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憧れと独白と傾聴とその先 #7

「そうそう、あれはありがたかったな。先生と交渉してくれたんだ。この子はうちに欲しいなんて、花いちもんめでもやらない限り、後にも先にもないと思う」
 懐かしいですねと返してくれる後輩に微笑む。
 そんな後輩は、なぜだか自信満々に、こんなことを聞いてきた。
「先輩、そのことについて同級生の方々から何も言われなかったでしょう?」
 突拍子のない質問に思わず固まる。
「うん……?まあ、そうね」
「先輩、1年生でソロやったって聞いたことありますよ。そっちの方面もできる子だったんですね」
「そんな情報どこから仕入れてくるの、何年も前の話じゃない。しかもそれは代打であって__」
「実力があったから何にも言われなかったんですよ。そうじゃなきゃ、先輩も依怙贔屓に見えるような引き抜きしません。頭良かったんですよね?その先輩」
 先輩を出すなんで、そんなのずるいじゃないか。
 仕方がないから苦笑する。
「でもね、何にも言われなかったわけじゃないよ。先輩からは比較的好かれていた方だとは思うけれど、一部の同級生が陰で何か言っていることは知っていたし。全員に好かれたいなんて思っていたわけじゃないけどさ、やっぱり、みんなに好かれることって難しいなとは思ったね。先輩より同級生のほうが一緒に過ごす時間は長いわけだし。ただ、そんなことがあっても嫌な思いをしなかったのは、友人にも恵まれていただけ」

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憧れと独白と傾聴とその先 #6

「まあ、こんな風に話しているけど、たくさん努力しての結果だっただろうからね。やっぱり今でもその先輩のことは尊敬している」
「先輩も同様ですよ」
 まったく、この子はこういう子だ。
「さっき、先輩に目をかけてもらえたって話したけど、別に依怙贔屓だったわけじゃない。厳しいことを言われたこともあるし、私のことで頭を悩ませてしまったこともある。でも、そういうことをしてもらえていたってことは、やっぱり目をかけてもらえていたのだと思うんだ」
 はい、と一言だけ相槌をうってくれた。ちゃんとわかっていますよ、そんな風に聞こえた。
 少しだけほっとした気持ちで続ける。
「部活では、その先輩と同じ楽器だった。本来であれば、私はその楽器じゃなかったかもしれないんだけどね」
「それはなぜ?」
「ありがたいことに、先生が直々に別の楽器やってくれないかってお願いに来たんだ」
「先輩、やっぱりできる子だったんですね」
「元々、ちょっと音楽かじってただけだよ。でも、私ははじめからずっとやりたい楽器決まっていたから、どうしても渋ってしまってね」
 察しのいい後輩は、目をきらりと光らせる。
「そこで、例の先輩の登場ですね」