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Trans Far-East Travelogue⑥

チェックアウトを終え、山下公園で今後の予定を話し合う
「次の宿は何処か決めたか?」「明後日に笛吹の石和」「それまでどこ泊まる?」「俺達は15の町にいるから別行動になるよ。君は牛で休みな。彼女さんは四の宿ね」と言われたので思わず微笑むが、彼女が「どういうこと?」と訊くので、俺は想定外の質問に驚いて沈黙し、仲間もその理由を知っているので黙り込む
仲間の1人が「15+6+3(15区と6郡と三多摩のことで、東京都の前身)を知らない女と付き合って君は良いの?悪いことは言わないから別れる方が良い」と言い、俺は「彼女は無知かもしれないけど、俺からすれば今までお付き合いした女性の中で1番魅力的だから、彼女の方から別れを切り出さない限り俺は彼女と別れない」と返したら火に油を注いだ形になり仲間割れし出して俺と岡山組副長兼運転手が慌てて仲裁するので彼女は状況を理解できていないようだ
状況が落ち着き、彼女が皆を集めて「どうして私達が別れたら良いって思ったの?」と訊くので8人の仲間の1人が「君の彼氏君も含めてこの場にいる男9人は皆東京15区出身なんだ」と答えると「東京15区って?」と訊き返す
すると、別の1人が「東京の内、江戸城近くの町で明治以降は15区と呼ばれた中心部と6郡と呼ばれた郊外を合併して今の東京23区が生まれたのさ」と答え、俺が補足して「15の町ってのは15区時代の名称で言う麹町区の麹町とか番町の辺り、つまり俺の地元の隣町だからこちらで何かあればすぐに駆け付けられるし、その逆も然りってこと。牛は俺の故郷の牛込だから良いとして、四は四谷区で牛込と麹町の隣だから、そちらで何かあっても俺達がそちらに行ける場所だな。俺達が別れた方が良いと言う提言は、俺が帰国してから地元に帰らず、電車1本で地元に帰れる所で連泊した。そんな俺に気を遣って俺達全員なら分かる言い回しで『実家に帰って休んで来い』って言ってくれた。でも、君が変な発言を勘違いしたせいで、俺が君と付き合ってるのが俺の本心からではなくて罰ゲームか何かのせいだと誤解され、そんな俺が惨めで可哀想だと思った。だから、俺達が別れた方が良いって言ったんだと思うよ。」と発言すると残りの8人が頷く
それを見て彼女が「私が無知なせいでこんなことになってごめんなさい」と言って頭を下げるので、俺たちも互いに和解し、浜風を浴びて帰路につく

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Trans Far-East Travelogue⑤

朝5時頃目が覚めると彼女も起きて、「以前貴方が電話で話した内容が気になってたんだけど、今なら訊いても良い?」と訊いてくるので二つ返事で解説する
「まず、鳳って何のこと?」「鳳ってのは言ってしまえば鳳梨酥というお菓子のことさ。その材料のパイナップルは台湾ではフォンリーと呼ばれていて、漢字で書くと鳳に梨さ。大陸ではまた別の名称があって、漢字は忘れたけど発音はポーローだね」「なるほど。フォルモサは台湾の別名ってことは私も知ってるけど、駅って?」「フォルモサっていうのは元々美しい島という意味で漢字にすると美麗島と書ける。この美麗島っていう名前は高雄の地下鉄の駅に実在する名前で、その駅は改札口の天井のステンドグラスが有名なんだ。だから、そこの写真を送ってくれと言ったんだ。」「言い回しマニアックすぎね。安平、淡水、嘉義は歴史ある町だから良いとして、大神宮跡地のホテルって?」「日本統治時代に建てられた台湾神宮を戦後に国民党政権が解体して跡地に台北で1番豪華なホテル、圓山大飯店を建てたんだ。」「あの赤い建物、ホテルだったんだ〜」「そうだよ。台湾渡航経験者は多分ほとんど知ってると思うけどな」「私はまだ行ったことないけどね。じゃぁ、イングオってもしかしてイギリスのこと?」「そうそう。帰りの航空会社はBritish Airwaysだったからね。アイツらはズーペン、つまり日本、JALで帰国すると勘違いしてたから教えただけさ。他に知りたいことはある?」「冬瓜茶って甘いの?」「めちゃくちゃ甘くて俺には合わないよ。向こうの食堂で何度か出されて飲んでみたら口直しが必要になって濃い味付けの料理食べまくってた経験があるから、俺は好きになれないなぁ」一連の流れでそう言うと彼女は「台湾のことも知ってるなんて凄いなぁ」と呟くが俺は即座に否定する
「別に凄いことじゃないさ。思い出の場所とかこれから行ってみたい場所にはなるべく多くの知識を蓄えた状態で行きたいし、それは大好きな彼女のことをもっと深く知りたいと思う気持ちと変わらない、つまり俺に言わせれば当然の心理さ」と言うと「じゃぁ、私も海外のこと何か学んだ方が良いの?」と訊いてくるので「無理して学ばなくて良いよ。韓国とか台湾行く時は彼氏の俺に君を引っ張らせろ」 そんなやり取りで笑いが絶えない中、日が昇り新たな1日が始まる

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Trans Far-East Travelogue④

夕食後彼女も交えて今後の予定を話し合う
俺がハマスタで翌日に始球式登板となり、その日は解散になる
翌朝はかなり早く起きて鮮やかな日の出を撮る
そして昼にはデートで中華街を巡り、いよいよスタジアムに入る時間になる
対戦カードは横浜対阪神、俺は始球式が終わるとレフトスタンドに座ることになっている
控え室で着替え、ブルペンで肩を慣らす
そしていよいよ俺の出番だ
あの東北の親友が捕手をしてくれるそうだ
リリーフカーから降りた瞬間、数年前に引退した選手の応援歌が聞こえる
「授かりしその力で描いた景色は横浜で輝くおのれの勇姿」というのが原曲の歌詞だが、応援団は「授かりしその姿で〜♪描いた景色は〜横浜で輝く〜彼女の笑顔〜♪」と歌っているので、彼女が照れているのだ
それを見て「360度の大歓声〜♪期待に応え〜♪さあ、投げ込め〜♪」と口ずさみながら直球をアウトローギリギリに投げ込むと、バットが空を切るのと同時にミットに球が収まる
そして、試合は両軍の投手リレーで進み延長10回表、控え投手が両軍とも残り1人になった
そしてベイスターズの控えがイレギュラーで交代し、最後の1人もプレー中の負傷でマウンドを後にしたが交代投手がいないため試合中止となりかけた際、ファンと彼女から背中を押され、始球式以来数時間ぶりに俺が緊急登板することになった
すると、制球難でストライクゾーンの四隅ギリギリにしかボールが入らないはずが凡退の山を築き上げ、裏にサヨナラ勝ちしてしまった
ヒロインの時にサヨナラ弾を打った選手の隣で「大好きな彼女のために投げたら何故か勝っちゃいました。彼女を惚れさせる自信はありましたが、遂に確信に変わりました。男は黙って投げるだけ、俺は彼女を虜にするだけです。」と自信満々に発言するとスタンドがどよめく
そして、ホテルに戻ると彼女が俺を枕に寝落ちして、俺も爆睡した

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Trans Far-East Travelogue①

成田空港第二ターミナル1階の22番出口前で6人の仲間と合流し、高雄から来てくれた親友と談笑する
「岡山なら、台鉄で高雄、そこから地下鉄で小港出た方が…」「飛行機取れなくてな」「そうか。ところで、後2人、どこ行った?」「1人は第二ビルの駅、もう1人はアイツの彼女さん迎えに第三ターミナル行ってる。」「3ター?スプリングで来るのか?」「いや、オレンジの会社で札幌から来るそうだ。」「ジェットスターで札幌…懐かしいな」「お前もあのLCCで札幌行ったんだっけ?」「そうだよ。忘れやしないさ。初めてのヨーロッパ旅行で機内に帽子忘れちまって、そのおよそ1ヶ月後に北海道は初めて行った時新千歳空港近くのレラって名前のアウトレットで緑の野球帽買ってもらったんだよ」「思い出の場所ってか」「まあでも、滞在時間は短かったけど、台南の方が思い出多いかなぁ」「台南は旨いものも歴史的建造物も多いし、日本語通じるからな」「それを言ったら北海道も沖縄もそうだな。ただ、北海道や沖縄、台湾の強みの一つが今の俺にとっては不要なものなんだけどな」と言って笑うと、今まで黙っていた台北の仲間が口を開く
「お前のことだから、『砂糖が取れる』とでも言うんだろ?」「違うな。美人が多いんだ。全く、めちゃくちゃ美人で可愛くて、話題も含めて色々俺に合わせてくれる。そんなに素晴らしい彼女が俺にはいるってのに」と笑うと「お前らしいな」と向こうも笑う
本線経由の直通特急に乗り込み、定刻通りに大門に着く
モノレールとの乗り換えで地上に出ると竹芝桟橋に響く汽笛が俺の帰郷を出迎えてくれるようだ

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ユーラシア大陸縦横断旅〜あとがき〜

受験勉強の傍ら、クリスマスまでに全て書き上げる予定で執筆を始めた「ユーラシア大陸縦横断旅」シリーズでしたが、予定の4日遅れで書き上げることに成功しました。
自分は旅行に行ったら写真や動画で記録して文字には記録しないタイプの人間なので、本格的な旅日記の形式は初めての取り組みでした。
僕が中学2年の頃に世界地図を見て、上手く列車を乗り継げば東南アジアのシンガポールからフィンランドのケミヤルヴィ、ロシアのムルマンスクといった北極圏の諸都市、ルートによってはユーロトンネル経由でスコットランドのエディンバラまで鉄道で繋がっている事に気付き、中学の卒業旅行としてこのユーラシア大陸の端から端までを鉄道で旅することを計画した体験、中国とラオスを結ぶ国際鉄道計画の発表、コロナ禍の影響とロシアのウクライナ侵攻に伴うシベリア鉄道に乗車できなくなった現状に加えてオープンチャットで知り合った理想の異性とやり取りできなくなって半年経った今でも忘れられない恋にまつわる経験、そして企画「Romantic trains」で憧れだったロシアの鉄道やかつて訪れた所の鉄道を紹介する機会をいただいた経験が重なったことが端緒となり、思い出の場所やまだ見ぬ憧れの場所を大好きな鉄道で想い人と巡るという理想の旅行を題材に執筆しました。
約10年前、実際にマレーシアのクアラルンプールやヨーロッパを家族で旅行した経験と世界地図、それから海外の鉄道路線図から得た情報と海外に関する既存の知識だけを参考にして今まで出会った人達も登場させるというコンセプトのもと書き上げた結果、致命的なものも含めた様々なミスはあったものの、初めてにしては上出来だと思える作品が完成しました。
今後も想い人と日本国内は勿論、世界各地様々な場所を巡る旅を題材とした作品を投稿する予定です。
シベリア鉄道の英名「Trans Siberian Railway 」のように、今後は訪れる国や地域ごとにシリーズを分けて「Trans European travelogue」という形の旅行記として投稿したいと思います。
現在、日本、オーストラリア(NSW)、台湾、韓国、フィリピンでの旅の大まかなアイデアは出ているので文章として纏まり次第投稿したいと思います。

以上、旅行とプロ野球の巨人軍が大好きな日本一の美男子(自称)、ロクヨン男子でした。

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ユーラシア大陸縦横断旅67〜最終回〜

ロンドン最後の夜が明け、いよいよ思い出の街にも別れを告げて故郷に帰る日が来た
世界でも指折りのハブ空港の一つ、ヒースロー空港の国際線ターミナルは広大なため早め早めの移動が必要だ保安検査所へ向かう5分前、涙を堪えて「先行ってるよ。江戸小路で会おう」と告げると彼女は無言で抱きついてくる
彼女がもう一つのターミナルへ向かう頃、俺は出国を済ませて飛行機に乗り込む
時差ボケ防止でしばらく寝て機内マップを見るともうウラル山脈を超えてシベリア西部にある元カノの1人の出身地上空を飛んでいる
機内食を食べる間にも飛行機は進み、北京、大連、ソウル、チェジュと幼い頃から成田空港で見てきた国際線の行き先の街の名前が地図に表示される
対馬海峡を越えて福岡の上空に至り、そこから福岡、広島、高松、大阪、名古屋、浜松の地名が見えてきた
「海外行く時、帰る時に必ずマップに出る地名だ。もう帰って来たんだな。エスカレーター降りて泣かないと良いんだがな」そう言う間にも飛行機は硬度を下げる
左手に故郷で幼い頃からずっと観て来た高層ビル群が見えて感慨深くなると、成田空港に着陸した
お馴染みの入国審査場までの下りのエスカレーターから見える看板を見て毎度のように泣く
この看板には様々な言語で「日本へようこそ」という意味の文が書かれているが、日本に帰国した全ての人の目に入るように一際目立つ大きさの柔らかいフォントで書かれたひらがな7文字の言葉を見て泣かない人は少ないだろう
この言葉が見えた瞬間、俺が生まれてから今までお世話になった全ての人と一緒に彼女もその言葉を言ってくれるような気がした
「「おかえりなさい」」

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ユーラシア大陸縦横断旅66

宿に戻り、すぐに荷物を纏める
一通り纏め終わると、スマホの着信音が鳴り響く
台湾の仲間達からだが、彼等は長電話好きなので、軽く1時間ほど時間を取られると覚悟して対応する
「土産物、何が良い?」「お茶っ葉と鳳で頼めるか?あと、フォルモサの写真も頼む」「鳳と梨のアレね。お前、好きだもんな。写真は…新高、次高、それから101と85で良いか?」「各地の写真じゃなくてその名前を漢字に意訳したら出てくる地下鉄の駅があるだろ?その駅の写真をお願いしたい」「あのステンドグラスか。任せな」「ありがとう。頼んだよ。東京で俺の彼女とも会えるだろうから紹介してやるよ。その次の時は案内頼んだよ。特に、安平とか嘉義とか淡水が良いな」「任せとけ。でも、お足は高くしとけよ?」「高くするのは良いけど、流石に大神宮跡地のホテルには泊まらないからな?」台湾に造詣が深く同じような物が好きな男同士の会話が弾み、こちらの到着予定の話になる
「こちらの到着は日本時間の夕方4時頃の予定だ」「航空会社ズーペンだろ?」「いや、イングオ」「また金がかかる所を…」「それは俺じゃなくて幼馴染が取ってくれたんだよ。国泰が使えなくなったから」「そう言えば言ってたな。で、どうして福岡経由じゃなくていきなり成田なんだ?」「彼女が羽田経由だから東京で俺といたいんだとよ。俺はてっきり彼女が先に福岡に帰ると思って向こうに寄ってから帰ろうと思ったんだが、俺のことを1番に考えて東京にいる決断をしてくれたんだろうな。健気で一途、それでいて俺が故郷の東京をはじめとした関東、そしてその対極と言える関西がどうしても好きになれないことも理解してくれる。だから、俺は彼女に首っ丈なんだ」「その辺にしとけ。彼女さん、淡水信義線カラーになるだろうから」「もうなっちゃるよ。冬瓜茶より甘くして気まずいから切るぜ」「橋頭のアレみたいだな。遠慮せずに切りな」
最後は俺達ではお馴染みの台湾ネタで締めてどちらともなく電話を切る
そして、彼女が背伸びして耳打ちする
同じ頃、例の鐘が鳴り響き、即興で短歌を一首詠む
「協定の 日の街で聞く 鐘の音 君の隣で 聞くぞ嬉しき」
この日にロンドンで起きた歴史上の出来事を踏まえて詠んだ歌に歴史好きの彼女が反応し、より甘えて来たのは言うまでもない