表示件数
0
0

五行怪異世巡『こっくりさん』 その②

「……私用か?」
「まあね。同級生が馬鹿やったっぽくて」
「お前やあの鬼子でどうにかできない問題なのか?」
「んー……ほら、『こういうの』で被害者の子たちに大事なのってさ、『形としての安心』なわけじゃない?」
「……『こういうの』とは?」
「うちの学校の馬鹿共がやったのがさぁ、“こっくりさん”なんだよ。分かる? 霊とか神様とか、そういうの絡みなの。だからさぁ、私、知り合いに神社の人がいるって言っちゃって」
犬神の話を聞いた平坂は溜め息を吐き、やけに重い犬神の財布を突き返した。
「身内の頼みだ、金は要らん。日時と場所だけ教えてくれ、こっちから向かう」
「わーい。じゃあ明後日。10時くらいが良いな。場所はねぇ……ね、スマホ持ってる?地図見せるから」
「言われれば自力で調べるが……」
言いながら、平坂は自分のスマートフォンを取り出し、地図アプリを起動してから犬神に手渡した。
「ありがとー。えっとねぇ…………、ん、出た出た。ここ、この中学校ね」
犬神から返却されたスマートフォンを見ると、画面には隣町の中学校の位置情報が表示されている。
「……それなりに遠いな。電車を使うか」
「キノコちゃんなら10分で走って来れるのに?」
「あれと一緒にするな」
「あ、そうだ。何か良い感じの衣装とか着てきてくれると嬉しいな」
「……それで電車に乗れと?」
「たしかにそれは恥ずかしいか。じゃあ何か良い感じの小道具だけ持ってきてよ。あるんでしょ?」
「……まあ、必要な道具を用意すれば、自ずと様になるだろう」

0
0

ただの魔女 終

“魔女”が目を覚ました時、最初に見たのは彼女を見下すヤヨイの顔だった。
「あ、おはようございまーす……この度はうちの姉上がお世話になりましたぁ」
「ぅ……誰……?」
身を起こそうとする“魔女”の眼前に、ヤヨイはメイスを突き付ける。
「悪いけど、動かないでいただいて…………。私は中山ヤヨイ。あんたが散々痛めつけてくれた中山サツキの実妹だよ」
「……へぇ?」
再び頭を下ろし、“魔女”はヤヨイと睨み合う。
「それで、妹が何の用? お姉さんの敵討ち?」
「別に……死んだわけでも無いし」
「何だ、サツキ死ななかったんだ。私が死んでなかったから、てっきりあっちが死んだものかと」
「あんた戦闘狂か何かなの? ……まあ良いや。用件はまあ、一つだけでさ」
「ふーん?」
ヤヨイの言葉を待つ“魔女”の顔面を、鎚頭が鋭く打ち据えた。顔面の骨が砕ける感触と共に、“魔女”の顔は打撃の勢いで横方向に弾かれる。
「痛……あれ? 痛くない……?」
ダメージが一切残っていないことに困惑する“魔女”の顔面を、更に正面から叩き潰す。
「ぐっ…………⁉」
メイスが持ち上がった後の“魔女”の顔にはやはり、傷の一つも無い。
「私の魔法だよ。『外傷の治癒』。流石に身内が殺されかけて黙っていられるほど私も優しくなくってさぁ。お姉ちゃんが友達だって言ってたからこのくらいで済ますけど……」
“魔女”の胸倉を掴み、引き寄せる。
「今度私の身内に手ぇ出してみろ。お前の精神がベキベキに砕けるまで殴り続けてやる」
「…………っはは。私、あんたのことも嫌いじゃないよ、中山ヤヨイ」
「……はぁ?」
「あんたの信念はきっぱりしてるから聞いてて気持ちが良いや」
ヤヨイから解放された“魔女”は、徐に立ち上がり、衣服についた埃を払った。
「そうだ。中山サツキに託ってくれる?」
「……何を」
「『富士見ヒカリ』。私の本名だよ。私だけ名前を掴んでるのは不公平だからね」
“魔女”――ヒカリはヤヨイに手を振り、屋上の落下防止柵を乗り越え、飛び降りた。
慌ててそちらに駆け寄ったヤヨイが見たのは、校舎の壁に貼り付いていた大型ゴーレムの手の中に納まったヒカリの姿だった。
「……あんのクソ魔女が」
ゴーレムに抱かれて去っていくヒカリに悪態を吐き、ヤヨイは変身を解除した。

0
0

魔法をあなたに その②

オイラin人間社会。
今日はアレ……何だっけ、“魔法少女”? ソレにするのにちょうど良さそうな人材を発掘するゼィ。
欲しい魂は、所謂“イジメられっ子”ってタイプの人種ダナ。
揉まれて擦れて磨き上げられた(すり減ったともいう)、鋭くタフな魂。ただのイジメられっ子で良いってわけでも無ェ。折れて引きこもったり自傷に走ったりするようなのじゃ駄目だ。やり返せるほどの跳ねッ返りも好かねェ。理想は“耐え続けている”奴。心身を削られながら、“まだ折れてねェ”奴だ。
そーいうワケで本日の狩り場は某中学校。建物部分がクソデカいんで、多分たくさん人材がいる。人が多けりゃ多いほど、好みの奴がいる確率も上がるってェ寸法よ。
つーわけで捜索のため、フラフラと建物の周りを飛び回っていると、いきなり爆音が響いてきた。あれだ、何とかって奴。……時報? 的なアレ。知ってるゼ、物事の始まりと終わりに鳴らすヤツだ。つまり、運が良ければこれからガキ共がわらわら出てくる。
ワクワクしながら出入口周辺に隠れて待ち構えていると……。
『ビンゴ!』
しばらくじっとしているうちに、同じような服装したガキ共が出てきた。狙うは2択。独りぼっちの奴か、不自然に取り囲まれてる奴。欲を言えば女が良い。アイツらは精神が野郎よかチカッとだけどろどろしてるからな。