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ユーラシア大陸縦横断旅28

太陽が南から西に傾き始める中、列車はエカテリンブルクのホームに滑り込む
ふと、「もうエカテリンブルクか…シベリア鉄道の旅ももう終わりだなぁ」と呟く
彼女はまるで雷の音が響いた時の子供のように丸くなって何かに怯えているように見える
「おい、大丈夫か?」「ここ、エカテリンブルクでしょ?怖い話を思い出しちゃって…」「ロシア革命で皇帝のニコライ2世が家族もろとも処刑された事件のこと?」「そうだよ。100年以上前の話だと言われても,怖いよ」そう彼女が震え声で言うのでリアクションに困って苦笑いを浮かべて「幕末の剣豪が好きな人とは思えないリアクションなんだけどなぁ」と思わず心の声を漏らしてしまった
「まだ発車しないの?」「30分停車だからね。あっでも,その館はもう取り壊されてるよ」「もう…ないの?出てきても大丈夫なの?」と尋ねられる
「大丈夫。俺が守ってやるからな」「本当?」「勿論。というか、俺が君に初めて惚れた時に何て言ったか覚えてる?」それを聞いて頬を染めながら「『惚れた女を大切にし、彼女が傷つかないよう気を配る。そして,時には体を張って彼女を守ること。それは男としての俺の一生モノの課題だ』ってこと?」と訊く
「大正解!さぁ、安心して出ておいで。」そう言うと彼女がハムスターのように出てきた
「どんなシチュエーションでも,やっぱり俺の彼女は魅力的だな」と呟き、彼女が照れる
そして,列車は発車する
明日のこの時間にはモスクワだろう

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ユーラシア大陸縦横断旅27

現地時間で日付が変わってからおよそ30分、オムスクに着いた
時差ボケと彼女の魅力のせいで眠れない
「どうしたの?眠れないの?」「まあ、時差ボケでな」
「時差ボケってwハワイはもっと酷いよ。ましてや貴方、ハワイよりも時差が少ないロンドン行ったことあるんでしょ?このくらい我慢してよ」
「ロンドンから帰国した当時は真夏、しかも地球の裏側じゃちょうどリオ五輪やってて、上野の屋外パブリックビューイング場で猛暑の中熱中症で倒れてどうやって時差ボケ治したのか記憶にないんだけどw」「リオ五輪っていつだっけ?」
「76年だけど?」「皇紀じゃなくて西暦か元号で言ってよ。皇紀で計算するの慣れてないの(笑)」「西暦だと2016だな」
そんな話をして気づいたら、イシムを過ぎ、朝日に輝くチュメニの駅に着いた
彼女は話し疲れたのか爆睡、俺は油田の街に着いたことに興奮を覚えたが、流石に起こすのも可哀想だと思い、手書きのメッセージを枕元に置いて俺も寝た
「Спасибо, что стала моей девушкой 」と敢えてロシア語で書いて置いた
意味は,「俺の彼女でいてくれてありがとう」だ
その意味を知った彼女に甘えられたのは言うまでもない
そして,甘い響きとは程遠く拙いフランス語で
こう囁く「Unis pour la vie 」
意味は,「ずっと一緒だよ。」だ
そんな俺たちを乗せ,いよいよエカテリンブルクまであと数分という所まで来た…
ウラル山脈超えも近い

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ユーラシア大陸縦横断旅25

現地時間午後7時半、薄暮の空の下、俺たちが乗るK3/0033号列車はノヴォシビルスク駅に着いた
ホームを見て彼女が一言「駅の時計とこっちの時計、合わないよ。」「どれ、見せてみな」実際に見たら笑うしかなかった
「なんだよ、そう言うことかよ」と思わず吹き出す
そして、彼女が頬を膨らませながら「どうせ私は彼氏ほど旅慣れていない田舎者ですよ〜だ」と拗ねてる
「まあまあ、落ち着けよ。原因、話してやるから」
「本当?教えて教えて!」と子供っぽくはしゃぎながら答える
「ロシアってのは、国が大きいのは知ってるよね?ロシアよりも小さなアメリカだって国土が大きいから国内にも時差がある。それはハワイとアメリカ本土に訪れたことがある君なら分かるでしょ?」
「流石に知ってるよ。でも、その話とこれって何の関係があるの?」「まあいいから、最後まで聞きなよ。シベリア鉄道はいくつものタイムゾーンを跨ぐようにして線路が張り巡らされている。だから、走らせるなら基準となるタイムゾーンが必要なんだ。そうなると、首都であり列車の起点であるモスクワの時間を基準にして列車を動かすと都合がいい。だから、シベリア鉄道の長距離便が停まる駅ではモスクワの時間を採用しているんだ。モスクワとここ、ノヴォシビルスクは時差が四時間だから、駅の時計も君の時計と4時間ズレているよ」そう言うと彼女は「さっすが私の彼氏!頼りになる〜」と笑い出した
一方、俺はと言うとその無邪気な笑顔に心を撃ち抜かれて無意識のうちに「ヤバい。俺の彼女、いや、俺の嫁さん可愛すぎんだろ…こんなんじゃ理性なんか吹っ飛ぶな」と呟いていた
その後すぐ、食堂車で晩飯を食べていると列車は市街地に挟まれたオビ川の鉄橋を渡る
「シベリア鉄道は風景が同じでつまらないって言われているけど、愛しの人と一緒なら彼女の顔だけ見てればいいんだからいい癒しになるな」と言ったら彼女が「私の彼氏って、こんなロマンチックな人だっけ?」と自問してる
そこですかさず、「フランスと江戸っ子と華族文化が入り混じる街の出身だからな」と笑う
そして、2人揃って「これからもずっと一緒だよ』と言う
シベリア有数の大都市の夜景が俺たちの将来を照らし、祝福してくれている中を列車はモスクワに向け突き進み、俺は彼女の誕生日プレゼントを買うべく、グム百貨店のカタログを読み漁る

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ユーラシア大陸縦横断旅25

クラスノヤルスクを出てからおよそ五時間半、マリインスクに着いた
「え?今2時過ぎだよね?なんで10:27発なの?」彼女が駅の時計を見て驚く
「さあ、なんでだと思う?」といたずらっぽく笑って訊き返す
そしたら彼女が「その笑顔は反則だよ〜もしかして、あの中国のお仲間とグルでプロポーズとセットのドッキリ仕掛けたの?」と見当違いの質問が…
もう種明かしするしかないな
「ロシアって国土が大きいでしょ?だから、タイムゾーン、つまりある一定の範囲から向こう側に行けば時計の針が戻ったり進んだらするエリアの境界が複数あるんだ。それでも、一つの国の中にそうしたエリアの境界線があって、そこを跨ぐ列車を走らせるなら、基準が必要でしょ?」そこまで言うと、「じゃあ、その基準ってもしかして、首都であるモスクワの時間ってこと?」「その通りさ。ここはノボシビルスクのタイムゾーンの中なんだ。こことモスクワの時差がおよそ四時間なんだ。あと、プロポーズの件はアイツが勝手に指輪が入った箱を北京の大使館経由で俺に届けただけさ。俺は先輩がパリの日本大使館にいると思ってパリの大使館経由で渡したかったんだけどなぁ」そう説明しているうちに列車は駅を出る
「それってどういうことなの?」
「これ、見てみなよ」
「この日って…」そう、そこには『パリ到着』と書いてあり、その上には『想い人の誕生日』と書いてあったのだ
「この日って君の誕生日じゃなかったっけ?」「そうだけど、なんで知ってるの?」「あの時一緒だったオプで誕生日の話題になったの、覚えてない?」「思い出した!その時、私も自分の誕生日言ってた。と言うことは、覚えていてくれてたの?」と嬉し泣きしている「KLで言ったろ?君のこと忘れられなかったって。言い換えれば、君とのやり取りはほとんど、俺の頭の中に入っているんだよ。あと、俺は好きな人にプロポーズする時はその人の誕生日に『プレゼントは俺だよ。その証拠に、ほら』と言って夜景の綺麗な街で指輪と赤バラの花束を渡すシチュエーションに憧れてたんだ。でも、『愛の街』で有名なパリに着く前にやっちゃった」と言うと「じゃあ、11月生まれの貴方の誕生日プレゼントは花嫁姿の私だね」と彼女が顔を真っ赤にしつつも笑っている「いや、それよりも読売の日本一」と返す
彼女の誕生日まであと6日
よし、プレゼントをモスクワで調達だ

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ユーラシア大陸縦横断旅24

日の出に近いがまだ西は暗い午前6時頃、トラス橋を渡る音で目が覚める
川面の向こうには朝靄の中アパートや教会らしい建築物群が見える
「ここは?橋を渡っているが、ボルガやオビはまだ先だよなぁ…それに、川の向こうに中心市街地が見えるとなると、これはクラスノヤルスクのエニセイ川か?」
確証は持たなかったが、到着駅の駅名標にはКрасноярск( クラスノヤルスク)と書いてあった
つまり、さっきの川はエニセイ川だったのだ
クラスノヤルスクを出ると同時に彼女が目覚める
そして、開口一番「どうして私と距離置こうとするの?私ってそんなに魅力ないの?」といきなり尋ねてくる
「正直言って、君は俺にはもったいないくらい魅力的だからなぁ…君の彼氏が本当に俺でいいのか分からなくなってしまってね。俺がそばにいない方が君が幸せになれるんじゃないかとか考えちゃうんだよ。自分と彼女の関係のことになると後ろ向きになっちまうダメ男が彼氏でごめん。もし、こんな俺でも受け入れてくれるなら嬉しいな」そう言って頭を下げる
「バカなこと言わないで!私が生涯バッテリーを組みたいと思っている相手は貴方しかいないの!だから、こっちは貴方が重くてど天然で抜けている所がある私なんかと一生一緒に居たいと思ってくれるまで20年でも30年でも待つつもりなの!」と俺が彼女に初めて惚れた時のセリフで返された
「そうか。実は、俺も同じ気持ちだったんだ。こんな時にムードもへったくれもないけど、言わせてくれ。俺と結婚してくれないか?ゴーアラウンドならいくらでもするがダイバートはしない」と当時の言い回しで伝えて指輪を渡す
「もう、離さないよ」「俺もな」
カレカノから婚約者同士になったカップルを乗せ、列車は西へ行く

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ユーラシア大陸縦横断旅23

深夜、ナウシキでロシア入国手続きを終えて眠りにつく
そして、目が覚めたら朝日で輝くプラットホームの駅に着いた
駅名を見ると、Улан-Удэ(ウランウデ)だ
そう、この駅はかつて俺がシベリア鉄道版の鉄道唱歌作詞で省くか否かで迷った場所である
当時の苦労を思い出しながら車窓を眺める
そして、セレンガ川を渡るところで彼女を起こす
なぜなら、セレンガ川を渡ると、彼女も俺もシベリア鉄道の旅で1番楽しみにしていたバイカル湖畔の風景が見えるはずなのだから
ありがたいことに、湖畔の天気は晴れだ
そして、彼女は湖面に映る青空と小高い山の風景を見ながらボソッと尋ねる
「今も結婚願望ってあるの?昔は『25になるまでに嫁さん欲しい』って言ってたけど」
「あるようでない。」とだけ返す
「あるようでないってどういうこと?」と聞き返されたので、「今は言えないよ…俺たちがパリに着く日になれば答えが分かるから、それまで待ってくれ」と返すと、彼女がふと「もしかして、私って魅力ないのかなぁ」と呟く
だが、俺はその呟きを聞かなかったフリをして「俺が結婚したいと思っている相手は一人しかいないし、むしろその人ほど魅力がある女性には会ったことも話したこともないんだがなぁ…」と呟く
「変なこと訊いちゃってごめん。もうこの話は終わりにしよう」そう言われて話題が変わり、広いバイカル湖畔南部の町、スリュジャンカの駅でオームリという名物の食べ物を誰が買うのかという話になり、俺が買うことになった。
俺はホームにいた物売りからなんとか最後の残りを買うことに成功したのだが、彼女が美味しいと言ってガツガツ食べるものだから、俺の取り分がほとんどなくなってしまった
幼少期に弟とよく食べ物を巡って喧嘩したので、どうすれば穏便に済むかは経験上知っている
だから、残りは彼女にあげた
そして、彼女がバイカル湖をすぎて一言、「ゆう君(俺の幼少期の愛称)みたいな優しい人と結婚したいなぁ」と呟く
そして、俺も「こんな一途に俺のこと思ってくれて、健気で、天然な彼女と結婚したいなぁ」と呟く
「え?今なんて?」と彼女は訊き返すが、対向列車との離合の音でかき消されて聞こえなかった

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ユーラシア大陸縦横断旅22

午前1時、俺たちはノックの音で起きた
どうやらここは中蒙国境の中国側にある内モンゴル自治区のエレンホト(二連)のようだ
2人とも中国語が話せないので、彼女は英語、俺は片言のロシア語で対応して中国を出国する
そして、俺たちはすぐにモンゴルへ入国するが、列車は線路幅の関係上台車変更の作業中だ
車内に戻って2人とも一眠りするとカーテンの向こう側から朝日が差し込んできた
時計を見ると6:20とのこと
つまり、ここはゴビ砂漠の中にあるサインシャンドということか
実際、駅名標にはキリル文字でサインシャンドと書いてあった
ウランバートルの街は午後2時半ごろに見ることになるのかなぁと思い、二度寝した
チョイルという街の駅に着いて目が覚めた
そこで気付いてしまったのだ
そう、食堂車での朝食の時間は終わってしまったと
そして、彼女もまだ寝ている
暇を持て余していたので、モンゴル語で自分が歌える唯一の歌を歌いながら窓の外を流れるモンゴルの広大な荒野と草原の景色を見る
「ダルハン〜マンナイ〜ツスゲル〜ウルス〜♪」と歌っていると、なぜか隣の客室が静かになった
そして、昼食時に食堂車で隣の客室にいたモンゴル人の客に話しかけられた
お互いに英語で会話していると、実は俺が鼻歌で歌っていたのはモンゴルの国歌だったことを知った
そして、俺はモンゴル国歌を歌える日本人として男女関係なくモンゴル人の乗客から人気者扱いされてしまった
そして、その光景を見ていた彼女が嫉妬したのは言うまでもなく、その後客室で平謝りした
気付いたら列車は起伏の激しいウランバートルの郊外にある高原まで出ていた
その高原地帯に沈む夕陽を2人で見て、関係の修復に成功した
そして、夜になりスフバートルに着き、いよいよロシア入りすることになる