表示件数
1

世にも不思議な人々61 見せる人その3

「つーかキタさん、どこに行ってたんだ?」
真琴が尋ねた。
「ちょっとハブアウィル次元にねー。バレないように上空600mくらいからこっそり見てただけだったけど、ネロちゃんとコマイヌがじゃれ合ってたり、黎君が他の異能力者から話聞いてたり、セイレーンさんが路上ライブしたりしてた」
「で、キタさん、いや、嵐山斎六さん?一体どういうことなのか説明していただきたいのですが」
初が切り出した。
「キタさんの能力は確か、『普通なら見えないものを可視化する』、だったはずです。空間に穴開けるとか別次元に行くとか、そういうのは範疇の外な気がするんですが」
「良い質問だねぇ。これだよ、これ」
そう言ってキタが自分の右眼を指差した。いつの間にかその眼にモノクルがかけられている。
「それは?」
「オータロー、ラモス、君達も能力発動時に、能力に話しかけられることがあるだろう?」
随分と久し振りの呼び名を使って、キタが説明を始めた。
「僕はあれを便宜上『能力生命体』と呼んでいるんだがね、『生命体』の名の通り、彼らはただ脳内に話しかけてくるだけのものじゃあない。実体があるんだ。その実体のほんの一部だけを借りたんだよ」
「へえ、『具象体』に似てるな」
先程まで離れた位置でネコと遊んでいたぬえが割り込んできた。
「うん、まあそういう考え方であまり間違っちゃいないよ」
「けどさあ、それとさっきの現象、どう関係するんだ?」
真琴が訊く。
「可視化を利用した幻覚の応用編みたいなもんだね。人間は外から取り入れる情報の七、八割を視覚に頼ってるんだ。その視覚を操れれば、偽薬効果の要領で、思い込みだけで幻覚を実体化させることも可能なんだ」
「無茶苦茶じゃね?」
「そこは能力の不思議パワーってことで。一部を借りたときは、どうやら能力の威力も上がるらしいし」
「へー。面白いなー。もしかして僕らもそれ出来たりすんのかな」
「まあ、能力側の気が向いたらね」
「あ、そういやお前、何ていうんだ?」
真琴が突然に吾魂に聞いた。
「あ、ぼ、僕ですかい!?………うん、僕は嵯峨野吾魂だ。それより前の名前はもう良いや。どうせ死のうとしてた身だしな。気が向いたら教えるよ。能力は『どんぐりころころ』。『志半ばにして死ぬとき、その遺志を他者に継承する』能力だ。よろしく」

1

世にも不思議な人々59 見せる人その1

所変わって、主人公たちの住む街では。
初が本屋に小説の新刊を買いに行き、そこで参考書を見ていた真琴に遭遇し、なんやかんやで一緒に出てきたところにヌエを連れたキタが偶然出会し、その結果、第一コミュニティ+αという不思議な組み合わせが完成していた。
「へー、別次元から来た能力者か」
「マジか。まさかあのハブアウィル次元の人間に会えるとはな」
「そっちではそんなに有名なんで?」
「まあ、少しね」
「じゃあ、お前も『ネクロマンサー』とか『クラーケン』とかと会ったことあるのか?」
「いやー、あんまり他の異能力者とは話さなかったもんで。あ、けど二十五代前の僕が初代ネクロマンサーの誕生を見たことがあるぜ」
「マジで。良いなー」
「良いだろー」
と、そこに。
「やっと見つけたぞォッ嵐山斎六!!」
立ち塞がるように現れたのは嵯峨野吾魂。
「なあヌエ、お前、嵐山って苗字だったりしないか?」
真琴が尋ねる。
「しないなー」
「じゃあ……」
四人が揃って後ろを見た。
「馬鹿野郎共が!後ろにゃ誰も居ねえよ!んな古いネタをやんな!お前だよ!」
彼が指差したのは、何とキタであった。
「「え、えええええええ!?」」
初と真琴が同時に驚く。
「キタさん名前あったの!?」
「いやそれは当然として!そんな古臭い名前だったのか!?」
「悪かったね古臭い名前で。……そうか、君があの『アコン』か。で、何の用だい?」
「あんたには死んでもらう!それこそがもう遥か昔、六代目からの悲願だからな!」
「そんな武器も無しの丸腰でよくそんなことが言えたね。どうやって死んでもらうつもりだい?」
「え、……あっ!考えてなかった!」
「阿呆か」
「阿呆かな」
「阿呆だな」
真琴、初、ヌエの意見が見事に一致した。

1

世にも不思議な人々57 受け継がれる人その2

少年が慌てて崖の下を覗き込むが、老爺の姿はもう遥かに下方にあり、見ること能わず。
「……何だったんだ今の」
不審がり考えていると、突然少年の頭の中に大量の情報が流れ込んできた。まるで、『六、七百年生き続けている人間の記憶がそのまま彼の頭に移植されているかのように』!
「うぬぁっ、ぐあああああぁぁぁぁああ……」
そして数分後、それが終わったらしく彼は立ち上がった。しかし、どうやら様子が先程までと違うようだ。
「……くフッ。ヒャッヒャッヒャッヒャッ。これが『俺』の新しい身体か。ちょいとばかし運動不足なんじゃあねえのか?」
一人称まで変わり、まるで別人格に乗っ取られたかのようである。
「まあ良いや。……第十三代嵯峨野吾魂。先代の野望は我が身命の全てを以て果たしてやろうじゃあないか」
どうやらガチに別人格関係のようだ。
「さて、先代の野望とは……?なに、『或る血統の滅亡』?ハハッ、こいつは物騒だ!……え?嘘だろ、件の血筋、残り一人って。つまんなっ。頑張って滅ぼせよ。何でそんな微妙な感じで残してたし。しょうがねーなー。俺が達成してやりますか!」
そう言って、崖とは反対側に歩き出した。
ところが、数歩行ったところで突然、まるで操り人形が糸を切られたかのように倒れこんだ。起き上がる気配が見られない。あたかも、『彼の身体が動こうと考えることを止めてしまったかのように』。

0

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 7.サイレントレイヴン ①

夏が近づいて、日が出ている時間が長くなったとしても、夕方の6時を超えるとあたりはそれなりに暗い。
特にこの街は田舎だから、中心部はともかく駅前なんかから離れてしまえば、街灯は少なく夜は暗い。
別にこの街の治安は悪くはないから平気なんだけど。
それでも人通りは少ないから、小学校の頃は大人たちからは気を付けてとよく言われる。
まぁ、夜道じゃ何が起きるか分からないけど。
物騒なことが起こるとは限らないし、”普通の人が知らないモノ”が、涼しい顔で本領発揮しているかもしれない。
でも、何が起きても別にわたしは気にすることはないと思う。
そもそも、最近かなり現実離れしたことが起きてるし。
しょうがない、”こういうところ”に住んでいるんだもん、諦めるしかない。
そう思った時、誰かとすれ違った。
何気なく振り向くと見覚えのある後ろ姿が見えた。
「―黎?」
思わずその名を呟いたと同時に、その人がちらとこっちを見た。
「…あ、」
だが彼はこっちをチラ見しただけで、そのまま歩き去って行った。
「…」
珍しく知り合いとそこらへんで会えたのに、特に何も起きなくってちょっと虚しかった。
だが彼の姿に、ふと違和感を感じた。
―いつもはリュック持ってるのに、手ぶらで歩いてる。
…いや、そこまでおかしくないかな? わたしはそう呟くと、もう結構暗いな、と家路を急いだ。

2

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ㉕

「…まぁ、な」
彼はくく、と笑って続ける。
「例えそうなろうとも、友達だし…いやだからこそ、か」
そしてちらと斜め後ろに目をやった。
「…あとそれを望んでる人がいるし」
耀平の視線に気づいたらしき黎が、慌てて目をそらした。
「確かにねー…黎ってボクら以外にあんまり友達いないし」
「いやお前も基本おれら以外にに友達いないだろ」
…が、学校行ってねぇからしゃあないだろ、とネロは自分をいじってきた耀平に対して口を尖らせる。
「…そうなんだ」
「…何か悪い?」
わたしの何気ない言葉に、珍しく黎が反応した。
「あ、いや…別に」
「ならいいけど。…別に、こっちは最初ただの抑止力のつもりだったから。それがいつの間にか…」
話の途中で、何か言いにくいことでもあるのか彼の言葉が途切れた。
「いつの間にか…⁇」
その続きは?と言わんばかりに耀平はうつむいている彼の顔を覗こうとした。
「…耀平、それ以上やると軽く首絞められるぞ」
黎が言いたいことに気付いているのか、師郎は苦笑いしながら耀平をとがめた。
え~と笑いながら、耀平はネロと一緒に黎の顔を見ようとしていた。
…わたしは、異能力者はやっぱり只者じゃないんだと思いながら、彼らの平和な光景を眺めているばかりだった。

〈6.ハルピュイア おわり〉

1
0

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ㉔

「…鷲尾さん、それはちょっとやりすぎなんじゃ…」
わたしが諫めようとすると、”ハルピュイア”はぴしゃりと返した。
「やりすぎって言ったって一応正当防衛になるから別にいいのよ。こうやって他の能力者が抑えていかないと、みんな大変なことになるし…」
そう言いながら、彼女はネロの腕をちょっと乱雑に離す。
”ハルピュイア”の能力から解放されたネロは何も言わずに相手を睨みつけた。
「…抑止力、か」
ぽつり、と黎が呟いた。
「…”抑止力”?」
わたしが思わず聞き返すと、さっきまで黙って場を見ていた亜理那が話し出した。
「他の能力者の暴走を抑える異能力者のことよ。まぁ、どの異能力者も、他の能力者の抑止力であることには違いないんだけどね。世界の秩序とかを崩さないようにするために」
「特に”ネクロ”なんかの強力極まりないのとかは、おれらとかで抑えてかないとダメだ。ついでに言うとコイツは感情任せになりやすくて危なっかしいし」
耀平も亜理那の言葉にうなずく。
「―秩序や秘密を守るためなら、最悪の場合自ら手を下すことだって構わねえよ」
くすりと笑う耀平に、わたしは背筋が凍り付いた。だが少し引っかかるものがあった。
「…でも、」
でも、最悪の場合、自ら手を下すのなら―とわたしは彼に浮かんだ疑問を投げかける。
「それでも友達?」
ネロがぴく、と反応したような気がした。