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視える世界を超えて エピソード9:五行 その⑨

「お前のトコなんかそういうのは『ナシ』だろ? 潜龍の」
振られた平坂さんは無言で頷く。
「野生の才能ってのは意外といるモンだ。現に私もシラカミも、完全フリーだったろ? これを『こっち側』に引き入れて、戦力にできる。しかも、NGは無しだ。来るもの拒まずって感じで」
「えー? 私の時はあんなに殺意バリバリだったのに?」
白神さんが拗ねたように言う。
「お前のせいっつーかお陰でこっちも考えが変わったんだよシラカミメイ」
「むぅ、それならヨシ」
「偉ッそうに……で、私どこまで話したっけ」
「野生の霊感持ちを囲えるってとこまでッス、師匠」
種枚さんの後ろに立ちっぱなしになっていた鎌鼬くんが答えた。
「そうだった。良いか、これには利点が3つある。まずウチの戦力増強。次に、青葉ちゃんや潜龍のみてーな元からある組織に戦力が流せる。そしてもひとつが……潜龍の」
「何だ」
「お前みたいなのは、この寄合に助けられると思うぜ? なんせ、問題児が全員手の届く場所に集まるんだからよ」
「……なるほどな。悪い話でも無いか」
「だろォー? 誰ぞ反対する奴はいるかい?」
種枚さんのその言葉に乗る人はいなかった。全会一致で賛成ってことだろう。

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視える世界を超えて エピソード9:五行 その⑧

「まあコイツのことはどうでも良いんだよ。見張りも付けるし、何ならお前が直々に目ェ光らせておきゃ良いんだ、潜龍の」
種枚さんの言葉に、不満げながら潜龍さんは納得したようだった。
「さて、この寄合の本質は、『怪異に手の出せない人間の保護』だ。ちょっと偉そうかね?」
「「いや」」
青葉ちゃんと平坂さんが同時に答えた。
「『それ』は“潜龍”の存在意義でもある」
「岩戸家も左に同じく」
「マジかよお前ら。こいつァ都合が良いや」
けらけらと笑い、種枚さんは話を続けた。
「この寄合はこれからどんどんデカくなるぜ、予言する。私ら5人はその天辺に立つのさ」
「はい、1個質問」
青葉ちゃんが手を挙げた。
「何だい青葉ちゃん」
「この寄合を作る意味って何です? 怪異退治なら、正直既にいくつか組織がありますけど、これ以上増える必要ってあるんですかね?」
「ぁー…………」
種枚さんは軽く唸り声をあげ、しばらく目を泳がせ、再び口を開いた。
「まず、この寄合は飽くまで『個人の集まり』だ。勝手と融通が利く。次に、『はぐれ』の霊感持ち、あとはシラカミみてーな奴を好きなように囲える」
「へ? メイさんみたい、とは?」
白神さんが気の抜けた声をあげた。
「『こっち側』に引き込めそうな『そっち側』」
「はーん……なーるほどー」

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子供は適切な保護者に安全に教育されなければならない 後編

「たしか、テメェは…………まだ13歳だったか」
『ミネ』と呼ばれた男は、呟きながら足下に転がしておいた品を少年に向けて蹴り飛ばす。それに釣られて、少年の視線が足元に転がって来た品物に移る。それらは自動拳銃用のボックス・マガジンだった。
「…………?」
「どうした? ソレ使うなら替えの弾は無きゃ意味無ェだろ。拾えよ」
少年は一瞬の逡巡の後、素早くしゃがみ込んで弾倉を拾い上げた。そして立ち上がった時、ミネは既に少年の眼前にまで音も無く迫っていた。
「ッ⁉」
拳銃を向けた腕を、ミネは片手で掴み、照準から己の身体を外す。続けて少年が振るおうとした空いた片手も片手で押さえ、最後の抵抗に放たれようとしていた蹴りも、両脚を片足で踏みつけるように抑え、抵抗の余地を完全に潰す。
「銃1丁で強くなった気でいたか? クソガキが……」
もがく少年を意に介すこともなくミネは上体を仰け反らせ、少年の額に勢い良く頭突きを直撃させた。
「がっ……!」
拘束を解くと同時に、気絶した少年がその場に崩れ落ちる。倒れた少年の頭を軽く一度蹴ってから、ミネは通信用インカムを起動した。
「…………もしもォし、こちら〈番人〉」
『……はぁい、こちら〈医務室長〉。何だいミネさん先生』
「ガキが脱走しようとしてたから止めた。回収しろ」
『了解。今日は誰だい?』
「ロタ。……ああ、あと一つ」
『何?』
「拳銃と弾倉パクってやがった。没収はするなよ」
『良いのかい? また逃げる時に使われるよ?』
「ガキの鉄砲ごときで止められるなら〈番人〉やってねェ」
通信を切り、ミネは再び塀の上によじ登り、監視を再開した。

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子供は適切な保護者に安全に教育されなければならない 前編

〈ブラックマーケット〉のとある夜。元より陽光は〈地表面〉に遮られ、昼夜の区別など殆どつかないこのエリアでは、クォーツ時計と体内時計だけが日時を示す。
下品なネオンライトの輝く路地を遠くに眺めながら、男は『学校』を囲む塀――もはや『城壁』と呼ぶべき規模のそれ――その上、半ば私室化した空間でアルコールバーナーを操作していた。
「………………」
青白い火を眺めていた男はふと、塀の下、『学校』敷地内に視線を送る。
闇に紛れるように黒色の布地に身を包んだ小柄な影が、前庭を駆け抜けようとしている。
「……はァ。クソガキがよォ…………」
男は溜息を吐きながらアルミ・ケトルを火にかけ、わざとらしく物音を立てた。それに気付き、影がびくりと身じろぎして足を止める。
「よォ。夜更かしか? ガキは寝てるべき時間だろうが」
影は答える事無くじっとしていたが、不意に布の下から腕を突き出し、男に向けた。男が合金製のライオット・シールドを引き寄せるのとほぼ同時に乾いた破裂音が響き、男の構えた盾に何かが高速でぶつかる。
「……なるほどなァ…………。『武器庫』から火薬銃が1丁無くなってると思ったら、お前か。どうせなら熱線銃の方パクっときゃ良いものをよォ。ま、隠し持つならそっちだよな」
軽く笑いながら、男は『武器庫』と呼んでいる木箱から目的の道具を手探りで取り出し、地面に向けて放り投げ始めた。
目的の品を出し尽くした後は、ライオット・シールドも地面に放り、自身も飛び降りる。一連の動きを、影は身動きできずに眺めていた。
「さァて…………と」
着地の衝撃を殺すために大きく曲げていた膝と腰を伸ばしながら、男は口を開く。
「よォ、不良のクソガキが」
「…………ミネ、先生」
影が羽織っていた黒色の布を解き、地面に投げる。その下から現れたのは、まだ幼さの残る少年だった。

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企画「鏡界輝譚スパークラー」世界の後から思いついたキャラ

・名雪 桃鋼(なゆき ももこ)
性別:女
身長:158cm
所属:アザレア高等学苑東鏡校
学年:1年
多くの名スパークラーを排出してきた名門“名雪家”の娘にして一族きっての落ちこぼれ。
小さい頃からスパークラーの才能に恵まれた兄と違い全くと言っていい程才能に恵まれず、家族や周囲の人々から白い目を向けられていた。
そのため中学生まで一般校に通っていたが、何としても娘をスパークラーにしたかった父親によって、高校進学の段階で半ば無理矢理、東鏡・親宿(しんじゅく)の新興STI・アザレア高等学苑東鏡校に入れさせられた。
性格は気弱でかなりのビビり。
周囲から蔑まれて生きてきたので自己肯定感がかなり低く、人付き合いが大の苦手。
スパークラーとしての才は全くないが、運動神経や学力はかなり平凡(しかしそれ故に周囲から蔑まれていた)。
父親が自分を“黒い噂”のある“アザ高”に入れさせたのは自分にさっさと死んで欲しいと願っているからと思っている。
上記の理由から実兄以外の家族・親戚を苦手としている。
頼れる知り合いのいないアザ高で1人みじめに3年間を過ごす…と思っていたが、様々な人々との出会いから少しずつ成長していき、最終的には自主結成部隊を結成することになる。
容姿は肩に付くくらいの長さの髪をツーサイドアップにしており(昔兄に結んでもらった髪型を未だに続けているそう)、制服はきちっと着こなしている。
兄は1歳年上で北界道(ほっかいどう)のSTIに所属しており、桃鋼の数少ない味方である。
名前の由来は「ピンクサファイア(“桃”色のコランダム、つまり“鋼”玉)」。

〈アザレア高等学苑東鏡校〉
東鏡・親宿にあり全国各地に分校を持つ新興STIの本部校。
“一般校や普通のSTIに適応できない子や家庭環境に問題のある子、素行の悪い子”などを受け入れ、“そういった子どもたちの健全な精神”を戦いを通して育てることを掲げて全国各地から生徒を集めている。
…が、その実態はあの手この手でスパークラーになれそうな子や才能はないけどスパークラーになりたい子をかき集め、無理にでも戦場に駆り出して戦果ばかりを追い求めているようなSTI。
戦果を追い求めて事前通告なしに他のSTIの管轄地域への遠征を繰り返しているので、色んなSTIと仲が悪い。

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鉄路の魔女:Nameless Phantom その④

ミドリちゃんの方に向き直ってみると、彼女は回り込むようにして私と一定の距離を保ちつつ、倒れたアオイちゃんに駆け寄った。
「アオイちゃん! 無事?」
「何とか……威力はそんなに無かったっぽい」
「良かった……」
ミドリちゃんがこっちを睨みつけてくる。
……しかし、これ以上撃たれるのも嫌だし、いつまでも戦い続けるのも面倒だな……。
「…………もう、終わらせようか」
私に残ったイマジネーションを確認する。貯蓄は十分。
棍棒を投げ捨てる。4脚を開いて強く踏みしめ、機械腕を大きく真横に広げる。
「……〈Iron Horse〉」
脚部と両腕の機械装甲が捻じれ膨らみ、私の全身を少しずつ覆い隠していく。『鎧』として、そして、敵を殺す『刃』として。変形しながら形成されていく。
「〈Bicorne〉」
最後に頭部が完全に覆われる。額からは大きく湾曲した悪魔のような角が2本。鋼鉄故の黒色の装甲も合わさり、これじゃあ丸っきり見た目が化け物だ。
「ま、良いか。今日のところはここで退散してね」
全力を4脚に注いで踏み切り、機械装甲の補助によって全身のバネの力が100%乗った加速で2人に接近する。
アオイちゃんが咄嗟に前に出て防御しようとしたみたいだけど、今の私には関係ない。闘牛の角のように構えた腕の片方で引っかけるように轢き飛ばし、ついでにその後ろにいたミドリちゃんも巻き込んで吹き飛ばした。
「…………ふぅ」
2人が見えなくなるまで飛んでいくのを待ってからブレーキをかける。
「ひゃく……いや300mくらいは飛んだかな?」
〈Iron Horse : Bicorne〉を解除し、2人の飛んでいった方を眺める。これだけ痛めつければ、今日のうちくらいはこれ以上突っかかってこないだろう。刃は立てなかったからきっと生きてるだろうし。そんなことより、散歩を再開しようか。