これまでは『おにーさん』と『おい、お前』で呼びあってましたからねぇ」
「お前は何という名前なんだ?人に尋ねる前にまず自分が名乗れとよく言うだろう」
「そうですねぇ……。じゃあ『ショーコ』とでも呼んでください」
「偽名かよ」
「本名は嫌いなので」
「そうか。しかし本名を明かさないような人間には名乗れないな」
「じゃあモノノベさんで」
「は?」
「とりあえずの名前です。お互いにだけ分かる名前ってことでどうでしょう」
「何故物部?」
「『物』質至上主義からとりました」
「そこか…。じゃあお前の名前はどこから来たんだ?」
「最初に会ったとき、私に『娼婦か何かか?』って訊いてきましたよね。そこからとりました」
「止めとけ。その由来はあまり良くない」
「じゃあモノノベさんが私の名前をつけてください」
「嫌だね。これ以上お前との縁を強くしてたまるか」
「3ヶ月も一緒に居て何を言いますか」
「うげえ。もうそんなになってたのか。しかしあれはお前が『愛を探すのを手伝ってください』なんておかしなこと言うから」
「もう見つかったと話した気がするのですが」
「そういえばそうだったな。じゃあもうお前と居なくて良いわけだ」
「そうですね……」
「ええいそんな寂しそうな面をするな!何だか悪いことをしている気になる」
「やっぱりあなた、良い人ですよね。もしかして私のこと結構気に入ってたりします?」
「まあ、会ったときお前が言った『物質的な愛』は結構良い言葉だと思ったが」

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 2.コマイヌ ⑰

「…あいつの能力の話、ちゃんと聞いてた?」
あ、そうだった、とわたしは思い出した。そもそも目が発光してるし…そういえば、どういう能力だっけ?
「あいつの『人やモノの行動の軌跡が見える』能力を使って、お前の行動を追っかけてるんだよ。でも、あいつの能力じゃ、行動の”軌跡”は見えても、誰のものかの特定はできない。ここでネクロマンサーの登場だ。ネクロマンサーの『過去そこにいた人やモノが残していった記憶を扱う』能力で、記憶を見て誰のか判別してんだよ」
わたしの心を察したのか、師郎がご丁寧にも説明してくれた。
「…なんか、探偵みたいだね」
ふと思ったことを呟くと、師郎は目を丸くした。
「は? あの2人超バカだぞ? ぶっちゃけ俺以下だから」
「ちょっと気が散るから黙ってくれる?」
不意にコマイヌが振り返った。その黄金色の目はあの明るくおしゃべりな耀平のものではなく、むしろ獣のような恐ろしさが灯っていた。
その恐ろしい目に睨まれて、わたしは恐怖で沈黙したが、師郎は慣れているのか、すまんなと言うだけだった。
これ以上文句を言われるのは嫌だったから、わたしは黙って彼らの後を付いて行くことにした。