表示件数
0

少女の夢物語

形を命を持つものは
常にいつか滅びるという
どこでやってくるか分からない未来を抱え
生まれ落ちる

少女は夢を見た
色鮮やかに包まれ誰も傷つかない明るい世界
きっと誰もが幸せになるはずな教科書の中の幸せを具現化したような
そんな世界を
感覚は徐々に凍りついてゆく
全ての感覚は重量はおろか自身の意思からさも解き放たれてゆく
巡る記憶のページ
少女が積み上げて来たもの
切り捨てて来たもの
壊してきたもの
あらゆる柵から解放された感覚はそれらで埋め尽くされていく
満足、絶望、恐怖、後悔
少女が抱いた感情に名前は無かった
それが良いか悪いか少女自身しか知らない
冷たい
不意にそう思う
感覚が失われた今少女が感じる冷たさとは
人間たちの心であろうか
今こうして少女が伏している事自体
冷たい心を持った生き物達が居たから
誰もがそう思う
それでも誰1人として少女を認識しようとはしない
そこに最初からあった置物のように
いいや
存在そのものをこの場から彼ら彼女らの認識から
少女は除外されている
今この瞬間ここで去りゆく少女は
自分が目の前を歩く無数の生き物たちの認識から消えた事を悟った
誰にも賞賛されない気づかれさえしない
そんな孤独でいつかの未来だけに意味をもたらすかもしれない薄い薄い可能性だけを少女は自身の無限の未来を
可能性を犠牲にして手に入れた
とてつもなく割に合わない
戦果を最期の温もりと共に優しく送り出し

少女の夢は終わった

0

独りぼっちの神様

独りぼっちの神様は
全てを作り上げた
何もかも理想通りに進む魔法の歯車で出来た夢の世界を全ては思い通り
思い通りのはずの世界だった
彼女が作った世界はほんの少しの揺らぎで崩れていった
彼女を愛してくれるはずだった君は
彼女で無い人を好きになった
それがこの世界で最初の小さなそれでも深い傷
歯車はこの時小さな悲鳴をあげていた
彼女は全てを得ようとした愛も友情も
この世界では全て手に入る私は神様だから
そう心に言い聞かせながらまっすぐに歪みへはまっていく

そして彼女は勝ち取った
全てが在るべき形をした彼女の世界を
夢の世界の夢の中で
それでも
彼女の独りぼっちの暗くて広い心を埋めてくれる物は全て手に入る
愛も友情も
それは待ち望んだ全てだった
彼女が最初この世界で手にしていたはずの物だった
でも、結局届かなかった
手に入れた光は瞬間で手の中から飛び去って行く
それも輝きを取り戻すようにして更に強く光り輝きながら

「ずっと夢のままなら良いと思わない?」
「夢でもいいじゃん 一緒に来てよ」


彼女の声は届かない

「夢でも届かないの?」

心から零れた泣き声だった

彼女の夢は崩れていった

取り戻せない
手に入らない
夢の世界まで独りの自分を嘆く彼女にはもう
誰の声も届かない
友情を求めた人の声も愛を求めた人の声も
全て暗闇に吸い込まれて消えていく
堕ちた神様を救うのは
作り物だった君達なんだね
光を閉ざした彼女を引き上げるように包むように
愛は友情は彼女を支えている
神は決意する神としての自分を捨てる事を
自分の世界に帰る事を
愛は
最初から彼女へと向けられていた
それは彼女が定義した彼女ではなく
彼女の無意識が定義した彼女へ向けて最初から注がれていた
捨てたはずの自分は愛して欲しかった自分だった
友情は
夕日の射す部屋の中で泣いてる彼女を優しく包んでいる
「どうか この願いが一生叶いませんように」
悲しい願いを添えて友情は繋がりと共に送り出す
友として

目を覚ませば夢は終わる
そうして彼女はただの人間として
悲しい理不尽な世界に夢の世界の繋がりと共に踏み出していく
二度と出会う事のない
夢の世界の繋がりは証として彼女の隣にあり続ける

0

あの夢をなぞって

僕は夢の中で出会った誰も知らない少女と恋をした
「待ってるからね」
少女はまるで花火のようだった

8月の朝夢に見た、今日から10日後の未来に行われる花火大会で僕は君と出会った
ただの夢 生まれてこの方彼女無しの僕が見た彼女と花火大会で、なんて悲しい夢だと思えばよかったのに 僕は彼女を探そうとした夢の中の人を
顔も名前も知らない夢の中の人を探そうだなんて僕はどうかしている
だけど探さなければいけないと思った 友達に笑われながら家族に呆れられながら
君と出会ったあの日から出会うはずの10日後まで毎日君を探し続けた
彼女は待ってると言っていた気がしていたから
・・・
結局当日まで君の事は何一つ分からなかった
有り得ないくらいのこの人混みからたった1人を探すなんて不可能だと普段の僕なら諦めていただろうでも何故か今日の僕は諦めが悪かったどうしようもなく 人混みに抗い進んで行く何処へか分からないただ彼女がいる気がした方向へ この先に君が立っている気がした
空に花が咲く大きな音を立てながら街の喧騒をかき消すようにように音という音を光が包み込んで行くそんな空の花の下に君は立っていたんだ
「やっと、会えた」
お互いがお互いを求め合い僕達の未来は重なった
別々の道を歩いていた僕達はあの日夢の中で重なった、ただ1回 一瞬の運命が僕をここへ君をここへ連れて来てくれた
僕達は2人揃って泣いていた出来る事ならこの涙はずっと流していたかった
君と同じ時間に存在した証のような気がしたから
空は明るく光り輝く音と共に無数の花が咲いては散ってゆく この世界のあらゆる音を光と共に連れ去って
光に願った僕達2人も一緒に連れ去って
連れ出して欲しかった
それがダメなら、せめてどうか終わらないで
そんな僕の願いは連続する無数の音に消されていく、そして音のない世界が広がった
君と僕の未来はまたお互いの道へと戻って行く
僕はきっと忘れない
2人で見上げた様々に輝く空を
空に咲く光に照らされた君の横顔を

大丈夫想いはきっと大丈夫伝わる

こうしてまた出会えた君へ

「好きだよ」

君は花火のように散った

....

from YOASOBI/あの夢をなぞって

0

春を告げる白い華

君が居なくなってもう半年くらいかな
今は冬で寒くて寒くて敵わない
なんとなく君の部屋だった場所に足を踏み入れ
以前聞いたことのあった日記の話を思い出して
悪いと思いながらこっそり見ていた保管場所の引き出しから取り出す
最後のページに僕は全てを掴まれた

「春の雪」
3/29
僕は遂に見た
春を告げる白い華を
空はオレンジに染まり日が沈むのを待っているという頃
つぼみがチラホラと見えるだけの桜の木の近くを通りかかった時
まだ散るには当分時間がかかりそうだなぁと思いながら
空を見上げている僕の目に飛び込んで来たのは
白い花弁が空を舞う姿
それはノノックと呼ばれる花で
春近くで特定の条件を満たした1日だけ花を咲かせ次の日には跡形もなく散ってしまうらしい
きっとそれは誰も知らない景色だとそう思った
こうして僕以外が見ることが無いような日記だけに残すのはあまりに綺麗過ぎたからかもしれないし
僕の中の思い出にしておきたかったのかも
それは花と言うより華だった
僕の頬に落ちたその華はとても暖かく優しさを形にしたみたいだった
殺伐とした世の中で美しく咲いて綺麗に散っていく
散っているのに華はどもまでも綺麗で優しくて暖かい
僕はその景色を死ぬまでに見れた事を人生で最大の自慢にしようと思った
僕の中で永遠に


君が最後に記した日記だ
残念ながら日記は君以外の僕が見てしまったけど
君しか知らないこの景色を僕はどうしようもなく見たくなった
君が言う人生の自慢を僕も作れたら良いと思った

空はオレンジに染まり夜の訪れを待っている
君が見た白い華はこんな空を舞っていたのだろうか
そこに手を伸ばせば君が立っている気がした
春を告げる白い華に魅入られていたあの時の君がそこに
居る気がした



・・・・・・

Hollow Veil/nonoc

nonocさんという方のHollow Veilという曲を僕が勝手にストーリーにしました
短時間で作り上げたものですがもし良いねと思ったらスタンプを押して行ってください
僕が一人で悲しく喜びますので笑
という事で
このシリーズ気が向いたら続けます
多分その内曲のリクエスト聞いたりするかもしないかも
ではまた

0

プレゼント

知っている知っていた
「私最初から狂ってたんだ」
空虚な笑みを浮かべながらそう言う君を
見た事があった
俺はきっと気づいていたんだ
この子は普通ではないということに
気づいていながら気づいてない振りをしていた
君の為に?いや誰の為でもない俺自身の為に
今日の空は晴れている雲ひとつない
気持ち悪いくらい真っ青な空の下
今さら問うことさえ無駄な質問を彼女に投げかけるそれは多分どこかでまだこのやり取りが夢であるというありもしないオチが待っていると信じたかったのだろう
「いつからなんだ...」
彼女は淡々とそれでも内の中では何かを禍々しいモノを燃やしているような瞳で俺を見据え答えた
「最近からって言ってるじゃない全部初めからこうなる為に進んでたんだよ君が信じていた私は初めから君の中にしか居ない都合の良い幻だったの」
世界は不幸が連なり不幸の生け贄になった者達の血で出来ている
そんな論文を俺はどこかで目にした事を思い出していた
その論文にはこう記載されていた
世界に存在する幸福とは全て現実逃避が生み出す個人にとって最も都合の良い幻である

俺にとってのそれは目の前の彼女だ
俺を地獄から救い出してくれた心の底から好きになった
こんな俺でも誰かのヒーローになりたいと思えるのだとなれるのだと君は教えてくれた
君は俺が理不尽と戦う事が出来た原動力そのものだった
だけど
君という存在は俺の現実逃避が生み出した理不尽に理想という幻の衣を纏わせた死神だった
「これが私から君への最初で最後のプレゼントだよ私を好きになってくれてありがとうそして永遠に
おやすみなさい さよなら」

首に冷たい物が触れた
そして
最愛の人がくれた最初で最後のプレゼントで俺は終わった