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Trick

「Trick or treat!!」
君は背後からそういって脅かした。
突然のことに僕は思わず声を上げて驚く。
そんな僕の反応を見て、彼女はけたけたと笑う。
「あはは、キミ、反応最高!Trickの方はようやく成功ね……ん、お菓子、くれないと悪戯しちゃうよ?」
無邪気に笑っていた君は、急に悪戯っぽい笑みを浮かべてこちらに手を伸ばした。悪戯と一緒にお菓子ももらうつもりらしい。
Trick "and" Treatは反則だよと心の中で呟きながらも、お菓子は持っていなかったので自販機からジュースを買ってあげることにした。
「お、気が利くじゃん。さんきゅ」
と言いながら、彼女は買ったばかりのジュースのふたを開けて、二、三口飲んだ。

僕がこの一連の流れの中で言葉を発さなかったのは、別に何も彼女に思うところがあるとかいう訳ではなかった。実に久しぶりに見る顔だな、と思っていたからである。もう会わないと思っていた人が目の前に現れたというだけで、まして下心を持っていたとか言う色恋の話は論外である。絶対に。

僕の意味ありげな視線に気づいた彼女は何か勘違いしたようで、
「あ、もしかして私の仮装見れなくて残念だった? 」
と言って自分の服を見下ろした。着ていたのは普段着である。
ようやく口を開いた僕は「そうだね、少し残念かな」と答えた。
彼女はふふ、と笑うと、来年はするかもねと言った。


因みに言えば、僕は後ろから脅されても声を出すほどには驚かない。僕が驚いたのは彼女がそこにいたという事実ただ一つである。
彼女が帰っていく時にもう一度確認してみたが、やっぱり彼女の向こう側が透けて見えた。
ハロウィンだからってことかなぁと、僕は去年亡くなった同級生のことを思い出し、心の中でもう一度手を合わせた。

空のペットボトルが、ゴミ箱にひとつ捨てられていた。

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LOST MEMORIES~ハロウィン編(下)~

スクオッシュでもいいのだが、どうせなら本格的にしてあげたいではないか。
瑛瑠の言わんとしていることがどうやら伝わったようで、抱きついてくる歌名。
「ほんっとうに瑛瑠のことが好き!」
はいはいとその背中を叩いてあげる。ソウリングケーキは私が持っていきますね,そう言うと、歌名はばっと離れた。
「さすがにそこまでさせられない!」
「専属の家政婦がいるので。」
ウインクをすると、泣きそうになる歌名がいる。
シナモンと干しブドウ、ナツメグの入ったバタークッキーを思い浮かべ、瑛瑠は微笑んだ。

ハロウィンとは、死者のために祈る日である。

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LOST MEMORIES~ハロウィン編(上)~

ハロウィンとは、死者のために祈る日である。

「ハロウィンパーティーがしたいの。」
珍しく元気のない歌名は、瑛瑠にそんなことを持ちかけてきた。
これは――
「会いたい人がいるんですか?」
柔らかく問いかける。歌名が、ハロウィンの知識を持っているのならば、ソウリングをしたいのだろうと思い至ったから。占いをして、ゲームをして、ソウリングをする。残った主賓は魂に囲まれるのだ。
歌名には、会いたい魂があるのだろう。
「うん、お父さんとお母さん。
毎年やってたんだけどね。今年はそうはいかなくて。」
毎年、というくらいだから、両親が亡くなってしばらくたつのだろう。友人についての新しい情報に、少し動揺する。歌名のこと、全然知らない。
「やるって言ったら、来てくれる?」
「もちろん。」
顔を輝かせる歌名。
そこで、瑛瑠は提案してみる。
「英人さんと望さんも誘ってみません?きっと来てくれると思います。」
強く頷く歌名を見て、きっと歌名にとってとても大切なパーティーなのだろうと瑛瑠は微笑んだ。

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This is the way.[Ahnest]1



 気づけば、仰向けに倒れていた。赤茶けた土。あちこちで燃え盛る木々。ハッと右手の方を見た。手から離れて転がっているスパタ。必死に手を伸ばして掴もうとした。が、どこからともなく誰かの足が現れ、それを踏みつけた。顔をあげると、傷だらけの男が凄まじい形相で立っていた。
『.........が、俺............イツァ様の.........でもらわ......』
 炎の音と耳鳴りで男がなんといっているかほとんど聞き取れない。
 不意に男が剣を振り上げた。
『..................!!!』
 何かを叫ぶと、男は凄まじい勢いで剣を振り下ろす。とっさに空いていた左腕でかばった。ガスッ!という鈍い音が響いた。
 「ぐッ」
 あまりの激痛に気が遠くなりかけたが、なんとか耐えると、男にこう言った。
 「お前、【   】の.........!!!」
 男は何も言わないで振り下ろした剣に力を込め始めた。必死で押し返す。鉄が骨に当たる感覚。次第に男の剣が下にさがっていく。腕の力が抜けていく。男の口がわずかに歪む。目を見開いた。最後の力もむなしくその剣は額を



「うあああああッッ!!!!!!」

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LOST MEMORIES~ハロウィン編(中)~

「それなら、クリスピン王は歌名ですね。占いはどちらでした?ナッツクラックとアップルボビング。」
クリスピン王とはハロウィンの主賓。そして、パーティーでは占いをする。胡桃を使ったナッツクラックか、林檎を使ったアップルボビング。ゲームはスリッパ捜しと決まっている。そのあとにソウリングだ。ソウルケーキをくれない人には罰を与える、子どものお菓子集めの元になったもの。
歌名は少し考えて言う。
「ずっとナッツクラックだったから、今年はアップルボビングやってみたい。」
瑛瑠は、お互い名前を刻むのが大変だねと笑ってみせる。
「旗とジャック・オ・ランタン、塩入れとアクアマニールはありますか?」
これらは、テーブルに置くもの達。
「ジャック・オ・ランタンはこれから。他はあるよ。」
「カボチャで作りますか?」
瑛瑠の問いに、不思議そうに頷く歌名。にこっと笑いかける。
「どうせなら、カブにしましょう。」

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つづきがありそうな冒頭小説

プラスチックくらいの
強度の心を
誇らしげに首にかけてる

ロマンチックの欠けらも
無いような日々を
飲み込んでは自慢げに生きてる

アイスピックで砕いた氷の青さに
冷たさよりも寂しさを知ったあの夜
知ったところで独りだったので
あの夜はだいぶ困ってしまった
いつの間にか止まってしまっていた
壁にかかったままの時計たちは
電池を欲しがる風もなく
ただ黙って止まった時を指した
絡まったままのパスタの芯は
なんか固くて飲み込めなくて
いつまでも喉の先っぽのほうで
息を塞き止める役を果たした
いよいよ苦しくなったわたしは
無理矢理に麦茶で洗い流した
そんなもんで食べた気がしなかった
だからまた変な時間に
メロンパンをひとつ食べた
日向ぼっこが溶け込んだような
柔く優しい色合いに
美味しそうと思いはすれど
やっぱり腹にはたまらなかった

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LOST MEMORIES~ハロウィン編~

ハロウィンとは、死者のために祈る日である。

「ハロウィンパーティーがしたいの。」
珍しく元気のない歌名は、瑛瑠にそんなことを持ちかけてきた。
これは――
「会いたい人がいるんですか?」
柔らかく問いかける。歌名が、ハロウィンの知識を持っているのならば、ソウリングをしたいのだろうと思い至ったから。占いをして、ゲームをして、ソウリングをする。残った主賓は魂に囲まれるのだ。
歌名には、会いたい魂があるのだろう。
「うん、お父さんとお母さん。
毎年やってたんだけどね。今年はそうはいかないでしょ。」
毎年、というくらいだから、両親が亡くなってしばらくたつのだろう。友人についての新しい情報に、少し動揺する。歌名のこと、全然知らない。
「やるって言ったら、来てくれる?」
「もちろん。」
顔を輝かせる歌名。
そこで、瑛瑠は提案してみる。
「英人さんと望さんも誘ってみません?きっと来てくれると思います。」
強く頷く歌名を見て、きっと歌名にとってとても大切なパーティーなのだろうと瑛瑠は微笑んだ。

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ハロウィンもどき。

耳を塞ぎたくなるほどに騒がしい

繁華街の百鬼夜行

思い思いに仮面を被った人間共

誰も気づかないうちに

怪物に変わるとき

人間のつもりか?

もうとっくに

お前は怪物さ

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途中まで怖くて怖くなくなってまた怖くなる話

これは僕の友人のK君から聞いた話です。
彼はガッツリ山の中の田舎暮らしでした。
ある夏の夜、彼は散歩にでかけました。
山道をのんびりと歩いていると、ふと、後ろに気配を感じる。少し怖かったが、振り返ってみたそうです。
しかし、何もいない。彼は、そういえば、こういうときって、大抵上にやばい奴がいるって何かに書いてあったな〜と思い出し、上を見てしまいました。そこに見たものは、


綺麗な星空でした。
彼は、星空に夢中になりながら、散歩を続けました。
しばらくして彼は、恐ろしいことに気づきました。



「ここ何処…?」


結論:K君は夜の山の中で迷子になりました。まあ、無事でした。けど、帰ってから親に怒られたそうです。あと、気配はただの気のせいだったとか。山の妖怪の可能性も否定は出来ませんが。

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ハロウィン

西の方から流れてくるパレードのような
狂気に満ちた沢山の化物たち
逃げ惑う人々は糾弾する
壊さないで、と
混乱が過ぎ去ったあと
虚しい痕跡だけが街に残る
恐ろしいこの日が今年もやって来た

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深夜0時 突然の電話

泣くつもりはなかったのに
「びっくりした。どうしたの?」
揶揄うようなその声に涙が止まらなくて
「ねえ、聞いてよ。」
涙を孕んだ一声に、静かに頷いてくれた。
苛立ちを思うままにぶつけ
支離滅裂な言葉ばかり吐いて
しめくくりには「もう嫌だ。」
それなのに、通話終了間際、涙は消えていた。

私には、絶対的な友人がいる。
それってもしかしたら、すごく幸せなことなのかもしれない。

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寝顔

きっとほんのひと時のきもちだけど
あなたの袖を掴みたくなったのです

たばこの匂いがする
小さなくくりで分けた小部屋で
小さないびきをするあなたがいました
くろい髪の間から見える顔が
しらない人のようで
その瞬間から
あなたのことを力のかぎりに
顔をあなたにうずめるほどに
ただただ抱きしめたくなりました

きもちに身をまかせることが出来るのなら
そんな想いをむねにしまって
ただ袖をすこし掴んでしあわせを感じるのです


こんなこと本人には言えないけど、まだ出会って三回ほどの大切な友達だけど、
ただ、ただ寝顔がほんとに綺麗でした。初めて人の寝顔を見て苦しいほどに愛おしく感じました。