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LINkerWorld LINearWaltz / MIraculous-Ephemeral 8

「ていうかきみ、この街じゃ見かけない顔だけどどこから来たの?」
「……」
「なんていうか、すごくかわいい服だねそれ」
「……」
「そういえば、さっきの武器、もしかして……」
「うるさい‼︎」
 ミラが背後から一方的に質問攻めにする中、薄桃色の髪の人物は急に立ち止まって叫んだ。その言葉にミラはびくりと身体を震わせるが、「……ごめん」と少しの沈黙ののち謝る。
「この前線都市で見ない顔だったから気になっちゃって」
 「嫌な気持ちにさせてたら……」とミラは言いかけるが、言い終える前に相手は振り向いた。
「どうして、私についてくるのよ」
 薄桃色の髪の人物は冷たい目をミラに向ける。ミラはその目に一瞬どきりとしたが、臆せず「いやだって……」と苦笑いした。
「さっき助けてもらっちゃったからありがとう言わなきゃって思ったし、それに……」
「感謝なら結構」
 ミラの言葉を遮るように相手は冷たく言い放つ。
「私はディソーダーがいたから義務として倒しただけよ」
 「別にあなたを助けようだなんて思ってない」と薄桃色の髪の人物はミラから目を逸らした。その言葉にミラは「えっじゃあもしかして……」と目を見開く。
「きみもリニアーワルツ⁈」
 その声に、薄桃色の髪の人物はびくりとした。ミラは気にせず「すごーい!」と飛び跳ねる。
「だって、ディソーダーを倒せたってことはきみはリニアーワルツで、さっき持ってたのはジェミニってことでしょう⁈」
 「カッコいい〜!」とミラは目を輝かせた。相手はその姿にポカンとするが、ミラは気にせず「あ」と呟く。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 7

「ぜ、前線都市って壁にちゃんと囲まれてるはずだよね……?」
 「なんで都市の外にいるディソーダーがここに……⁈」と、ミラはにじり寄る敵から逃れるため立とうとする。しかし驚きと恐怖の余りうまく立ち上がれず、後ずさるだけで限界だった。それでもディソーダーたちは容赦なく迫り、ミラ自身も後ずさるうちに建物の壁にぶつかってしまう。
 このままでは自分の身が危ない……そうミラは思い、思わず手の中のキーホルダーを握りしめた。そのときだった。
「€;$+|”|‘=・,‼︎」
 不意に目の前に人影が飛び込んできて、手に持つ刀のようなもので目の前のディソーダーを切り伏せる。ディソーダーは不快な悲鳴を上げて真っ二つになった。それとともに周囲のディソーダーたちが目の前の人物に飛びかかってくるが、その人物はディソーダーたちを避けたり、手に持つ刀のようなものでディソーダーたちを両断していく。ミラが呆然と見ている間に、目の前の人物はディソーダーたちを全て倒してしまった。
「……」
 ディソーダーを軽々と斬り捨てた人物は、ちらと座り込むミラの方を見やる。長い薄桃色の髪の一部を桜の形をした髪飾りで結わき、桜色の官帽と軍服のようなワンピースを着たその姿は、ミラが少し前に街中でぶつかった人物と一致していた。
 ミラはそれに気づくと「あっもしかして!」と声を上げる。
「さっきお店の前でぶつかった……」
 ミラがそう言いかけると、相手はミラに背を向けてその場をあとにしようとした。ミラは「ちょっと待って!」と立ち上がる。
「どこに行くのー?」
「あなたには関係ない」
 薄桃色の髪の人物は地面に投げ捨てていたと思しき革製ケースを拾うと、手に持つ刀のようなものをしまった。ミラはその中身をつい覗き込もうとするが、相手はミラの興味を吹き飛ばすように音を立ててケースを閉じる。そしてまたツカツカと歩き出した。
 ミラは思わずその人物を追いかける。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 6

「それにしてもここ……ちょっと怖いなぁ」
 路地裏を歩きつつミラはそう言って辺りを見回す。昼間とはいえ、ひと気がなくしんと静まり返っている小道は、普段表通りしか歩かないようなミラにとって不気味に見えた。
「……」
 ミラはつい立ち止まって、手の中にあるキーホルダーに目を落とす。いくら路地裏が怖くても、先ほどぶつかった人物が落としたキーホルダーを届けなければならない……
 「だからあの子を探さなきゃ」とミラが思い直して顔を上げたとき、目の前の道の角になにかが隠れたような気がした。
「?」
 「なんだろう」と思いつつミラは角の建物に近づく。さっきの子かなと思いつつ角の向こうを覗き込もうとすると、陰からなにかが飛び出してきた。
「‼︎」
 ミラは飛び出してきた“なにか”を避けようとするが、腰を抜かして尻もちをついてしまう。その“なにか”……けばけばしい色合いで多脚の大型節足動物のような生物は、地面の上をガサガサと動く。ミラがつい辺りを見回すと、周囲の建物の壁や地面には体長1メートルほどの節足動物のような生き物が複数うごめいていた。
「こ、これって、ディソーダー⁈」
 自身の周りを囲む奇妙な生き物たちを見て、ミラはつい声を上げる。まだ戦場に出たことのないミラにとっては初めて実際に見るが、自身が生み出され戦闘訓練を受けた“ラボ”の資料や仮想訓練シミュレータの映像で何度もその姿を見せつけられてきたため多少の見覚えはあった。禍々しい見た目をした、奇怪な存在……異界における人類の敵・ディソーダーだ。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 5

 暫くの間その場に微妙な沈黙が流れたが、やがてウェスト管理官が「行くぞ」とミラに声をかける。ミラは「うん……」と再度店内に入ろうとするウェスト管理官のあとに続こうとするが、不意に踏み出した足元になにかが当たる感覚がした。
「?」
 ミラが足元を見ると、そこにはきらきらした桃色の花のキーホルダーが落ちていた。
「これって」
 ミラが思わず拾い上げてそう呟くと、ウェスト管理官が「どうした?」と振り向く。ミラはそれに答えずじっとつまみ上げたキーホルダーを見つめていたが、やがて「ウェスト管理官」と口を開いた。
「ちょっと、行ってきてもいい⁇」
 ウェスト管理官は「は?」と呟いた。

 前線都市・ヘスペリデスの路地裏。ここを1人の小柄なコドモが歩いている。黄緑色の髪のその人物……ミラキュラスことミラは、手の中のきらきらしたキーホルダーを見て「どこ行ったんだろ、あの子」と呟いた。
 というのも、ミラは先ほど街中で不思議な人物とぶつかったときに、ぶつかった相手が落としていったと思われるキーホルダーを拾ったからである。とても綺麗なものだった上、もしかしたら相手の大切なものかもしれないと考えたミラは、監視役のウェスト管理官の制止を振り切ってぶつかった相手を追いかけているのだった。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 4

「ちょ、ちょっとミラキュラス!」
 「なにやってるのよ……」とウェスト管理官は転んでしまったミラに対してツカツカと歩み寄る。ミラは「ご、ごめん……」と苦笑いするが、ウェスト管理官は「謝るならぶつかった方にしなさい」とミラの腕を引っ張り立たせた。そのときになって、初めてミラはぶつかった相手を見る。
 その人物の姿は、どこか奇妙なものだった。
 というのも、薄い桃色の長髪の一部を桜の形をした髪飾りで結わいており、桜色の官帽を被って帽子と同色の軍服のようなワンピースを着た、随分と華のある容貌をしていたからだ。ついでに背丈もそれなりにある上、革と思しき素材でできたなにかのケースを持っていて、このヘスペリデスの街中ではミラと同じくらい目立っていた。
「……」
 ミラとぶつかった桃色の髪の人物はすでに立ち上がっており、ワンピースの裾を、汚れを落とすように少しはたいている。ミラは相手の華やかな容姿にわずかな間見とれてしまったが、相手がその視線に気づいて訝しげな目を向けたことでハッと我に返った。
「あっ、さっきはぶつかってごめんなさい」
 「どこか痛くなかった?」とミラは付け足すが、相手は「別に」と目を逸らす。
「そっか」
 「ならよかった」とミラは言いかけるが、ミラが言い終える前に相手はツカツカと先ほど進んでいた方向に向けて歩き出した。「あっ、ちょっと……」とミラはつい呼び止めようとするが、早歩きする相手はあっという間に通りの横の細い道に入って見えなくなってしまった。ミラはポカンとした様子で言葉を失う。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 3

「私が通行人の道案内をしている隙に、勝手に前へ進むんじゃない」
 「トラブルにでも巻き込まれたらどうするんだ」と厳しい表情で言うウェスト管理官に対し、ミラは「えーいいじゃーん」と笑う。だがウェスト管理官はますます厳しい顔をした。
「リニアーワルツはあくまで異界開発機構が保有する、対ディソーダー戦のための戦力なんだ」
 「だから前線都市内で行動する際は、管理官の監視の下でしか行動できないと……」とウェスト管理官は言いかけるが、ミラは「えー厳しい〜」と口を尖らせる。
「自分はペアがいないから戦力外なのにー?」
「こういうときにその話を持ち出すんじゃない」
「そんな〜」
 ウェスト管理官に諫められて、ミラはついがっかりする。そんなミラを見ても「お前が勝手な行動をすれば、私も処分の対象になりかねないからな」と冷たいことをウェスト管理官は言い、ミラに「ほら、突っ立ってないで」と声をかけた。
「訓練中の仲間たちのために焼き菓子を作るつもりでいたんだろう?」
 「店にさっさと入るんだ」と管理官はミラの肩に手を置いて、店内へ入ろうとする。ミラも「うん」と頷いてウェスト管理官に続こうとした。
 しかし急に歩道を通りに沿って走ってきた人物にぶつかりそうになってしまう。ミラは相手を避けようとしてよろけて尻もちをつき、相手も前方へ転んでしまった。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 2

 しかし、この鼻歌を歌うリニアーワルツ・ミラキュラスことミラは少し事情が違う。というのも、このリニアーワルツは十分戦える状態であるはずなのに、ペアとして適合するリニアーワルツが見つからないのだ。
 リニアーワルツは生み出されると異界開発機構の上層部が保有する高度なAIによって膨大な組み合わせシミュレーションが行われ、その予測結果の中から一番戦闘において相性がいいと考えられる相手とペアを組ませられる。だがミラは、この組み合わせシミュレーションでもペアとして適性の高いリニアーワルツがあまり見つからず、結局”有事の際の予備“という名目で生み出された基地のある前線都市・ヘスペリデスにい続けているのだ。そのため、基地内ではペアのいないミラを“戦力外のお荷物”として邪険に扱う者も少なくない。しかしながら、ミラはそのことをあまり気にせず、ペアが見つかるまでのんびりと待機の日々を送っているのだった。
 そうこうしているうちに、ミラは小さな商店の前で立ち止まる。小さいながらも小綺麗なその店には、“MARUS GROCERY”という看板が掲げられていた。
 ミラは看板を確認すると、店の自動ドアに近づこうとする。しかし背後からの「おい」という鋭い声に呼び止められて、くるりと振り向く。そこには背が高く、ヘスペリデス基地で働く職員の制服を着た女が立っていた。
「どこへ行っていたんだ、ミラキュラス」
 睨みつけてくる女に対し、「あ、ウェスト管理官」とミラは間の抜けた声で返す。ウェスト管理官と呼ばれた女は「お前なぁ…」と呆れた。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 1

「……ふんふふ〜ん」
 午後の暖かな日差しが辺りを照らす異界の前線都市・ヘスペリデスには、商店街がある。資源獲得のために開発が進む異界で働く多くの人々の生活を支えるため、人類の生まれた世界から決して少なくない数の人々がやって来ては、人々の生活に必要な仕事に就いているのだ。その業種は多岐に渡り、小売業やサービス業、運輸業……と人類が生まれた世界と同じように人々は働いている。異界の開発の拠点だけでなく、異界で働く人々を支えるために前線都市が存在していた。
 そんな街の商店街の大通りを、のんきに鼻歌を交えながらスキップしている奇妙なコドモの姿があった。
 そのコドモは短い黄緑色の髪に緑と赤のベレー帽を被り、黒いシャツに緑と赤のネクタイを締めた上に緑のブレザータイプジャケット、緑と赤のストライプ柄の膝丈ズボンを身につけて、足元は白い膝下ハイソックスに黒い革靴を履いている……といったいで立ちだ。
 パッと見たところは人間のコドモのそれだが、この華やかな容姿は本来であれば見る者に違和感を生じさせるはずである。しかし、ヘスペリデスの街中を行く人々は誰も気に留めない。なぜなら、このコドモは異界で働く人々や前線都市を、謎の敵・ディソーダーから守るために生み出された特別な存在——リニアーワルツだからだ。
 異界を開発する過程で人類や前線都市を襲撃するようになったディソーダーへの対策のため、異界開発の中心的存在・異界開発機構が生み出したこのヒト型存在は、二対一組で造られる合体・分離兵器……ジェミニを使いこなし、相性のいいリニアーワルツとペアを組んで前線都市の外へ戦いに赴くことが任務となっている。人々や前線都市を守るリニアーワルツたちは、異界で働き暮らす人々にとって自分たちを守ってくれる”英雄“であった。