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人類のことが『大』がつくほど好きな第16創世神

「やあ。ようやく起きたね、かわいそうな人」
テーブルについていた陰気な彼女は、行儀悪く両足を椅子に上げ膝を抱え、今さっき目覚めたばかりの俺を尊大に見下ろしていた。その顔には気味の悪い薄ら笑いを貼り付けている。
「……何だい、ぽかんとして。まるで、起きる前の記憶なんてこれっぽっちも残っていないって感じじゃあないか。……まあかわいそうな人、君の場合は、そっちの方が幸せだったかもしれないし、まあ良いか」
彼女はそう言って俺から目を離し、両手の中でころころと弄んでいたサイコロを振り始めた。様子をしばらく見ていると、7回か8回ほど転がしたところで動きが止まり、さっきより更に不気味なにたにた笑いを浮かべてこちらに振り向いた。
「可愛い可愛いかわいそうな人、ようやく準備ができたよ」
準備? 何のことだろう。
「え? そりゃ君、君が世界を救う準備さね。……ほら、ぽかんとしてるんじゃないよ。準備ができちゃった以上、もう時間は無いんだから」
その言葉とほぼ同時に、足下から発生した光の柱が、俺を包み込んだ。
「ああ残念。もう時間切れか。いつもはもうちょっと会話を楽しめるんだけどね。まあ、こういうのもアリだよね。今回は『王道をブチ外れて往く』がコンセプトなわけだし。ほれ、さっさと行っておいで、愛しい愛しいかわいそうな人。忘れるなよ、神はいついつでも、お前ら人類を心の底から愛しているんだ」
そんな言葉を聞きながら、俺の意識は光に溶けていった。