「悪友、ねぇ…」
私は彼の言葉を反芻する。
「確かに、よくヒドイ言葉をぶつけあったり、互いにイタズラを仕掛けたり…そういう意味では、”悪友”はピッタリね」
「そうだろう?」
鮮やかなコバルトブルーのウィンドブレーカーを羽織っている彼は、そう言って歩き出した。
「…そうだ、面白い話教えてよ」
私は、彼の後ろに付いて行きながら言う。
「お前はお前で面白い話とかがあればしてやってもいいが」
「それがあいにくないのよ」
「フン、じゃ無理だな。俺のモットーは等価交換なんで」
そう言って彼は後ろを向くと、にやりと笑った。
彼は知り合いが非常に多く、常にたくさんの、色々な人の話を持っている。だからよく、情報屋みたいなことをしているのだ。
「…代わりにジュース1本ぐらいはおごってやるわ」
「そんなんじゃ俺は乗らないぜ」
彼はそう吐き捨てた。でも私はここで引きはしない。
「じゃあどっかの誰かさんと、ココアシガレットとサワーシガレットのどっちが素晴らしいかで小競り合ったとか言う話を言いふらされてもいいの?」
「うぐっ…」
彼の余裕そうな顔がゆがんだ。私は得意げに続ける。
「どうする?」
彼は数秒考えこんだが、すぐに口を開いた。
「しゃーねぇ、ジュース1本プラス俺のオヤツ代おごれ」
「OK、でもおやつは500円以内まで」
厳しいなぁ、てかアニメの中の小学校の遠足かよ、と彼は苦笑いする。
「…で、何の話がいい?」
「別に何でもいいわ。とにかく聞かせて頂戴」
私は、よき悪友に駆け寄った。
こんにちは。リータです。つい先日、私はこの街を平和な良い街だと言いました。……しかし、撤回します。やはりどこの街にも、不良の類はいるようです。なぜなら現に今、絡まれているのですから。
本当にすぐの出来事でした。興味本位で路地裏に入り込んでみたら、数十秒後には奴らに取り囲まれていました。
困っていると、誰かが声をかけてきました。
「やあそこのお嬢さん。お困りかい?」
そこには、コートを着た若い男性が立っておりました。
「はい。大変お困りです。助けてください」
「了解!」
そして彼は何か小さな物を投げつけてきました。それは、私と不良の間で円形のバリアになりました。
「無事かい?」
「はい」
「ここから逃げたいのだが、都合上ちょっと僕に掴まっててもらわないと困るんだけど、大丈夫かな?」
「はい」
「……君が将来、悪い大人に引っ掛からないか心配だよ……。じゃあ、できるだけしっかり掴まってて」
私がその通り、彼の肩辺りにしっかりと掴まったら、その瞬間彼はものすごいスピードで動き出しました。危うく振り落とされるところでした。
しばらくして、安全と思われる場所で彼はようやく停止しました。
「はぁ……。無事?」
「はい。ありがとうございます」
「いや、良いんだ」
「貴方も能力者だったんですね」
「うん……え?『も』?」
フェンスの向こうに見た暗い夜を魅力的と思ってしまうのは子供の特権だろう。入れないけれど、小さな頭で必死に考えているとそれだけで楽しかったものだ。闇に入り込んでしまえばいずれは慣れて、こんなものかと客観視してしまう。というか見えてしまう。たしかに知りたいとは望んだが、遠足は準備が一番楽しいともいうように、叶わずにぶーたれていた時期がこの年からして既に羨ましい。年を取るというのは、それなりに惨い。
幽霊の正体見たり枯れ尾花。見えてしまう。これはもう不可逆的なことだし、そんな理由で情報を厭うていると滔々と流れ続ける先の未来において不利この上ない。枯れ尾花。そう、それはとってもつまらないこと。人は未知を探すものだと、だからなのだろうか。
知り尽くす楽しみよりも、やはり空白を想像する楽しみ。これに尽きる。遠くから目を眇め、全容を頭に描いて動かしてみる。しかしそこまでしたら実際に見るよりほかに道はなくなってしまう。そこで少し年を重ねると実際に見る権限をもらえたり経済的な隔たりが多少改善されたり、ともかくついにフェンスの先の闇夜へ立ち入ることができる。果たしてそこに思い描いていた物以上の何かがあるだろうか。
「見たい」と「見た」の間には大きな隔たりが今日も存在している。
彼女はうつむきがちに苦笑した。
「”周りに影響を与える”系の能力は下手すると周りに滅茶苦茶な影響を与えちゃうから… いつの時代も、そのせいで自滅する異能力者がいるんだけど…ま、それを防ぐために”記憶の継承”が起こるんだろうね」
”過去に同じ能力を持っていた人間の記憶を引き継ぐ”―異能力者たち共通の特徴が存在する理由が、分かったような気がした。
「…やっぱり、すごいですね、異能力者は…」
「そぉ? アタシにとっては当たり前のことだから、何とも思わないんだけどね~」
セレンさんは宙を見上げながら呟く。その目にはきっと、わたしとは違う風に世界が見えているのだろう。
「…わたしも、異能力者の”当たり前”理解できたらなぁ…」
「なんで?」
セレンさんが、わたしのほうを見て首を傾げる。
「いや、もし分かってあげられたら、仲良くなれただろうな~って」
「…もしや、”異能力”を知るキッカケになった子?」
「あ、まぁ”子”っていうか…”人達”なんですけど…」
言いながらわたしは、ちょっと恥ずかしくなって下を向いた。
「仲良くできないってヤツ?」
「…そう、です」
ドンピシャすぎて、顔を上げる気にならなかった。
絵や小説で”見た”ことを言葉にするのは翻訳と変わらないね。
つまらない。と思うんだけどなあ。
振り返ると、心の情景で”見た”ことを言葉に直してるんだ。
難しいよ、感じたものを。
言葉にするなんてことは。
「平和は戦争と戦争の間の騙し合いの期間」
誰かが言ってた
誰が言ってたんだっけ
まあそんなことは今はいい
大事なのは平和の定義
平和ってそんな程度でしかないのかな
しょうもない諍いで命が失われない世界
そんなのただの幻想でしかないのかな
そういえばこれも誰かが言ってた
「想像できることは実現する」
大勢vs大勢の争いがない世界、想像できる
じゃあ実現できるはず
でも想像してるだけじゃダメ
少しのことでも行動しなきゃ
平和を幻想なんかで終わらせないために
一時期離れてたけど
恋しくなって
戻ってきてしまった
誰も待ってないのはわかっとるけど、
ただいま
結月視点
涼香を家に連れて帰った日の夜。
様子がおかしかった時雨ちゃんの様子を見に行った。時雨ちゃんの部屋をノックする。でも、返事がない。
「時雨ちゃん?入るよ〜」
時雨ちゃんの部屋に入ったが、そこには誰もいなかった。そして、部屋の窓が開いていた。
綺麗な満月が見えた。そして、何か外の風景に違和感を覚えた。
気配を感じて後ろを振り返った。
すると、無表情で時雨ちゃんが立っていた。
「時雨ちゃん、何処にいたの?心配し((ドンッ」
言いかけた途端、時雨ちゃんが襲い掛かってきた。無表情のまま。
美月視点
時雨さんの部屋から物音がした。結月姉が時雨さんの部屋に行くと、言っていた。
急いで時雨さんの部屋に行ってみると、時雨さんが刀を抜いて結月姉に襲い掛かっていた。結月姉は鞘ごと時雨さんの刀を受け止めていた。
時雨さんの部屋が騒がしくなったことに気づいた玲さんが私と一緒に時雨さんを取り押さえてくれた。結月姉の方を見ると、少しだけ切られてしまったらしく、血を流していた。それでも結月姉は
ポケットから携帯を出して何かを検索し始めた。
その検索ワードは『AI洗脳 満月 暴走』だった。
その検索結果に結月姉は驚愕していた。
結月視点
時雨ちゃん。だからおかしかったのか。
一人にしないで?
って何回君に言ったかな
それでも君はは私を置いて行くんでしょ
分かってる 分かってるから何も言わない
何も...何も言わずに...言えずに
居なくなる君を眺めてる
君なんてどうせすぐ忘れる
そう思いながら
まだを重ねる私も君と一緒だね
だから好きになった
なんて 言い訳みたいで嫌だな
やりきれない苛立ちに
酸素をくれたのは 音楽だった
音楽に苛立ってしまったら
酸素がない 息ができない
爽やかな声の朝 色恋沙汰
消えてはまた
鮮やかな夢を見た 気がしていた
震えていた
アンサンブル トドメさして
アンタッチャブル 触れていて
惨憺たる 心模様
アイラビュー では 浮き上がれない
冷めた目で覗いてた 暗闇でひとつになった
僕は自然の中で 沈んでいくことが
怖かったはずなのに 今では君の声や
周りの白い目玉が 何よりも怖いのさ。
テンプレートな怒髪が天をつく
零れた水を拾う 子供たち
演技程度の慰めは また一呼吸分
奪っていく
アンサンブル トドメさして
アンタッチャブル 触れていて
惨憺たる 心模様
アイラビュー では 浮き上がれない
空回る手足 空を切る
嘲笑う 透明の常識が
切り裂く 心 血を流して
揺れてる
「大人にならせてくれ」
春夜、大気が揺れた
僕は黙ったまま
闇のなか見つめていた
誰かが震える夜が続き
日々のはいった社会の壁がたってた
それはいかにも壊れそうで
長いことそこに聳えていた
変わらないなんて
生きづらいなんて
ぺたんこにつぶれた声で
つらくなったって
生きてかなくちゃって
言われずとも足は動いていく
なくなっちゃえばいいなぁ
そんなこと考えながら日々は続く
いつかいつかと心だけ乾いていく
私は忘れていく
白い世界に一人なのよ
あなたに愛されたいだけ
それだけの願い
長い長い夜
So Why
私は一人
桜木ノアのパンチの効いた自己紹介から2週間が過ぎた。
俺は、桜木ノアと、友達と言うには浅く、しかし知り合いと言うのは薄情になるくらいの関係になっていた。まあ要するに、ちょっと、ほんの少しだけ、仲良くなっていた。
理由は明確。部活だった。
部活の体験に行った際、同じ方向に桜木ノアがやって来た時点で気づくべきだったのだろう。これはまさかと思いつつ部室に行くと、当然彼女も部室に入り、クラスが同じだからという単純な理由でチームを組むことになってしまった。『マジか』という言葉が思わず口から出そうになったのは言うまでもない。
しかし、俺にはあからさまに相手を避けるような趣味はないので、まあ上辺だけと思いながら、桜木ノアと話し始めた。
意外に話の合うやつだった。
それは好きなバンドや歌手が同じだったと言うだけのありふれた理由だったのだが、正直、宇宙人と話しているんじゃないかというくらい話が合わないことを想定していたので、俺は素直に驚いた。話しかけて来た外国人が日本語を流暢に喋ってくれた時と似ているのではないかと思う。(そんな経験したことないが)
その日本語を流暢に話す外国人と、しかも音楽の趣味まで合ったわけで、こうなるとテンションが上がるのも仕方なかった。
そうして思いのほか趣味の合った桜木ノアのイメージは、俺の中ではかなり変わったのだが、クラスメイト諸君はそうもいかない。
俺は、桜木ノアがグループワーク等必要に迫られた場合以外に、クラスメイトと話している姿を見たことがなかった。
いや、訂正しよう。
クラスメイトたちが必要に迫られた場合以外に彼女と話そうとしているのを見たことがなかった。
君との温度差が苦しいの
君の好きなものを私は好きじゃなくて
私の好きなものを君は知らなくて
私だって分かってるの
一緒にいたってうまくいかないって
だけど
好きなのよ
僕がついた中途半端な嘘は
君に意地悪く笑われて終わりでした
でもその顔が見たくてまた嘘をつく僕は
おかしいでしょうか
君に笑ってもらいたいが為に
嘘をつくのは狡いでしょうか
卑怯でしょうか
さよなら
を言うべきなのは分かっていますが
まだ僕は嘘をついていたいのです
あのさ、これ提出したいんだけど…
書き方がわからなくて…
一緒に書いてくれない?
女「ねえ、早くしてよ!もうすぐなるよ、チャイム。」
男「ん〜眠い…。」
女「なんでよ!私が起こしに行ったときまで寝てたじゃん!」
男「今日お前くるの早かったんだよ…。」
女「知りません〜。そして私が行ったら準備万端で待ってるのが普通です〜。」
男「…。」
女「ほら、もうすぐだから力尽きないで!もう門見えてるから!」
男「あ、うちのクラスの幼なじみの2人とやけに仲良いクラスメイトの2人じゃん。」
女「ほんとだ、2組とも2人で登校してんだね。」
男「あいつら、付き合ってんのかな?」
女「私それ本人たちに聞いたことある。」
男「あいつらなんだって?」
女「ただの幼なじみとクラスメイトだって。つまんない。」
男「まあ、でも俺らも付き合ってるように見えてんだろ?」
女「あ〜そうらしいね。なんでだよ!ってなるよね〜。」
男「はあ⁉︎お前みたいな女、こっちから願い下げだわ!」
男「漫画借してるやつ返して。」
女「あ〜忘れてた。明日持ってくるわ。」
次の日
男「ねえ、漫画は?」
女「え?面白かったよ?」
男「違うそうじゃなくて持ってきた?」
女「あ、忘れた。」
1ヶ月後
女「ほい、借りてた漫画返すね、ありがと〜。」
男「おう。ってかなんか重くね?俺一冊しか借してなかったよな?え?なんか最新刊入ってんだけど!」
女「ああそれ。最新刊出たから買いたいけど金ないって叫んでたじゃん。誕プレがわりにあげるよ。」
男「うおまじか、ありがと。すげー嬉しい!…けど、今4月だよな?俺の誕生日って10月じゃなかったっけ?」
「ねえ、デート行くのやめたら?何人もと付き合うの良くないんじゃない?」
「やだ、やめな〜い。だって今日の彼が今付き合ってる中で1番かっこいいんだもん!それに、おいしいものも奢ってもらえるし♡」
「あ、そういえばバイト代出たんだった。」
「デート行くのやめる!お寿司食べる〜!」
あと一回瞬きをしたら
零れ落ちてしまうから
持ち前の面の皮の厚さで
無理矢理私を抱き寄せて
今日だけは許してあげる