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うちの七不思議NovelEdition:鉄棒の上の幽霊 エンディングと怪異紹介

「よー、グループチャットに何も貼られてなかったけど、ちゃんと写真撮ってきたのか?」
翌日、早めに学校に来て教室で待っていると、仲間の一人が俺の机まで駆け寄るように近付いて尋ねてきた。
「……まあ」
一応、証拠写真は2枚ある。まず幽霊野郎の方を見せる。
「これ、うちの生徒じゃね? 制服着てるし。心霊写真にしちゃ存在感あり過ぎんだろ」
「そうかもしれない。何かいたんだよ」
「何組の誰だ、これ?」
「しらね」
続いて、フラッシュで撃退するついでに撮っていた『サメ』の写真を見せる。
「……これ、何てZ級映画のスクショ?」
「…………『巨大ダルマザメ襲来』」
適当に誤魔化しておく。フラッシュで背景が白く飛んでちょっと見た感じじゃ校庭で撮ったようには見えないし、信じてもらえないのも仕方ないか。
「まあ良いや。何か面白いから画像上げとけよ」
「あーうん、そうするわ」


今回の怪異
・鉄棒の上の幽霊
『サメ』に追い詰められて鉄棒の上から逃げられないでいたかわいそうな幽霊。結果的に『疑似餌』にさせられていたが、悪意は無い。ただの被害者。結局食われたが、解放されたのはある意味幸せかもしれない。
・鉄棒の下に潜むモノ
外見は目が顔の正面についた巨大ダルマザメ。鉄棒の下に隠れ潜み、遅い時間に近付いてきた不良人間を食ってきた。人間と同等程度の知能と感覚能力を持ち、その強さゆえに回復能力は貧弱。土の中を水中のように自由に泳ぎ回れる怪獣の一種。多分トンネル効果を使っている。身体を地上に1.5m以上出すことはできない。

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うちの七不思議Novel Edition:鉄棒の上の幽霊 その⑧

『サメ』がまた地面の下に隠れた。それと同時に、その場で思いっきり足を地面に叩きつける。まるで地面の下に振動を届けるように。
そしてもう一度。強く地面を蹴り、その勢いで前に向かって飛ぶ。直後、俺の背後で『サメ』が顎を閉じるあの「ガチン」って音がした。
大きく音を立ててまた着地し、また強く踏み込んで、今度は横に向けて跳ぶ。『サメ』の通過する風圧を感じながら逆立ちのような姿勢で手を下にして着地し、手首と肘をできるだけ曲げて衝撃を殺し、できるだけ静かに倒れ込む。そのまま身体を微塵も動かないようにしてしばらく待つ。
実際やってみると、これは結構危険な賭けだったと思う。ちょっとした緩急はつけたが、全く振動を起こさずに行動するなんてことはまず無理だし、そのまま喰われる可能性は十分にあった。
けど、幸運にもあの『サメ』は意外と鈍かったようだ。地面の下から頭を出して、今出てきた地点の周りをぐるぐると回り始めた。もしかしてあいつ、まだ視力も回復してないのか? だとしたら、相当感覚が弱いぞ。
とにかく好都合。静かに立ち上がり、奴がすぐ近くまで泳いでくるのを只管待つ。
(……来た)
奴が正面から泳いできた。思わず口角が吊り上がる。片脚を大きく振り上げ、タイミングを合わせて思いっきり振り下ろす。この一撃は奴の鼻先を直撃し。上手いことダウンさせることに成功したようだ。
「ザマア見やがれサメ野郎が。それじゃ、俺は先生方にバレる前に帰るからな」

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うちの七不思議Novel Edition:鉄棒の上の幽霊 その⑦

インカメラを起動して、画面で背後の様子を確認しながら走る。あと数mでコンクリートで舗装された場所に着くが、奴が追って来ている様子は無い。しかし、奴は地面の下に潜ることもできるわけだから、全く以て油断はできない。

ふと、嫌な予感がして足を止めた。
慣性で前に引っ張られるのを全力で堪え、そのまま後ろに跳ぶ。直後、俺がさっきまでいた場所のほんの1歩先、そこの地面の下からあの『サメ』の大顎が現れた。
(この野郎……たしかに目眩ましも成功してたのに、復帰して追いつくまでが早過ぎるだろ……!)
いや、正直なところそこは問題じゃない。今本当にマズいのは、奴が鉄棒からこれだけの距離を離れられるという事実の方だ。
奴がまた頭を地上に出してこっちに突っ込んできた。考えるのは後だ、とにかく逃げなくっちゃならない。
通学鞄をその場に投げ捨てて、斜め右前方に転がり込むようにして回避行動をとる。ちょうど、正面からやって来るあいつの横をすり抜けるような形になるが、この回避は上手く成功して、『サメ』は俺の鞄に頭突きをかまして通り過ぎて行った。
(今の動き…………、ちょっと面白いことを思いついたぞ)
さっき轢き飛ばされた鞄だって回収しなくっちゃならない。そのついでに、ちょっと実験してみるとしようか。

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うちの七不思議Novel Edition:鉄棒の上の幽霊 その⑥

両足が鉄棒から離れると同時に、『サメ』が地面から顔を出した。大口を開けて俺の落下地点に待ち受けている。
「そう来るだろうと思ってたぞサメ野郎!」
落ちながら鉄棒に手をかけ、一瞬地面への落下を止める。こっちの目論見通り『サメ』の牙は空を切り、俺の足のすぐ下でガチンと顎が閉じた。顎が閉じて少し安全になった『サメ』の鼻先を強く踏むようにして着地し、すぐに地面に下りて素早くスマホを拾う。電源ボタンを押してロックを解除すると、つけっぱなしになっていたカメラアプリが起動する。
『サメ』の方に目をやると、鼻を踏み潰されたショックから既に立ち直っていたようで、こっちに向かって来ようとしている。
「はい、ちぃー……ずッ!」
奴が目の前まで来たタイミングで、シャッターを切る。フラッシュを『ON』に設定しているんだ。もうかなり暗くなったこの時間帯、文字通り目の前でいきなり強い光を食らえば、それなりにキツイだろう。
奴の進路は狂い、俺を避けてすぐ横を通り過ぎて行った。
「ザマア見やがれ。じゃーな、サメ野郎」
『サメ』に向けて親指を下に向けてから、校門に向けて全力疾走を開始した。あいつが動けないでいるうちに、できるだけ距離を取らなくっちゃな。

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うちの七不思議Novel Edition:鉄棒の上の幽霊 その④

こいつが何者かなんてこの際どうでも良い。現状一番の問題は、下の化け物をどう躱して逃げるかってことだ。
最悪のパターンは、この状況が誰かしら先生に見つかって、説教しに来た先生がこっちに近付いてくること。そうなったら、その先生がサメに襲われるかもしれない。関係無い人間が巻き込まれることだけは避けなきゃならない。
「……おい幽霊野郎」
現状、こいつしか頼れる奴がいない。まずは情報収集からだ。
「何だね被害者君」
「あいつ、この鉄棒からどれだけ離れられる?」
「さあ……一度、走って逃げようとした人がいたけど、すぐ捕まってたよ」
「距離で言え」
「えー……そうだな……」
幽霊野郎は考えるような素振りを見せながら、腕をぴんと伸ばしてちょうど45°くらいの角度で地面を指した。
「この鉄棒の高さが、たしか……2.5mくらいだったかな。僕の座高やら何やらを合わせて考えると……」
腕の角度を保ったまま、弧を描くように真横の地面を指す。
「あの辺りが3mくらいの距離か」
そのまま指す方向を微調整しつつ、奴は空いた片手でこめかみをコツコツと叩く。
「だから……うん。大体5mくら」
奴の言葉が急に途切れた。鉄棒から両手を放した状態で急にこっちに頭を振って話したせいで、バランスを崩したんだ。
俺が捕まえる前に幽霊野郎の身体は鉄棒の上から完全に重心を外し、そのまま地面に向けて落下していった。あの『サメ』が待ち受けている、ちょうどその地点にだ。