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タイムジャック2

「協力?」
“そうか、別に戦わない選択肢がないと言うだけで協力しちゃいけない訳じゃない”
「そう、明確な攻撃手段がないだろ?お互いさ」
「ま、まぁな」
俺は少し拳を作った。
「もちろん、それは超能力という意味だ、その拳はこの話に意味がない」
やはりバレている。こいつも本当に未来が…
「確かに協力した方が良さそうだ」
拳を解き、その手を彼に向ける。
「同じ能力同士だと話が早くて助かるよ」
彼もその手を掴んだ。
「お互いまだ名乗ってなかったな、俺は常磐守、よろしくな」
「僕は奥野智也、君とは仲良くなれそうだ」
『さぁ超能力者の原石達よ、準備はいいか?』
会場を先程の静寂に包む声。
『あと10分でスタートだ。存分に生き残りたまえ!』
部屋の壁面にモニターが現れ、タイマーが表示される。
「いよいよ始まるね」
「あぁ、やるしかねーな」
0:10
この辺りから色んな人間の思惑が頭の中に飛び込んでくる。
0:09
「僕らみたいな考えのやつもいるだろうね」
0:08
「どうかな…基本人間なんて自分勝手だからな」
0:07
時間を止める。または時間を早回しする。
0:06
色んな考えのやつがいる。
0:05
それを認知できるなら…
0:04
せっかく智也もいる
0:03
攻撃しなくたって
0:02
やりようはある
0:01
「来る…」
0:00
画面がその数字を表示した瞬間、
景色が全て停止した。
「さすが、まずは第1関門突破かな」

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音が繋ぐ

「おはよう」
振り返ると君がいる。
おはよ、と返しつつスマホの画面を君に向ける。
「俺の好きなバンドじゃん!知ってるの?」
当たり前でしょ、すすめてきたのは君なんだから。
知ってるよ、と何もなかったように話すけど
つまりは、あの日の会話は忘れられている訳で。
少しだけ、ほんの少しだけ、寂しくなる。
「あぁ!ツアー情報出たんだよね!!!」
分かりやすく高揚する君を愛しく思う。
愛しい、なんて言うと好きな人みたいだけど
いやいや、彼のことは好きだけど、
なんか、そういうのじゃないんだよなあ。
「え、え、いつがいい?」
唐突な君の言葉にえっ、と言葉に詰まる。
一緒に行くの?と可愛げのない返しをする。
「え、行こうよ!」
君のそのありすぎる行動力が苦手という人もいると思うし、正直始めは僕もドン引きだったんだけど。
その行動力に、あの時の僕は救われたから。
溢れるワクワクを抑えるように
チケット、当たるといいけど
って口を尖らせてみた。
「神社通うわ!毎日!!!」
わけのわからない返しをしてきた君と
大好きなバンドのライブへ行って
それがきっかけで音楽にのめり込んで
僕ら2人がギターを持って、ステージに立つのは
もう少し先のお話。

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親友3

いつも何かを拒むような顔してる君が
「遊びに行こうよ」って言ってきた。
学校は?なんてつまらない返しをしてしまったけど
別にいいじゃんって何にもなかったみたいに
君は学校とは真逆の方向へ歩いていく。
小走りで追いかけて、どこに行くの?って聞いた。
「どこがいい?」
少し考えて、どこでもいいよと笑う。
「じゃあ映画にしよう」
みんなが授業を受けてる時間に
僕らはアクション映画を見た。
ホラー映画を見た。
恋愛映画を見た。
映画日和だねって2人で笑った。
きっと君が、今日映画に誘ったのは
学校をすっぽかして連れ出してくれたのは
僕の何かに気づいていたからで。
そういうやつなんだよなあって
胸がギュッとして少しだけ、泣きそうになる。
夕日が沈み始めて、学校が終わる時間帯。
今日はありがとう、なんて呟いてみたけど
なんのこと?って笑われた。
きっと最近の、僕の、口癖の真似だと思う。
学校サボっちゃったね、なんて僕はまだ優等生。
「学校なんて、別にいいよ」
思い出に、なった?って君が笑いかけてくれるから
思い出に、なったって笑い返してみる。
明日も僕らは歩道橋の真ん中で待ち合わせをして
明日はきっと学校へ行く。
「また、遊ぼうね」
そんな日々が、なぜか泣きたくなるほどに
嬉しくて、大好きなのは僕だけかなあ