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特別なクリスマスのために

「今からクリスマスデートしよう、愛しい人!」
「……クリスマスは2週間後ですよ愛しい人」
「いや違うんだよ、来たるクリスマスを最っ高に特別なものにするために、私は完璧なプランを考え付いたんだよ」
「ほう。聞こうか」
「クリスマス当日、クリスマスっぽいことは何もしないで、浮ついた世間をけらけら笑いながら、2人でこの部屋でぐっだぐだにトロけてやるの。こんなん逆に特別でしょ」
「……なるほど? そのために今年のクリスマスっぽいことは今日のうちに済ませちまおうと」
「そゆこと」
「……俺、いつも思ってたことがあるんだよ」
「なになに?」
「駅前とかのクリスマス向けのイルミネーションあるじゃん。ひと月くらい前にはもう付き始めてるやつ。あれ、毎年毎年気が早えぇなぁーって思ってたんだけどさ……今回ばっかりは、あれって早くて正解だったんだなって」
「そう来なくっちゃ! どこ行く? あ、プレゼント何欲しい?」
「あー…………有線ヘッドセット」
「くっ……w、ふふっ…………w クリスマスっぽくない……www」
「るっせぇなぁ、今使ってるのが駄目になってきてんだよ。で、そっちは何か欲しい物あんのか?」
「フライヤー!」
「そっちも大概だな!」
「あはは! 電器屋行こう電器屋! じゃ、着替えるから外出てて。女の子の着替えを覗くもんじゃないよー」
「へいへい」

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五行怪異世巡『覚』 その④

山中の道なき道を進む千葉・白神の2人を、杉の木の樹冠近くで1つの人影が眺めていた。
「……何だ、この辺りじゃ見ない顔だと思ったら」
そこに、背後から声がかかる。
「うおっ……何だ、青葉ちゃんに負けて手下になった天狗じゃねッスか」
子どもの姿の天狗に軽口で答えたのは、種枚の弟子、鎌鼬であった。
「おまっ、仮にも大妖怪に向けて無礼だな!? お前こそあの鬼子と古い仲なのに〈木行〉の座を余所の妖怪に奪われた未熟者のくせに!」
「まーまー、細かいことは良いでしょ」
「むぐ……ところで貴様、こんなところで何をしている?」
「いやぁ……ほら、俺って師匠から白神さんの見張り命じられてるわけじゃないッスか。だからこうして出張って来てるわけで。そういう天狗ちゃんこそ、こんなところで何してンスか?」
「ボクはここいらの山間部の妖怪の中じゃ、一応最高位の格だからね。〈金行〉に言われて雑魚共があまり『お痛』をやらかさないように見てやってるのさ」
「へぇ……ま、今日は師匠がいるわけだし、師匠の手の届く範囲なら、俺らの出る幕も無いでしょうね」
「だと良いけどね。それじゃ、ボクは行くよ」
「うーいお互い頑張ろうぜー」
天狗は“隠れ蓑”によって姿を消し、その場から飛び去った。それを見送って、鎌鼬は白神と千葉の姿を探す。枝葉の隙間に、やや離れた2人の姿を発見した鎌鼬少年は、自身の異能によって風に姿を変え、上空からの追跡を再開した。

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五行怪異世巡『覚』 その③

白神さんの方を見上げると、彼女は手足の爪を直径数mはありそうな大樹に突き立てて、その木の幹にくっついていた。と思うと、すぐに地面に飛び降りてしまった。
「千葉さん、大丈夫? 怪我とか無い?」
白神さんが尋ねてくる。その手足は既に人間のそれに戻っていた。
「はい。白神さんが上手く走っていたので。さっきのは種枚さんに受け止めてもらったし」
「そっか、良かったぁ……」
突然、種枚さんが間に入ってきた。
「そんじゃ、ここを中心に手分けして探していくぞ。私はあっちに行くから、お前ら二人で反対側から攻めていけ」
「りょ、了解です」
「分かったー。それじゃ、行こっか千葉さん」
「分かりました」
白神さんと連れ立って、大して整備もされていない山中の細い獣道を進む。頭上の密集した枝葉のおかげか、天気予報で見た気温ほど暑くはない。
「白神さん、大丈夫ですか?」
自分の前方3mほどのところを、生えている草や灌木をかき分けて道を広げながら進む白神さんに声をかけてみる。
「んー? 大丈夫だよ、千葉さん。心配してくれてありがとうね」
「いやまあ、はい……ん?」
白神さんを追っていると、ちょうど左後方から植物をがさがさとかき分けるような物音が聞こえてきた。反射的にそちらを振り向き、うごうごしている藪の動きに注意を向ける。
数秒ほどじっと眺めていると、1頭のイノシシが顔を覗かせた。直後、自分のすぐ脇を放電が通り抜けて、イノシシの足下に直撃する。
「……なーんだ、ただの野生動物だったのかぁ」
白神さんが自分の下に駆け寄ってきた。
「もし悪い妖怪だったらと思って、つい電気使っちゃった。感電してない?」
「あ、それは大丈夫です」
「良かった。ほら、行こう?」
「あっはい」

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五行怪異世巡『覚』 その②

覚。サトリ。名前くらいは聞いたことがある。人の考えが読めるという、有名な妖怪だ。たしか、あれは人食いの類だったような気がするが……。
「ちょっとしたツテでさ、この山ン中にいるって情報を掴んだワケよ。割と面倒な種だからなァ……ここらでちょいと囲っとくかブチ転がすかした方が安全の観点からしてもマシな気がしてさ」
「な、なるほど……」
「ヤツのいそうなエリアまでは分かってんで、取り敢えずそこまで直行するぜィ。おいシラカミメイ、遅れンなよ?」
「はいはーい。じゃあ千葉さん」
「何でしょう白神さん」
自分の目の前で、白神さんが四つん這いの姿勢になる。
「…………? 白神さん、これは……?」
「どしたの千葉さん? 早く乗ってよ」
「ちょっと意味が分からないんですが……」
「んー? だって千葉さん、山の中であんまり速く走れないでしょ? 『雷獣』の足ならそれなりに素早くなるからさ」
彼女が『妖怪』としての姿をさらすのに思ったより積極的なことを意外に思いながらも、恐る恐る背中に跨る。長身の割にスレンダーな彼女の身体はなかなか座り心地が悪かったが、どうにかバランスを取る。
「よしよし。それじゃ、振り落とされないようにしっかり掴まっててねー」
「え、はい了解です」
身を伏せたのとほぼ同時に、種枚さんと白神さんは駆け出した。一瞬で最高速度に到達し、自動車並みの速度で木々の隙間を器用にすり抜けていく。少しでも頭を上げたら枝葉にぶつかってしまいそうだ。というより風圧で落ちてしまいそうでじっとしているしか無い。
10分ほど走り続けていただろうか。跳躍した白神さんが『垂直に』着地し、急停止した。
「っ⁉」
突然の事態に対応できずに落下したが、種枚さんに受け止めてもらうことができた。

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御狐神様 キャラクター

・御狐神様(オコミ=サマ)
年齢:外見年齢20歳(実年齢は20歳)  性別:外見上は女  身長:165㎝
とある地方の村落で信仰されていた神様。正確には信仰によって生み出された存在。外見は狐の耳と尻尾が生えた和装の女性。艶やかな色素の薄い茶色の長髪をしている。
信仰心から生まれたために神様という自覚があるので、人間と遭遇した際は努めて尊大な態度で接する。実際の性格はかなり素朴でビビリの小心者。御友神殿(後述)とネズミの天ぷらや果物を食べている時が一番幸せを感じる。果物の好みは甘くて柔らかい果肉のものだが、食肉の好みは小骨の割合が高いネズミの尻尾や小鳥の脚など。
ちなみに料理は結構出来る方。サバイバルも結構出来る方。一緒にキャンプとかしたら滅茶苦茶楽しそう。
神徳は特に無いが、一応神様なので霊感はあるし、大抵の生物や怪異存在は神威でビビらせて動きを止めることができる。何なら弱個体の霊体は神威で祓える。

・御友神殿(ゴユウジン=ドノ)
年齢:50歳  性別:メス  体長:50㎝くらい
オコミ様の友達。お社の中に繋がれているキタキツネ。その正体は御狐神様の本体というか正体。この『ただのキツネ』が祀り上げられて溜まりに溜まった信仰心や畏敬の念が形になったのがオコミ様。オコミ様はお社に一緒に祀られているだけの無関係の別個体だと思っているが、何なら実質的な親まである。
割と年食っているうえ幽閉のストレスも溜まっているので元気が無くて、普段はお社の隅っこで丸くなっている。オコミ様のとってきたネズミや小鳥や果物を食べるのが好き。骨と肉のバランスが良い小動物と、少し酸味のある瑞々しく柔らかい果物が好み。愚かな人間どもは仕留めるのが面倒な生きた鶏とか食べにくい人間の生贄とかばっかり押し付けてくるので嫌い。
元々、かつて豪雨で村の近くの山が土砂崩れを起こした際に、運よく村を避けてくれたのを見に行った村人が、土砂や倒木の隙間に上手い事収まっていて生き残っていた子ギツネを拾って来てそのまま神様に仕立て上げたという出自。
年齢からも分かるように、大量の信仰心を浴びたことで神格化しており、既にただのキツネではない。ただのご長寿キツネである。