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テレビ

【春。長雨。時期遅れの風邪。】

 人間疲労しているときはマイナスの発言をしがちである。マイナスの発言をしている時、ふつう人は自分は疲れているのだなと自覚し、休む。常にマイナスの発言をしている者は疲れていることに気づきにくい。

【スポーツ番組。夜の。】

 プロのアスリートを育てるのは監督でもコーチでもない。所属団体とスポンサーである。そもそもプロスポーツ界ありきでプロなのだ。プロスポーツ界がなかったら努力などしないだろう。プロを育てるのは資本主義なのである。

【バラエティ番組。昼の。】

 最初は地でやっていたキャラクターもテレビ局側から求めいられるようになると地ではなくなってしまう。最終的に本人も地なのか演じているのかわからなくなり破綻する。破綻しない臨機応変さを含めた強さを持つ者が生き残る。

【健康番組。午後の。】

 高血圧は自律神経系の疾患。高血圧の人は怒ったり動揺したりすると血圧が上がりっぱなしになってしまうため感情をコントロールしにくい。

 長生きできない、病気になるのは不衛生な環境で不衛生なものを食べているから。過酷な環境そのものが問題なのではない。菌やウイルスの問題なのだ。

【スケールの小さい人間を相手にしていると疲れる。】

 春。長雨。ミネラルウオーター。サイトカイン。発熱。ヘルパーT細胞。キラーT細胞。マクロファージ。B細胞。漢方薬。漢詩。春眠。睡眠。スウェットの染みたスウェット。シャワー。ロマンチックは妄想にとどめておけ。リアルでやったら狂気だ。リフ。リフレイン。テレビ。

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休日

 文明が発達すると信仰は廃れる。なぜ信仰が廃れるのかというと合理的でないからだ。近代化とは合理化なんだよ。信仰が廃れることによって文明はさらに発達する。だが人間の気持ちはなかなか合理化できるものじゃない。合理化できるどころか、文明の発達によって生活が豊かになると、ロマンチックな恋愛を望み、結婚相手に妥協しなくなる。晩婚化が進み、少子化に拍車がかかる。
 せっかくの休日に何をやっているのかって? テレビを見てゴロゴロ。ゴロゴロしながらテレビだ。しょうがない。金がないからな。テレビにも飽きた。久しぶりに本でも読みたいが、手元に本はない。図書館に行く気力もない。なぜなら今日は雨が降ったりやんだりして寒いから。
 雨が降ったりやんだりするのを、神の仕業だと考える人はもういない。どういう仕組みで雨が降るのか、知っているからね。だが、知らないことについてはどうだろう。
 原子力発電のことをきちんと理解している人間はそうはいないだろう。だが原子力発電を神のわざだと考える者はいない。わからなくても何らかの合理的な仕組みによってはたらいているのは自明のことだからだ。
 オカルトの罠にはまってしまう、短絡的思考、単純因果論でしかものを考えられない人もいるが。
 疲れたな。後悔はないよ。すべては運のなせるわざだ。人生なんて偶然の産物でしかない。
 どこを見ても、俺みたいな年寄りばかり。つまらん世の中だ。
 ちょっと眠らせてもらうよ。そうだな。目覚めないかもしれない。ははは。年寄りジョークだよ。

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バルコニー

 バルコニーに若い女。物陰に若い男。若い女にスポット。
「おお、ロミオ。あなたはどうしてロミオなの」
「ロミオという名前が嫌なら、どうぞ恋人と呼んでください」
「ああ、ロミオ」
「ぼくはあなたのために生きたい。あなたのためならこの命、おしくはない」
「……わたしのためなら命、おしくはない……あなたがわたしに差し出せるものって、命しかないの?」
「えっ」
「なんかそういうのってさあ。努力して目標を達成するなり、新しいことに挑戦するなりしてなにがしかの取り柄を持とうって気のない怠け者がかっこうつけるための方便としかとれないんだよね。なんの取り柄もない奴の最後の砦っつーの? 女にモテる奴はみんな努力してるんだよ陰で」
「……あの、その……とにかくぼくは、あなたを愛してる」
「あんたみたいに田舎で実家暮らししてる奴に愛だの恋だの言われたって説得力ないんだよね。豊富な人生経験ありきで言うべきセリフだよなそれ。本気で女落としたかったら都会でもまれて視野広げてから来いよマジで」
「……ぼくは、ぼくは……ぼく、ぼく……」
「ん? あんた泣いてんの? 泣いてんのあんた? 泣いてんの⁉︎」
「ロミオ!」
「ママ」
「なにしてるのこんなところで。風邪ひくでしょうが」
「ママ。ぼく、東京でひとり暮らししたい」
「あら、熱あるのね。ハナたらしちゃってもー。ほら、かみなさい。……さ、帰りましょ」
「うん」
 若い男と母親去る。若い女、バルコニーの手すりにもたれて。
「あーあ。今度の奴も駄目か」

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チョコとブランコ

 最近読んだ本に、女性の男性ホルモン分泌量は男性の十分の一(卵巣と副腎から分泌)。性欲はもっぱら男性ホルモンによるもの。よって性欲も男性の十分の一。とあった。なるほどそりゃあバレンタインに男子がそわそわするわけだ。女性の十倍だから。
 イベントだし。と、大して好きじゃないけど仲のいい男子にチョコをあげようと考えスーパーに行った。自分の好きな板チョコが、安かった。買った。もちろん自分用じゃないけど。
 帰路、ショートカットしようと公園に入ったら幼稚園の年長か小一ぐらいの、男の子がブランコに座って泣いてて、どうしたのってききたい衝動にかられたけど子どもとはいえ好奇心にまかせてたずねるのは失礼。トラウマになったら困る。さりげない感じで隣のブランコに座り。さっき買った板チョコの包みを開け、ぱきっとやって差し出した。男の子は、少しびっくりしたみたいだったけど受け取り、口に入れてずいぶん長い時間もぐもぐやってからのみ込んで、照れくさそうに笑った。つられてわたしも笑った。
 二人、しばらく無言でチョコをほおばってブランコをきこきこやってたら男の子のお母さんらしきと妹らしきがきて男の子はいっしょに帰った。
 だから明日はチョコは無し。

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納豆

 起きたら十一時だった。妹は、お母さんと出かけたみたいだった。
 冷蔵庫を開けた。鰹のにんにく醤油漬けがあった。ご飯にのせて、もみ海苔をかけて食べた。いい感じだった。
 テレビでベテラン芸人が、芸能界は少ないパイの奪い合い。人気芸能人のスキャンダルをリークすれば空きができる。と、コメントしていた。出かけようと思った。
 財布に九〇円しかなかった。図書館に行くことにした。
 入口近くに、春の本、と題したコーナーがあった。春告げ鳥、夜桜、桜町商店街マップ、春のアレルギー、春画の世界、梅の香、梅酢ドリンクで医者いらず。雑なチョイスだと思った。
 背中をたたかれた。振り向いた。中学のときの同級生だった。向かいの、喫茶店に誘われた。「お金ないから」と断ったら、「おごるから」と、にこにこしながら言った。
「そんなわけにいかないから。ほんとにお金ないの」
「いいの。いつもおごってもらってたから」
 喫茶店で、一時間ばかり話した。といっても、向こうの話にあいづちを打っていただけのような感じだったけど。話のほとんどは、彼氏と自分がいかにうまくいっていないかというもので、どうしたらいいかみたいなことをきかれるんだろうなあ。と思ってたらやっぱりきかれたので、「負けてあげる楽しさを覚えよう」と、コメントしたら、なんか目から鱗みたいな顔になったから調子に乗って、「折れない人は楽しい人生を送ることはできない」と、続けたら、あんま調子に乗んなよ。みたいな顔になり、「じゃ、これから彼氏とデートだから」と言ったので、「ごちになりました」と言って別れた。
 帰り、スーパーで納豆を買った。たれとからしなし、七四円税込。どうして納豆なんだろう。と思ったが、そんな心理学を包含した哲学的なテーマについて考える気力はもはやなかった。