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侍に勝った海の向こうの勇者たち〜感動をありがとう〜

舞台は2013年3月,東京。
この街の球場で,WBCという野球の国際大会が開催されていた。
日本代表に接戦で敗れ,敗者復活戦のキューバ代表にも大差で負けて準々決勝に出られず悔し涙を流して終わった強豪国があった。
その国の名は台湾,戦前に日本の影響下にあった頃に持ち込まれた野球という競技が今も大衆娯楽として浸透している島国だ。
あの悔しい負けから11年が経った2024年,まずはこの島の中心都市・台北でドラマが生まれた。
日本のプロ野球で最も歴史の長いチーム,東京の巨人と現地のプロチーム2球団が親善試合を組んだ。
結果は,巨人の1勝1分。
それまでは日本選手相手だとなかなか勝てなかった中0-0で引き分けるほど守備と投手が張り切って、実力を発揮して見せた。
これが台湾野球の世代交代が成功した瞬間だった。
そして,迎えたその年のシーズンオフ。
世界ランクのトップ12カ国の代表だけが参加できる国際大会,プレミア12の試合が台北で開催された。
そこで圧倒的な成績を残した台湾。
一方,その大会のもうひとつの会場であり,決勝の会場でもあるスタジアムに新監督の指導のもと急成長を遂げたチームの姿があった。
そのチームとは,他でもない侍JAPANこと日本。ベスト4の総当たり戦の結果で1位と2位の代表が決勝でも対戦するというルールにより,「因縁の対決」が決定的になった。
そう,日本と台湾の試合だった。
総当たり戦では日本に軍配が上がった。
そんな中,決勝では日本代表の戸郷選手がホームランを打たれて失点。
そして,台湾の鉄壁の守備に阻まれて一点も取れずに日本は敗れた。
この瞬間,悲願の初優勝という波が感動の涙となって台湾全土を覆った。
そして,1人の日本人野球ファンの青年も、かつて少年時代に初めて父親に連れられて見た野球の試合が奇しくも台湾代表がキューバ代表に大敗したあの国際試合だった為当時と重ねて成長した台湾の優勝を心から祝う歓喜の涙を流したのだ。

あの感動を,俺は忘れない。
多謝,台湾!
立派に成長してくれてありがとう!

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あなたも入る?ようこそいか教へ!続き3

第二章 イカの心得って?
そして、爆速で廊下を走り、なんとかホームルームに間に合い、1時間目を受け終わった二人であった。。。
休み時間______
「・・・それで、いか教って何をするの?」
「うむ、まずはいか教3つの心得を教えてやろう!」
「3つの心得?」
「うむ、まずは毎日イカを食べること!」
げっそんなぁあ。。。アレルギーになっちゃうよお
「そして!」
まだあるの?
「給食のときには必ずしもいかのおかわりを第一にすること!」
え〜まあ、いか、好きだからいいけどさあ。
「最後に!」
多くない?
「回転寿司ではイカのお寿司を6個は食べること!」
ええええええええ!
「ちなみにわしはイカしか食べんぞい。」
はぁぁぁぁぁぁぁぁ?!狂ってるんじゃ。。。
「ま、そういうことで我が信者よ、よろしゅうな!ああ、あと日頃は信者を多くする活動を。。。なんちゃらかんちゃら」
ああもう、なにこれ。やっぱり変な人に出会っちゃったな。
「〜〜〜だから、良いか!」
私は耳にタコができるほどの説明にむしゃくしゃした勢いで、
「う〜んもう!はいはいわかりましたよぉ!信者になりますぅ!!」
と答えてしまった。あああああああああやってしまったー!私はうつ伏せ状態になった。こんなことしたら私の新しい第1歩を踏み外したことになるじゃないか!(失礼)もう、きっと雀は嬉しそな顔をしているんだ。。。そして私が顔を上げるとそこには。。。
「ヒックヒックぐすん。。。え〜んえ〜ん」
雀が泣いていた。は、はぁ?!な、ないてる?もしかして、泣かせちゃった?!
「ど、どうしたの?」
「だって、だって、断られるかと思ったんだもん。。。みんな、私が誘っても、断ってどこかに行っちゃうの。。。」
断れるようなことするなよ。。。そんな気持ちもありながらも私は優しく雀を撫でた私であった。続く。。。

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あなたも入る?ようこそいか教へ!

「もう、、、行くから。。。」
そう言って私は猛ダッシュ!こう見えて私足速いし。
「まて〜い!」
って!足はっや!はぁ、はぁ、ここまでくればもう大丈夫?ああ、ここに貼ってあるのは地獄の紙。その名も。。。「クラス表」ドーン!私はAクラスなのか、Bクラスなのか、はたまたCクラスなのか、ドキドキドキドキドキドキ。勇気を持ってその地獄の紙を見る。______
A!29番!すかさず次の番号の人を見る。まあ、それが私のいわゆるくせ。う〜んと。。。「大王雀」か。。。すずめ?キラキラネームやん。{ここで豆知識!出席番号は名字のあいうえお順だけでなく、名前のあいうえお順があるのだ!ほかにも、誕生日の順番もあるんだよ!(今学校は誕生日だね)}仲良くできなさそう。。。まあ、それはいいとして、そして特に知ってる人はいない!いじめっ子もいない!最高だああああああ!私は絶叫しそうになった。その時。。。
「まて〜い!」
そ、その声は!いかっこ〜?!(いかの信者と言ってきた子の略)
「はぁ、はぁ、お、追いついたぞぉ〜」
なんとも幼い声。ていうかあの子の名前知らないんだけど?高校生ならこのクラス表に載ってるはずよね。一応聞いておこう。
「あのぉそのなんていうかお名前をお伺いしても。。。」
「うむ、良かろう。わしは大きい王、雀と書いて、大王雀(するめ)じゃ!」
ふーん。。。って!さっきの。。。〜「大王雀」か。。。すずめ?キラキラネームやん。仲良くできなさそう。〜???????????!!!!!!!!!!!!ham?!ていうことは同じクラス?
ああ、なるほど、なるほどね〜あ、なるほどね〜(理解できず無理やり理解しようとする図)。へにょん(理解が追いつかなくて倒れる図)
「うわ!おぬし、大丈夫か?!よし、わしが運んでやろう!」
「だ、大丈夫ぇす〜一人で歩けまぁ〜す!私の名前は中村友奈でぇす」
「別に名前は聞いてないが。。。」
このとき、二人は思った。やばい、変な人と友だちになってしまった。と。
第二章に続く。。。

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あなたも入る?ようこそいか教へ!

第一章 あなたはだれ?大王雀!
新学期。それは始まりの季節。中村友奈は新たな一歩を踏み出そうとしていt
「そこの方!」
うああ。びっくりしたあ。急に何だ?誰かにこんな大声で呼びかけるなんて。。。うん、変人だな。変人がここに1名いるだけ。よし、気にせず行k
「お〜いあなたですよあなた!」
え、私?私、そんな変なことしたっけ?聞き覚えのない声だし。。もしかして、私、変な人に目つけられちゃった〜?!うん、きっと気のせいだ、気のせい。私には言ってないと思うし。
「トントン!ちょっと、あなた、なぁ〜に無視してるんですかぁ〜?」
か、肩を叩かれた。。。こ、これはもう。。。た、助けてぇ〜(声かけられてるだけ)でも、新学期だ。ここで逃げてはいけない!うん、勇気を持って振り向いてみよう。新たな新学期と思って!そして、私は振り返った。
「は、はいぃ〜?」
うん、我ながら最悪の始まりだ。こんな最悪な声が出るなんて。。また逃げてると、おとなしいと思われる。噂されて。。。ああ、また_____
「あいつ暗すぎw」「それな?」「この前、発表でまぐれであたったとき緊張しすぎて「ああっああっ」しか言えなくてw」「いじめても何にも言わなそうw」「いっそやってみる? w」「やろw」ああ、ああ、ああ!やめて、やめて。。。
「何をボーっとしているんですか我が信者よ。」
はあっ?し、信者?!そう思いながらも私は緊張してその人の顔を見られない。
「ど、どういうことですか?」
そう言って少し顔を上げる。
って!ショタやないか〜い!え、なんでここにいるの?ここ高校だよ?
「ま、迷子かな〜?」
「わし、高校生だもん。」
そりゃそーだ。ってえ?!ちびすぎん?
「そんなことより!我が信者よ!」
だから信者って何?
「わからないのか?わらわにこえをかけられたということはいか教の信者ということだぞ!」
しらないよ!そんなルール!ていうかいか教って何?もう、かたっぱしから変な人!(背が小さすぎるし!)
「もう、、、行くから。。。」
そう言って私は猛ダッシュ!こう見えて私足速いし。
「まて〜い!」
って!足はっや!はぁ、はぁ、ここまでくればもう大丈夫?
どうなっちゃうんだ〜?!
続く。。。

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フリー世界観:チェンジリング総伐令②

・魔術師(メイガス)
”バックファイア”のうち、魔術を得意とする者。対幻想戦闘においては重要戦力であると同時に、超科学的現象である魔術の研究のためにも協力している。

・幻想人(ファントム)
”バックファイア”のうち、『変身魔術』を得意とし、幻想生物の機能や戦術を組み込んで戦う者。対幻想戦闘においては秘密兵器ともいえる。
『姿を変える魔術』は、肉体への負荷やアイデンティティの崩壊のリスクがあり、相応の資質や経験が無ければ使いこなせない。里親である幻想存在たちも、愛する継子である人間に無理をさせたがらない傾向にある。だからこそ、”幻想人”として人類社会に帰還できたバックファイアは『変身』を完璧に操れる猛者のみであり、彼らの使う『変身』に”リスク”というものは存在しない。

・破妖軍(アンチ・スピリット・フォース)
通称『ASF』。対幻想存在戦闘を専任する軍隊。実戦部隊は通常兵器によって戦う『科学軍』と”バックファイア”を中心に構成された『精霊軍』で構成される。
基本的には科学軍が銃火器類や戦車などの圧倒的殲滅力をフル活用して戦い、強力な魔術を使う個体に対してのみ精霊軍が出動する。
幻想存在たちもまた、生命と肉体を持つ『生物』である。人類が『殺傷』のために発明改良を重ねてきた”武器・兵器”という存在は、幻想にさえ手が届き得る領域に達していたのである。

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フリー世界観:チェンジリング総伐令①

勝手に使って良い世界観を用意したので勝手に使ってどうぞ。

・極めて簡単なあらすじ
物語の舞台は現代。
人類は『チェンジリング(取り換え子)』の脅威に対抗するため、「チェンジリング総伐令」を発令し、叡智の結晶である武力と、チェンジリングから生還した子供たち”バックファイア”の力を集結した『破妖軍』を結成し、世界全勢力を挙げて幻想存在の討伐を開始した。

・チェンジリング総伐令
人間の子供を妖精と入れ替える”チェンジリング”に対抗するための法令。
人民が一体となってチェンジリング及び幻想生物の討伐に尽力する指針を示したもの。

・”チェンジリング”
「取り換え子」とも呼ばれる、世界各地で確認される現象。人間の赤子が妖精の子供に取り換えられる。
取り換えられた人間の子供は幻想存在たちの集会へ連れ去られ、その子を気に入った幻想存在が引き取って育てる。

・”バックファイア”
”チェンジリング”によって取り換えられた人間の子供のうち、人類社会に帰還した者を指す。多くの子供は里親となった幻想存在から「魔術」を教わり、幻想の力を得ている。その力を利用して『チェンジリング総伐令』に協力する。

・魔術
主に幻想存在が『魔力』と呼ばれる未知のエネルギーを使って行う魔法的技術。
幻想存在はこれを人間の子供に説明するに当たり、以下のように語る。
『たとえば、人魚が水中で呼吸をする。たとえば、クモが糸を張る。それは”身体機能”であって君たち人間には到底再現不可能な領域だ。しかし”魔術”は飽くまで「技術」。生命と知性ある我々にできて、君にできない道理は無い。』

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百舌鳥と愉快な仲間たち_1〜6まとめ

情緒不安定でカテルヴァの所属経験がない14歳のアヴェス、ラニウス ブケファルス。
ある日突然、彼の家に三人の所謂問題児のアヴェスが訪ねてくる。凄まじい癖毛と乱暴な口調が特徴のストルティオ カメルス、小柄で愛想の良いアエギタロス カウダトゥス、おどおどして押しに弱いヴルトゥル グリュフス。突然同室となった個性的な同期に困惑しつつ、ブケファルスは彼らと交流を深めていく。
ブケファルスと問題児三人が同室になってから二週間経った日、四人で出かけている最中に大型のアリエヌスが襲来する。ブケファルスとグリュフスはアリエヌスから街を守り、カメルスとカウダトゥスは『先輩』と呼ばれる年上のアヴェス、パラブーテオ ユニシンクトゥスに救援を求める。

いつも読んでくださったり、反応をくださっている方々、ありがとうございます。
高校生活が忙しく投稿頻度が減り、今週からテスト期間にはいるためまた投稿頻度が減るので今回は続きではなくまとめを書いてみました。つたない文章、意外性のない展開になりがちなのですがこれからも執筆は続けようと思います。
最近気温が低く、インフルエンザも流行っているので体調にはお気をつけて。

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Specter children:人形遣いと水潜り その㉕

「私の腕?」
蒼依は天邪鬼が逃げ出してから気を失うまでの経緯を、冰華に説明した。
「えっ頭大丈夫⁉」
「言い方ぁ」
「良いから! ぶつけたところ見せて!」
「別に……この程度よくあることだし……」
言いながら、蒼依は濡れた前髪を掻き上げる。彼女の前頭部、やや左寄りの場所には、浅く抉れたような傷が残っていた。
「結構ひどい怪我じゃん!」
「だからこの程度平気だって……」
「平気ではないよ⁉ きちんと手当てしよう⁉」
「分かったよ……取り敢えず、冰華ちゃん家に戻らせてもらっても良い?」
「もちろん! 手当もちゃんとしなきゃだね」
冰華は川の方を向き、大声で呼びかける。
「それじゃあみんなー、鬼の死骸の処理、お願いできるー?」
その問いには、多くの泡沫や飛沫が応えた。
「よし、これで後始末もオッケー!」
「ありがとう。あっそうだ、私も人形回収しなきゃ」
蒼依が川に向けて手招きすると、水中から大きく広がった網状の物体が持ち上がった。
「わぁっ、それも人形が変形したやつなの?」
「そうそう」
気絶する寸前、蒼依が“奇混人形”に授けた命令は、『下流方向100mまで移動した後、網状に再変形して川を塞ぐこと』。水流に巻き込まれるように逃亡していた天邪鬼は、その網目に絡まったために不運にも水上に顔を出すことができず、呼吸不能の状態で川に潜む河童たちの襲撃を受けて絶命したのだった。更に、“奇混人形”の網は蒼依の手を離れた『冰華の腕』もまた、網目に絡め取られ、河童が回収することを可能としていたのである。
「……いやぁ……しかしまぁ」
歩き出しながら、蒼依は大きく伸びをし、小さな欠伸をした。
「どしたの蒼依ちゃん」
「……疲れた」
「お疲れ様。帰ったらお風呂入って、ご飯食べて、しっかり寝ようね」

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Specter children:人形遣いと水潜り その㉔

瞼の向こうに光を感じて、蒼依は意識を取り戻した。
「…………? 腹が、重い……?」
蒼依の視界に最初に入ったのは、彼女の腹部を膝で押している冰華の姿だった。彼女の両腕は、未だその肩から抜けたままである。
「……冰華ちゃん、何やってんの?」
「あ、蒼依ちゃん起きた。いやぁ、追いかけてきたら蒼依ちゃんが川に下半身突っ込んで動かなくなってたから、溺れたのかと思って水吐き出させてたの」
「もう平気だから退いて?」
「うん」
冰華が身体の上から退いたことで、蒼依も身体を起こす。周囲を見回すと、空は既に白み始めていた。
「もう朝か……」
「うん。……あ、あの鬼は⁉」
忙しなく身体を揺らしながら尋ねる冰華に、蒼依は立ち上がりながら答える。
「見に行こうか」

下流に向けて並んで歩いていると、川の途中に不自然に木片や木の葉などの浮遊物が滞留している地点があった。
「なるほど……あの辺か」
二人がその場所に近づくと、水面に小さなあぶくが浮かび、1体の河童が姿を現した。その手には、流されたはずの『冰華の腕』を掲げている。
「あっ、私の腕! ありがとー」
冰華が腕を肩に嵌め直している横で、蒼依は腰ほどまで川に踏み入り、水中を手探りし始めた。
「蒼依ちゃーん? 何してるのー?」
「んー……あ、いた」
蒼依が再び川から上がる。その手には、ぐったりと動かない天邪鬼を引きずっていた。
「死んでる?」
「脈は無かったよ。溺死かな。あるいは冰華ちゃんの腕が偶然掠ったか」

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Specter children:人形遣いと水潜り その㉓

天邪鬼を追って木立を抜けた先は、河原だった。
(この河原……冰華ちゃんが河童たちと会ってたあの川か! 気付かなかった……)
「……そんなことより!」
蒼依が下流方向に目をやると、天邪鬼の長い腕が浮き沈みしながら流されていくのが確認された。
(野郎……流れを使って逃げる気か!)
蒼依は四足獣化した“奇混人形”から降り、天邪鬼の流される方向に向けて駆け出した。更に手の中で“奇混人形”を短槍の形状に変化させ、投擲できるように構える。
「……いや。どうせなら」
蒼依は大きく跳躍し、そのまま川に飛び込んだ。同時に“奇混人形”をスイムフィンのような形状に変形させて自らの両脚に装着し、水を蹴って水中から追跡を再開した。
ただ藻掻き続けるだけの天邪鬼と、明確な意思を持って泳ぐ蒼依の距離は少しずつ縮んでいく。両者の距離が5mを切ったその時だった。
「ぐっ……ぁっ……⁉」
天邪鬼が水中で振り回していた右腕が、川辺に転がっていた倒木にぶつかった。更にその衝撃が倒木を動かし、水中へと転げ入ったうえ、タイミングよく蒼依に直撃したのだ。
そのダメージで蒼依は肺の中に残っていた空気をすべて吐き出してしまい、同時に緩んだ掌から『冰華の腕』がすり抜け、水流に浚われてしまった。
(クソッ、しくじった……武器が……冰華ちゃんの腕が……)
衝突の勢いで回転しながら、蒼依は天邪鬼と『腕』が流されていった方向を見やる。
(クソ……頭痛い……変に打ったか……? ……これ、私は追えないな)
蒼依は最後の力を振り絞って水面に浮かび上がり、どうにか息を吸い込む。そして――
「っ……冰華ちゃんの腕が持ってかれたァッ!」
掠れた声で叫び、態勢を崩して再び水底に沈んだ。
(もう駄目だ……『私には』追えない…………だから)
蒼依は薄れゆく意識の中、“奇混人形”を変形させ、魚のような形状で下流方向に送り出す。
(『友達』、なんでしょ……? 何とかしてよ、“河童”ども)
“奇混人形”の行動プログラムを設定し終えた蒼依は、酸欠によって完全に意識を喪失した。

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Specter children:人形遣いと水潜り その㉒

天邪鬼の爪に切り裂かれるより早く、冰華は腕を片側に伸ばして手近の木の幹を掴み、身体を引き寄せるように回避した。更にその慣性を利用して腕を完全に肩から引き抜き、素早く距離を取る。
「蒼依ちゃん、残しといたから!」
「助かる!」
蒼依は“奇混人形”を走らせ木の枝に掴まっていた『冰華の腕』を掴んだ。そのまま掌を天邪鬼に向けるように『腕』を突き出し、魂の奪取を狙う。天邪鬼は大きく身体を反らせて回避し、バランスを崩して倒れかけたところを尻尾で身体を支えることで持ち堪えた。
天邪鬼が身体を起こした次の瞬間、蒼依が突撃を仕掛けた。跳躍し、天邪鬼の角を掴み膝蹴りを喰らわせようとする。しかし、天邪鬼は上体を伏せるようにして躱し、尖った角の先端が蒼依の左上腕を掠める。
「っ……」
蒼依は左腕を背中に庇うように体を捩じりながら、天邪鬼の左肩を蹴って距離を取った。折れた腕に衝撃を受けたことで、天邪鬼は奇声をあげて右手を地面に付き、両脚と右手の合計三足で獣のように木々の間に逃げ込んだ。その退路を塞ごうと“奇混人形”が『冰華の腕』を叩きつけるが、天邪鬼は地面すれすれにまで身体を這わせ、その指先を回避する。
「逃げんなクソ鬼がぁっ!」
そう叫び、蒼依は即座に追跡を開始した。“奇混人形”が隣を並走しながら冰華の腕を蒼依に投げ渡し、自らは大型四足獣のような形状に変形する。蒼依はその背に飛び乗り、身を伏せながら後を追った。変形した人形の四肢の先端に生えた鉤爪が地面を掴み、みるみるうちに天邪鬼との距離を詰めていく。
(届く……ッ!)
至近距離まで追い縋り、蒼依は『冰華の腕』を振り抜いた。しかし、直撃の寸前で天邪鬼はバランスを崩し、地面を転げることで蒼依の攻撃は外れてしまった。
天邪鬼は慣性に従い、地面を転げながら前方へ前方へと進み続ける。
張り出した木の根に乗り上げたことで跳ね上げられた天邪鬼の身体は宙を舞い、木々の向こうで『水音』を立てながら落下した。

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Specter children:人形遣いと水潜り その㉑

全身を泥と出血に汚した鬼が、芋虫のように五体を蠢かせ、ふらふらと立ち上がる。
『おおおォォォ……グッ、うウゥゥゥ……! 逃げ……なくては……! 体力を……回復サセなくては……!』
呻き声をあげる鬼の両腕は力なく垂れ下がり、全身の傷からは止め処なく血液が噴き出している。
(……右腕は、ピクピク動いてる。多分まだ動かせるな。左腕は完全にイってる……それなら……)
刀剣を握り締め、蒼依は鬼に向けて駆け出した。刃の間合いに入る直前、鬼の右腕側――蒼依から見て左側に大きく踏み込み、鬼の顔が彼女に向いたのを確認したのと同時に次の一歩で大きく鬼の左手側――蒼依から見て右側に飛び込んだ。フェイントである。
(いける……!)
しかし刃が脇腹を捉える寸前、鬼は上体を前屈させ、『折れている左腕で』殴りつけたのだ。
「ぐッ……!」
蒼依は刀剣型だった“奇混人形”を人型に再変形させて、身体を支えさせる。
「……折れてたろ」
『ハアアァァァ? 一向に動かせるンダガァ?』
不自然な方向に曲がり青紫色に鬱血した左腕を、胴体を揺らす慣性によって振り回しながら、鬼は主張する。
「天邪鬼がよぉ……」
蒼依の呟きに、鬼の動きが止まった。
「……? ……おい、まさか」
『違ェぞ! 誰が天邪鬼なモンカ!』
「お前……鬼は鬼でも“天邪鬼”かよォ!」
“天邪鬼”は不意に蒼依に背中を向け、森の奥へと逃げ込もうと試みた。しかし、交戦中に背後に回っていた冰華が道を塞いでおり、退路が潰されている。
『退ケェ!』
「退かない!」
『なら退クナ!』
「退かない!」
『コノ餓鬼ガァ!』
天邪鬼は右腕を振り上げ、長く鋭い爪を冰華に向けて振り下ろした。

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑳

樹上の枝葉に身を隠していた鬼が、飛び降りるようにして二人に飛び掛かった。蒼依は咄嗟に冰華の背中を蹴飛ばしながら飛び退き、結果として鬼は二人の間を通過して地面に転がった。
「わあっ……とっ、とぉ。助かったよ、蒼依ちゃん」
冰華はバランスを崩しかけたもののどうにか転倒を堪えて振り返る。
二人の間には、奇襲を失敗した鬼が俯せに転がっており、起き上がろうと藻掻いていた。
「よく見えたね蒼依ちゃん⁉」
「人形がちらっと見てたからね……!」
手元に“感情人形”を再生成して攻撃に移ろうとした蒼依のすぐ横を、背後から白い影がすり抜けた。
「…………?」
蒼依が反応するより早く、それは一直線に地面に伏せる鬼に飛び掛かった。
「あ、蒼依ちゃん……あれって……!」
「……まさか、この辺まで縄張りだったなんて……冰華ちゃん、よくさっき転ばなかったね」
影の正体は、体長2mを超える巨大なイヌのような姿の妖獣だった。それは鬼を組み伏せ、爪を突き立て、容赦なく噛み付き牙を立てている。
「こいつ……“送り狼”だ……!」
送り狼に襲われながら、鬼は金切り声をあげて抵抗する。しかし、送り狼の膂力に負け、肉を裂かれ骨を砕かれ、全身あらゆる部位を牙で穿たれていく。
『おいコラ! ヤメロ! 犬野郎が! 俺は転んでネェ! 寝ッ転がったダケだゼ! オイ退きヤガレ!』
そう喚きながら鬼が暴れると、送り狼は急に攻撃を止め、鬼の背中から降りて闇の奥へと消えてしまった。
「あ、蒼依ちゃん⁉ 狼さん攻撃止めちゃったけど⁉」
「そりゃ、『転んだ奴』を獲物にするんだから、『そうじゃない』と言い張られれば……」
蒼依は《奇混人形》を発動し、刀剣の形状に変化させて鬼に斬りつける。
(あれだけのダメージ、手足も胴体もズタズタだ。勝てる……!)
しかし、振り下ろされた刃は鬼の肉体には届かず、地面に突き刺さった。鬼は全身を使って転がるようにして移動していたのだ。

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑲

深夜の森の中を、蒼依と冰華の二人は周囲の気配を警戒しながら慎重に進んでいた。
「っとと……」
「蒼依ちゃん大丈夫?」
「うん」
足元の小さな凹凸に足を取られて転びそうになった蒼依を、冰華が支える。鬼を逃がしてから、このやり取りは既に5度目だった。
「どしたの蒼依ちゃん。疲れた? ずっと戦ってくれてたもんね」
「いや、それは大丈夫。ちょっと注意力が散漫になってて」
「暗いんだから気を付けなきゃ」
「いやぁ……さっき、人形たちを先に森に突っ込ませたじゃん?」
「うん」
「私、あれと感覚共有できんのよ……人形たちの見聞きしてるものが、ぼんやりと分かるの。『ぼんやりと』ね」
「へー?」
「ただ……あまりにもぼんやり過ぎて、めちゃくちゃ意識集中させないと分からないんだよね。だからちょっと、足元に注意払う余裕が……」
「おんぶしたげよっか?」
「重いよ?」
「大丈夫、私の腕は“河童”なんだから!」
「おんぶって腕だけでするものじゃないじゃん」
「良いから! 蒼依ちゃんは鬼見つけるのに集中して!」
「……じゃ、お言葉に甘えて」
蒼依が恐る恐る、冰華の背中に覆い被さる。
「……重い」
「だろうね」
冰華がよたよたと歩き出して1分も経たないうちに、背中の蒼依が声を上げた。
「止まって」
「何?」
「来る」

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑱

地面に俯せに倒れ、ぴくぴくと痙攣する鬼を見下ろしながら、冰華は再接続された両腕の挙動を確かめる。
「“河童の尻子玉”の話ってあるじゃない?」
「どしたのいきなり」
冰華の不意の発言に、蒼依は網状に変形させた“奇混人形”で鬼を拘束しながら答える。
「河童が溺れた子供から“尻子玉”を抜いて殺しちゃうの」
「あるねぇ」
「尻子玉っていうのは架空の内臓らしいんだけどね。……もし、『本当に何かを奪っているとしたら』?」
「…………何を?」
「“魂”」
冰華の淡々とした答えに、蒼依の眉が僅かに上がる。
「河童の手は、“尻子玉”……つまり、“魂”を標的の肉体から掠め取るの。しかも、『末端部からほどより多く』。多分、尻尾にでも掠ったんじゃないかな?余計なパーツが多いと大変だねぇ」
「物騒な能力だなぁ……」
「…………あれ?」
冰華のあげた素っ頓狂な声に、蒼依は捕縛しようとしていた鬼を見下ろした。そこに、鬼の姿は無かった。
「……冰華ちゃん? 魂を奪って動けなくさせたはずじゃ?」
「流石に1発で全部は無理だよ。感触的に、多分奪えたのは半分くらい。タフなやつなら十分動くもの」
「半分なら結構な痛手かな」
「うん」
「じゃ、この勢いで押し切っちゃおう」
蒼依は“奇混人形”を3体の“感情人形”に解体すると、森に向けて解き放った。

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