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ヒーロー物語❷〜女神と小童〜

学校が終わり家に帰ると淡々と道場に行く準備を済ます。
母が運転する車で二十分かけて道場に行く。
練習時間は週五で午後六時から九時までの三時間
そんな毎日が続きかれこれ二年が経った。

道場の戸はいつも開いてある。
ガラッと僕が戸を開けると
『だれだれだれ⁉︎おっ良太郎じゃん今日の組手俺とやろーぜ!』
と音に気づき駆け寄って来たのは
ここの道場の師範の孫にあたる僕より一学年歳下のくせに少し生意気な赤井桃太郎。通称モモ。

ここは隣町だから『ヒーロー』ってあだ名で僕を呼ぶ奴は居ない。

モモは幼稚園の頃から空手をやってる。
段級位は二級の茶帯。ちなみに僕は四級の緑帯。
生意気だ。

おう。と適当に返事を済ました僕は荷物を置きにロッカールームへ。

『おはよ。今日もはやいねっ』
ロッカールームで声をかけてきたのはモモの姉。

赤井誉。通称ほうちゃん段級位は初段の黒帯。
綺麗な瞳で優しい性格で正義感が強くてたくましくて凄く可憐な同い年の小六の女の子。

僕の初恋の人。

『お、おぅ。』

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プロジェクト・ゼロ 上

「被験体、良好です」
その声でおおよそ人とは呼べない「それ」が目覚めた。
「後はヤツから渡されたこいつを入れるだけか...」
「これで俺達、やっと家に帰れるんですね。久々に嫁の料理が食えるんですね...」
「あぁ...だが気を抜くなよ。こいつがどんなヤバいブツだか知らんがあの暴君のことだ、何が起こるか解ったもんじゃない...」
コイツ...たかだか人間の分際で...いやまて、私はなんなんだ...
「大戦まで起こして、その上こんなものまで作らせて...いったい、ネフェリム様は何をする気なんでしょうかね」
ネフェリム...聞き覚えがあるな...
「それ」は遺伝子レベルでの応答の元にようやく答えを出した。
そうか...私の主か...
「さぁな、俺達はただのしがない科学者だ、ヤツに対抗する力なんてねぇ...ヤツと同罪になった時点でロクな結果にはならんだろうがな」
「それ」は会話を聞きながら徐々に状況を思い出してきた。
思い出した...いや、覚えているのか...?私は主様に作られたモノ...どこかに私のコアがあるはずだ...私が私を取り戻さなければ...

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LOST MEMORIES ⅡCⅦ

まさかそんな言葉が返ってくるとは思わず。
「どういうことですか。」
緊張した空気に、お互いが口を開きかけたとき。
「お待ちどうさまです。」
注文していたコーヒーと紅茶が運ばれてきた。
ふっと空気が浮上する。
「ありがとうございます。」
図ったかのような良すぎるタイミングは、ふたりにとってありがたかった。あそこで話を進めても、混乱を極めるだけだったろう。現に、ふたりとも混乱しているのだから。
「余計なお世話かもしれないけれど、」
口を開いたのは、あろうことか店員のお姉さん。
丁寧にコーヒーと紅茶を置き、ふたりに微笑みかける。
「これで伝わるだろうなんていう驕りはしない方がいいかな、特に男子くん。女の子も、高圧的な態度はタブーね。最後まで話す気がないなら、お互いに思わせ振りな発言はNGよ、特に男女間ではね。」
可愛らしい笑みをたたえ、ウインクを残してカウンターへ戻る。
大人の女性って。
「……どこかで、彼女を見たことはないか?」
浮上した空気はそのままに、英人が尋ねてくる。
「私も、思いました。でも、思い当たりません。」
ふたりは、あたたかいカップを手に、会話を再開する。

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音楽と

音楽を聴くと 何故か落ち着く
音楽を聴くと 思うままに 何故か 踊りたくなる
音楽を聴くと 歌いたくなる
音楽を聴くと 笑顔になれる 日頃は愛想笑いばかりなのに
音楽を聴くと 笑顔になれる 自然と笑える
音楽を聴くと 感動して涙が出てくる

だから私は 今 音楽のために生きていくと決めた

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ジキタリス

息が出来ないほどの
愛をくれ

僕のことを僕の全てを僕だけを
愛して愛して愛してくれ

そしたらそのまま死んでくれ
僕を愛してると言った君のままで

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untitled

運命とか永遠とか夢とか どうしても信じてしまうから良くないのかもしれない

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気の迷いだとか

大切な物語はすぐそこ。
胸が詰まるような、甘酸っぱくて最高にクールな、
手の届く、既にふれているのに、
僕の手の中にあるのに、
僕のものじゃない。
もっとはっきり言えば、
恋の話も眩しい青春も、
この本にはあるのに、あの本にもあるのに、
僕にはないって話で、
そう、それらから目を離してみれば、
あまりに何もない現実があって、
それがひどく悲しいってわけじゃないけど、
少しの寂寞というか、
ああ、結局はここから出られないし変わらないし、
それは僕が物語の主人公でもないからなのかもしれないけど、
さっきまで見ていたのはやっぱり夢だったんだな、ていうのが、
浮きたっていた心を、ほんとうに急激に冷ましていって、
結局僕は、夢想の中で生きていた方がよっぽど青春してるんだって思ったことが、
ただそれだけが、ほんのちょっぴり寂しくて、

ほんとうにほんとうに悲しくて悔しかったりも、するんだ。

そしてどうせ明日には、ほんの気の迷いとして零れ落ちてしまうこの感情が、今はただ本当に愛おしかったり。

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感傷に浸る…的な?

以上も以下も 以前も以降も
君と僕とはなにも無い
そんな2人がプール掃除
Tシャツの君とジャージの僕と
目の眩むような炎天と

プールの壁に張り付いた
ホチキスの針に目を奪われたフリは
ヘタだったからバレてたかな

掃除を終えて更衣室からでてきた君の
スカートの丈は膝上で
「おつかれ」とひと言 声をかけるのにも
息を整える時間がいった

そんなことを思い出しながら
制服の君と 3度目の夏

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毎朝変わらずに
決まったことばかりして
満員電車に揺られて
決まった駅で降りて
決まった事をこなして
ただ帰ってくるだけ

雑踏に紛れて
今日も俯いて歩く
笑い声
煙草の匂い
舌打ち
ハイヒールの音
飲み込まれてく
影の私

───本日は通常時よりも電車が混雑しておりますので、できるだけ空いた車両にご乗車ください

空いた車両なんてどこにも無い
落ちこぼれたならブザーの音
余裕なんてありやしない

踏切の音は私を急かし
自転車は後ろから追い越していく

ふと見上げれば
群青色
半分欠けた黄色い月と
散りばめられた儚い星

嗚呼
空なんて
見上げたのはいつぶりだろう

あの月は
半分欠けているのか
それとも
半分残っているのか

聞いてみる術なんて
どこにも無くて

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LOST MEMORIES ⅡCⅥ

「それで、話って?」
瑛瑠が何か言おうと口を開くことを遮った英人の言葉で、始まった話。
「私ら夢を見たんです。」
英人の目は真剣だ。
「その夢は、たぶん過去実際にあった出来事です。」
そう切り出し、チャールズに話したように、夢の中の出来事を繰り返した。もちろん、ノート持参だ。
英人もチャールズ同様、顔色ひとつ変えずに耳を傾けていた。
母と神殿へ行ったこと。
エルーナという吸血鬼に出会ったこと。
彼と共に逃げたこと。
狐を見たこと。
戦いに巻き込まれたこと。
ジュリアに放り投げられたところで、ひとまず幕は下りた。
さて、本題はここからである。
「それは、実際にあった出来事であると思うんです。しかし、私にその記憶はありません。
英人さんは、この話に思い当たる節はありませんか。」
――驚愕。その言葉が合っている。英人は、驚愕していた。
「覚えてない、のか?」