残し物
「おかけになった電話番号は、現在使われておりまs…」
…分かってたよ。もう繋がらないんだよね。
あいつの家の電話にはさ。
あいつはこの街から去ってった。
何一つ残さずに。
いや、あいつは大事なものを残して行きやがった。
俺の中にぽっかり開いた穴は、もう何を使っても埋まらない。
それだけ大事なものだったんだよ。
なあおい、お前が忘れたモン、必ず取りに帰ってこい。
それまで、待ってるからな。
もう一回、馬鹿話しようぜ。
もっといっぱいゲームしようぜ。
下らないことで喧嘩しようぜ。
俺の心の穴を埋められるのは、お前だけなんだよ。
待ってるからよ。
残したモノは俺が大事に仕舞ってるからな。
絶対に色褪せないように。
だからな、絶対帰ってこいよ。
また会おうぜ。いつになってもいいからさ。