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白と黒と青き星〜第8話 生活〜

「それはな…彼たっての希望だ」
「え?」
4人は全員が耳を疑った。教官の声と言った内容が一致しなかったのだ。
「彼が先程、明日公表の予定を今晩に早めてくれとわざわざ申し出てきた。当然俺も拒否したのだがな…」
教官の顔はいつになく赤く、語尾にも少し恥ずかしさが見え隠れする。
「どうしても2日目のカレーというものが食べてみたくなってね」
既にタメ語なことよりもその内容のチープさに驚いた。
「カレー…」
他の3人も理解が追いつかない様子だ。なぜ教官はそんな理由を受け入れたのだろうか、それとも別の理由が…?
「そこで仕方なく急遽お前たちを招集したという訳だ」
恥ずかしさも落ち着いたのか、ため息まじりに力なく情報をまとめた。
「つまり、今晩から彼も宿舎に入るのですか?」
ここでこの質問を冷静にできる大幡はやはりズレている。
「どちらでも構わない。告知を早めただけで編入に関する諸々の手続きは明日付だ」
「なるほど、ありがとうございます」
今日でないにしても、告知と手続きが同日というのは十分早く感じた。それほどに彼の転校は極秘かつ迅速に対応しなければならなかったのか…
「寝泊まりは別に仮宿舎でもいいんだけど、明日朝のカレーは彼らのを食べたいな」
ここまでブレないのはもはや尊敬に値する。
「遅くに悪かったな、要件は以上だ。聞きたいことはあるか?」
「いえ、特にありません」
大幡が俺達の顔を確認しながら答える。
「では、明日からは新たなメンバーも加えてまた訓練に励むように」
「はい!失礼します」
綺麗に揃った4人の礼に合わせようとさえしない転校生も言葉だけは倣っている。
「さて、教えてもらおうか君の正体」
教務室を出るなり4人で転校生を囲んだ。

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白と黒と青き星〜第7話 真相〜後編

「失礼します。AA0X期部隊4人ただいま参りました」
教務室はSTIの中でも特に無礼があってはならない場所だ。4人も見事に角度の揃った敬礼を見せる。
「こっちだ」
教務室の奥、教官室から聞こえる教官の渋い声。声のトーンからはまだ内容が見えない。
「はい」
1歩ずつ緊張が高まっていく。
「失礼します」
代表して大幡が扉のノブを捻る。内開きの扉は教官室の中を少しずつ見せる。机、カゲに関する資料の束、教官の姿、そしてもう1人。
「こんな時間に呼び出して悪かったな、もうみんな気づいてると思うが今日呼んだのは彼のことだ」
やはり…
見慣れない人の気配はとても異質で、いつもの緊張感とは違う空気が彼からは発せられていた。
「転校生の井上正大だ」
彼の身に纏う異質な空気の正体はそのやけに尊大な態度で全て物語られた。自信に裏打ちされたその真っ直ぐな目は覚悟を見せる。大幡にはそれがかつての五代、津上と同じ目に見えて少しだけ懐かしい気持ちになった。
「彼は都内の一般高校出身という異質の経歴でな、STIに関する説明が必要だった関係で中途半端な時期の転入になった」
「一般高校…あの、もしかして今日の出撃って…」
疑っていたと自ら言うようなものだがずっと引っかかっていた答えを前に津上は聞かずにはいられなかった。
「察しがいいな、今日の出撃で他部隊の応援を呼ばなかったのは1部隊の方が情報指揮が統一できて説明に都合が良かったからだ」
あの議論の時間を返せ、そう言いたくなるほど教官の回答は淡白だった。
「ところで教官、今回はどうしてこんな時間に…お言葉ですが転校生の件でしたら明日でもよかったのでは…」
言葉遣いに気をつけながらもかなりストレートに聞くあたりはさすが美空といった印象だ。
「それはな…」
先程までの淡白な口調から一転した教官の重く低い声は自分達の予想をはるかに越えた真相を告げた。

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白と黒と青き星〜第7話 真相〜前編

翌朝の分のカレーを残して4人は食事を終えた。
早めに終わらせたのは9時を回るということと、食事の後に美空も含め、もう一度議論するためだった。
「急かして悪かったな」
「全然、どうせ私抜きだと話が上手くまとまらなかったんでしょ」
当たらずしも遠からず…
言い方はムカつくが美空も2人が迎えに現れた目的をおおよそ捉えていた。
「話が早くて助かるよ」
こういう時津上の優しい性格は話がスムーズで助かる。
「単刀直入に聞く、今日の出撃に違和感はなかった?」
「何?ジョーが何か言ったの?」
「ひとまず直感で答えてくれ」
津上のズルさだ。優しい顔から真面目な顔に変えるだけで説得力をもたせられる。
「違和感も何も…ただのバディ単位の出撃だったよ」
聞いてたのかと思うほどジョーの言ってたことと一致する。ある意味これがバディの所以なのか…
「確かに形式は珍しくない、でも…」
そう言いかけて時計を気にした。10時に迫ろうというところ、明日も普通に授業だ。ここでさっきと同じルートを辿り直す時間はない。
「でも?」
「でも俺らの出撃内容を鑑みると素直にそうは思えないんだ」
少しだけジョーに目線を送り、助けを求める。
「え?あぁ、色々見てみるといつも通りってわけではなさそうなんだ」
「ふーん、それで?その何が気になるの?」
まるで他人事といった態度だ。まぁそう思うのも自分たちの結論があるからなのだが…
「そこが本題なんだ…」
【AA0X期部隊、直ちに業務室まで来るように】
聞いていたかのようなタイミングで呼び出しの放送が入る。

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白と黒と青き星〜第6話 団欒〜

その夜、美空の帰りを待ってから食事とした。その時間はもう8時を越えていた。
「任務からライブでお疲れ様」
大幡はいち早く戸の音に気づいて声をかけた。
「ありがとゆいな、なんか今日2回目だね」
「確かに」
そうして2人とも笑っている。
「ご飯できてるよ」
おかえり、という言葉の代わりにそう言えるのはご飯を作った人の特権だなと五代は思ったが、津上の前で言葉にはしたくなかった。
「ご飯!お腹ぺこぺこ〜」
美空は目を輝かせて部屋に走ってくる。
「だからって荷物を俺に投げるなよ」
美空のライブ機材は光の力に依存しているため専属スタッフでも扱える人は限られる。そのため、こういった単発のライブでは個人で管理することが多く、荷物がおおいこともザラだ。
「って…なんでみんなの分まで?」
食卓を見てさすがに美空も空気と状況を察したようだ。
「俺らもまだ食べてないんだよ」
荷物をそっと床に並べながら愚痴をこぼす。
「そういうのは早く言ってよ、なんか私が勝手みたいじゃん!」
“勝手は事実だろ”
この意見はおそらく3人共通だ。
「カレー、冷める前に食べちゃおうぜ」
津上が言うといつも通りの食事の時間と思える。やはりこういう普段通りの団欒はいいものだ。
任務に対して疑問を持ったからか…改めてバディの楽しさを感じたからか…
今日は特にそんな感傷に浸ってしまう。
「これが期間限定なんて…やっぱ残酷だよな」

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鏡界輝譚スパークラー あとがき

どうも、企画「鏡界輝譚スパークラー」の企画者です。
先週金曜日の24時をもって、当企画は“とりあえず”終了いたしました。
ご参加して頂いた皆さん、本当にありがとうございます。
今回は設定を詰め過ぎて難しめの企画になってしまったので参加してくれる人が出てくるか不安でしたが、「ここってどうなってるんですか?」と聞いてくれる参加者さんや自分なりに設定を解釈する参加者さん、設定の穴をオリジナル設定で埋めてくれた参加者さんなんかがいて、あながち難しい設定も悪くないんだなって思いました。

…で、今回は企画の裏話を語りたいと思います。
この企画は高3の時に思いついた物語がベースになっていますが、これには元ネタがあります。
それは、「アサルトリリィ」というメディアミックス作品で、自分が高校生の頃から好きな作品です。
「アサリリ」は謎の巨大生命体に可変武器で立ち向かう少女達の物語なのですが、出会って暫くして「アサリリライクな物語を作りたい!」と創作意欲が湧いてきた結果生まれたのが、この企画のベースでした。
ただ「アサリリ」と全く同じではいけないと思い、例えば男子も戦うとか、武器は変形しないとか、地名は実在のものではなく微妙に違うものを使うとか、色々変えました。
その結果生まれたのが当企画でした。
自分が「アサリリ」に出会わなければこの企画はできなかったので、「アサリリ」には感謝です。

あ、そうそう。
タイトルの「スパークラー」って企画者の造語のつもりだったんだけど、試しに「sparkler」って言葉を調べてみたら実在する言葉だと分かりました。
「花火」や「宝石」、「才人」と言った意味があるそうです。
「花火」のように命を散らして戦う「才人」達の物語…
そして「宝石」にちなんだ名前のスパークラー達。
大分適当に決めたとは言え、こうして考えるといいタイトルだったなと思います。

ちなみに今後こう言った企画を開催するかどうかは未定です。
正直これから忙しくなりそうだし。
でも他の人が企画開催したら参加したいな!

では今回はこの辺で。
遅刻投稿も大歓迎です!
あとまとめもその内作ります!
それでは、テトモンよ永遠に!でした〜

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白と黒と青き星〜第5話 料理〜

「あ、まずい!そろそろ行ってご飯作んないと」
その一言が膠着した会話、場を一気に帰る方向へと向けた。正直先に片付けを終えておいてよかったと思った。
「もうそんな時間か」
「確かにちょっとやばいね」
STIは中高一貫全寮制、全学年が住んでいるため、風呂や食事処は班別(部隊別)に使用時間の割り振りがある。出撃や授業でその時間に着かない場合は届出をする必要があるのだが、今回は任務自体は十分に間に合う時間だったので届出はしていない。
「ごめん、今日はちょっと手抜き料理になるかも」
別に当番制でもなんでもないのだがいつも料理は津上の仕事になっている。
「全然いいよ、ってか手伝えることあったらやるし」
津上がいつも料理担当ではあるが俺も大幡もできない訳では無い。ただシンプルに津上には敵わない。
「ありがと、そしたら具材切ったりとか頼むかも」
『了解』
癖づいたその掛け声は3人がやることを共有した合図でもあった。そうして走って寮に着く。それでもこれといって息をあげないのはやはり訓練の賜物だ。
「あ、もう調理室空いちゃってる」
「ってことはもう時間始まってるじゃん!」
どんなに焦っても調理室の前ではきちんと立ち止まる。
『AA0X期部隊、調理室使用します』
中学時代から叩き込まれた集団行動の基礎は必ず守る。ある意味での儀式のように。
「とりあえず煮込むとこまで出来ればあとは部屋でもなんとかなる!急ぐよ」
津上の掛け声で3人はそれぞれの仕事を開始する。
津上は鍋に火をかけた後、肉を適当なサイズに切っていく。ジョーはじゃがいもをブロックに切り、大幡は人参を半月切りにしていく。
時計は刻一刻と時間を刻む。
アラームが鳴る。
それが片付けの合図だ。
「よし、あとは部屋で仕上げだ」
津上がそう言って火を止め、鍋を持ち上げた。
ジョーと大幡は急いで片付ける。
「よし、急いで帰るぞ!」

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白と黒と青き星〜第4話 懐疑〜後編

「本題?」
「そう、今回の件には何か裏があるんじゃないかなって」
そう言った大幡の表情はかなり真剣だ。
「裏なんて大袈裟じゃないか?ほら、双子田万川って県境だろ?管轄の問題で他部隊と折り合いがつかなかったとかさ」
なぜ俺がこんなに誤魔化すのか自分でも分からないがこの反応はかえって2人の議論を加速させた。
「だとしても澁谷分校には先輩達がいるはず、なのに招集がないなんて…」
「まるで僕ら0X期部隊だけで輝士班の仕事をさせたかったみたいな感じ」
2人の会話はどんどんと何かの答えに近づくように、掛け合いの間合いが短くなっていく。
「もしそうだとして何のために?どの仕事も少人数でやる意味はないし、あり得るとしたら見せるため…とか?」
安直とわかってはいたが2人のペースに呑まれ、つい口走ってしまう。しかし2人のリアクションは至って真面目で調子が狂う。
「見せる…」
「そうか、デモンストレーション!」
俺だけがまた置いていかれる。
「え?」
「デモンストレーションなら確かに同期というテーマ性を持たせた意味も、美空のスケジュールを狙ったのも色々筋が通る」
その大幡の具体的な言い方に初めて内容の輪郭が俺にも見えてきた。
「美空の遅刻は手順を見せるため、そのためにブッキングのあった0X期部隊が招集された」
「でもなんで隠すんだ?STIの成果というならもっと大々的にやるべきだろう」
いつしか出撃準備室に置かれた机に向かい3人の議論は加熱していた。
「余程の要人への紹介か、それなら同期のみで構成する理由がないな」
「一つの代で全ての仕事をこなせることを見せる…でも集団を養成する目的とはイマイチ合わないな」
出した意見どれもが決定力には欠けていた。そうした完全な膠着状態を破ったのは津上の一言だった。
「あ、まずい!そろそろ行ってご飯作んないと」