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廃都鉄道 right 1

ーーーガタン。

心地良い振動に目覚めると、まだ見慣れない街並みと、数名の乗客が目に入った。
どうやら、電車に乗っているうちに、寝落ちてしまったらしい。

『次は〜、廃都大鉄塔通り入口〜、廃都大鉄塔通り入口〜、お出口は左側です。』

車内アナウンスが響き、乗客の一人がいそいそと荷物をまとめ始めた。
自分も鞄を開けて、財布の中身をそっと覗いた。

(やっぱり駄目か〜…)

今の自分の全財産では、どう頑張っても次の次、廃都大鉄塔前駅で降りるしかなかった。
本当は武蔵野門前まで行きたかったのだが、無いものはどうしようもない。

列車はまもなく、廃都大鉄塔通り入口に停車した。
一人の乗客と入れ違いに、いかにもチンピラです、といった感じの若者が乗ってきた。
若者は少し車内を見渡すと、突然、向の座席の男に掴み掛かった。

「おい!お前、この前は散々やってくれたなぁ!」
「何だよアンタ!もう契約は破棄されただろ!」

どうやら男は傭兵で、この若者と何かあったらしかった。
そして、あれよあれよと言う間に、殴る蹴るの乱闘騒ぎになってしまった。
慌てて隣の車両に移ろうと、身を屈めて、忍足で車両を繋ぐ扉へと急いだが、遅かった。
ガキン、という嫌な音に振り返ると、もう、自分の鼻先までナイフの切先が迫っていた。

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魔法原典

「私のメディウム!」
「すまない…だがこれでいい、あの分だとおそらく君達は飲み込まれていた。なり損ないだったからな」
「なりそこない?」
「私も見間違えた代物だが、どうやらアレは『魔法』じゃない。どっちかといえば幻術のほうが近い」
「魔法じゃないってどういう…」
「それ少し説明が難しい…魔法は内なる力を万物に変換して打つ、つまり主導権は自分自身だがこれは違う。これの主導権はあの石だ、使用者の精神力を喰らって魔法という名の幻想を打っている。ややこしいのは質量があるせいで『そう』見えないってことだ。君達はどうやってこんなものを?」
「あの石なら自分の中の魔力を制御できるって先生が」
「魔力が発現したってことか?」
「あの…突然妙なことが起こることになって、それで私達学園に来てこれは魔法だって」
「妙なこと?」
「ある日を境に周りのものが浮いたり、何もしてないのにものが壊れたり…」
「僕なんて、山一つ焼いちゃってVIP待遇で即刻島流しだぜ?」
「暴走…?いや違うまさか…そうだ、ヤツらならやる間違いない」
「あの…よくわからないんですけど…」
「つまり、君たちはここに住んでるのか?」
「まぁ…学園に、寮なんです」
「ふむ…?なんとなく読めてきた。学園は真上だったな?」
「あ…はい」
「明日はそこにいるといい、そこなら安全なはずだ。あ、そういえばまだ通貨はメギストスかい?」
「そうですけど…」
「わかった。エル・メギ・ガド!」
そう言うとレピドは手の上に少し大きめの麻袋を召喚した。
「少ないが持っていくといい、私からの感謝の気持ちだ」
リョウが受け取るとずっしりと重さを感じるもので、隙間から覗く金色の光はそれが通貨なのだろうと察せられるものだった。
「こ…こんなに…?」
「まぁ気持ちばかりで足りないくらいだろうが持っていってくれ」
「ありがとうございます」
二人は頭を下げて、ここに入ってきた道を引き返し始めた。