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魔法をあなたに その④

『よしオーケイ、そんじゃァ早速本題に入らせてもらうぜェ』
「あ、あの、一つ良いですか?」
『ア? 何でェあと周りに人の姿が無い場所で大声で話すのはオススメしないぜ』
「え、あ、はい……」
ヤツが声を潜める。よしよしと頷き、話を再開しようとして、ヤツの方からこっちに問いかけてきやがった。
「それで、さっきの質問なんですけど。あの、あなたは一体……?」
『アァン? ンなこたァどうでも良いんだけどよォ……まーいーや。オイラのこたァ小悪魔とでも呼びやがれィ』
「あ、はい……え、あ、悪魔?」
『ソソ、悪魔タン。オイラのビジュアルがテメエらでいうところの如何にも悪魔でヨ。まァテメエらが想像するほど恐ろしい代物でもねーから、気楽に付き合おうぜ?』
「は、はい……」
『そんじゃ、自己紹介が終わったところで本題に入るか。あァ、ソッチの名乗りは要らねーゼ? オイラは小悪魔だからナ、情報ツウなんだヨ』
「そ、そうなんですね……」
ヤツの戸惑っているサマは少し愉快だったが、いい加減本題に入らねェとオイラの身体にも悪い。ここは敢えて、使い古された伝統的文句で攻めさせてもらおうか。
『なァ嬢、お前さん、“力”が欲しくないか?』

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五行怪異世巡『こっくりさん』 その⑦

「皆さん、終わりました。もう目を開けても良いですよ」
4人の生徒は、平坂の言葉に恐る恐る目を開けた。霊感の無い4人には、目に見えた変化は確認できない。
「お疲れ様でした。これで脅威は去ったと思いますが……念のためにこれを持っていてください」
そう言って、平坂は4人に1つずつ、真鍮製の小さな鈴飾りを渡した。
「あの、これは?」
女子生徒の1人が尋ねる。
「お守り代わりの品と思っていただければ。常に肌身離さず……とまでは言いませんが、しばらくの間、可能な限り身近に置いておくことをお勧めします」
「はーい……神主さん、今日はありがとうございました」
その生徒の言葉に、あとの3人も感謝の言葉を続けた。
「リホちゃんも、呼んできてくれてありがとうね」
「良いの良いの。私は今回のことについてこの人と少し話さなきゃだから、みんな帰って良いよ」
犬神が追い返すように手を振りながら言うと、4人の生徒は頭を下げながら教室を出て行った。
「……お疲れ、『神主さん』」
「とどめを刺したのはお前だろう」
2人だけ取り残され、平坂と犬神は軽く拳を突き合わせ互いを労った。
「あ、砂返すね」
「要らん。持っていろ。あって困るモノじゃ無いだろ」
「うーい」
犬神が能力で砂を操作し、巾着袋の中に一粒残らず納め、口を締める。
「そういえば『アレ』、何だったんだろうね? こっくりさんってキツネじゃないの?」
「分からん。凡そ四足動物のようではあったが……あの生徒ら、何を呼び出したんだ?」
「分かんない。やってるところ実際に見てたけど、大体普通の『こっくりさん』のやり方だったよ?」
「……そうか。俺はもう帰るから、結界の片付けを手伝え」
「ほいほい」

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五行怪異世巡『こっくりさん』 その⑥

それからも数度、短刀による刺突を放ったが、影はその尽くを回避する。
ゆらゆらと蠢く影を、跪いた姿勢のまま睨み続けていた平坂の背中を、不意に犬神が軽く叩いた。
平坂が振り向くと、犬神は既に巾着袋の口を開け、中の砂を掌に空けている。それを見て、平坂は数秒逡巡してから、結界の中の4人に声を掛けた。
「……そのまま目を閉じて、決して見ないように」
そして、犬神に手でゴーサインを出す。犬神は小さく頷き、手の中の砂を宙に向けてばら撒いた。砂は落下することなく空中に留まり、犬神の手の動きに合わせて波打つように動き、刃の形状に固まった。
犬神が影を指差すと、砂の刃は高速で射出され、影の胴体を切断する直前で回避され、床に衝突した。それによって粉砕された刃は、6本の棘に再形成され、うち4本が影に向けて再び発射され、そのうちの2本が命中し、影の身体を空中に持ち上げた。
(ふー、ちょろちょろとよく動いたけど、やっぱり『数』は『強さ』だよ)
口の中で呟き、外した2発、撃たずにいた2発の棘を構成していた砂を、1つの弾丸の形状に変形させ、空中で回転させながら照準を定める。
(吹っ飛べ)
砂の弾丸が発射され、影の胴体に命中し、その全身を衝撃によって破裂させた。

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五行怪異世巡『こっくりさん』 その⑤

瞑目して集中していた平坂は、開始の宣言と共に目を開いた。
4人を囲う結界の周りを、一つの小さな影が蠢いている。
生徒の方に注意を向けると、4人とも恐怖からか目を固く閉じているようだった。
平坂が隣に立つ犬神に目をやる。犬神は、先程平坂から受け取った砂の入った小袋を持ち上げ、小首を傾げて見返していた。
(使おうか?)
目だけでそう問う犬神に、平坂はまだだ、という意味を込めて首を横に振る。
再び影の方に視線を戻すと、その影は四足にて結界の周囲を歩き回りながら、蝋燭や盛り塩に触れては身体を仰け反らせていた。
平坂はその様子をしばらく眺め、徐に1枚の御札を床に落とした。
影は歩き回る軌道をそのままにそれを踏み、何事も無く通り過ぎる。
「…………」
黒く変色した御札を拾い上げて鞄に放り込み、代わりに取り出した金属製の円盤を床に置く。影はそれも問題無く踏みつけて通り、金属板は中央から真っ二つに割れてしまった。
(……奇妙な霊だ。結界を破る力は無いにも拘らず、いざ殺そうとすると高い耐性で抗ってくる。力が強いのか弱いのか……)
続いて短刀を鞄から取り出し、ゆっくりと影に突き立てようとする。影は急に動きを止め、身を捩り短刀を回避した。

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魔法をあなたに その③

サテサテ待つこと時計の長針1周分。
よーやっと好みの人材が出てきやがった。見るからに陰気臭せェ女生徒が1人、周囲を気にしながらそそくさと出て敷地外目掛けて一直線ってなワケですよ。
『……当ォー然、声かけるよなァ、えェ?』
ヤツの背後をついて行きながら、ひとっ気の無い場所に入るのを待つ。
辛抱強く待つこと10分チョイ、遂にチャンスが訪れた。ヤツが団地の中に入っていった。
そのまま不気味なほど静かな細い道に入り込んでいったタイミングで、声を掛ける。
『よォ、そこの陰気なお嬢ちゃん』
たしかに魂が足りてねェせいで大それたマネはできねェが、人間の頭に直接声を届けるくらいはオイラ達の生物学的標準機能だ。
オイラの声に気付いたあの娘は、仰天したみてーに足を止め、キョロキョロし始めた。
『今はテメェの頭ン中に直接語り掛けてるンだよ』
「だ、誰⁉ 誰なの⁉」
『えェイ落ち着け! テメェ今、周りから見りゃ完全にヤベェ奴だゼ』
「ぅっ……」
『よォし良い子だ落ち着け落ち着け。深呼吸しろシンコキュー』
ヤツがそれなりにリラックスするのを待ってから、会話を再開。
『安心しろヨ、今テメェに語り掛けるこの声は幻聴でもイマジナリー・フレンドでも何でも無ェ、純然たるマジモンだぜ。まずはソコを受け止めてもろて』
ヤツはおずおずとって感じで頷いた。これで先に進める。

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五行怪異世巡『こっくりさん』 その④

「みんなお待たせー、神社の人連れてきたよー」
犬神が力強い足取りで入っていくその教室の中には、男子生徒2人、女子生徒2人が既に待機していた。
「皆様初めまして。私、隣町の爽厨神社にて神職を務めております、平坂と申します」
平坂が4人に恭しく頭を下げ名乗る様子を、犬神は横目で笑いを堪えながら眺めていた。
「さて……この度はどうやら、厄介な霊障に巻き込まれたようで」
4人の生徒が何か言う前に、訳知り顔で言葉を続ける平坂に、生徒たちは息を呑んだ。
「そ、そうなんです! 俺達、終業式の日に、こっくりさんやって……それからずっと、誰のところでも変なことが起きてて……!」
男子生徒の1人がまくし立てるのを、平坂が片手で制止する。
「ええ、皆さんに憑いているモノについては視えておりますが……あまり『ソレ』について話さないように。『縁』が強まってはいけませんから」
「う、は、はい……」
平坂は説明を続けながら、携えていた鞄を床に下ろし、中の道具を取り出し始める。
「皆さんに憑いたモノは……言ってしまえば決して強い存在ではない。しかし、ある種の『儀式』の形で呼び出してしまったことで、存在が強まり皆さんとの縁で完全に現世に固定されてしまった」
平坂は話しながら、4人の生徒の周囲に糸と蝋燭で方形の結界を作成した。蝋燭に1本ずつライターで火を点け、結界の四隅に並ぶ蝋燭同士のちょうど中間の位置に円形の鏡を1枚ずつ、計4枚置き、更に四隅に盛り塩を施した。
「ね、ねえ神主さん、リホちゃんは入らなくて良いんですか……?」
女子生徒の1人が、犬神を指しながら恐る恐る平坂に尋ねた。
「別に私は何にも来てないもーん」
「……実際、彼女に『良からぬモノ』が近付こうとしている様子はありませんから。優先すべきはあなた方4人です。ここからは、私が良いというまで一言も話さないように」
生徒4人が頷いた。
「……では、始めます」

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ロジカル・シンキング その⑫

怪物は暴れ続けるうち、足下の瓦礫に躓き、横倒しに倒れ込んだ。建物の残骸はその質量に押し潰されて容易に崩壊する。
「ホタ! 目隠し!」
「はいはーい!」
アリストテレスの声に答え、フレイムコードが指揮棒よろしくスタッフを振り上げると、炎の渦はうねるように変形し怪物の頭部周辺を取り囲んだ。
(破壊力を意識した〈CB〉とはずらして、硬度と弾速に割り振った貫通力特化型のプリセット)
「〈Preset : Wedge Bullet〉。ホタ、目隠しと外壁一瞬消して!」
「うえぇ? い、いややるけどなんで……」
炎の壁が一瞬分断され、外の空気が流れ込んでくる。それと共に、弾丸のように一つの影が飛び込んできた。ドゥレッツァだ。
「そおおおおおおおおお、りゃああっ!」
勢いのまま、炎の覆いが取り払われた怪物の頭部にドロップキックを直撃させ、跳ね返る勢いで真上に跳躍する。
「カウント3!」
ドゥレッツァの合図に頷き、アリストテレスは〈WB〉と〈CB〉を連続で怪物に向けて射撃した。〈WB〉の着弾と同時に、ドゥレッツァの魔法によって衝撃が炸裂し怪物の頭部が大きく揺さぶられる。その揺り戻しと同時に、銃創を正確に〈CB〉が貫いた。
魔法弾は怪物の体内でその破壊力を発揮する。頭部、ひいては脳という生命と行動管制を司る器官を、外皮装甲の無い内側から直接破壊されたことで、怪物はその身を一度大きく痙攣させ、やがて脱力し動かなくなった。