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どんな夢だった?

ため息一つ 一日の終わりにいつもやっている
先輩の癖だ 何かあったんですかっていつも聞くけど
結局哲学うんちくを繰り出されて話を逸らされる
専攻科目のことになれば多分この人に勝てる人は早々いないだろう
そのくらい長いし 何を言ってるのか分からない
ただ話が上手いからか惹き込まれる 意味が分からないのにもう少し聞いてたいと思う
この前それを同級生仲間に話したら恋の始まりだのなんだのと言われて笑われたな
ただ否定も肯定もしなかった 僕は先輩が好きなのかどうか分からない 嫌いでない事は確かだが
僕にとってどういう存在かがなんとも言えない
とにかく不思議な人なんだ
ここに来てから1ヶ月くらい経つけど先輩と会わない日はないというか毎日会ってる
偶然だね なんて4回目くらいで嘘ですよねって言った
狙ってなきゃ全部偶然になるんだよーって持論を聞かされながら2人並んで歩く帰り道
なんでか分からないけど先輩と一緒にいると知り合いと会わないなんでか2人して別の空間にいるみたいな気分だ
本当にこの人には不思議という言葉が似合いすぎて怖い
でも楽しかった
傍から見れば先輩後輩関係は確実に逆に見られるくらい年齢に似合わない振る舞いをする先輩を眺めながら時々巻き込まれたりして時々哲学話を聞かされたり
そうしてると疲れてるのを忘れさせてくれるから
知らないうちに一日の中になくてはならない時間だ
しかし4月から加わった新しい時間割も昔と何ら変わらない時間割になる日は結構すぐやって来た
先輩と出会って2ヶ月目になる日の朝
珍しく先輩と会わない 行きも帰りもどこを歩いてもどこにいても神出鬼没だからねーなんて言いながらひょっこり現れていた人が突然居なくなるなんて怪奇現象だ
久々に会った同級生仲間にそれとなく先輩の話をしたら
聞くヤツ全員首を傾けて目を丸める
僕1人だけ違う時間を生きて来たみたいだ
浦島太郎の気持ちが痛いほど分かった

どんな夢だった?

結構楽しかったよ それじゃ


そう言って先輩はどこかへ消えて行った

不思議な人は最後まで不思議な人だった

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ー人は兵器になれるー

あるべき姿とはなんだろうか
自分のことは自分が1番知っている
こんなのは本当の僕じゃない
本当の私はもっと醜い
どこの誰が作ったのかも分からない自分らしさを追求し苦しみ続けている
私はこう思う
らしさは自分からは見えず
他人から見えるようにできている
さらに言うならば
人は自分に対しての興味が乏しい
誰もがそうなのだと 自分がどんなに好きであろうとどんなに自分に誇りを持っていようと
自分という人間を掘り下げることを断固としてしない
無意識に
それを知ることで自分が壊れてしまうかもしれないという人とはしての生理的恐怖が
セーフティーとなっているのだと思う
それを人は理性という名で語る
人間とは実に繊細に作られているものだ
電子機器と変わらない
無防備で受けた衝撃はダイレクトに本体の活動能力を確実に損傷させる
だから我々には理性という名のカバーが存在する
しかしおかしな話だな
これは神様のお遊びか
そんな繊細な我々人間には爆弾が搭載されている
それを人は感情と呼ぶ
理性の扉を破壊し己すら蹂躙し内側から滅ぼしてしまう
感情は神様がゲームを面白くするために仕組んだちょっとしたバグ 揺らぎのようなもの
普段から直接干渉しない そのくせ1度一線を超えればあとは滅ぶ道をひた走る
造り手は壊し方を知っている
つまり我々人間は自ら創造したこの世界の
壊し方を知っているのだ
誰でも世界は壊せる

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メリーさん

ある日の夜、電話がかかってきた。
『もしもし、私メリーさん。今、あなたの家の近くの墓地に居るの』
どうやら先日捨てた人形が化けて出たらしい。供養の仕方が足りなかったか。素直に神社に頼めばよかった。今更後悔しても仕方が無いので、包丁と電話を手に、壁を背にして次の電話を待った。
『もしもし、私メリーさん。今、あなたの家の前に居るの』
いよいよ来た。さあ、次の電話が来た、その瞬間が勝負どころだ。
『もしもし、私メリーさん』
しかし、壁を背にして陣取る自分に、負けは無かった。無いはずだった。しかし、
「今、あなたの、後ろに居るの」
その声は受話器ではなく、確かに自分の後ろから聞こえてきた。
咄嗟に前に跳びながら背後に向けて持っていた包丁で斬りつけた。何か硬いものに当たる感触があった。
そこには、壁を通り抜けるようにして、何か人の形をしたものの腕が突き出ていた。腕には、包丁が当たったと思われる場所に欠けたような傷跡が見える。あと少し長くそこに居たら、恐らくあれに掴まれ、想像もしたくないような恐ろしい目に遭っていたのだろう。
「もしもし私メリーさん。今、あなたの」
『それ』が再びあの台詞を吐きながら、こちらに進み出てきた。そして、
「後ろに居るの。」
そこで『それ』の姿が消え、声は背後すぐ近くに移った。これにも後ろに向けて斬りつけながら回避。『それ』はまた腕で防御したらしく、先程と同じ感触が腕に伝わった。