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LOST MEMORIES Ⅸ

おやすみとチャールズに声をかけにいった時には0時をまわっていた。違和感しかなかった。
しかし、チャールズもおやすみと微笑む。
「明日は6時半までに起きてくださいね。」
瑛瑠はを平静を装って頷いてみせた。
6時こそ就寝時間である。日が昇る前から昇りきるまで、今まではだいたい6時に寝て12時に起きていたのに。
そんな考えも、体力と気力を使い果たした今、なやむことでもなかった。
初めてのベッドの中でもすぐ寝付いたのは、よっぽど疲れていたからだ。

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non title

白く染まる日の向こうで
ふたり手を繋いだままで、歩いた道を振り返る

この前くれた 開いた紙の匂い
乗り込んだ江ノ電 浮わついた気持ちすら
確かめるのは切なくて 苦しくて。

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あなたをひたすら思っていた日々。

先輩の卒業式の日、私は泣いた。
勇気を出して挨拶をできたら挨拶が返ってきた日、
たまに話せて本当に嬉しかった日、
どうすれば仲良くなれるのだろうとずっと考えていた日は
もう二度とやってこないと思うと
涙が止まらなかった。
今はその恋心が無くなってしまったけど、
たまにすごく会いたくなる時がある。
あの毎日にはもう戻れない。

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LOST MEMORIES Ⅷ

瑛瑠が食べ終わるのを見計らって、チャールズは再び口を開く。
「先程も申し上げましたが、明日、とりあえず始業式に出席していただきます。そこで、同じような方を見つけること。ただし、情報云々は考えなくて良いです。魔力持ちを見つけること、人間に馴染むこと。まずはこの2つができれば上出来ですね。お嬢さまを侮っているわけではありませんが、他のことは考えないでください。欲張ると、出来ることさえ出来なくなってしまいます。」
迫力に圧されるように頷く。夕食前に聞いた話だ。
大丈夫、覚えている。
ふっと空気が緩んだ。
「それでは、ここはお任せください。
お嬢さまは、寝るまでの支度をどうぞ。」
微笑まれると、もう従うしかない。
本来、これから活発になるのだが、これもイニシエーションというのだから仕方がない。今までのサイクルを急に昼夜逆転なんて、拷問に近い話ではあるが、耐え抜くしかないのだろう。チャールズも、経験したといっていた。
1週間のうち、2日間は休みだと話していたか。10年前のイニシエーションの内容を、時間をかけて聞く必要があるなと考えた。
カーテンを閉め、部屋にあるものを大まかに把握し、シャワーをあびてから、チャールズから聞いた準備というものをする。それが、制服と鞄。相変わらず軽くて薄い衣類なのだが、それ以上にスカートの丈が短いことに驚く。ハンガーに吊るす。やはり、やったことのないことばかりだった。
メイドは私の身の回りのことをここまでやっていてくれてたのね,と感心してしまう一方、こういうことがなければ、私は他の暮らしを、文化を知らなかったのか。そう、うすら寒い思いがする。初めて、通過儀礼的だと思った。

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どっちでもいいよ

これとこれどっちがいい?
「どっちでもいいよ」

一口食べる?
「どっちでもいいよ」

何でもどっちでもいいって言うよね
そんな君が僕は嫌いだ

気を使わせないようにしてるの?
でも僕は君の「どっちでもいいよ」に
すごく気を使うし
すごく困るし
すごくイライラする

君にもこの気持ち気付いて欲しいから
今度君になんか聞かれたらこう答えてあげるよ

「どっちでもいいよ」

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早く会いたいな

君に会いたいな
早く明日まで待てないよ
好きって伝えられなくていい
君の横に居れればいいだけだから
今は君の横には居ないけど
好きになっても意味ないと言われても
なんでそんな人を好きになるの
と言われてもあきらめない
好きな気持ちは変わらないから

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LOST MEMORIES Ⅶ

目の前に広がるのは夕食。
「何もかも急ですみません。」
チャールズが用意したものだ。こんなに人数の少ないディナーは初めてだ。そして、ディナーというほど大袈裟でもなく。
瑛瑠としては、絵本の中に入ったような気分だった。大人数じゃないことも、味を好評しなくていいのも、マナーを注意するお世話係がいないのも、夕食1つにしてとても新鮮で好ましいものだった。
「いいえ、なぜチャールズが謝るの。」
スープから手をつける。
「もう少し前から説明できなかったものかと……」
ふと、瑛瑠は気になったことを質問してみる。
「チャールズは、イニシエーションを行ったの?」
「人間界に来ましたよ。お嬢さまと似たようなことを言われました。」
即答。しかし、妙な答え方をするものだ。
父のような隙は一瞬もなかった。どうやら本当のようではある。
瑛瑠は口をつぐみ食べ進める。
今度はチャールズが言葉を発した。
「慣れが早いですね。」
言われた意味が理解できない。首をかしげてみせる。
「寂しくはないですか?」
前の言葉との繋がりはまるで見えないけれど、首だけを横に振ってみせる。
「よかったです。」
微笑む。
綺麗な顔だなあと、そう思った。

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眠い朝の電車、寝ぼけた頭で考えたこと

朝のなんとなく憂鬱な気分で乗る電車

その電車の中で

右隣に立っているサラリーマンは

難しそうな顔で何か資料を読んでいて

左隣に立っている学生は

ニコニコしながらスマホを見ていて

目の前に座っている小学生くらいの少年は

窓に頭を預けて眠っていて。


どこかで女子高生はけらけら笑っていて

どこかで赤ちゃんが泣いていて

それらに舌打ちする大人がいて。


生ぬるい空気の中ただ時間と共に運ばれている僕は

このまま降りなければ

どこか理想郷へ…ううん理想郷じゃなくてもいい

どこか遠くへ着くかな

なんて寝ぼけた頭で考えてるんだよな

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わたしのポエム

だって私はこのなんとも言えない感情を
自分のせいにしちゃうから。

誰かを嫌う自分を嫌って
泣いてる誰かの涙を笑って
そんなふうに生きてしまうから。

当たり前の日常を当たり前に思わないのは
毎日が過ぎるのに恐怖を感じてしまうから。
明日が今日と変わっているなら、
今日あったものが明日ないなら。
戻って掴んでどこかへ行きたい。

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鉛みたいに重いくせして
君を見るだけで浮いてどこかへ行きそうな
この心臓はなんなんだ

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LOST MEMORIES Ⅵ

瑛瑠はふっと微笑んだ。
「わかりました。それでは、10年前に関係のある情報を探ること、努力します。」
こうなったら最後まで踊ってやるんだから。そう、決心する。
"10年前"。この言葉は、どうやらキーワードらしい。今、チャールズでさえ、一瞬の動揺を見せた。
しかしすぐに、華のように微笑み、瑛瑠に言う。
「はい。私もお嬢さまがイニシエーションを完遂できるよう、ささやかながらお力添えをしますね。」
イニシエーションを完遂。妙な言い方をする。


チャールズがこうしてヒントを少しずつ小出しにしていたと気付くのは、もうしばらく先の話。

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LOST MEMORIES Ⅴ

しかし、とすぐに続ける。
「日常的に起こるわけではないのです。この国は大きなことが起こりづらいと言われているので、使う必要はない。旦那さまは、そうおっしゃっていたのだと思いますよ。
……さて、これくらいでしょうか。」
瑛瑠は思わず叫ぶ。
「待って!肝心なところを聞いていない!
イニシエーション終了は?期間は?情報って何!」
チャールズはあくまで冷静だ。
「落ち着いてください。とりあえず、明日同じような方々を見つけてくればいいでしょう。そうでないと始まりません。」
瑛瑠は睨む。
「――策士。」
「お褒めいただき光栄です。」
やられた。まず、そう思った。
父が隠していたい部分を引き出し、あくまで明るみにしてもいい部分だけ教え、肝心なところを教えないと言う。
やはり、ただのイニシエーションだとはとてもじゃないけど思えない。
きっと、その"情報"とやらが、大人たちの欲しいものなのだろう。
「いつまでここにいなきゃならないの。」
「イニシエーションが終わるまで、ですよ。」
瑛瑠は黙って睨む。時間だけが流れる。
今まで飄々としていたチャールズが、始めて折れた。
「降参です。可愛らしいお顔が台無しですよ。」
「答えて。」
「長くて1年、でしょうか。」
「1年……」
そんなに長い通過儀礼があろうか。その間に成人を迎えてしまう。
イニシエーションが、ただの"イニシエーション"ではないと、確信に変わった。

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沈む

ゆったりと、沈んでゆく。
何が沈んでゆくんだろう。
自分?それとも違う人?それとも物?

それは何もわかんない。
けど。
何かが沈んで、ぷかぷかぷかぷか。

何かが浮かんでくる。

それが、心の奥底にある何らかの。
思い出せない思い出だったらいいのに。

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LOST MEMORIES Ⅳ

このチャールズとは、面識があるように思えてならない。しかし、記憶を手繰り寄せる限り、初めましてである。このような容貌の青年を忘れるだなんてことができるだろうか。
「……お嬢さま?よろしいですか?」
「え、ええ。続けて。」
チャールズは困ったように息をつくだけに留まった。
「そこで、ですが。ここは仮名文化なので。」
どういうことだろう。
「高校では、祝 瑛瑠(はふり える)と名乗っていただきます。」
「……はぁ。」
間の抜けた声になってしまう。
諦めの境地。いっそ、開き直りの境地である。
パプリエール、もとい祝瑛瑠は受け入れた。
「つまり、パプリエールではないまったくの別人として、人間として生活していけば良いという解釈でいい?」
「物分かりがはやくて助かります。」
にっこりと微笑む。
瑛瑠はその笑顔に聞く。
「それでは、魔力を使う必要がないと言われたのは、どういうこと?」
「人間は魔力を持ちませんから。」
一瞬の思考停止。
「……確かに。」
魔力を持っているからこそ、相手を傷つけ得る。傷つけられないために魔力を持つ。お互いに釣り合った魔力を持つことで、争いは抑止される。
そうなると、魔力を持たない人間はそういうことはないのだろうか。
またもや心を読んだかのように、
「人間は人間なりに相手を傷つけるものを作り、傷つけられないように再びにたようなものを作り、同じように抑止させるようなシステムになっているので、私たちとさして変わりません。」
そんなことを言う。

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memorys

私があいたいのは あの頃のあなた

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LOST MEMORIES Ⅳ

このチャールズとは、面識があるように思えてならない。しかし、記憶を手繰り寄せる限り、初めましてである。このような容貌の青年を忘れるだなんてことができるだろうか。
「……お嬢さま?よろしいですか?」
「え、ええ。続けて。」
チャールズは困ったように息をつくだけに留まった。
「そこで、ですが。ここは仮名文化なので。」
どういうことだろう。
「高校では、祝 瑛瑠(はふり える)と名乗っていただきます。」
「……はぁ。」
間の抜けた声になってしまう。
諦めの境地。いっそ、開き直りの境地である。
パプリエール、もとい祝瑛瑠は受け入れた。
「つまり、パプリエールではないまったくの別人として、人間として生活していけば良いという解釈でいい?」
「物分かりがはやくて助かります。」
にっこりと微笑む。
瑛瑠はその笑顔に聞く。
「それでは、魔力を使う必要がないと言われたのは、どういうこと?」
「人間は魔力を持ちませんから。」
一瞬の思考停止。
「……確かに。」
魔力を持っているからこそ、相手を傷つけ得る。傷つけられないために魔力を持つ。お互いに釣り合った魔力を持つことで、争いは抑止される。
そうなると、魔力を持たない人間はそういうことはないのだろうか。
またもや心を読んだかのように、
「人間は人間なりに相手を傷つけるものを作り、傷つけられないように再びにたようなものを作り、同じように抑止させるようなシステムになっているので、私たちとさして変わりません。」
そんなことを言う。

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よるの

かえる
蛙が啼いて
蛙が啼いている田んぼ
蛙が啼いている田んぼのあいだ
蛙が啼いている田んぼのあいだに外灯

外灯
外灯がない
外灯がないほうの
外灯がないほうのみち
外灯がないほうの路を選んで
外灯がないほうの路を選んで気が

気が
気がついた
気がついたら知らない
気がついたら知らないまっくら
気がついたら知らない真っ暗な公園

公園
公園のぶらんこ
公園のぶらんこで揺れて
公園のぶらんこに揺れて
公園のぶらんこが揺れて
揺れて…


(ファンタジー、とはちょっと違うのかな)
(かえるのうたが…みたいなものが描きたくて)

2

見えかた次第

上を向いても
下を見ても
前を進んでも
後ろに下がっても

結局は同じ世界なの