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或る青年の幽霊噺

青年「霊能者さん霊能者さん、どうやら霊に取り憑かれたようなのです。祓ってください」
霊能者「ああ、貴方のすぐ後ろにくっついて来てるその男ですね。それに取り憑かれて何か実害はありましたか?」
青年「そうですね。特に実害は無いのですが、僕から10cm以上離れようとしないのです。それが寝るときも例外ではなくて、狭苦しくて少し不快です」
霊能者「それなら問題ないですね」
青年「ええ…」

青年「霊能者さん霊能者さん、また違う霊が憑いてきたのですが」
霊能者「またですか。この間のもまだいますね。で、今回のは…ああ、その幼子ですか。何か凄いもの持ってますが」
青年「ええ。この霊、何故か巨大な鉈なんて持ってるんですよ」
霊能者「その子に取り憑かれてから、何か実害はありましたか?」
青年「いえ、実害は無いのですが、物騒な刃物持って周りをうろうろされると、精神衛生上よろしくありません。前の奴もろとも祓ってください」
霊能者「実害無いなら別に必要無いでしょう」
青年「おいこら待てエセ霊能者」
霊能者「エセとは失礼な。ちゃんとその二人も見えてたでしょう?」
青年「とっとと祓えっつってんだよ」
霊能者「嫌です!」
青年「何故だ⁉金ならいくらでも出すぞ。予算内で」
霊能者「それでも嫌です!」
青年「だから何故⁉」
霊能者「だって面倒なんだもの!」
青年「いっそくたばれえェッ!!!」

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もののけがたり

A:うがあああぁぁぁ…ふぐしゅるるるるる…

B:え、何?何だって?

C:え、まじか。

A:あぐぅぅぅるるるる…ふがらぁ

C:へえ、そうかい。

A:あぐ……うらがああああ!

C:ほお、そりゃあ良い。

A:が…ぐるる…ぎぎ?

C:いや、そこはもう片方のやり方でね…

B:ちょっと待って。C君なんで分かるの?

A:あぅぁ…えがららああ!!!

C:え、君分からないのか?そいつは奇遇だな。僕もだ。

B:お前も分からないで言ってたのか…。
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D:おーいA!お前いったい誰と話してるんだ?

A:いや、何でもない。ちょっとオバケっぽい何かを見かけたから適当に話しかけてみただけ。

D:おいおいまたかよ。あんまり怖いこと言うなよな。

A:あいつら面白いんだぜ。何言っても変な鳴き声でしか返さない。「がるるー」「うしゃああ」ってさ。
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B:人間って、変な言葉使うよな。

C:本当にな。何言ってっかまるで理解できん。
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解説
A、Dは人間です。Aにはオバケの類が見えます。Dには見えません。B、Cは人外の何かです。何かは分かりません。彼らはお互いが何言ってるか理解できていません。お互いに相手の言葉は変な鳴き声で聞こえます。

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星談議

A「夏の大三角は、ベガ、アルタイル、あと何だっけ?フォーマルハウト?」
B「馬鹿、それは南の魚座だ。デネブだよ。むしろよくフォーマルハウト知ってたな」
A「そうだったね。じゃあ、冬は?」
B「シリウス、プロキオン、ベテルギウス」
A「じゃあ春」
B「アルクトゥルス、スピカ、デネボラ」
A「じゃあ秋は?」
B「ペガスス座の星4つが秋の大四辺形ってことになってる」
A「じゃあ、冬のダイヤモンド、全部どうぞ!」
B「リゲル、シリウス、プロキオン、カペラ、ポルックス、アルデバラン」
A「おー。さすがだ。けど僕は、他のどの三角形よりも、冬のダイヤモンドが一番好きだな」
B「ほう。その心は?」
A「だって、ただでさえ綺麗な冬の星を、6つ並べてダイヤモンドに喩えてるんだぜ。これ以上無くロマンチックってもんだろう?」
B「そうですね」
A「なぜ敬語?」
B「いやさ、冬のダイヤモンドのポルックスって星あるじゃん?双子座の弟サイド。神話でも兄に先立たれて、ダイヤモンドでも兄さんと分断されるって、ちょっと可哀想だな〜、て思ってさ」
A「君はそんなことを考えて生きてたのかい?」
B「それが何?」
A「星が綺麗で素敵だね、それで終わりで良いじゃないか」
B「お前はものを考えなさ過ぎなんだよ」
A「君こそ難しく考え過ぎだぜ。もっと楽天的に生きろよ。シンプルは美徳だぜ」

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或る自殺志願者の説得

自殺志願者(これ以降は志願者と略す):
唐突ですが、この世界に絶望しました。死にとうございます。
説得者:本当に唐突ですね。
志願者:自殺をすると地獄に堕ちるらしいのですよ。死んだ後も辛い思いするとか真っ平なので、どうか私を殺してください。
説得者:殺人罪はかなりの重罪なので嫌です。
志願者:じゃあ、自殺幇助あたりで何とか。
説得者:結局犯罪じゃねーか。
志願者:じゃあ、どうすれば良いのさ。
説得者:簡単だ。生きれば良い。人は生きればいつか死ぬ。
志願者:それが面倒くさいっつってんだよ。
説得者:そう言うなよ。小説だって、悪いことがあった章の次の章には良いことがあるだろ?
志願者:「赤いくつ」
説得者:命は助かるじゃん。
志願者:「とっぴんぱらりの風太郎」
説得者:良いことがある章もあっただろ。
志願者:「人間失格」
説得者:う……あ、あれは…例外だから……
志願者:良いか君、これは現実なんだよ。
説得者:そう言わずにさ、生きてれば良いことあるよ。
志願者:今のところ嫌なことばっかりだよ。
説得者:僕という友人が居るじゃないか。
志願者:君、良いやつだな。
説得者:と言う訳でさ、死ぬなんて剣呑なこと言うなよな。
志願者:だが断る。
説得者:ここで使っちゃ駄目だろ。
志願者:あ、そろそろ門限だから、今日のところは帰るわ。絶対に明日は殺してもらうぜ。
説得者:嫌だね。
志願者:サラバ。また明日。
説得者:……少なくとも明日までは生きている訳だな?
志願者:あ………
説得者:………
志願者:………
説得者:…まあ、何だ、じゃあな。
志願者:お、おう。

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或る探偵たちの賭け事

私は私立探偵をやっている者だ。といっても、大抵はペット探しや不貞調査ばかりで、小説や漫画に出てくるような事件の捜査などはしたことがないが。
余り知名度も無いので、基本暇で、行きつけの喫茶店で同業の友人とだらだらしていることが多い。
今日もそうしていたのだが、突然友人がこんな提案をしてきた。
友人「推理勝負しようぜ!」
私「どんな風に?」
友人「ほら、窓の外にいるあの人が、何をしているのか当てるんだよ」
見てみると、なるほど確かに、若い女性が明らかにそわそわしながら立っている。誰かを待っているようだ。ファッションに疎い私にも、相当めかし込んでいるのが分かる。
友人「負けた方が会計持つってことで」
私「了解」
友人「俺から言うぞ。ありゃあ十中八九、待っているのは恋人だな。あんなにお洒落して、それ以外に考えられないね」
私「そうだな…。あれは多分、待ってるのは同性の友人だな。見たところ大学生ほどのようだが、学校が違うか何かで、中々会えないんだろう。それであんなにそわそわしてるんだ。相当親しいんではないかな?その友人とは」
結果は…友人が私に奢ることになった。
友人「なんで分かったんだ?あんな考え普通思い付かないぞ」
私「まさか適当に言った答えが当たってしまうとは」
友人「え…?」
私「何?」
友人「賭けをしてる場で、適当答えたっていうのか…?」
私「適当言った方が何故かよく当たるんだよ」
友人「理不尽だ…」

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なぞなぞリスペクト

「遅くなりました!!」
 観音寺隼人は、車から慌てて降りると、先に待っていた先輩刑事に頭を下げた。五十嵐剛。規律にはめっぽう厳しいので有名だ。
「遅い!もう七分も遅刻だぞ!」
「すっ、すいません!」
「…まあいい。事情聴取だ。いくぞ」
 凄まじく早い五十嵐の徒歩に、観音寺は必死でついていく。
 今回のガイシャは、上殿敬子、四二歳主婦。場所は自宅のリビングで、何者かによって後頭部を殴られた後に失血死。争った形跡はなく、現場からは犯人を特定できるものは何も見つからなかった。死亡推定時刻は、昨日一月一三日午後7時頃。目撃証言もなく、捜査は非常に難航していた。
 今回事情聴取を取るのは、ガイシャの夫である上殿凛太郎、四五歳会社員。近隣の住民によると、最近あまり中は良さそうには見えなかった、とのこと。

 以下が事情聴取の様子だ。
「上殿さん。あなたは昨日の午後七時頃、どこにいらっしゃいましたか」
「刑事さん、まさか私を疑っているんですか?!」
「いえ、あの、この質問は皆さんにお答えいただいているものでして…」
「…ふん。まあ、良いですけどね。じゃあお答えしますよ。私は確か、まだその時空の上でした」
「…空の上、ですか」
「ええ。私はここ二週間休暇をとってオーストラリアに旅行に行っておりまして、昨日の夜十時にやっと帰国したんですよ。そしたら、まさか妻が、あんな目にあっているなんて…」
「そうでしたか。それはお気の毒に。ところで、オーストラリアでは何をなさっていたんですか?」
「別に、観光ですよ。色んな所を見て回りました」
「良いですねー、オーストラリア。僕もいつか行ってみたいものです。何が一番良かったですか?」
「やっぱり海ですかね。一月なんでちょっと寒かったですけど、夕日の沈んでいく様は圧巻でしたよ」
「そうでしたか。それでは一応確認を取らせていただきます。ご利用になられた旅行会社はどちらでしたか」……

 その後、旅行会社などに問い合わせてみたが、上殿氏がオーストラリアに行っていたことは確からしい。これは難しい事件になるぞ…。そんな話を五十嵐刑事にすると、
「おい、何をぼさっとしているんだ。どう考えてもその凛太郎ってやつが怪しいじゃないか」