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理外の理に触れる者:海殺し その③

あいつを腕で拾い上げて首の後ろに乗せ、翼を日陰にしてやる。
「わあ快適。最初からこうしてくれれば良かったのに」
「図々しいなお前。捨ててくぞこの野郎」
「女郎なんだよなぁー……あ、やめて日差しが痛い」
ちょっと翼を開いて懲らしめてやった。すぐに閉じたが。
「まあ大人しく方向をを教えてあげることにしよう。とりあえずそのまま12時方向へー」
「了解」
奴の指示に従って歩き出す。俺の異能『怪獣の指揮者』によって変化したこの身体は、皮膚が熱を遮断するおかげで、サイズの割に暑さに対して快適なんだ。
「……あ、マズい」
「ん、道を外れていたか」
「いや……私の方に問題が」
「どうした」
「この暑さは良くないね。体力がもう……。手、出して」
首の高さまで手を持っていくと、あいつがそこに手を重ねて、また離した。
「あとは……それ見て……」
手の中を見ると、透明な液体が針状に固まっている。
「何だこれ。水か?」
「私の汗」
「気持ち悪ッ」
「失礼だなぁ……。私の異能で、それは……コンパスの役目を果たす、から……」
「……おいどうした」
「体力温存のために、寝ます……」
「寝るなー、寝たら死ぬぞー」
雪山じゃあるまいし、くらいは言い返してくると思ったが、何も返事が無いあたりマジで寝たのか。どうやら相当参っていたらしい。

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理外の理に触れる者:海殺し その②

「あ」
道連れが短く声をあげ、足音が一つ減った。俺はまだ歩き続けてるってことは、あいつが立ち止まったのか。あいつのいた方を見ると、砂に足を取られて躓いたのか、うつ伏せに転んでいた。
「……何やってんだ」
「…………」
あいつは顔を砂にうずめたまま答えない。何かヤバい気配がする。
「……これは、良くないね」
喋った。生きてはいるらしい。
「喋り過ぎた。体力がもう無いや」
「無駄話してるからだろ」
「何も言わないでいると、精神的に良くない気がして……」
あいつは立ち上がろうと手を砂に付いてはいるが、全く身体が持ち上がる様子が無い。
「……私はもう駄目みたいだから、構わず先に行って……」
冗談を吐く余裕はあるようだな。
「馬鹿言え。お前の異能無しにこんな場所歩けってのか」
「でも私、20㎏入りのお米より重いよ?」
「それより軽い奴がいたらビビるわ」
異能を使い、自分の姿を変える。爬虫類と猛獣を混ぜたような、体長3m近い胴体。砂に沈みにくい、長い指を具えた脚が4本。4本指に長い爪、鱗の生えた腕が2本と、飛ぶのには使えない、ただの飾りの皮膜翼が1対。便宜的に、自分の中で『石竜』と呼んでいる姿だ。
「足になってやる。お前が鼻になれ」
「そこは目じゃ無いん……わぁっ」
あいつが顔を上げ、眼球の無いワニみたいな顔面に驚き、変な声をあげた。

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理外の理に触れる者:海殺し その②

「あ」
道連れが短く声をあげ、足音が一つ減った。俺はまだ歩き続けてるってことは、あいつが立ち止まったのか。あいつのいた方を見ると、砂に足を取られて躓いたのか、うつ伏せに転んでいた。
「……何やってんだ」
「…………」
あいつは顔を砂にうずめたまま答えない。何かヤバい気配がする。
「……これは、良くないね」
喋った。生きてはいるらしい。
「喋り過ぎた。体力がもう無いや」
「無駄話してるからだろ」
「何も言わないでいると、精神的に良くない気がして……」
あいつは立ち上がろうと手を砂に付いてはいるが、全く身体が持ち上がる様子が無い。
「……私はもう駄目みたいだから、構わず先に行って……」
冗談を吐く余裕はあるようだな。
「馬鹿言え。お前の異能無しにこんな場所歩けってのか」
「でも私、20㎏入りのお米より重いよ?」
「それより軽い奴がいたらビビるわ」
異能を使い、自分の姿を変える。爬虫類と猛獣を混ぜたような、体長3m近い胴体。砂に沈みにくい、長い指を具えた脚が4本。4本指に長い爪、鱗の生えた腕が2本と、飛ぶのには使えない、ただの飾りの皮膜翼が1対。便宜的に、自分の中で『石竜』と呼んでいる姿だ。
「足になってやる。お前が鼻になれ」
「そこは目じゃ無いん……わぁっ」
あいつが顔を上げ、眼球の無いワニみたいな顔面に驚き、変な声をあげた。

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理外の理に触れる者:海殺し その①

「……暑いね」
偶然そこらで遭遇してから道連れになった異能者が呟く。多分俺に話しかけているんだろう。小さく頷いて応える。声に出して応じる余裕なんぞ残っていない。
その理由は何と言ってもこの環境だ。確かこの辺りは、人口10万人弱のそれなりの規模の町だったはずじゃないのか。なんだって建物一つ見えない砂漠と化していやがる。
「今2月だよ? 冬将軍はどこでサボってるのやら……日陰、無いかなぁ……」
見りゃ分かるだろうよ。地平線の向こうまで、砂でできた平面と丘しか無い。
「…………ああそっちじゃないそっちじゃない」
道連れが俺の腕を引いて、数度進路を変える。
「何すんだ」
「いやぁ、水源に向かうのは良い。それはあり。でも、離れる方向に行くのは良くないよ」
「…………?」
何を言っているのか分からん。
「あれ、言ってなかったっけ? 私の異能、『水の観測者』。水源までの距離と方角が分かる」
そういや会った時に何か言ってたような気もする。
「砂漠で遭難した時ぐらいしか役に立たないと思ってたけど、まさか日本で砂漠で遭難する機会に恵まれるとはねぇ……鳥取以外で」
「鳥取に砂漠は無い。ありゃ砂丘だ」
「あれ、そうだっけ」
「ちなみに日本一デカい砂丘は青森にある」
「何で知ってるの?」
「高校で地理取ってるから」
「へぇ」
畜生、無駄に喋ったせいで体力削れた。

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タイムジャック2

「協力?」
“そうか、別に戦わない選択肢がないと言うだけで協力しちゃいけない訳じゃない”
「そう、明確な攻撃手段がないだろ?お互いさ」
「ま、まぁな」
俺は少し拳を作った。
「もちろん、それは超能力という意味だ、その拳はこの話に意味がない」
やはりバレている。こいつも本当に未来が…
「確かに協力した方が良さそうだ」
拳を解き、その手を彼に向ける。
「同じ能力同士だと話が早くて助かるよ」
彼もその手を掴んだ。
「お互いまだ名乗ってなかったな、俺は常磐守、よろしくな」
「僕は奥野智也、君とは仲良くなれそうだ」
『さぁ超能力者の原石達よ、準備はいいか?』
会場を先程の静寂に包む声。
『あと10分でスタートだ。存分に生き残りたまえ!』
部屋の壁面にモニターが現れ、タイマーが表示される。
「いよいよ始まるね」
「あぁ、やるしかねーな」
0:10
この辺りから色んな人間の思惑が頭の中に飛び込んでくる。
0:09
「僕らみたいな考えのやつもいるだろうね」
0:08
「どうかな…基本人間なんて自分勝手だからな」
0:07
時間を止める。または時間を早回しする。
0:06
色んな考えのやつがいる。
0:05
それを認知できるなら…
0:04
せっかく智也もいる
0:03
攻撃しなくたって
0:02
やりようはある
0:01
「来る…」
0:00
画面がその数字を表示した瞬間、
景色が全て停止した。
「さすが、まずは第1関門突破かな」

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ちょっとした企画:理外の理に触れる者 2/2

・二つ名
異能者が自称したり他の異能者から呼ばれたりする異名。どこかの異能者が「何かかっこよくね?」みたいなノリで付けたところ、他のノリの良い異能者たちも便乗し始めた。現在では全異能者のうち、実に6割が二つ名を持っている。そのうち半分程度は他の異能者にも知れ渡っている。漢字オンリーの四字熟語みたいな雰囲気のやつもあれば横文字のやつもある。仮名と漢字が混ざっているのもいる。基本的に支配者レベルの異能者の二つ名には「王」「帝」「神」などの文字が使われることが多い。それより下の位階の能力者がそれらの文字を使った二つ名を名乗ると、よほど実力が無い限りは表で陰で思いっきり叩かれる。支配者の人たちは王や神なのでそんな細かいこと気にしないでくれることも多い。

・後見
異能者が他の異能者、特に自分より下の位階の能力者を自分の下に置いて世話すると宣言すること。基本は支配者級の能力者しかやらない。たまに指揮者級で力のある能力者がやることもある。簡単に言うと、「こいつ私のお気に入りだから手ぇ出すなよ?」ということ。元々はとある支配者級の異能者が、自分の住む地域一帯で起きる異能者どうしの諍いを手っ取り早くおさめるために考案したシステムであり、後見された異能者は周囲から、後見した異能者の手下扱いされると同時にいじめられにくくなる。後見対象をどうするかは人によって違う。宣言だけして放っておくこともあれば、能力の制御の練習に付き合ってあげたり、お友達になったりということも。


ざっくりした設定はこのくらいです。質問があったらレスしてください。あとは皆さんの想像力にお任せします。今月いっぱいくらいを目安とした企画です。書いて良いよって人はタグに『理外の理に触れる者』を入れて投稿してください。

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ちょっとした企画:理外の理に触れる者 1/2

異能設定
肉体年齢3歳以上の人間または人外存在に、大体2d6で6ゾロが出るのと同じ確率で発現する。人外存在の場合は若干確率が上がり、人間の倍くらいの確率で発現する。学校の1クラスに1人か2人はいるくらいの確率。
能力名は以下の2要素によって説明される(「○○の●●者」みたいな感じで)。
・能力対象
異能で干渉する対象。1d100でファンブルするのと同じくらいの確率で同じものを対象とする異能者が現れることもある。
・位階
干渉の程度の強さ。4段階に分かれる。能力の強制力は上の位階ほど強く、能力同士が干渉した場合、より高い位階の能力が優先される。
能力の使用には代償が必要で、基本的には体力の消耗という形で処理される。稀にそれ以外の方法でどうにかしている能力者もいる。位階が上がるほど代償は大きくなるが、その分できることも大きくなる。
また、能力を使い続けることで上の位階にランクアップすることもあり得なくは無いが、一つ位階を上げるためには普通にやったら大体数百年から数千年の年月が必要なので、人間には基本的に不可能。ランクは以下の通り。
観測者:最も低い位階。対象を認識する異能。所謂「霊感」などはこれに当たる。能力者全体での割合は2d6で4以下が出る確率と同じくらい。
干渉者:2番目に低い位階。対象に触れ、その動作や定義に干渉する。本質は対象への『依頼』であり、対象には依頼を拒否する権利がある。できることはあまり多くは無いが、能力使用による代償も少ない。能力者全体での割合は2d6で5~7が出る確率と同じくらい。
指揮者:2番目に高い位階。ある程度の強制力と威力を以て対象を操作するもの。本質は対象の『使役』であり、対象は基本的に命令を実行しなければならないが、抵抗する権利がある。抵抗は多くの場合肉体や精神の変質という形で現れるため、未熟な能力者は能力に振り回される。能力使用時、改変の規模に比例してより大きな代償が必要になる。能力者全体での割合は2d6で8~11が出る確率と同じくらい。
支配者:最高位階にして能力の完成形。指揮者以下にできることは全部できる上、絶対的な強制力を持っている。威容による命令であるため代償も存在せず、また対象は自分にとって不都合な動作ができなくなる。能力者全体での割合は2d6で6ゾロが出る確率と同じくらい。

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理外の理に触れる者:魑魅魍魎の総大将 その⑥

「ごちそーさまでした」
未だ飲み込み切れない霊体組織に口をもぐもぐさせながら手を合わせ、月は化け物に向き直った。
「鬼、ご苦労」
床に倒れて動かなくなった鬼の背中を踏みつけつつ、化け物に近付いて行く。彼女が通り過ぎるのと同時に、鬼の身体は彼女の足元に吸い込まれるように消えていった。
「さて、待たせたなぁ」
化け物が咆哮をあげ、両腕を彼女に向けて伸ばしたが、月の目にも留まらぬ蹴りがそれを弾き返し、衝撃に耐えきれなかったのか片腕は2つ目の肘関節から捩じ切れ落ちた。
「どした? この程度か? ほらほら頑張れ頑張れ」
にやつきながら化け物を睨む月の両目の上には、いつの間にか新たに1対、金の虹彩と縦長の瞳孔を具えた眼が現れている。
化け物が残った片腕で薙ぐように攻撃を放つ。遠心力によって化け物自身の能力以上の威力を持っていたそれを、月は片手で軽々受け止め、膝を使って蹴り折り引きちぎった。
「ほらほら、もうお手てが無くなっちゃったなァー?」
ちぎった腕を引きずりながら更に近付く。化け物が短く吠えて噛みつこうとしてきたが、月は一度腕を放り捨ててから片手で受け止め、下顎を鬼化した脚で踏みつけ、押さえた片腕で上顎を持ち上げ、動きを完全に封じてしまった。
「あーらら、もう動けなァーい。……さて」
鬼の牙の並ぶ口を耳まで裂けさせたにたにた笑いを化け物に向け、空いた片腕を虚空に向けて突き出す。
「戟、来ぃ」
無から突然現れた矛状の武器を掴み、開かれたままの化け物の口の中に突き刺し、その頭部を貫通させる。無数の眼球が一瞬ぎょろぎょろと動いたが、すぐにそれらは動きを止め、薄灰色に濁り、月が戟を消すと支えを失った死骸は壁から剥がれ、畳を数枚吹き飛ばして床上に斃れた。
「よしよし、鮮度は大事だし、さっさとイタダキマス」
露わになった床板の上に座り込み、化け物の残骸をかき集め、月はゆっくりと食事を始めた。

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理外の理に触れる者:魑魅魍魎の総大将 その⑤

「それじゃ、イタダキマス」
鬼と化け物がぶつかり合う激しい戦闘音を気にかける様子も無く、月は人影にのしかかったまま手を合わせた。
「どこからいこっかなー……やっぱ取りやすいとこからかなー……」
ぶつぶつと呟きながら、人影の肩の辺りを押さえた膝でそのまま腕に当たる部位を踏み折り、付け根から外れた腕を拾って食べ始める。
「……うーん……あっさりめ。まあメインディッシュは向こうにいるし」
十数秒で腕の1本目を食べ終わり、もう片方にも手を付ける。
(……しかし私の異能、『鬼神の指揮者』。オバケを食べることで能力を使う原動力にしてるわけだけど……、そのオバケを食べるために能力で顎を鬼化させる必要があるわけで、それでまたお腹が空いてくる……)
「…………控えめに言って最高」
食べ進めて最後に残った腕の付け根を口内に放り込んでから、月は心底幸福そうに呟いた。
「さて、次はどこにしよ…………座り心地悪いなァ」
最後の抵抗にのたうつ人影に苦言を吐き、両手を頭部に当たる部位にかけ、勢い良く捻る。頭部が120度ほど回転した人影はそれでもなお暴れていたが、月の手刀が首を切断すると、それきり動かなくなった。
「さすがにちょっと大きいかなー……まあいけるいける」
頭部を持ち上げてしばらく眺めていた月だったが、鬼化した下顎をさらに縦に分割し、蛇が獲物を食らうようにその頭部を丸呑みし始めた。途中、化け物に殴り飛ばされた鬼がすぐ横を飛んでいったが、指だけで再び化け物に立ち向かうよう指示すると、鬼はすぐに体勢を立て直し、また突進していった。
「……………………ふぅ、さすがに頭まるまるはきつかったぁ。そろそろ鬼にも申し訳ないかな。さっさと残りも食べちゃお」