「次は~東京、東京~」
普通は聞かないようなこのアナウンス、あの時決死(?)の作戦を遂行しなければ、こうして聞くことはなかっただろう。
新幹線を降り、混み合うホームをかき分けかき分け、やっとのことで改札についたとき、その外によく知っている顔があった。
「ようこそ、東京へ~」
「聖名(せな)…」
皮肉めいた笑顔を浮かべる大学生の姉に、おれはため息をついた。
「お母さんが、参太一人じゃ心配だからついて行ってあげて、って頼まれたアタシが、わざわざ迎えに来てあげたんだからね~ 感謝なさい」
「へいへい」
感謝なんてするかよ、とおれは口をとんがらせた。
「そういえば、お父さんとかお母さんとか、おじいちゃんとかおばあちゃんとか、元気? あとネコのクリスも」
クリスとは、聖名が家で可愛がっていた白ネコだ。
「みんな元気だよ」
おれは素っ気ない返事をした。
「なら、よかった」
聖名は、冨院、地元が恋しいみたいなことを電車内で言ってたけど、おれはほぼ聞いていなかった。
頭にあるのは、みんな、無事集まれるかどうか、それだけだ。
「つぎは~」
「あ、次降りるよ~」
アナウンスを聞いて、聖名は言った。ああ、もうすぐなんだ、とおれは思った。
あと少しで、みんなに会える。
え~、悲報です。最終回「12/25」は、今日中に書き込めないことが確定しました。ごめんなさい…
さて!「Advent」最終回、「12/25」といきたいとこなのですが、前回「12/24」と次回「12/25」をつなぐエピソードをはさみたいと思います。内容は、12/25で主人公6人が向かう「クリスマスフェス」の会場への道程みたいな感じです。12/25を25話にするなら、「12/25 side~」は、25.5話的な。sideの次のアルファベットは各主人公のアルファベット表記の頭文字です(頭文字かぶってるキャラは2文字目まで入れます)。では、「side R」スタート↓
「クリスマスフェス」の会場は、去年と同じように混んでいた。
私は、もしかしたら、と思いつつ、人混みをかき分けて進んでいく。
もしかしたら、一足先にみんなここにいるんじゃないか、って…
やっぱりいなかったけど。
まぁいいか、と私は、集合場所である、会場の入り口にある大きなクリスマスツリーの下で立ち止まった。
あの時偶然につぐ偶然がなければ、出会わなかったんだよね―
心の中で、そうポツリとつぶやいた。
私はスマホを取り出すと、絶賛会場へ移動中のみんなへ向けて、こうメッセージを送った。
「会場到着したよ! みんな、待ってるから、早く来てね!
わかっちゃうんだよ
嘘って
ゲーム好きの君がわざわざうちに来るなんて
80%の割合でないだろう
そんなことわかってるけど
君にしつこく聞いてしまうんだよ
それならはっきり言って欲しい
そとに出たくないんだと
それを言わない君の
優しさと
弱さ
君と私はどこかにていると
言えたらいいのに
君が強くなりたい
けれどなれない
だから明るいふりをする
強いふりをする
何の壁もなく話ができたらいいのに
いつも内に秘める私の弱さ
「なあ兄よ」
「どうした弟よ」
「皮肉なもんだと思わないか。今日はクリスマスだってのに、街はもうお正月気分だぜ」
「昨日が一番のクライマックスだったな」
「前夜祭が当日よりメインってなんなんだよ」
「まあそういうな、弟よ。しかし考えても見ろ」
「なんだよ」
「そんなのクリスマスに始まったことじゃないだろ?」
「まあ、そうかもね」
「誕生日に買ってきたケーキなのに前日に食べちゃったり」
「うんうん...うん?」
「学校の創立記念日を今日だと思い込んで前日に休んだり」
「お、おいちょっと待てよ」
「父さんと母さんの結婚記念日を一日間違えたり」
「それ全部俺のことじゃねえか馬鹿兄貴ィ!!!」
「ああ、そうだったけか」
「てかよくもまあそんなに覚えてるもんだな」
「記憶力だけは良い方なんで」
「でもさ」
「うん?」
「やっぱりよく考えると、寂しいよな」
「そうだよなあ」
「そうだよ」
「うんうん.........平成もあと四ヶ月そこらで終わりだからな」
「そうそうそのとお...ってその話してねえッ!!!」
「みんな『平成最後』『平成最後』って騒いでるけど来年の五月まであるからな」
「良いんだよそんな話は」
「というわけでよいお年を」
「今年もまだあるよッ!!!」
歌名の呟きにひどく食いついたのは、やはり瑛瑠と英人。今にも質問攻めにしそうな雰囲気にたじろぐ歌名を見て、望は一旦宥める。
「瑛瑠さんまでまわりが見えなくなっちゃうと、ぼくの役回り増えるから困っちゃうよ。」
望の穏やかな苦笑に、瑛瑠は落ち着くよう努めた。望ももちろん話を掘り下げたいのだが、進行が話をぐじゃぐじゃにしてはいけない。
英人といえば、多少の苛立ちと焦燥が見える。深いところまで関わってしまったであろう英人は、幼少期、大人に上手く誤魔化されたと検討がつく。さらに、漁った書類は重要か部分が抜き取られているときた。上層部の裏の顔を垣間見て、何が自分の本当に見たものなのか、覚えていることなのかわからないと、以前そんなことをこぼしていた英人が、はやくその情報を知りたいと思うのは当然のことでもあって。
もちろん、その苛立ちや焦燥の相手がこの場にいる3人ではないことは理解していた。
「わ、私だって10年前のことだから、詳細まで覚えてないし、もしかしたら間違ってるかもしれないし……!」
軽い気持ちでこぼしてしまった言葉に大きな期待を寄せられていることを悟り、歌名は一気に縮こまる。
望が、瑛瑠の役割だと目で訴えるから。小さく頷いて、歌名を呼ぶ。
「なんでもいい。間違えていたっていい。確かめる時間ならたくさんあるから。今は、情報がほしいの。」
ね,と崩した口調で言うと、歌名は口を開いた。
本当はきみに羽根なんてなくて
それでも ぼくとはべつの生きもの
呼ばれなくても そばにいたいよ
さよならの練習をしながら泣いていた
やさしいきみの いとしい寂しさ
手をつないでもひとつにはなれない とか
あたりまえのことが少しかなしいね
いつか沈んでゆくところが
どうか きみを満たしてくれますようにと
祈ることしかできないけれど
聖なる夜を飛び越えたぼくらは
もう蛹ではいられないんだ
きみの瞳は魔法だよ
月を横切って 笑ってみせて
はんどるをきるの私
ひからないまちうけ
ふたしかすぎる声に
へなちょこつよがり
ほんとうのことだけ
ほんとうのことだけ言って
結月視点
3人が時雨ちゃんの部屋に、集まっていた。
呼ばれた分けじゃねえから、部屋に入れなかった。だから、廊下でその話を聞いていた。
聞いているうちに、数年前の4月1日のことを思い出した。
ああ、最悪だけど、思い出さなきゃ、前に進めねえな。思い出さなきゃ。
【続く】
美月視点
時雨さんは言う。
「結月は多分、病気なんかじゃないんだよ。
あの日に戦わなかったら、結月はこんなことにはならなかったんだよ。」
どんどんその声は震えていく。
私はこう言った。
「ここから先は私が話します。」
「数年前のAIの暴走事件を知っていますか?」
玲さんはコクリと頷いた。そのまま私は続ける。
「あの事件で、特攻班は、処理に向かいました。
ですが、大半の班員は戦死し、残ったのは、
たった二人の班員でした。
それが——御影結月と中村時雨でした。
ですが、その片方は、人として、人間として生きる道を失ったのです。
たった1つの小さくて、薄っぺらい、機械のために。
その片方は、今の特攻班班長 御影結月だったというだけです。
つまり、結月姉は、病気なんかじゃなく、機械であり、人間である、存在なんです。
だから、あの人は自分一人で全てを抱えて、
余計なものまで全て背負って、生きているんです。
息をしているんです。」
私は、下を向いていたので、玲さんがどんな顔をしていたかはわからない。
【続く】
遅れちゃってて、確実にツッコミくらうだろうけど、最終回の一話前! スタート↓!
今日は、12月24日、クリスマスイブ、今年は天皇誕生日の振り替え休日。
いつの間にか、25日が―クリスマス当日が、迫ってきていた。
明日はクリスマスフェス、なんとか俺も親から許可をもらって、行くことができる。
そういうことを考えながら、駅前の塾に向かっていると、
「よっ!」
「先輩なんでここにいるんです?」
「友達と待ち合わせ」
「ああそうですか」
相変わらずのご登場。去年まで、同じ部活の先輩だった光ヶ丘先輩。
「どこ行くの?」
「塾です」
「あそ、じゃ頑張ってね~」
ちょっと待て! 普段は立ち去ろうとすると意地で止めに来るのに、なんで今日に限って止めに来ない!?
「え、それだけ?!」
「…いや塾あるんでしょ? ちゃっちゃか行かないと…」
「…」
思わず沈黙。裏がありそうだけど、この人のことだから、なさそう。
「ウチさー、去年の今頃そーとーヤバかったんだよね~。一秒も惜しかったぐらいにさー」
このセリフで、ふと思い出した。少し前の先輩からの質問、まだ答えていないはずだ。
「…先輩」
「?」
「志望校の話なんですけど…」
「?、どこにした?」
先輩の顔見て気づいた、この人、1週間前のセリフも忘れてるっぽい。
「もしかして自分が後輩に志望校聞いたこと忘れてます?」
「あ~、えーとえーと… あったっけ?」
あーあ、案の定忘れてる。まあ忘れっぽいトコが後輩から好かれてるんだけど。
「やっぱり忘れてるんですね」
「とにかく! どこにしたの?!」
先輩は、自分の失敗を隠そうとするかのように、こっちの発言を促してきた。
「…耀(かがや)」
「え、え?! えマジで?! ウチんトコ…え、ちょ、ま…なんで?」
「なんとなく、です」
別に理由なんてものはない。なんとなく雰囲気がよかっただけだし、先輩と同じなのはたまたまだし。
「えーえー、え、なんか嬉しい…!」
先輩はちょっと興奮気味だ。そこまで喜ぶ…?
「そろそろ時間なんで、失礼しまーす」
「あ、じゃーねー」
塾に行ってから気づいたけど、どうやらさっきのやり取り、同じ吹奏楽部員たちに見られてたっぽい。…あそこで話すんじゃなかった…
クリスマスがやんやかんや言っている駅前には砂の様にたくさんのカップル達。
疎外感を感じる前に群れと逆方向に歩いていく。
目当てのフリー雑誌を手にして駅に向かうと聞こえる弾けた音。
目の前が彩られても動じず
歓声にも目を追わず
キラキラした顔が夜空を独占
疎外感をまた感じてしまったんだ。
どこにも当てれないから後ろ指を立てたんだ
君は君であって僕は僕だ。
君の平均は僕の異常であって僕の平熱は君の微熱
君と僕は違う。
だから僕は君を愛した。
昨日書き込んだ、「Advent 12/23」の最後の数文くらいが切れちゃってたので、今更遅いですが、その続きです。その前の部分は、昨日の23:44の書き込みに書いてあります。気になる方はぜひそっちも。
「そうだね鈴ちゃん! あと、受験勉強頑張ろ!」
もちろん!、とあたしは返事を打って、目の前の宿題に取り掛かった。
次回、最終回の一話前!(笑)