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ロジカル・シンキング その⑤

およそ30分後、フウリが持ってきた昼食を平らげてから、2人はインスタントのカフェオレを飲みながら食休みをした。
「……それで、ヒオちゃん」
「ん?」
「頭の中は整理できた?」
「……だいぶ」
「それは良かった。じゃあ聞かせてくれる?」
ヒオは頷き、姿勢を正してフウリをまっすぐ見つめ返した。
「フウリ。私の問題を解決するためには、フウリの協力が必要なの」
「ほうほう。何でもするよ」
「えっと……質問に答えてほしいの。『フウリがどうやって魔法を使っているのか』。光輪を操ったり、空を飛んだり、ものを浮かせたり、フウリはあれをどうやってるの?」
ヒオの質問に、フウリは困ったように頬を掻く。
「…………どう……とは?」
「言葉通りなんだけど……普段、魔法を使ってる時、どんな感じなのか。それを聞かせてほしいんだけど……」
「えぇー……困ったなー…………え、どう言えば良いんだろう……」
考え込みながら、フウリは徐ろに【ヘイロー】に変身した。
「どう……って言われてもなぁ……」
呟きながら、魔法によってマグカップの中のスプーンを浮遊させ、中身をかき混ぜる。
「えっと……『これ』を言葉にすれば良いんだよね?」
「そう」
「そうは言ってもなぁ……」

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五行怪異世巡『天狗』 その⑪

「ワタシはカオル。ワタシの可愛い青葉の愛刀だよ」
少女は天狗を一度大きく振り上げて地面に叩きつけてから、右腕で青葉を抱き締め答えた。
「愛刀…………って、〈薫風〉⁉ 付喪神⁉」
「さあ、そうなんじゃないかな? そんなことどうでも良いよ、ワタシの可愛い青葉。……ああそうだ。そこの妖怪」
青葉に頬ずりしながら、カオルは目だけを足元に倒れる天狗に向けた。
「何かは知らないけど……お前の火の玉のお陰で身体が作れた。それだけは感謝する。それから」
言いながら、カオルは自然な動作で刀を握っていた青葉の指を1本1本、右手で丁寧にはがし、落ちてきた〈薫風〉を機械人形のそれのような外見の左手で受け止めた。
「貴様、どんな雑魚種族か知らないが、よくもワタシの可愛い青葉を傷つけようなんて馬鹿をしてくれたな?」
「なっ……雑魚だと……? ボクは『天狗』だぞ!」
天狗は叫ぶが、カオルの注意は既に天狗から逸れ、青葉を撫で繰り回すのに夢中になっている。
(クソ、コイツ……、突然出てきておいて、このボクを舐め腐っていやがる……!)
再び天狗火を生成し、青葉達に向けて転がす。しかしカオルが〈薫風〉を火球に向けると、その刃先に吸い込まれるようにして消滅してしまった。
「……霊障、呪詛、妖術。特に人外の力で青葉を傷つけようだなんて、考えないでほしいね。やるならワタシを殺してからだよ。無理だろうけど。ねー、ワタシの可愛い青葉?」
「え、うん……あと離して……」

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ミセコエ:〈五行会〉のイカレたメンバーを紹介するぜ!

前シリーズ『視える世界を超えて』略して”ミセコエ”ですが、最終的なキャラクター紹介をしていなかった気がするので、夜中のうちに雑に投げとこうと思います。取り敢えず〈五行会〉幹部連中だけ。

・〈木行〉“雷獣”白神鳴
年齢:自称19歳  身長:170㎝くらい
人間に化けて人間社会で生きている妖怪。静電気を溜め込んで自由に放電できる。千葉さんはお友達でお気に入り。その辺にいる妖怪や幽霊やオバケを拾っては仲間にしている。

・〈火行〉“鬼子”種枚
年齢:不明  身長:160㎝くらい
〈五行会〉の発起人にしてフリーの怪異狩り。普段何をしているのかは一切不明。生物学的には霊感があるだけのただの人間のはずだが、身体能力やその他の特徴がどう見ても人外。本名は誰も知らない。

・〈土行〉“犬神憑”犬神
年齢:中学生  身長:150弱
種枚さんの親友で理解者で同志でその他いろいろな子。月一で殺し合うだけで相思相愛。犬神憑きの家の出で、土砂や岩石を操る力がある。5人の中で唯一余所の街在住。本名は種枚さんしか知らない。

・〈金行〉“常人”岩戸青葉
年齢:13歳  身長:チビ
『最も人街に近い家系』岩戸家の当代末子。霊感が無く、各代で最も人外の才が弱い女子が受け継ぐ家宝〈薫風〉を手に夜な夜な武者修行していたが、最近は落ち着いてきた。

・〈水行/代表〉“潜龍”平坂
年齢:23歳  身長:172かそこら
”潜龍神社”の神職を務める霊能者。〈五行会〉のリーダー役を押し付けられた人。先日、無事に当代”潜龍”を正式に継承した模様。ちなみに”潜龍神社”は飽くまで霊能者家系が代々管理しているだけで、”潜龍”の対怪異技術は神様とは無関係。

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ロジカル・シンキング その④

「……んー、ヒオちゃんは今でも、できることを頑張ってるじゃない。街の人たちの避難誘導とかさ」
「そりゃ、私だけ何もしないわけにはいかないでしょ。せっかく4人揃って、あの……何だっけ、『魔法少女』? とやらになれって言われてさ」
「あー、あのヌイグルミね」
「いや多分何かしらの動物だと思うけど……3人は魔法少女としてちゃんと変身してちゃんと戦ってるわけじゃん。それなのに私だけ、その……何もしないってのは…………」
「なに、仲間外れっぽくて寂しい?」
「いやそうじゃなくて……」
徐ろにフウリが立ち上がる。
「お昼にしよっか。お腹がいっぱいになれば考えもまとまるよ。用意してくるから、ここで待ってて。考えの整理でもしててよ」
「……うん」
フウリが退室した後、テーブルの上を片付けていたヒオがふとテーブルの上に目を戻すと、中央辺りに全高30㎝程度のぬいぐるみのような生き物が鎮座していた。ヒオはほぼ反射的にそれの頭部を掴み、床に叩きつける。
『…………アハハ、お転婆だなァ。痛いじゃないか』
「いきなり出てきて何の用? ヌイグルミ」
『おかしいなァ。名前は最初に教えてあげたはずなのに……まあそこはどうでも良くって。どうやら君1人変身できないのを気にしているようだから、何かアド痛い痛いイタイイタイイタイ』
ヌイグルミの頭部を掴むヒオの力が強まり、ヌイグルミは言葉を中断させられた。
『……まァ、どうやらこちらから言う事は何も無いみたいだけど』
「……は? どういう意味?」
『ヘイローが言っていただろう? 君には頼れる仲間がいる。まだ保護者の出る幕じゃァないってことサね』
いつの間にか拘束を抜け出していたヌイグルミは、再びテーブルの中央に戻ってからその姿を薄れさせ始めた。
『じゃァね。次会ったときには、君の悩みが解決していることを期待しているヨ』
ヒオがヌイグルミの頭部に向けて消しゴムを投げるのと、ヌイグルミが完全に消滅するのは、ほぼ同時だった。