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Tell us terrible Terrors:のろい、まじない、きりはらい その⑫

(マジかよ!? いや近くに適当に逃げ込んだわけだし、偶然か探してきたのかまた来る可能性は十分あったと思うけどさぁ!?)
咄嗟に燿子が隠れている黒布に目をやると、それは地面にくしゃりと落ちていた。燿子がいなくなっていることに動揺しながら周囲を見回すと、彼女の姿は清嘉の背後にあった。
「いた……何かイメチェンした?」
清嘉の視線は、彼女の頭に生えた1対の狐耳に注がれている。
「気にするな小僧。禁を犯した者への当然の制裁じゃ」
燿子の返答は、先ほどまでの軽いながらも敬語を使おうとする態度とはまるで異なる、尊大で古風な口調だった。
「えっ、あっ、はい、何、コックリさん?」
「ま、そんなところじゃの。それよりも……」
燿子が愛弥の方を指差す。彼女も二人に気付いたようで、殺意が立ち上る。
「あー? さっきの奴らじゃんか。ちょうど不完全燃焼でイラついてたとこなんだよ……ブチ転がしてやる……!」
「ッ……“メリーさん”!」
『異聞』形態の“メリーさん”を呼び出し、構えさせる。しかし次の瞬間、飛来した斬撃がその右腕を刎ね飛ばした。
「くははッ、先手必勝ォーッ!」
『ぬム……』
その時、冷や汗を流す清嘉の肩に、燿子が手を置いた。
「おい小僧。コックリさんからありがたーいお言葉じゃ。確と聞け」
「え、何すか」
「この場は妾に任せて“でーと”してこい」
「……は? なんで? 誰と?」
「決まっておろうが」
燿子が指差したのは、残った左腕で二人を庇おうと立ち塞がっている“メリーさん”だった。
「…………マジでなんで?」
「えぇい煩い煩い! 妾の宣託に逆らうか小童風情が!」
「ひぇっ、すんません……め、“メリーさん”! 俺らは一回退くよ!」
『! メリーさん逃げるのっ』
「逃がすかァッ!」
振り返った“メリーさん”の両脚が飛んできた斬撃に叩き斬られ、小さな身体が地面に転がる。
「ええい鈍間共め! さっさと行かんか!」
燿子が素早く前に出て、倒れ伏した“メリーさん”を片手で清嘉に投げつける。それを何とか抱き留めると、清嘉は躊躇いながらも逃走の態勢に入った。
「ごめんコックリさん! この場と野火止さんの身体は任せた!」
「……おう任せい!」

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Tell us terrible Terrors:のろい、まじない、きりはらい その⑪

考え込んでいる清嘉をしばらく見つめていた燿子は、不意にリュックサックから蝋燭を1本取り出し、ライターで火をつけた。
「……ん? どしたの野火止さん」
「いえ別に……試してみますか? “コックリさん”が何か教えてくれないか」
「未来の情報は掴めないんだろ?」
「はい、なので“過去”に“フラグ”が無いかなって。向こうの弱みでも、こっちの強みでも……何かヒントくらいはもらえないかなと」
「良いけど……またタイプライター出すの?」
「いえ、流石にもうちょっとコンパクトにやりますよ」
そう言って、燿子はリュックサックから黒い布を引っ張り出した。
「ちょうど良い閉鎖空間が無いんで、これで代用します」
「……どうやって?」
「頭から被ります」
「暑そうだなぁ……」
「大丈夫ですよ、私一人でやるんで」
「えっ」
『“コックリさん”を一人で行ってはいけない』。有名な禁忌である。当然それを知っている清嘉は、疑問の声を上げた。しかし、燿子はにんまりと口角を上げ、親指を立ててみせる。
「大丈夫ですよ、私の力なんですから。それじゃ、ちょっと聞いてきますね」
燿子は黒布をばさりと持ち上げ、その下に素早く潜り込んだ。清嘉は所在なくその近くに立ち尽くしていたが、暇を持て余して地面に崩れ落ちている召喚体を呼び戻す。召喚体は“略霊”形態の小さな姿に変化しており、切り離された上半身と下半身が別々に地面の上でごろごろと転げ回っている。
『私メリーさん~……もう戦えないかも~』
「でも今の面子的に無理してもらわないとならないからなぁ……」
『んぇ~……』
「一回消してから再召喚すればまた元気になるからさ。我慢してくれよ」
『やぁ~……やる~……』
清嘉は消失・再召喚を行い、損傷の無い“メリーさん”を出現させた。
『私メリーさん。もっかいがんばる~』
「うん頑張って」
『……あ』
「どしたの“メリーさん”」
『所有者ぁ、たーげっと』
「えっ」
召喚体が指差した先を清嘉が見ると、ちょうどその路地に入ってくる愛弥の姿があった。

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Tell us terrible Terrors:のろい、まじない、きりはらい その⑩

数ブロック先のビル陰に駆け込み、2人は息をついた。
「マジかぁ……あの人平気で殺しに来るじゃん……」
その場に座り込み、ため息交じりに清嘉が吐き出す。
「いやはや……とんだお転婆でしたねぇ……」
燿子も膝に手を付いて咳き込み、苦笑しながら言う。
「っつーかなんでさっきいきなりエアガン撃ったんだよ……そりゃ向こうも怒るって」
「え? あれ、センパイ知らないんですか、これ?」
燿子は再び、ホルスターからエアガンを取り出す。
「対怪異汎用射撃装備“霊火”。学校で貸し出してる武器ですよ。講習受けなかったんですか?」
「受けてないけど……武器? ただのエアガンが?」
「何でも、怪異相手には普通にダメージ出るらしいですよ?」
「そりゃ人間相手じゃ普通にキレさせるだけになるよなぁ……」
「新たな発見です……」
2人が“霊火”を見ながら話していると、何かを引きずるような音と軽い足音が近づいてきた。
「ん、戻ってきた」
2人が顔を上げると、そこには左肩から腰に抜けるように両断された状態の“メリーさん”が立っていた。下半身側に残った左手と上半身側に残った右手を繋ぎ、切断されたパーツをその場に残すことなく足を回して離脱し、2人との合流に成功したのである。
『私メリーさん。真っ二つになったけど逃げてきたの~』
「よく頑張った、“メリーさん”。…………しかしまぁ……どうすっかなぁ…………」
「どうしますかねぇ…………」
「コックリさんに聞いたら何か教えてくんねーの?」
「無理ですよぅ。“コックリさん”が教えてくれるのは『過去の情報』だけです。霊たちに文字通り『持ってきてもらう』のが“コックリさん”なので、まだ存在しない未来の話は教えてくれないっていうかできません」
「……そう都合よくはいかないかぁ……」

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Tell us terrible Terrors:のろい、まじない、きりはらい その⑨

(いやぁ……実際に見てみると結構ヤバい火力してますね? 人間くらい余裕で真っ二つになっちゃいそう)
(そんな威力を平気で人に向けてんのあの人!?)
(こーれヤバい感じですよぅセンパーイ)
二人は不可視の斬撃を捌き続ける“メリーさん”の陰に隠れつつ、声を潜めて話し合う。
(で。『これ』が効き目薄なのは分かったんで、火力レートでこっちの不利が確定しちゃったんですけど……どうします?)
エアガンを軽く掲げながら、燿子が尋ねる。
(……一度仕切り直して良い?)
(モーマンタイでっす)
「それじゃ……頼むよ、“メリーさん”」
『ん~。すぅ……』
召喚体が何かしようとしている気配に、愛弥は一旦攻撃の手を緩める。
(何かする気だな? ま、何してこようが斬り払ってやるけど)
『……もしもーし! 私ぃ、メリーさーん!』
召喚体は口の前で手をメガホン代わりにし、大声で愛弥に呼びかけ始めた。
『今ぁ、あなたの後ろにいるのー!』
次の瞬間、愛弥の視界から召喚体の姿が消え、同時に背後から羽交い絞めにされる。
(ッ……『背後への瞬間移動』、ってな感じか!?)
「この程度ッ!」
背後に向けて放った斬撃が、“メリーさん”を袈裟斬りの要領で両断する。拘束を逃れて愛弥が正面に視界を戻したその時、清嘉と燿子は既に路地から姿を消していた。
「何だったのよアイツら……」
そう毒づきながら、愛弥は振り返り己の背後に転がっているはずの“メリーさん”の残骸に向き直ろうとする。しかし、そこには端切れの一片すら無く、交戦の痕跡は彼女自身が刻んだ斬撃痕の他に何も残っていなかった。
「だからなんッで消えてんだよ真っ二つに叩ッ斬ったろうがよォッ!」
苛立ちに満ちた怒鳴り声とゴミバケツを蹴り倒す音が、路地裏に響き渡った。

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Tell us terrible Terrors:のろい、まじない、きりはらい その⑧

「こーんにーちはぁ~。お姉さんがキヨセ・マナミちゃんですかぁ?」
最初に口を開いたのは、燿子だった。
「あ? 誰アンタら。人の邪魔しやがってよォ……」
「「…………」」
(ガラわっる!)
(逃げて良いかなこれェ)
二人を射貫く敵意に満ちた視線に、思わず沈黙する清嘉と燿子。
「せっかく人が気持ち良くストレス発散してたのによォー……!」
(やっば近づいて来てるー)
(笑い事じゃねえんだけどぉっ!?)
彼我の距離が5mを切ったその時、燿子が腰の後ろのホルスターから白とオレンジに塗装されたエアガンを抜き、相手に向けて1発撃ち込んだ。
「あたっ」
「…………」
「…………」
「テメこのガキいたっ、あたっ」
燿子は躊躇うことなく2発、3発と続けざまに撃ち込んでいく。あまりにも唐突で理解不能な状況に、清嘉は呆然と見ていることしかできない。
「いたっ、ちょ、やめ、おい、こらっ」
パスッ、パスッ、パスッ、と気の抜けた発射音が鳴り続け、遂に弾倉内のBB弾が撃ち尽くされる。燿子は表情を変えないままグリップのボタンを押してエアガンを軽く振り、弾倉を地面に落として替えの弾倉を再装填する。
「いたっ、ちょ、おい、やめ、ろっ、て、言ってんだろがァッ!」
「わぁキレたぁ!」
「そりゃいきなり無言でエアガン連射されたらキレるよ!?」
「クソガキが舐めやがって……! どうせ3秒後には忘れてんだ、こうなりゃ全力で叩き潰してやらァ……!」
元来『殺傷力の具現』である怪異の力を宿す“語部”たる二人には、その少女、愛弥の変化が直感的に理解できた。『殺意』が膨れ上がり形を成すような感覚――“語部”が『異聞』の力を発現する際の気配である。
それを感じ取れたからこそ、清嘉は咄嗟に動くことができた。
「っ、“メリーさん”!」
彼もまた、自身の異聞能力を発動した。身長1mほどの少女型の召喚体が二人を庇うように現れ、右手の鉤爪を構える。それと同時に、召喚体の爪に鋭い衝撃が叩き込まれる。
『ぬ、ヌヌヌ……りゃぁっ!』
打ち上げるようにその破壊力を受け流し、“メリーさん”は防御に成功した。直後、その余波がビルの壁に流れ、深い斬撃痕を残す。
「何だァソイツ……」
「いやぁ、へへっ……どうも同類ッス……仲良くしようぜ?」

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Tell us terrible Terrors:のろい、まじない、きりはらい その⑦

「お疲れ、“メリーさん”。一旦仕切り直そうか」
清嘉は召喚体に駆け寄り、能力を一度解除した。ばらばらになった召喚体は煙のように消失し、再発動によって無傷の“メリーさん”が再び現れる。
『わたしメリーさん、からだ直ったの~』
「“メリーさん”、今、ターゲットはどこにいる?」
『今ね~……3本となりのほそい道にいるの』
「了解。ありがとうね」
『ん~』
召喚体は清嘉に頭を撫でられ、満足げに喉をころころと鳴らした。
「……それで? どうやってマナミちゃんに接近するんですか?」
“メリーさん”を抱き上げながら、燿子が尋ねる。
「まぁ……何とかするしか無いよなぁ……野火止さん、占いした時の紙ってある?」
「ありますよー、ほい」
燿子がポケットから引っ張り出した、タイプライターで出力された用紙を差し出す。折り畳まれたそれを開き、清嘉は目当ての事項に目を留める。
「……よし、備え万全」
「何見てたんですか?」
「スマホの番号。一応ね」
「“メリーさん”といえば電話ですもんねぇ」
電話帳にその番号を保存し、清嘉は路地から顔を出した。
「そんじゃ……行くかぁ……」
「すんなり仲良くなれると良いですねー」
「だと良いんだけどねぇ……」
清嘉が先を歩き、その後ろに“メリーさん”を抱えた燿子が続く。二人が薄暗い路地の奥を覗き込むと、物陰に人影が動いているのが目に入った。
人影は足元に転がる塊を、苛立たし気な様子で繰り返し蹴りつけている。否、それはただの塊ではなかった。生きた人間が身を守ろうと身体を丸めて、暴行を受けているのだ。
「…………どっちですかね?」
「多分…………加害者側? 蹴られてるの男子っぽいし……」
「仲良くなれそうですかね?」
「厳しい……かなぁ……」
「止めた方が、良いですよね?」
「喧嘩とか怖えんだけど……」
「超能力者が何をビビることがありますか。ほら行きますよー」
「はいはい」
2人が近付く足音に、暴力を振るっていた人影は動きを止めた。その隙に、足元の被害者は這いずるようにして逃げ出す。

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Tell us terrible Terrors:のろい、まじない、きりはらい その⑤

「世の中知らないことだらけですねぇ……えっと、略霊能力の効果は……あぁー!」
「ん、どうした?」
「だからあの写真の顔、全然印象に残らないんだぁ! 目ぇ外した瞬間に何か記憶が朧ろげになると思ってたんですよねぇ~」
燿子の言葉に、清嘉も出力された記述を確認する。
「……はー、なるほどなぁ……むしろよく写真残せたよなぁ。っつーか写真でも効果発揮すんのかすげぇ能力だな……」
「わー、異聞能力もシンプルに攻撃力高いですねー。ま、情報はゲットできたんで。作戦立てていきましょっか」
燿子はタイプライターから手を離し、自身の略霊能力を終了させた。
「それで、どうしますかセンパイ? 現状唯一の手掛かりなこの写真、目を離した瞬間証拠能力失いますよ。私の能力で何とかします? あのタイプライター、キーすっごい重いからあんま使いたくないんですけど……センパイが言うなら無理しますよ?」
(なら別の道具使えば良いのに……)
清嘉はその指摘を飲み込んで答えた。
「いや、写真1枚あれば、位置掴むだけなら俺ができるよ」
「へぇ~、そういやセンパイの能力知らないですねぇ。何なんです?」
「あぁ、【メリーさん】だよ。おいで、“メリーさん”」
清嘉が虚空に呼びかけると、何も無かったはずの空間に突如、背丈60㎝程度の赤と黒を基調としたロリータ衣装の少女が現れた。
「わぁ可愛い~。ほっぺたモチモチしてる~」
燿子はその召喚体を抱き上げ、両頬をもちもちと弄り始めた。
「やめたげて……“メリーさん”、この写真の子のところに行ってくれるか?」
召喚体は清嘉を見上げて頷くと、燿子の腕の中から一瞬で姿を消した。
「あー……もっと愛でたかったです……」
「後でね? あと、もう見つけたよ」
「はっや。足立センパイってもしかして天才?」
「“メリーさん”がすごいんだよ……あ」
「どしたの」
「いや……ターゲットが移動してるっぽい……とりあえず追いかけようか」
「りょーかぃ」
二人は空き教室の状態を入室前と同等に片付けてから、学校を後にした。

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Tell us terrible Terrors:のろい、まじない、きりはらい その④

タイプライターのキーボードに両手の十指を置き、燿子は一度瞑目して息を吐き出し、再び目を開く。
「それじゃ、始めるんで……」
「うん」
「…………」
「…………」
「何してるんですか先輩。早く手ぇ出してください。10円玉には参加者全員が指を置かなきゃならないんですよ? 今回はタイプライターですけど……ほら、早く私の手に」
「え、お、おう」
清嘉は燿子の背後に回り、彼女の両手に自身のものを重ねた。
「離さないでくださいね? 危ないんで」
「りょ、了解」
「それじゃぁ……『コックリさんコックリさん、今回のターゲットである娘のプロフィールを教えてください』」
数秒の沈黙の後、蝋燭の火が小さく揺れ、燿子の十指がゆっくりと打鍵を始めた。
その運指は少しずつ速度を増していき、流れるように数行の文章を打ち出してから唐突に停止した。
「……出力完了っぽいですね」
「これ何語だ……? n,a,m,a,e……あ、これローマ字だ読みにくっ!」
「しょうがないですよぅ、ブツが英語のやつなんですから」
「うえー……これ素直に10円玉使ってた方が楽だったんじゃ……」
「文字として残ってくれた方がじっくり読めますからねぇ。どれどれ……名前はキヨセ・マナミちゃん。高校1年生の女の子。……ふーん、センパイ、この『よくいる場所』のこの地名ってどこでしょ? 私田舎者なんで、こっちの土地勘とか無いですよ」
「んー、電車で15分くらいかな」
「はぇー。んじゃ、センパイも何か質問してくださいよ」
「え、なんで?」
「当然でしょう。私はもう1回質問しちゃったんですから、次はセンパイの番ですよ。何か適当に質問してください。『コックリさん、コックリさん』って頭につけるんですよ」
「おう、えっと、じゃあ……あー……こ、『コックリさんコックリさん、キヨセさんの能力について教えてください』」
再び燿子の指がキーボード上を動く。
「どれどれ……じゃっく、ざ……」
「じょせ…………『ジャック・ザ・リッパー女性説』……? なんで『切り裂きジャック』じゃなく『女性説』……?」

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Tell us terrible Terrors:のろい、まじない、きりはらい その③

2人が校長室を出て最初に向かったのは、空き教室の一つだった。
「あーだちセンパーイ、あの写真もっかい見せてくださいよー」
「ん」
道中、清嘉に強請った燿子は差し出された写真を奪うように受け取ると、まじまじと眺めながら口を開く。
「……性格キツそうな面してますねー」
「そうかぁ?」
写真を返してもらい、清嘉も写真を再確認する。角度と被写体の様子からして隠し撮りされたものであろうそれに写る少女は、確かに敵対心を剥き出しにしたような鋭い目つきをしていた。
「……そうかも……?」
「もっかい写真見せてくださーい」
「また?」
「良いじゃないですかぁ」
「はいはい……」
やり取りをしながら、2人は校舎端の空き教室に入った。燿子がそのまま奥に進んで窓の鍵とカーテンを閉め切り、清嘉は入り口扉を施錠する。
「これで良いのか?」
「はいはいありがとございますセンパイ。んじゃ、こっち来てください」
「おう。で、何すんの?」
「決まってるじゃないですかー、情報収集ですよぅ」
そう言って燿子がリュックサックから取り出したのは、一台の手動式タイプライターだった。
「……パソコンですら無く?」
「やだなぁ、ググって出るものじゃないんですから……私の『能力』を使うんですよ」
「……タイプライターを使う怪異なんていたっけ……」
「元ネタだとちょっぴり違いますけどねー。ま、うちの子は結構融通利かせてくれるんで……」
燿子は使われていない机にタイプライターを起き、その奥に蝋燭を1本立てて火をつけた。
「さ、始めますよセンパイ。協力者いないとできないんですから」
「な、何を?」
「決まってるでしょ? “コックリさん”ですよ」